言えばいいってもんじゃない

魔王城の地下にある牢獄。
そこで15、16歳くらいの長髪をした薄褐色の可愛らしい女盗賊は手足を縛られ、全裸にされて拘束されていた。
しかも股の秘部はサキュバスの淫技によって愛液でグチョグチョになっている。
彼女は設置されていた罠を掻い潜って魔王城に潜入し、魔王を暗殺しようとしたが狙っていた魔王により返り討ちに遭う。
追い詰められた彼女は『最後の手段』を使って魔王達の動きを止めたが、援軍のサキュバスによって失敗。
隠して彼女はサキュバスによってこの牢獄に閉じ込められ、サキュバスの手厚い施し(陵辱)を受けられた後、手足を縛られて現在に至るのであった。

「ちくしょう…なんでアタイがこんな事になるのさ……」
女盗賊はうめくように呟く。 ちょっとした油断と過信がこのような事態を招いた事を彼女は認めたくなかった。
くやしい…
そんな事を思っている矢先、女盗賊が閉じ込められている部屋に二人の魔族が来た。 この城の支配者である魔王と全身鎧の魔王の頼れる右腕、黒騎士。
ところが魔王はウィルスに感染しないための真っ白な布に、顔の部分にはガスマスクが取り付けられている防護服を身に纏っていた。
ちなみに黒騎士は『先』を栓で塞いでいる壷を右手に持っている。 そして左手で顔を半分抑えていた。
「魔王様…いくらなんでもその格好はあんまりなのでは……」
「少し黙ってもらおうか黒騎士君、あの『あらゆる意味での』クズに触れると『あの』クズが俺にも移ってしまう」
「あなたの考えている事は分かりましたから、わざとらしくキャラを変えないでください」
「しかたがなかろう、この女は過ちを犯した それだけだ」
「………」
言う事を聞かない魔王に呆れ、黒騎士はため息をついた。 いくらあの人間がありとあらゆる意味で下等だからと言っても防護服は無いだろう…と思いながら



「よくもまあ直々にこんな所に来るね魔王さん 直に処刑に来たのかい、それとも笑いに来たのかい? だったらさっさと殺せよ!」
「そうはいかんぞ美しき盗賊の乙女よ、お前のその死をも恐れぬ勇敢な心は素晴らしい」
女盗賊の挑発をあっさりと返し、 彼女を 棒読み で称える。
(ああ…この人、よっぽどこの人の事を恨んでるんだなぁ…しかたないよなぁ……)
黒騎士は少量の汗と涙を流しながら思う。 防護服を着た魔王が棒読みで自分を暗殺しようとした女を称える。そんな誰も予想できない馬鹿馬鹿しい事が普通にされているのだ。
だが、黒騎士は魔王の気持ちを少しだけ理解していた。 まあ、少しだけだが。
「生きるために知恵を絞る心、どんなものにも恐れを知らない逞しい勇気、そしてどんな判断でもすぐに動ける細く美しい肉体 どれをとっても殺すには勿体ない…」
(間違ってはいないとは思うが…やっぱり棒読みだな……魔王様も変に演技しなくてもいいのに、魔王なんだから)
かなり無理をしているのか、動作がぎこちない状態で棒読みの心なき賞賛を続ける魔王を見て、黒騎士は思った。
「ふん、だからなんだい?見逃してくれる? だったらアタイは感謝だけするよ」
「確かに殺すのは勿体ないと言った だからと言ってその美しさで何でも許されるわけではないのだ」
「だから? 拷問?尋問?それとも、この美しい体をリョージョクするのかぁい?」
最後の所だけ腰をくねらせて女盗賊は小悪魔的な笑みを浮かべていやらしく挑発する。 この色仕掛けに数々の人間の男は騙された。
しかもサキュバスに陵辱されたせいか、体はあちこちについている愛液や唾液でよりいやらしくなっていた。
「うむ、全部違う それと媚びてもお前の都合のいいようにはしないからな」
しかし魔王は色仕掛けに惑わされず、というか、女盗賊の色気戦法をあっさりとスルーする。
「ちょっ!? せっかくのセクシーを…」
「TA WA KEが…何度も言うが、どこかの『なんとか月』とか『丸二つ』みたいに可愛ければ何をしても許されるなどと思うな!!」
魔王はちょっとかっこよく女盗賊を叱咤する。 しかし、防護服を着ていてはかっこが付くわけないのだが…
「チッ! せっかくのお色気を無視しやがった…」
(だけど、この牢獄を出て、アタイは生き残ってやる 何としても…)
女盗賊は歯を食い縛り、抵抗の意思を固める。
たとえどんな状態になっても態度だけは変えない。今出来る抵抗は最後まで『普段どおり』を続けるだけだ。
それが動きを封じられた彼女の必死の抵抗であった。

そういえばいつの間にか、魔王が棒読みじゃなくなっていた。



「それじゃあ、本題に戻るとしよう お前に与える刑罰は死刑よりも割と軽いものに決定した」
「ふぅん、あれだけ怒っておいて刑は軽いものなんて魔王も寛大だねぇ」
「あぁ、そうだな 魔 族 的 に は 全 く 持 っ て 軽 い 刑 罰 だな」
「なんなんだい?その含みもののある言い方は」
「今から出すものを見せてやったら教えてやる 黒騎士、アレを」
女盗賊をチラリと見て魔王は笑う。 彼の意向を感じ取った黒騎士は自分が手に持っていた壷を魔王に渡した。
言うのを忘れていたが、それが今回の鍵だったりする。
「これはな、ある知り合いが「イラネ」と言って俺に押し付けた『スライムの種』と言う奴だ」
「何だって!? それは上級魔族でもあまり持ってないという売価一千万グゥレイトォ相当のレアアイテムじゃないか!?」
「へぇ…知らんかった」
女盗賊の驚く表情を見て魔王は栓を抜いてしげしげとその壷の中を覗き込んだ。 そしてまた栓を入れる。
(元勇者のリリスにこれを見せたら驚いてたな 効果しか教えてもらえなかったが、仕方がない)
栓を壷に押し込みながら、魔王は愛娘の事を思い出したが、魔王は意識をここに戻した。
「この『スライムの種』の使用法はヒトの口の中に入れるだけだ そしてそれを口に入れた者の肉体はスライムとなるのだ!!」
「な、なんだって!?」
「さらに体に入れた者の意識と人格は全て書き換えられる どうだ?死ぬよりはマシだろう? ま、一定の人間には死よりも重い罰とは思ってたけどな」
刑罰の内容を知り、女盗賊は戸惑う。 まさか魔物にされるなど思ってはいなかったのだ。
「嫌だ…いくらなんでもバケモノになるのは御免だよ!!死んだ方がマシだ!!」
「ははは! 今まで強がっていた女盗賊もスライムにされそうになるとこのザマか?」
「人間のアタイがあんなバケモノと同等になるのかい? 人間だったら誰だって嫌さ!!」
「だまれ! どうせお前は人間の面汚し恥さらし、所詮はクズ肉よ そんな奴が人間の名を語るのもおこがましいわ!!
お前なんかこの魔王様に記憶も人格も違う魔物にされた方が世界の役に立てるのだ!!」
魔王は女盗賊を見下して言った。 次第に女盗賊の顔色は冷めていき、彼女は恐怖に泣き崩れる
「いやだ…いやだよぉ!! スライムにするのは御免だ、お願いだよ、アタイを赦してくれ!!」
「誰が聞くか!! 黒騎士、コイツの口を開けさせろ!」
「は、ハイ!」
黒騎士は女盗賊の後ろに回りこみ、彼女の口を開けさせる。
しかし、彼女はしぶとく抵抗するので、黒騎士は彼女にある魔法をかけた。



『ライトロル』闇属性の魔法。 この魔法を相手にかけるとその相手の肉体を操れるの魔法だ。
しかしこのライトロル、体を操れても意識や精神までは操れない下級魔法だったりする。
といってもこの手の操作型魔法は大量の魔力を消費するので、ライトロルは比較的使いやすい魔法である。
黒騎士は女盗賊にこの魔法をかけたのだ。
「考えたな黒騎士 さすがは俺の頼れる右腕」
「ありがとうございます でもその前に早く種を口に入れてくださいよ」
「分かっているさ」
「あ…あが、あがへぇ…(あぁ…やめて、やめてぇ……)」
自己の肉体最大の危機に女盗賊は口を開かれながらも許しを乞う。 しかし、魔王と黒騎士は非常にも彼女の意思を無視して『処刑』を開始した。
栓を抜いてドロドロした青い粘液の塊を取り出す。 これがスライムの種である。 スライムの種は微妙にピクピクと蠢いており、その動きは女盗賊を恐怖させる。
しかし、彼女にはどうする事もできないのだ。 彼女の口は開けっぱなしのままで、自分の口を閉じる事などできはしなかった。
魔王は女盗賊の口にスライムの種を流し込むように注いでいく。 女盗賊は涙を流しながらそれを受け入れるしかない。
そして、手にとって流した分と、壷にあった分と手についた分等、スライムの種の粘液を全て女盗賊の口に流し終えると、魔王による女盗賊の『処刑』は終了した。
黒騎士は女盗賊にかけたライトロルを解除して両手両脚を縛っていた鎖を解除した。 とりあえず黒騎士は彼女の顔を覗く。すると彼女は泣いていた。
どうもプライドをズタズタにしてしまったようだ。 まあ、そんな事で罪悪感を感じるほど黒騎士は優しくも甘くもない。
「ふぅ… できればライトロルなんて使いたくなかったな……」
黒騎士は魔王に壷を渡されて一息つく。 あの魔法は使いやすいものの使用中は結構魔力を消費するのである。
「まあまあ、ぼやかないぼやかない」
魔王は笑って黒騎士の肩をポンと叩いた。 ややニヤリと笑っていたが。
そんな魔王を女盗賊はキッと睨みつける。 言葉が出ないのか声を出さずに涙を流しながらだった。
しかし、その瞬間『それ』が大きく高鳴った。

ドクン



「!?」
大きな心臓の音と共に彼女の肉体に変化が訪れ始めた。
胃袋がひんやりとする。 そのひんやりとした感覚は次第に広がっていき、腸や心臓までもが冷たくなっていく。
「な、なにこれ…つめた……」
全ての内蔵を支配した冷たい感覚は、スライムの種の因子が引き起こしているものであった。
その因子は血流に乗って女盗賊の色々な肉体部分に感染していく。
筋肉、皮膚、血管、脳、眼球、骨、そして細胞など、因子は彼女の体内を駆け巡り、彼女の体内の『パーツ』をスライム状に溶かして一体化させる。
ひんやりとした感覚が右手にも起き、女盗賊は自分の右手を見た。
「ひっ!!」
驚いたのは無理もない。 右手が爪までも巻き込んで、透き通るような青色に変色し始めていたのだ。
「ひあっ!!」
脳髄にまで冷たい感覚が走る。
因子が脳髄を経由して脳にまで進入していく。 すると女盗賊の頭の中がひんやりとしていった。
「あ…いやぁ……あたまがひんやりして……」
脳みその中がスライムに犯されていくのを女盗賊は感じる。
脳は神経的に抵抗したが、たったの十秒でスライムが生み出す『何か』に犯されて抵抗を失った。
すると女盗賊の顔はタガが外れたように口を半開きにして涎をだらしなく垂らし、目に涙を流す。
「きもちいい、きもちいいのぉ! もっとひんやりして!!ドロドロいいのぉ!!」
目はあらぬ方向を向き、彼女は蕩けるような声で叫んだ。
種の因子が生み出したもの、それは快楽だった。 因子が放った快楽に脳は侵略を許してしまったのである。
「あっ、あっ、ああ…あたまのなかがひんやりぃ……」
そして脳も解けてスライムと一体になった。 瞳の色は体の色とは逆の真紅の色に染まる
女盗賊の体全体が、髪が半透明の青色に変色していく。 舌も歯も喉も体全体の毛も青く染まりスライム状に解けていった。



いきなり女盗賊の体が、一瞬の内に人間の体形を崩し、大きな水溜りを作り始める。
「ま、魔王様 女盗賊が解け…」
「冷静になりなさいな黒騎士」
珍しくあたふたと驚く黒騎士を、魔王が黒騎士の肩をぽんと叩いて諭す。
すると水溜りになったスライムがいきなりせり上がり、人間の形を形成する。
「おお…こんな事は一度も見た事ありません」
「まあ、無理もない 実は俺もそうだ」
人型に変形する女盗賊スライムを見て魔王と黒騎士はある意味での感動を覚えた。 会話は淡々としていたけれど。
変形を終えた女盗賊スライムは魔王に礼をとっていた。 胸は人間の時よりも大きくなっており、スタイルも抜群になっている。
「スライムになった気分はどうかな?」
「はい、最高の気分ですぅ… このプルプルしてひんやりした感覚を思い出す、人間であることを威張っていた自分が愚かに思えます」
「お前は自分の体を自在に変える事ができるシャドウスライムになった 人や魔物に擬態する事だってできるし、若さや美しさ可愛さも永遠に制御できるのだ」
「あぁ…魔王様、そんな素晴らしい魔物にしていただきありがとうございますぅ…そして、あの時の無礼をお許しください! 魔王様の必要あれば私何でもします!!」
女盗賊改めシャドウスライムは泣きながら魔王に懇願する。 先ほどまでのしぶとい勇ましさは何処へやら、その瞳は曇りが全くない程に可愛くなっていた。
魔物になる前は生意気だったのに、魔物になった途端素直な子になったシャドウスライムの目を見て魔王はふっと笑った。
彼女の目を見ていると怒りも吹き飛んでいた。
「ふむ、そこまで言うなら許してやらんでもない だが、お前を必要としている者は俺達ではない」
「誰が…誰が私を必要としてくれるのでありますか!? 教えてください!」
「まあまあ、落ち着け その人はスライムの種を作った俺の知り合いだよ」
「だ、誰ですか?」
「俺の知り合いであるクィーンスライムだ 必要としているといってもお前がやるべきことは贖罪だ それを忘れるなよ」
「ハイ!ありがとうございます!! 魔王様に授けられた新しい命、クィーンスライム様のために使わせていただきます!!」
魔王はシャドウスライムにびっと指差す。
シャドウスライムはその言葉に安心感を抱いた。
彼女は自分のした事に今は深い罪悪感を持っており、罪を償いたい思いで一心だったからだ。

かくしてシャドウスライムは魔王の知り合いであるクィーンスライムが住む『蒼い砦』で『贖罪』として働く事になった。
数日後、シャドウスライムはスライム軍団のスパイとして、そして過去の贖罪のためその手腕を振るっているという。
彼女の主な仕事は『敵』の内部にあらゆる手段を使って進入し、いろいろな意味でかき回す事だそうだ。
シャドウスライムを『蒼い砦』に送った魔王はクィーンスライムの部下からえらく褒められましたとさ。


おしまい

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