4章 死の舞踏

闘技場の控え室。
石造りの灰色の部屋には、二人しか人がおらず、其処は実際以上に広く見えた。
がらんとした寂しげな雰囲気の中、赤毛の魔女が、
没収されていたアンガーの武具を床に置いた。
「何故、受けた?」
鎧の装着を手伝いながら、神官戦士に問うてみる。
「断るかと思っていたぞ」
「可愛い後輩が、一緒に捕まっていてな」
革紐を縛りつけ、久しぶりに握ったメイスの重さを腕に滲ませるように、二、三度振るう。
「女だな」
赤毛の魔女の声の響きに含まれたそれは、問い掛けではなく確認である。
神官戦士は、にやりと笑う。
「まぁな」
「呆れた…な」
「それだけでもねえ」
禿げた頭をぺたぺた叩く。
「どうも頭がいい割に損な仕事ばかり引き受けさせられている、要領の悪い奴でな。
餓鬼なのに、今回も、こんな危険な仕事に付き合わされちまった」
メイスを腰からぶら下げると、今度は与えられた楯の具合を軽く叩いて、確かめ始めた。
「まだ若い癖に、最近、どうも世の中を拗ねかけているような気がしてならん。
挙句、捕虜だ。このままじゃ、自分が捨て駒にされたと思っても無理はない」
赤毛の魔女を見ると、陽気な禿頭の巨漢はにっと笑った。
「ここは一発、自分の為に命を張ってくれる誰かが居るって事を、教えてやるのさ」
「道を誤る前に…か」
「世の中には嫌味な連中ばっかりじゃないと知って欲しくてな」
赤毛の魔女が苦笑した。
「意外と、いい奴だな。あんた」
「おお、惚れたか?だが、拙僧は妻帯している故にお相手は出来ぬ」
「ふふ……私も同輩の為に、お前に勝って来いとはいえない立場だが、精々頑張ることだ」
赤毛の魔女は、アンガーに明らかな好意を含んだ視線を向けて、肯いた。
「健闘を祈ってるよ」


兵士、騎士、魔女たち、それに奴隷たちまでもが、熱狂した様子で、
町の中心に位置する巨大建築物に吸い込まれていった。
エレーンとシェラティオスも、其処にいた。
闘技場の観客席を、数千もの魔女が埋めていた。
これほど多くの魔女の姿は、戦場でも見たことがない。
魔女と交戦中のカシナート王国の戦士としては、魔女の数を空恐ろしく感じるを得ない。
闘技場に充満した熱気に圧倒されて、エレーンの膝が震える。
戦士の装いをした者や、豪奢な装束の者、普通の服を纏った身分の低そうな魔女たち。
どうやら、この競技は、魔女たちに相当人気のある見世物らしい。
他の種族はもっと多かった。
二万を越える観客は、それでも闘技場の観客席の半数ほどしか埋めていない。
兵や騎士、傭兵だけではなく、どこぞの豪商や豪族、族長や貴族らしい人影も
多数あるのに驚く。
「あれは…」
彼らは仮面で顔を隠していたが、中には明らかにカシナート人の装束をしている者もいた。
あるいは魔女たちは、見えない所からかなり王国を侵食しているのではないか。
そんな疑惑がエレーンの中に湧き上がる。

シェラティオスに腕を引かれ、人ごみを避けて裏口に設置された昇降装置に乗り、
エレーンは、見通しのいい上部の階へと案内された。

ちなみに、魔女の城の上層から地表まで降りるのにも、
二人は、この機械仕掛けで昇降する巨大な箱を乗り継いでいた。
「ちなみに魔女でなければ、この昇降装置は反応しませんから、
魔女以外の敵に侵入されても、このカラクリを利用される恐れはありません」
魔女メイドは「安心ですね」と笑い掛けてきたが、
エレーンは、『逃げるのにこの装置は使えないぞ』と、それとなく釘を刺されたように
感じて少しへこんでいた。

「仮面を付けてください。エレーン」
貴賓室で見学している所を、知り合いに見られたら困るでしょう?」
揶揄されて、エレーンは魔女メイドに手渡された動物を模った半仮面をつけた。

闘技場の西側の入り口では、年長の魔女が、片隅に立つ少女の魔女に語りかけていた。
何処かで見覚えのある魔女だと思ったら、
闇の森の戦いで、一人で王国兵を蹴散らしていたあの漆黒の槍の魔女である。
なにやら年若い魔女に、戦いのアドヴァイスをしているようであった。

「戦う捕虜には、魔女を倒せば、自由にしてやると約束されています。」
シェラティオスが、エレーンに囁くように教える。
「魔女がこういう遊びを好む事は知れ渡っていますし、勝ち残った者に対して約束は必ず果たされてきました。だから、どの捕虜も真剣に戦います」

年若い魔女は、軽装の黒い胸鎧を見につけ、
刃のついた武器を使わない神官の武器、鉄で出来た棍棒、メイスを携えている。
あの若い魔女が、これから戦うのだろうか。子供にしか見えないのに。
エレーンは、その顔にどこか見覚えがあるような気がした。
何処で見たのだろう。休戦の時に中立地帯で見たのかもしれない。
いや、違う。もっと近い、つい最近、それも間近で見たことがあるような気がする。
だけど、どうしてもエレーンは、その少女の魔女と何時、何処で出会ったのかを
思い出せなかった。
魔女は緊張した面持ちで、闘技場の反対側にある選手の入場口を睥睨していた。


入場口から、虜囚となった人間の戦士が出場してきた。
その男を目にして、エレーンの背中に冷たい汗が吹き出た。
「あれは……強いな」
一目見て分かった。途方も無く強い。
物凄い筋肉のついた偉丈夫だ。
それも重い筋肉ではなく、しなやかで、柔軟そうな肉。
それが長い実戦によって、巌のように削られてきたというのがよく分かる。
魔女たちとはまた異質の、周囲を威圧するような闘気を全身から放っていた。

二人の闘士とも、険しい顔つきで互いを睥睨している。
相手を見て、若き魔女がはっと目を見開いた。
彼女は心なしか驚いた様子で、闘技場で最も高い所にある最上階の貴賓席を睨みつけた。
その顔は蒼ざめている。

その最上階から、凛とした声が闘技場に響き渡った。
「勝利の暁には、捕虜には友の自由を、魔女には騎士の位を与える!
この事、夜魔の姫の名において、約束しよう!」

長椅子にしどけなく寄りかかっている黄金の瞳の魔女が、ゆっくりと右手を差し上げた。
皇の視線を受け、威厳のある面持ちの真紅のマントの魔女が、ゆっくりと肯いた。
傍らに立つ撥を携えた魔獣に合図を送る。
「始めよ!!」
全身を緑の竜鱗に覆われ、尻尾と水棲生物の水掻きのような耳を持った女性の魔獣が、
怪力を奮って、手にした撥を思い切り銅鑼に叩きつけた。


開始の合図がフィールドに鳴り響いたと同時に、神官戦士が雄叫びを上げた。
言葉としての意味を成さない闘争心の発露。原初の殺意の迸り。
雄叫びを聞いた観客達が背筋を凍りつかせた。
盾を構え、メイスを低く片手に持って、猛烈な勢いで相手に突進していく。

魔女は、呆然と立ち竦んでいる。
戦士の、下から抉りこむような一撃。
若い魔女は、それを見切り、僅かに後退した動きで躱した。
巨漢は、その強力を活かし、直にメイスを返した。
風を切って唸りを上げた横殴りの一撃が、魔女を捕らえたかに見えた。
メイスの一撃に、黒い影が空を舞った。
場内の観客から悲鳴と歓声が上がった。
魔女の盾が弾き飛ばされていた。
甲高い音を立てて、真っ二つに割れたそれが、遠くの地面に別々に落ちる。
魔女自身は、肉食獣のように華麗な動きで後ろに跳ね飛び、戦士から距離を取った。
観衆が熱狂したように、拍手し、歓声をあげ始めた。
必殺の技を躱された戦士は、小さく舌打ちしたが、それほど気にした様子もなく、
気持ちを切り替えると、再び魔女に向かって間合いを詰めていった。

魔女もメイスを構え、速度を活かして横に回り込もうとするが、
巨体にも拘らず戦士の動きは早く、中々、隙を見せようとはしない。
魔女は実戦経験が少ないのだろう。
戦士の横から潜り込もうとしているのが見え見えで、
それに失敗するたびに、機会を掴んだ戦士のメイスが唸りを上げていたが、
魔女は舞踏の舞姫のような完璧な動きで、その攻撃を躱し、致命的な打撃を凌いでいる。

解せなかった。
エレーンなら、あの戦士の速度についていける。
メイスの一撃を掻い潜って、懐に飛び込むことも可能だろう。
だが、あの若い魔女はスピードはともかく、明らかに経験が不足している。
あの動きでは、メイスの一撃をとっくに喰らっていなければおかしい。
にも拘らず、若い魔女は、まるでメイスの描く機動を
予め肉体が知り抜いているかのように、戦士の攻撃を凌ぎ続ける事に成功していた。

戦士が放った、渾身の横殴りの一撃。
まるでそれを予期していたかのように魔女は横薙ぎの一撃を潜り抜けると、
凶悪な鉄塊を戦士の鎖骨に叩きつけた。
狂猛なまでの魔女の膂力と速度が充分に乗った一撃をまともに受け、戦士の躰が鞠のように跳ね跳んだ。


神官戦士は、血と骨を撒き散らしながら闘技場の片隅へ吹き飛ばされると、衝撃と苦悶に身をよじっていた。
あれでは、立ち上がれまい。
エレーンは、視線を逸らした。
魔女たちから歓声が上がる。闘技場の一角、捕虜達からは絶望と悲嘆の声。

くそぉ!!アンガー、アンガーよう
畜生、魔女め、殺してやる。

呆然と、呆けたように若い魔女は立ち尽くしていた。
「止めを!!」
コロッセウムの最上階から響いた凛とした少女の声に、若き魔女は、はっと身を震わせて、
瀕死の戦士へと歩み寄っていく。

倒れた戦士が、苦しい息の下で何事か呟いていた。
恋人の名でも囁いているのだろうか。
強敵を倒した若き魔女は、それを聞いて苦しく切なげな顔をしたが、
それも一瞬だけであった。
メイスで頭を砕いて止めを刺すと、奪ったメイスを高々と掲げて主に捧げた。

観客の爆発的な歓声が上がった。
一部始終を見届けてから、エレーンは顔を伏せた。
「……シェラティオス」
エレーンは、その顔を見ないで、傍らの魔女に話しかけた。
「……はい」
「もう、いい。帰ろう」
「はい」


「2章 05」
他の神官や、神官候補に対する憤懣がなかったといったら、それは嘘になる。
年若い女。特に美しい訳でもない。利発なわけでもない。
ただ人一倍の努力はしてきたつもりだ。
有力な後ろ盾がある訳でもなく、世慣れている訳でもない。
低い身分の出身で、しかも幼い時に神殿に売られてきた、痩せこけた貧農の子供。
何かにつけてからかい、見下す対象としては、うってつけだったのだろう。
何の間違いか、その下働きの娘が、マーサ神殿史上最年少で神官戦士となったとしても、
何かが変わるわけでもなかった。

表面上のからかいは影を潜めたものの、向けられる暗い感情に今度は嫉妬が加わり、
陰に籠った分だけ、扱いはますます陰湿になっていった。
冷たく扱われるか、便利な道具として利用されるか、成り上がりとして嫌われる。
そして、それに対して超然と対峙できるほどにも強くなく、
周囲との融和に努めることが出来るほどにも柔軟でもなく……
一生を神殿で終えるのかと、何度も絶望し、自殺を考えた事もあった。
そんな日々の中で、幾らかでも庇ってくれた者が居たとしたら、それは……

最後に、自分の名を呼んでいた。
それが何より、生まれたばかりの魔女の心を苦しめた。
年若い、ある意味生まれたばかりの魔女は、泣きはらした目で
自分を魔界に引きずり込んだ元凶を睨みつけた。

「よくも…私に殺させたな!!」
血の吐くような思いで、憎悪の言葉を叩きつけた。

田舎から出てきて、辛く苦しい日々に、ただじっと黙って耐えていた小娘を
気紛れに優しくしただけの話なのかもしれない。
それでも、時折、夫妻の食卓に呼ばれて、人として扱われた対話と日々は、
確かに、少女にとって、掛け替えのない救いとなっていた。
戯れであっても、神官戦士の武技を教授してくれたのは、
よりによって教え子の手に掛けられるような末路を辿る為ではなかったはずなのに……


リズは激昂して、夜魔の姫に詰め寄っていた。
「貴女がわたしを唆したのだ!!貴女が……!!」

豪奢な寝台に半裸で腰掛けながら、しかし夜魔の姫は、
少女の感傷を嘲笑うかのような冷たい微笑を返しただけであった。
「半分は確かに我。しかし決断し、実行したのは御主だ。リズ。
お前は自分が生きる為、自らの友を殺した」
「…………」
その通りだった。本当は、誰に責任を転嫁しようもない。
それが分かっていても……

すっと、蒼白い手がリズの頬に伸びてきた。
頬に手が寄せられ、魔女が背伸びをしてリズに口づけをした。
「褒美をやろう。
したいか?されたいか?」

ふっと暗い光を湛えた瞳で、若き魔女は、夜魔の姫を見つめた。
「遠慮はいらぬ。今宵の我はお前にやろう。好きに使え。
喰らっても、えぐってもよい」
自らを苛む罪の意識に狂いそうだった。少女は、罰を受けたかった。
「……してくれ。わたしを犯し、滅茶苦茶にしてほしい」
「望みのままに……リズ」
夜魔の姫はリズの腕を掴むと、彼女を乱暴に引き寄せた。

寝台の上に押し倒し、少女の服を引きむしりながら、形のいい顎から、
細い喉元、白魚のような鎖骨、まだ固さの残る乳房と、貪るように口で吸い、
繊細な指の動きで肌に触れ、胸を乱暴に揉みしだいて刺激していく。
「ふっ…あ……ああッ…つう!!」
年の割りに性感の未発達なリズは、背筋をのけぞらし、躰をくねらせながら、
くすぐったい様な、痒いような感覚から逃れようとする。

がぶっと、夜魔の姫が乳房に大きく噛み付いた。
夜魔の姫の口元には、狼のように鋭い牙が生えていた。
「……ッ!!」
牙は深く、胸元に突き刺さっていた。激しい痛みにもリズは悲鳴を上げない。
少女が、見た目より遥かに気丈なのは、神殿での孤独な日々が、
精神を鍛え上げてきたからかもしれない。
食われて、死んでもいい。そんな風に思っていた。

だけど、夜魔の姫はそれ以上噛み付いては来ず、獲物の肉体を、
己の手と指と己の肌を使って、丹念に弄り始めた。
「……はぁっ」
リズが、躰を慄かせて、身動ぎする。
長く蒼い舌で乳房を嘗め回し、乳首を啜り、下へ進んで腹部を舐めながら、
固さの残る胸を揉み、丹念に尻を解きほぐしていく。

「ふっ…つ……あ……」
魔女の体液に、媚薬のような効果でもあるのだろうか。
嘗め回された場所が暑く火照り、ようやく少女の全身にチリチリと電気のような心地よい感覚が生まれた始めていた。
「あ…ああ……あはぁッ…ああん!!」
リズが、甲高い声で甘く呻いた。じんじんと全身が火照りはじめていた。
少女は、自分の体が快楽に反応するのが信じられず、
自分の唇が甘い声を上げるのが嘘のように思えて、唇を噛んで耐えようとする。
魔女の舌と指が、秘所に到達しつつあった。
自分の指も触れたことのない其処を、魔女は周辺の肉を指で揉み解し、
舌でやわらかく舐め取りながら、じっくりと刺激していく。

「……ふぁっ!」
リズは、顔を紅潮させ、唇から上気した熱い息を漏らした。
いまや、血管を通して甘い毒が回るように、全身が淫らに熱を孕んで、
蹂躙される事を望んでいた。
魔女は、手を伸ばしてリズの口元から涎を、秘所から愛液を掬い取り、
少女自身の胸に擦り付けるようにして、揉みしだいた。
「あ…はあん……あはぁあん!!」
頭を振って、リズは快楽を否定しようとした。
既に少女と魔女の汗と涎、体液が交じり合って、部屋中に甘い芳香を発していた。
「ふふ、とてもいやらしいエロ顔になっているわ。リズ」
魔女の皇が、嬉しそうに囁いた。

ちゅっと音を立てて、若い神官戦士の其処に舌を差し込んだ。
魔女の蒼白い舌は、いまや蛇のようにぬめぬめとしており、長く、太く、
しかも、異様な突起が多数生じていた。
酷く冷たく、その癖、異様な熱を孕んだ長い舌が、肉穴の入り口を突破して、
膣内に侵入し、自由自在に嘗め回し、啜り、埋め尽くし、蹂躙していく。
「うふふ……美味し」
嘗め回し、泉から懇々と溢れ出す水を嚥下しながら、
その周囲の肉の土手で、魔女の指が変幻自在に踊った。

「あ?ああああはああああ!!」
来た。白い波が襲ってきた。
リズは、快楽に絶叫を上げて、体を震わせた。
腰が踊る。狂乱の熱が冷め、波が引いていくと、再び、魔女の舌が踊った。
その度に、少女の脳裏でちかちかと火花が散った。
舌を突き出し、いつの間にか桜色の突起が勃起していた胸を自ら揉みしだいて、
貪欲に、与えられる全ての快楽を貪りつくし、より引き出そうとする。
「あひゃあはああ!!いい……もっと、もっとしてぇ!!」
黒髪を振り乱して、舌を突き出し、涎を垂れ流し、快楽に蕩け切った少女の表情からは、
先ほどまでの強い意志の煌めきを秘めた神官戦士の面影は完全に消え失せて、
魔女から与えられる快楽に踊り狂うだけの一匹の貪欲な牝と成り果てていた。

「ほら、アクメ顔、あたしに見せて」
くいと、魔女に顔を向けさせられる。
リズの綺麗に切り揃えられた黒い髪が、くしゃくしゃに乱れていた。
白目を剥き、口の端からは涎の泡を吹いて、だらしなく淫蕩な笑みを浮かべた
今の表情を見せて、この娘は未だ乙女だといわれても、信じる男はいないであろう。
「あ……ああ…………」
「そろそろ、ほぐれたかな」
魔女は、得物の胸や尻の上に指先を躍らせて、具合を確かめる。
リズの肉からは、先ほどまでの固さは幾分取れ、睦み合うに充分な柔らかさとなっていた。
「四つんばいになって。リズ」

初めて与えられた強烈な快楽によって、酔ったように陶然となっている少女には、
魔女の呼びかけが届かなかった。
「ほら」
パァンと、魔女が、桃の様な少女の尻を乱暴に平手で叩いた。
「ひぃぃ!!」
尻に喰らった強烈な張り手に、天界に飛んでいた少女の意識が現実に引き戻される。
叩かれた肌が赤く腫れ上がっていたが、
今のリズには、その痛みすら一種の快楽に変換されている。

魔女が、再び、命令する。
「こちらに尻を向けて、やらしく揺すって、おねだりして御覧なさい。
獣のように、してあげるから」
これ以上の快楽を受けたら、自分はどうなってしまうのか。
変わってしまうのではないだろうか。
色々と恐かったが、それでもリズは、魔女に命じられたその通りに動いた。
これは罰なのだ。
アンガーを殺した自分は報いを受けなければならない。
だから、いう通りにするのだ
少女の頭からは、既に正常な思考能力は蒸発しきっていた。
混乱した頭で、恐怖と罪の意識と快楽から逃れる為に、
更なる快楽をもたらす体位を自分でとり、尻を魔女に向けた。

魔女の皇が自分の親指の爪を噛んだ。
「ん……ふう」
色っぽく頬を上気させて、自らの股に指を差し込み、
くちゅくちゅと音を立てていじくりまわし、快楽に体を震わせた。
その股にある蒼い真珠のような肉芽が急速に成長し、色を変えていく。
「はああ……はあ」

子供の二の腕ほどもあるだろうか。
成長しきった異形のそれを、リズの潤み、ぱくぱくと肉を喰らいたがっている
淫乱な肉門に押し当てると。
「はああ!あはああああん!!」
リズが鳴いた。獣のように吼えた。
後ろから、獣のような体位で、貫かれていた。
「はあ!…ああん!……!あああああ!!……いい、しぬ、しんじゃううう!!」
貫かれながら、支離滅裂な叫びを上げ、涙を流す。

「すごい!!凄い!!しゅごいいい!!こわれりゅう!!こわれちゃううううう!!
あひいいいい!!しぬ!!」
肉の蛇は、まるでリズの躰の中に終の棲家を作り出そうかとするように
縦横無尽に動き回り、のたうち、抉り、その肉を蹂躙し、襞の奥まで埋め尽くして、
リズの血と肉と魂を作り変えていく。
信じられないほどの快楽は、先ほどまでの比ではなく、
リズは、半狂乱になって、叫び、悶え、救いを求めた。
「とんじゃ……あっはああああん!!!いっくううううう!!!
ひいい、ひっぎいいいい!!あはあ……またとぶ、とんじゃうう!!!」

「あははははは、いいでしょう?リズ!!
いいなら、いいって云いなさい!!云いなさいよ!!」
腰を打ち付けてくる魔女の呼び掛けに応える少女の声は、
もはや殆んど意味を成していない。
「あっは!!!・・・・・・あおおお!!・・・・・・いい・・・きもりいひい!いいれしゅう!!
きぼちいいひいいい!!!!」
躰を突っ張らせて、びくびくと痙攣する。
射精しながら、それでも魔女は攻撃を止めてくれない。
獲物を逃がさないようにリズの肩を抱きかかえ、足を絡ませて、腰を左右縦横に動かし、
蛇をリズの肉の中で、暴れまわらせる。

「やめれ・・もうやめれえええ!!死ぬ、気持ちよすぎて、くるったう」
リズの必死の懇願にも、魔女は冷たく拒否して、さらに激しく少女の肉を貪った。
胸を噛み、喉をなめ、太股に指を伸ばしながら
「狂っていいわ、狂いなさい!!
そうして、わたしと同じ闇の者になるの……夜の眷属に……」

「っつあああああああああ!!」
リズが、全身を激しく振るわせた。人として、最初で最後の快楽。
それらの最後の一滴までも、貪欲に飲み尽くそうとするかのように、
膣が激しく痙攣し、涎を垂らしながら肉の蛇をきつくきつく締め上げていく。
「イッッッ………クウうううううう!!」
胎に射精を受けた。子宮が魔女の皇の精液で一杯に満たされていくのを感じながら、
リズの精神は、永遠の灼熱地獄へと堕ちていった。



果てた。
絡み合った二人の肉体は、力尽きたように、寝台の上でくたりと倒れていた。
リズの全身は、炎を浴びた蝋燭のようにとろとろに溶け切って、
完全に、性の余韻が放つ心地よい熱に満たされていた。
熱を持った肉体に、べとついた体液が揮発して、むせ返るような体臭を放っている。
普段だったら、悪臭であろうそれが、余韻に浸っている今は脳に心地よくつんときていた。
蒼み掛かった魔女の白濁が、ごぽりと、リズの女性自身から溢れ出てくる。
中を満たされるほどに射精を受け、体液と涎、そして精液に、散々に躰を汚されて、
尻から胎にかけての痙攣が、まるで治まらない。
熱は、躰に満ちていた。不快な熱ではない。
心の空虚が、躰を合わせることで埋まることがあると、少女は初めて知った

いつの間にか、リズの背中から筋肉と皮膚を突き破り、一対の漆黒の翼が生えていた。
黒い天使のようなそれが、大きく開き、骨を伸ばし、軋みながら急速に成長していく。
その痛みさえ何故か心地よく、少女は躰を身動ぎさせた。

魔女はリズを抱き寄せると、その耳元で囁いた。
「お前はもはや我が眷属。夜の娘の一人。魔女として生き、魔女として死ぬしかない。
死しても、その魂は永劫に我が腕から逃れられぬと知れ」
「……はい」
リズを抱きしめる腕に力が込められる。
「代りに、我は決して汝を裏切らぬ。」
リズが、はっと息を呑んだ。どうしていいか分からない表情で、魔女の皇の顔を見上げる。
「魔女のための世界を、我が用意してやる。
お前も含め、全ての魔女にそれを見せてやる。我に為に生き、我の為に死ね」
その黄玉の瞳に宿る、激しい炎のような金の煌めきを見つめるうちに、
少女の躰に強い震えが生まれた。
快楽だけではない。魅了の術を受けたわけでもない。
恐怖か、喜悦か。戦慄にも似た慄きがリズの背中を走り抜け、
彼女は、自分はもうこの魔王の手からは逃れられないのだと悟った。

一瞬だけ固く目を閉じて、人間であった自分の世界を、諸々の記憶と共に脳裏に描いた。
家族、友人、故郷、神殿と、其処にまつわる喜び、哀しみ、苦しみの感情に思いを馳せて目を見開いた。
彼女にとって、それらのほとんどには、碌な思い出は付随していない。

まっすぐに目の前の魔女を見つめ、リズは肯いた。
「オ……オルヴァヤーナ様」
知らないはずの、教えられたことの無い主の名が、自然とリズの唇から漏れでた。
呼び掛けを聞いて、黄金の瞳の少女がくすりと、薄く微笑を浮かべた。
震える声で主の名を呟くと、リズは立ち上がり、改まって主の前に跪いた。

人であることの残滓を脱ぎ捨て、夜魔の世界へ足を踏み入れる事を決意して、
「私は・・・、魔女リズェンシャヴィヤは、今より永遠に貴女の下僕です。
貴方の為に殺し、貴方の為に死にましょう。
どうか、如何様にもお使いください」
自分の心の底から湧きあがってきた新しい名前を捧げ、
夜魔の姫が傲然と差し出した右手を、その手に戴くと
漆黒の堕天使にも似た姿の魔女、リズェンシャヴィヤは、
その手を口元に運んで、姫に仕える騎士のように恭しく口づけした。