闇の衣

「ギャアアアアアア!!!」
 私の放った風の魔法を受けて、目の前の女性悪魔はバラバラになった。
 悪魔の連れていたモンスターも悪魔が死んだのを見て逃げ出し、とりあえず戦闘が終わった。

 私の名前はエレン。
 修行の為に一人で旅をしている僧侶です。
 僧侶の一人旅、なんていうと心配する人も多いのですが、風の魔法を始めとして、聖なる魔法や、運次第で相手を即死させる魔法なんかも使えますし、一通りの格闘術の心得もあります。
 村の近くで悪さをする魔物を討伐して、旅費を稼いだりもしているくらいです。
 神の教えに背く悪魔を神の元へと送るのも私の仕事で、修行の一環なのです。

「これは・・・・・・?」
 私が悪魔やモンスターの死体を始末しながら落し物などを探っていると、悪魔の落とした物らしき袋が目に留まりました。
 手にとって開けてみると、中には黒い服のような物が。
 さっき倒した悪魔は裸でしたが、悪魔やモンスターが人間から盗んだ衣服や道具を持っているのはよくある事です。
 広げてみると、それはシャツでした。模様もないシンプルな長袖のシャツで、汚れ一つない綺麗なものです。
「悪魔にしては、趣味がいいじゃない」
 何となくそれが気に入った私は、自分の荷物鞄にしまいました。

 その日の晩、水浴びをして宿に戻った私は、あの黒いシャツを手にしました。
「いい手触り・・・気持ちいいわ」
 黒く艶やかな生地は、極上の絹のような手触りでとても心地良い物でした。
「・・・・・・ちょっと着てみようかしら」
 着ていた服を脱ぎ、シャツに体を通します。
「んんっ、キツいわ・・・・・・」
 生地がぴちぴちと私の肌に貼り付きます。
 着終わると、私の上半身は黒いシャツに包まれました。
「あぅん・・・凄く気持ちイイわ、これ・・・・・・」
 シャツはとてもキツいけれど苦しくはなく、むしろい着心地でした。
 ぴっちりと貼り付いた生地には、私の体のラインがそっくり出てしまって裸その物のような姿でした。
 何となく思い至って、精神を統一してみると、いつもの数倍にも魔力が高まっているのを感じました。
「すごい・・・凄い! もしかしてこれ魔法の品なのかしら?」
 悪魔なんかが魔法のアイテムを持っているとはよく聞く話ですが、実物を見たのは初めてです。
 とても良い物を手に入れたと、私は神に感謝し、今晩はこれを着たまま寝ました。


 次の日の晩、私はシャツに頬擦りをしました。
 今日も村人に頼まれて近くの洞窟に魔物退治に行ったのですが、昨晩に感じた魔力の高まりを証明するように、今日の魔法は一段と冴えていました。
「本当に魔法の品なんだわ、これ!」
 すっかりシャツの着心地にやみつきになった私は、いそいそとシャツを着ました。
 すると・・・・・・
「ん・・・・・・あれ? なにこれ、なんか・・・・・・」
 シャツがざわざわと騒ぎ出すような感触と共に、私の体に強烈な快楽が流れ込んできました。
「くひん!? あ、な・・・・・・何これ・・・・・・!?」
 シャツが黒い油のようにドロドロと溶け出し、私の手や腰を覆っていきます。
「あー、やぁ、何これぇ・・・・・・」
 シャツの溶けた液体が肌に触れるごとに、熱くて痺れるような感触が広がっていきます。
 液体は私のお尻や下腹部を覆い、ついにはあ、アソコの穴にまで
「くひぃっ!?」
 そこで私の意識が途切れました・・・・・・


「うわぁー!!」
「きゃーっ!!」
 誰かの、沢山の悲鳴が聞こえてきて、私は目を覚ましました。
「あれ・・・・・・? え? 何これ・・・・・・?」
 私の周りにあったもの。
 それは、燃える民家とバラバラになった村人の死体でした・・・・・・
「悪魔めーっ!!」
 え、悪魔!? どこ!?
 声のしたほうを振り返ると、そこには槍を構えた衛兵がいました。
「え!?」
 怯えた目で立っている衛兵の槍は、間違いようもなく私を向いていました。
「ちょ、ちょっと!?」
 慌てる私を無視し、衛兵が私に突っ込んできました。
「悪魔を殺せー!」
 悪魔って私?
 私、殺され・・・・・・
「い、イアヤァー!!」
「うぐっ!?」
「ぎゃっ!?」
 私が反射的に手を振ると風が起こり、衛兵達がバラバラになりました。
「何が・・・・・・起こってるの?」
 意味がわからない。状況がまったくわからない。
 衛兵を殺したのは私・・・・・・?
 その時、井戸が私の目に留まりました。
 私はふらふらと井戸に歩み寄り、桶に張ってある水に映る私の姿を見ました。
「これが・・・私!?」
 水面に移る私は、全身を黒い物に覆われていました。
 私の肌は一切露出しておらず、唯一黒い物から露出している両目は真っ赤に光っていました。
 それはまるで、あの時私が殺した悪魔のような姿・・・・・・
 悪魔!
 そうだ、あの悪魔の落とした黒いシャツが、私の体を覆っているのだ。
 あれは魔法の品なんかではない、悪魔の品、闇の品なのだ。
 このままでは私は本当に悪魔になってしまうかもしれない。
 何とかしなければ・・・・・・
「悪魔の衣・・・・・・そうだ」
 そこで私はある事を思いついてある場所へ向かいました。



「ここなら・・・・・・」
 村で唯一の教会。
 ここになら何かあるかもしれない。
 中に入った私の目に、聖水の瓶が留まりました。
 瓶を手に取り、左手に近づけます。
「これでなんとか・・・・・・あぐぅ!?」
 聖水のかかった服から、凄い勢いで煙が噴出し、同時に私の体を激痛が襲いました。
「あぁー! 痛い、痛いー!!」
 これまでに感じた事のない激痛。剣で斬られた時よりも、魔法で焼かれたときよりも激しい痛みに、私は床を転げ回りながら悶えました。
「ひぃー! やだぁ、痛いよぉ・・・・・・!」
 ボロボロと涙を零す私。これ以上体に聖水をかけたら痛みで死んでしまいそうだ。
 その時・・・・・・
「ひぃ、あ、あれ?」
 聖水をかけて溶けた部分が、元に戻っていく。
 それと同時に、心地良い快感が私の体を襲う痛みを癒してくれた。
「あぁ、キモチイイ・・・・・・・・」
 落ち着いて考えると、体を覆うこの悪魔の服はとても気持ちがいいのだ。
 それこそ、自分が悪魔になってしまうとか、そんな事はどうでもいいとか思ってしまうほどに。
 なんとなく、アソコに触ってみる。
「あひん!?」
 とっても衝撃的な気持ちよさが、私の頭と体を包み込む。
 服全体が、私の体を優しく愛撫してくれるのだ。
 なんだってあんな苦痛を感じてまでこの服を脱がなくてはならないのだ。
 この服は、こんなに気持ちいいのに。
 だんだん私の頭が蕩けていく・・・・・・
「アハ、アァ・・・・・・・もうワタヒィ・・・・・・・僧侶じゃなくってもイヒィ・・・・・・」
 聖なる僧侶だったはずの私は聖なる教会で・・・・・・悪魔の姿で淫らに行き狂った・・・・・・


 教会の中が熱くなってきた。
 村人が火を放ったのだろう。
 悪魔の逃げ込んだ、この教会に。
 だけど私は火なんてものともしない。
 悠々と怯える村人達の前に歩みだす。
 私の背中には黒く大きな蝙蝠の羽が生えて、私の頭には羊のような角が生えた。
 美しく立派な姿の悪魔となった私の心は、この上ない幸福に満たされていた。
 とても良い体を手に入れたと、私は魔王に感謝し・・・・・・村人達を生贄にささげる事にしました。


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