Return of my…

前回のあらすじ?
悪魔ミランダの眷属となったアロエによって、ユウは悪魔になってしまう。
しかし悪魔になったユウはミランダ達の命令を無視して生体実験に夢中になっていた。
そんな彼は姉であり、現在は幽霊になっているサツキの肉体を盗み、キメラ型悪魔に改造。
そしてその肉体にサツキの魂を入れて彼女の心を悪魔へと変えた。
こうしてユウのシモベとなったサツキは、弟の命令に従ってマジックアカデミーの生徒を次々と誘拐していく。

しかし教師陣も無能ではなかった。 きちんと誘拐魔対策を練っていた。
計画のためにユウを邪魔に思っているミランダのアイデアで教師陣は誘導作戦を決行、上手く誘拐魔を捕獲した。
しかし、その正体は生徒のサツキであったことが判明。
獣のように暴れるサツキを沈め、人の姿に戻すために教師陣はある儀式を行う事を決意する。
それは賢者並の力を与える儀式。 賢者並の力を与えてサツキの中の悪魔を祓うのである。
儀式のお陰でサツキは人間の体に戻った。 それだけでなく、儀式の影響でサツキは教師になったのである。
しかし、儀式の副作用で教師陣の組み合わせと教科が一部変更、購買部のリエルが生徒になったりという代償もあった。

賢者の力を得たサツキは今までの贖罪のためにユウを元に戻す決意を固めた。
そして、彼女は事件の発端となったとも言えるあの場所に向かうのだった。
(今の私なら…いや、『今の私』じゃないと駄目! だから先生達、すいません…)





彼女にとって全ての発端となったユウの部屋。
サツキは容赦なく弟のドアをドンと開ける。
「もうやめなさいユウ! あなたのやってる事は悪い事よ!」
サツキは真剣な声で叫び、右手に持っている杖をユウに突きつけた。
しかし、実験を終えたのか材料の片付けに入っていたユウは戸惑い一つせずにクスリと笑う。
「お姉ちゃんそれ悪魔と悪いを掛け合わせたギャグ? だったらそれはナンセンスだよ?」
ユウは今の本当の姿になって笑う。 その軽い言動がサツキを逆なでさせた。
「黙りなさい… あなたは何をやってるかわかってるの!?」
「聞き飽きたよそんな事 ボクはやりがいのある実習をやってるだけ、お姉ちゃんはそれを手伝ってくれた」
「ぐ…」

そうだ、そのとおりだ… 私は一時の快楽に負けて心まで悪魔になってしまい、何人もの人間を襲って彼の貢物にした。
その罪は先生方に許してもらっても自分は絶対に許したくない。 だからこそ、せめて姉として弟を元の優しかった頃に戻したい。
元はあんな子ではなった。 純粋で自分のために賢者を目指そうと頑張った子だった。 こんなデタラメな実験を愉しむ悪魔ではない。
ユウをあの頃に戻す事。 それだけが私にできる、私にしかできない贖罪だ。

「私は許されない事をした だからこそ、私は与えられた力で…」
サツキは杖を握り締めて言う。 しかし、サツキを見たユウはそれを笑い飛ばした。
「まるで新しいモノを手に入れて喜ぶ子供みたいでかわいいよお姉ちゃん」
ユウは嘲笑しながらサツキの頭を撫でるように胸を揉む。 軽い冗談なのか親しみを込めた行為かはよくわからない。
「な、なにを…ひゃうっ!」
ユウはニヤリと笑うと優しく確実に胸を揉みしだく。
その揉み方はまるで熟練者のように手馴れており、大きな乳房を揉まれたサツキはつい甘い声を出した。
「い、いけませんご主人さまぁっ! はうっ! おやめくだしゃいぃ!」
乳房から送り込まれる快感につい『あの頃』の口調で鳴いた。
「ふふっ、いいよ ボクの可愛いペット」
ユウはサツキが無意識に出した口調に免じて手を離した。
そして彼女は自分の言葉に戸惑いを覚えた。
(私、今ユウの事をご主人さまって言った…)
「お姉ちゃんったら賢者の力を頂いてもボクの事をそんな風に思ってたんだ」
「ちが…あなた、なんで賢者の力の事を…」
「さ、なんでだろね♪ でも、その姿綺麗だよお姉ちゃん」
「はぐらかさないで!」

その時、サツキの心臓の音が高鳴る。
ドクン! その音はサツキの言葉を紡いだ。



「な、なにこれ…体が熱い……」
「いつになく必死になってるお姉ちゃんは可愛かったけど、もう時間がないか…」
ユウはわざとらしく残念な顔をする。 まるで彼女の突然の異変の原因を知っているそぶりである。
「これはお姉ちゃんがオマケ付きで元に戻る前の話だけど、お姉ちゃんが気付かない時ボクはあるものをお姉ちゃんの中に入れたんだ
『寄生虫』っていうヤツ ボクがこっそり作ったものなんだよ」
ユウは「残念だったね」とでも言いそうな目をして優しく言う。
「それは寄生した時、被寄生者の中の遺伝子情報とか魔力とかをコピーして記憶する特殊なヤツでね、
被寄生者が肉体を変えられた時、寄生時に得た『データ』を元に寄生時の頃のカラダに戻す事が出来るんだ
いわゆる『バックアップ』っていうヤツだよ そのくらい知ってるかな?知ってなきゃいけないけどね」
「そ、そんな…いつの間に……」
「それにしてもおかしいな… 本当だったらもっと早いはずなのに…」
「ユウ…目を覚まして…… お願い…」
サツキは上昇していく体温に苦しみながらユウを必死に説得する。
しかし、悪魔となった今のユウには必死な説得も『可愛い言葉』でしかなかった。
「ボクね、今後のために一人だけでも賢者が欲しかったんだよ あの時賢者の生徒をお姉ちゃんに捕まえさせようと思ったら、
まさかお姉ちゃんが賢者になるなんて思っても見なかったよ ホントに保険をかけて良かったね」
ユウの非情な語りにサツキは絶句する。 サツキは精一杯の力でユウを叩こうとするが、それより前に高熱で体が悲鳴を上げる。
そして彼女は高熱によってカーペットの上に倒れた。 上がり続ける体温によって五感が弱っていく。
「お姉ちゃん、従順だった頃も可愛かったけど、今のお姉ちゃんも違った意味で可愛かったよ
ありがとう、ボクのかわいいおねえちゃん そして、帰っておいでボクの従順なペット…」
ユウは今にも失神しそうなサツキの耳に向かって優しく囁く。
それがからかいだったのか、本当の思いだったのかわからないままサツキは目を閉じた。
異常な高熱で脳のどこかが止まったのである。




サツキの人間としての意識が閉ざされてもなお、彼女の肉体は熱い。
そして、その体は以前の姿に戻ろうとしていた。 いや、そのはずだった…
耳が外側に尖って白い肌は紫色に染まり、頭には黒い角が、背中からは黒い翼が生えるまでは以前と同じだった。
しかし、お尻から生えた尻尾は蛇のものではなく、悪魔の黒いものでそれが三本も同時に勢いよく生えたのだ。
いくつもの生体実験を行ってきたユウにとっても、記憶したものとは違う『元の姿』に戻るのは驚きであり、新鮮だった。
しかし変化はそれだけに終わらず、熱が引いていくと同時に目の下と体に刺青が浮かび上がっていく。
爪の色は血のような紅に変わり、唇は男も女も惹きつけるくらいに艶やかになっていく。
そして開いた目の白目だった部分は黒から赤に染まっていた。 瞳の色は前と変わらない鋭い金色なのは変わらない。
暖かく白い衣服は妖艶な黒と紫のツートンカラーに染まっていった。

「ご主人さま…会いたかった……」
もう一度悪魔になったサツキは主のユウに飛びついてぎゅっと抱きしめる。
「とっても怖かったです……あの人たちにあんな事されて…私が私でなくなるようで怖かった……」
サツキはあの儀式の事を思い出して泣き出しそうになる。
「そして私はあんな奴らにくだらない事を吹き込まれてご主人さまを…」
サツキがそこまで言うとユウは彼女の頭をゆっくりと撫でた。
「辛かったんだね…おかえり、ボクのパートナー……」
「あぁ…ご主人さまぁ……」
ここから先はもう何も言わなかった。 サツキは主の小さな温もりに一層甘えて、彼の首筋を青く長い舌でペロペロとなめる。 
そう、あんなことをしたのは全てあいつらに操られてたからだ… 全てはあの力がいけなかったのだ…
サツキはそんな呪詛を心の中で唱えた。



「お姉ちゃん、あいつらに操られた時に賢者の力を貰ったよね?」
「はい、あいつらはその力で私を操りました… こんな力私はいらない」
「だったらその力をボクのために使って」
「え?」
「これからの実験はボクだけじゃ限界なんだ でも賢者の力を得たお姉ちゃんの協力があればもっと上手くいくんだよ」
「私の中の力でご主人さまのお役に立てる… はぁ…この力はご主人さまのために与えられたんですね」
「うん、そうだよ」
「ああっ…この力、ご主人さまのために使う事を誓います!」
ユウの優しい言葉に勇気付けられたサツキは胸を張ってユウに誓った。
「じゃあ、今からちょっとした実験をしようか♪」
ユウは壁にある黒いスイッチを押す。 すると床から手術台がせり出してくる。
その手術台の上には学校で知らないものはいないと言われていた購買部のリエルが両手両足を縛られ、口には謎の烙印が付いた口枷をはめられていた。
「あまりにもうるさかったから声が出ない口枷をつけてたんだ 今日はお姉ちゃん一人で、お姉ちゃんの好きな姿にしてごらん」
「え?いいんですか?」
「うん、いつも材料を運んだりしてくれたお礼 新しい力を得たお姉ちゃんならできるよ」
「はぁぁっ…こんな私に感謝のお礼とありがたきお言葉をお与えいただきりがとうございます」
サツキはユウに感謝すると、早速彼女は服を脱いで三つの尻尾を伸ばす。
「さぁ、手術をしてあげる 人間のヤツなんかとは全く違うから期待してみてね」
口枷をされて声を出せないリエルの目にはサツキの微笑が怖ろしかった。
しかしそんな悪魔に対する感情も手術で変えられるだろう。 異形となる体と同時に…
そして刷り込まれるのだ。 ユウの実験は崇高なものだと…
「大丈夫よ 私は力を持っているのだから」


サツキが賢者の力を利用した力でリエルを改造する光景を目にしてユウは歪に微笑む。
(そうだよ、お姉ちゃん 賢者の力はボクにとって必要なもの この学校全体を実験台にするために…
ミランダ先生には、お姉ちゃんがお世話になったからお礼にアロエちゃんを改造してやろう
ボク以外の悪魔も実験材料でしかないしね 楽しみだよ…)
ユウはこれからの予定を考えて舌なめずりした。 彼の目には何が映っているのか、それは彼以外にはわかることはない。





ご主人さまがやっている事は今は私がする。
ご主人さまは人間共に変えられた私の体を元に戻して、私を赦してくれた。
それに感謝して私はこの力をご主人さまのために使う。
ご主人さまが笑って見てくれる。 そう、私は幸福な悪魔。
ご主人さまに信頼されて、支えになってるパートナー
賢者の力はご主人さまのための力。 それ以外に正しい使い方などない。
だけどこの子は私を見て怖がってる。
そうだ、まずは悪魔に対する恐怖心を祓う事が先だよね。
私の力で怖いのなくしてあげるから安心して。
気持ちを楽にして、そして私に身も心も委ねてごらん。
そしたら私が頑張って気持ちよくしてあげるからね…


【完】

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