DQ3SS


勇者『ユウ』  性格『がんばりや』
獣戦士『トウカ』性格『まもの』
魔神官『プリス』性格『まもの』
魔法使い『マホ』性格『あたまでっかち』

3『マホ:あくまのみずぎ』

ここは、リムルダールよりはるか南の海の上。
「これが…虹のしずく…」
ユウは、聖なるほこらで手に入れた『虹のしずく』を見て、そのあまりの美しさに息を呑んだ。
「これがあれば…、ようやっとあのゾーマの城にいけることが出来るのね」
「いいえ、そう考えるのはまだ早計だわ」
ぎゅっと拳を握り締めるユウに、パーティーの知恵袋であるマホが横槍を入れてきた。
「何言ってるアルか、マホ。これがあれば虹の橋がかかってゾーマの城に行ける。って言っていたじゃないアルか」
「そんな御伽噺みたいなことそう簡単に信用できるわけないわ。実際に確かめてみないと何ともいえない」
理論家で通るマホは徹底した現実主義者であった。まずは理論、そして実践を旨としており、伝聞や
憶測を全く信用しない、ある意味『つまらない』性格だった。
外見にも殆ど気を配らず、化粧っ気は全く無し、服はよれよれ、眼鏡をかけた表情はいつも険しく
決して悪い容姿ではないのだが、その雰囲気からか近寄ってくる男は皆無といってよかった。
「お前、相変わらずつまらない奴アルな」
「あんたみたいな修行バカの脳筋に言われたくはないわ」
「…………、おい、今なんて言ったアルか?!」
「あら?悪いのは頭だけではなく耳もかしら?」
畳み掛けるようにマホにバカにされ、トウカのこめかみにビキビキと血管が走った。言うまでもないが
この二人、相当に仲が悪い。
「てめえいい度胸しているアル!今ここで三枚に下ろしてやるからありがたく思うアル!!」
トウカは最近手に入れた見るからに強力そうな篭手を振りかざしてマホに向かい合った。マホのほうも
ただでさえ険しい顔を更に歪め、手に持った賢者の杖をトウカに向ける。
「ち、ちょっと二人とも………、やめて……」
相当に険悪な雰囲気におろおろするユウ。何とか止めようとするが二人とも最早聞く耳をもたない。
どうしていいかわからずまごまごするユウの横をするりと出てきたのは、パーティーのムードメーカー
のプリスだった。プリスは対峙する二人の前に割って出て、手を合わせて懇願してきた。
「ねえ、お願いですから二人ともやめてください。こんな所で二人がけんかしても何にもならないじゃないですかぁ〜」
目をウルウルさせてお願いするプリスに、トウカもマホも何か毒気を抜かれたような感じになり、
どちらともなく攻撃の姿勢を解いた。
「適わないあるな、プリスには」
「まあ、ここはあなたに免じて辛抱するとしましょう」
「うふふ、ありがとうございます」
「………」
何とかパーティー崩壊の危機を脱出することが出来てユウは安堵したが、その反面何も出来なかった
自分にちょっとした自己嫌悪も感じていた。
(やっぱ私…、一人じゃ何も出来ないのかな…)
少し鬱な感じになっていたユウだが、それを吹き飛ばすようにエンカウント発生!


『キングマーマン×3が現れた!』
『コマンド▼』

「みんな、敵よ!!」
ユウの号令のもと、各自が戦闘態勢をとった!
そして、2ターン後

『キングマーマンを倒した!』
テロリロリ〜ン

まあ、流石にゾーマの城に乗り込もうとしているパーティーにとってキングマーマンは敵ではない。
甲板に横たわったキングマーマンの死体を海に放り投げようとトウカが持ち上げたとき、
「あれっ?こいつ宝箱持っているアルぞ!」
トウカがキングマーマンの懐から取り出したもの。それは海水に濡れた小さな宝箱だった。
「へえ。キングマーマンから宝箱を取るのは初めてだったよね。何が入ってる?」
ユウが興味ありげに覗き込んでくるなか、もちろん鍵の開け方など知らないトウカが宝箱をぶち壊して
取り出したものは、一着の薄手の水着だった。
「…………水着?」
あっけに取られたユウがそれを眺めていると、マホが横から口を挟んできた。
「これは、『魔法のビキニ』と呼ばれる防具ね。一見生地が薄くて防御力などなさそうに見えるけれど
実際はかなりの高位魔力により守護されていて、物理攻撃だけでなく魔法への耐性もかなり高いと聴くわ」
聞いてないこともぺらぺらと話すマホに、ユウはあっけにとられた。
「へぇ………。そんな凄い防具なんですか」
「フン、薀蓄と悪口に回る口は達者なようアルな」
トウカの悪口にマホはじろりと視線を向けるが、特にそれ以上は何もせず再び視線を外した。
「で、どうするの?これは女性なら誰でも装備できるけど、だれか使う?」
マホは、ユウにチラリと視線を移す。
「いえ。私もう光の鎧持っていますし…」
「そうよね。それ以上の防具なんてありえないわね」
次にプリスに
「わ、私そんな恥ずかしい水着着れません〜」
「まあ、あなたには雰囲気があわなすぎるわよね」
最後にトウカ
「あなたみたいな貧弱な体じゃビキニを支えきれないわね」
「ちょっと待つアル!意見も何もさせないアルか!!」
なんと答えようかと思案していたトウカの斜め上を行くマホの言葉に、流石にトウカは怒った。
「じゃあ、着る?」
じろりとマホに睨まれ、トウカはグッとたじろいだ。
「………、無理、アル……」
現実を指摘されてしまい、トウカはガクッとうなだれてしまった。
「しょうがないわね。じゃあこれは袋の中へ……」
「マホさんは着ないんですか?」


袋の中へ水着を入れようとするマホの手がぴたりと止まった。ゆっくりと後ろを振り返るとプリスが
ニコニコしながらマホを見ている。
「………、プリス。あなた今なんて言ったの?」
「え、だってマホさんってかなりスタイルいいし、その水着似合うと思うんですけど〜〜」
プリスの言葉にマホの顔が引きつる。
「な、な、何言ってるのプリス!わ、わ、私がこんなもの、き、き、着るわけないじゃない!!」
顔を真っ赤にして否定するマホに、プリスは不思議そうな表情を向けた。
「??どうしてですか?
マホさんだって可愛い女の子じゃないですか。自分を綺麗に見せるのはいいことだと思いますが」
「い、いいのよ!私はそんな事気にしてもいないんだから!
はいはい、これはもうしまうの!どうせ誰も使わないんだから!!」
自分でも笑ってしまうほどむきになって、マホは袋の中に魔法のビキニを放り込むと力いっぱい
袋の紐を引っ張って口を閉じてしまった。
普段冷静沈着な彼女からは想像も出来ないような態度に、他の三人はあんぐりと口を開けるしかなかった。

聖なるほこらへの遠征で疲れた一行は、最近拠点にしているリムルダールに戻り休みを取ることにした。
いよいよ明日はゾーマの住む魔城へ乗り込むことになる。十分な休息を取らなければならない。
だが、個室のベッドに腰を落ち着けたマホは、先程のプリスの言葉が耳に残って離れず悶々としていた。

「マホさんだって可愛い女の子じゃないですか。自分を綺麗に見せるのはいいことだと思いますが」

常に自分の趣味、研究のみに没頭し周りを顧みることがなかったマホに、『他人に見られる』という
ことを意識したことはなかった。周りはまわり、自分は自分。そう考えてきた。
「………」
徐(おもむろ)に立ち上がったマホは、部屋の壁に下げられている鏡に歩を進めた。鏡に映しこまれた
自分の顔をジッと見つめてみる。
「………、可愛いか?私」
野暮ったい眼鏡をかけ、人を威圧するような切れ長の釣り目。常に固く結ばれた唇。手入れもせず
荒れ放題の髪。全く化粧というものをした気配がない肌。
確かに顔そのものの素材は、美人といえる風体をなしているのかもしれない。
しかし自分には、ひたむきさが滲み出ているユウや優しい雰囲気に満ち溢れるプリスのような人に好か
れる土台というか素養が全くない。
それ故、自身が人に好かれる、などということは考えたこともなかった。
だからこそ、プリスに可愛いといわれたことはマホの心に新鮮な風を送り込んだ。
「……………」
パーティーの金銭、所有物の管理を任されている(一番しっかりしているから)マホの部屋には財布と
アイテム袋が置かれている。
マホはその袋をしばらくジッと見た後…、意を決したかのような表情で袋の紐を開いた。

マホの手元に置かれているもの。それは先程無造作に突っ込んだ魔法のビキニだった。
薄黄色をした生地に細かい糸束が添えられている。胸と胸の間には赤い宝石珊瑚がアクセントとして
添えられており、水着全体の雰囲気を引き締めている。
深く深く深呼吸をしたマホは、するすると服を脱ぎ始めた。厚手のローブから現れた裸身はプリスの
言うように思いのほか引き締まっている。
完全に服を脱いだマホは、おずおずと水着に手を伸ばし、自身へとつけ始めた。胸や腰に当たる生地が、
ひやりと冷えていてぴたりと肌に密着し、なかなか付け心地がいい。
(あ、これ……、結構いいかもしれない…)
最後に首に当てる紐をきゅっと締め、マホは魔法のビキニを着た自分を鏡へと映しこんだ。
「……………」
そこに見えた姿は、顔形こそ変わらないものの先程までのマホとは別人だった。
服で隠されていた胸と腰は、出るところは出て締まるところは締まっており非常に扇情的な印象を与える。
必要以上に開かれた露出は、見る人間の歩みを止めずに入られないだろう。
もちろん、それ全体を引き締める魔法のビキニの視覚的効果もあるのだろうが、主体となるのは間違いなく
マホ自身の持つ体の魅力の力である。
「これが…、私……」
当人のマホですら息を飲んだ。自分がこれほど魅惑的な体をしているとは意識したこともなかった。
鏡に映った自分をしげしげと眺めると、自分でも惚れ惚れしてくる。
ついつい、その場で腰を捻ったり回転したり両脇を上げてみたりと、まるでモデルのようなポーズを
その場で取ってみた。こんなことをするなんて今まで思っても見なかったこともあるのか、マホの心は
どんどんと高揚していった。
「♪〜〜〜〜〜、……………」
が、ふと冷静になって鏡を見ると、果たして自分がどれほどバカバカしい行為に及んでいるかという
ことを再認識してしまった。
別に誰かが見るわけでもない。誰かに見られているわけでもない。誰かに見せるわけでもない。
「………バカバカしい」
なんか急に心が萎えてしまったマホは、水着を外そうと肩紐に手をかけた。
が、


デンデロデンデロデンデロデンデロデン デン
『のろいがかかっていてはずせない!』

どこかで聞いたようなおなじみの音楽が流れた気がした。
「うそっ!はずれない?!」
肩紐はがっちりと硬く食い込み、外そうとしてもびくとも動かない。いや、むしろグイグイとマホの
肌に食い込んでくるようにも感じる。
そして、異様なのは紐だけではなかった。
それまで淡い薄黄色をしていた生地は、じわじわと染み出すように紫色に変色し、紅珊瑚の玉は毒々
しい赤紫色に変化している。
「クッ、このぉっ……!」
吸い付くように肌に密着していた生地は、もはや吸い付くという次元を超え完全に癒着していた。
いや、それどころではなく癒着した生地の紫色が、じわじわとマホの肌に広がり始めている。
「まさかこれ………、呪いのアイテム?!」
マホは自分の迂闊さを呪った。自分の知識を過信して呪いのアイテムを識別しそこない、あろうことか
装備してしまったことに。
「こ、こんなことじゃ…、トウカをバカって笑えない、わね……」
顔に苦笑を浮かべたマホは、すぐさま破邪呪文のシャナクを唱えようとした。この呪文さえあれば
たとえ呪いアイテムを装備したとしてもたちどころに粉々に消し去ることが出来る。

しかし、その時マホの体に紫色の霧が立ち込めた。

『マホはじゅもんをふうじられてしまった!』

「     …!」
マホが唱えようとしたシャナクの呪文が喉元で急にかき消された。
「クスクス、マホさん、何をしようとしていたんですか?」
突然響いた声に驚いたマホが後ろを振り返ると、そこには手に魔封じの杖を持ったプリスがニコニコ
しながら立っていた。
「プ、プリス?!何をしているの…!私の魔法を封じるなんて…!」
「あ、マホさん。あの水着つけたんですね。ほら、やっぱり凄く似合っているじゃないですか」
状況をわかっているのか分かっていないのか、プリスは魔封じの杖をぷらぷらとマホの前にちらつかせている。
「冗談言わないで!私、呪いのアイテムをつけちゃったのよ!はやく外さないと、どんなことになるか…」
軽口を叩くプリスに、マホは苛立ちを隠せず大声で怒鳴った。が、プリスは意にも返さないといった
表情をマホに向ける。
「だって……、いまマホさんに魔法を唱えられたら困るんですもの」
その表情は、マホが今まで見たこともないような酷薄で…残忍な表情だった。
「な、何言ってるの………。プリス、冗談も程ほどに…」
「今呪文を唱えられたら……、マホさんを魔物にすることが出来ないじゃないですか」
マホの前に立つプリスの雰囲気が一変する。全身から魔族が持つ邪悪な瘴気が立ちこめ、姿形まで変わっていく。
マホの前に立っているのは、身も心も大魔王に捧げた一匹の魔神官だった。
「プ、プリス!その姿は………?!」
「どうですかマホさん。この姿……、素晴らしいでしょう?
私、大魔王ゾーマ様に身も心も捧げて生まれ変わったんです。そして、大魔王様から偉大な使命を授かったんですよ。
他のみんなも、大魔王様の下僕にするという、ね………」
さも愉しそうにプリスはマホに語りかけてくる。
「……………!!」
マホには信じられなかった。あの心優しいプリスが大魔王に魂を売り魔族と化してしまったことに。
「その水着……、本当は『悪魔の水着』って言うんですよ」


「あくまの、みずぎ…?!」
聞いたこともない物騒な名前に、マホは背筋が寒くなった。
「その水着…、昔人間に殺された悪魔の皮をなめして作っているんです。そして、死んだ悪魔の恨みが
今でも水着に残っていて…、身に付けた人間を悪魔に変えてしまうんですよ…」
プリスの言葉にギョッとしたマホは自分の体を改めて見てみた。
「ヒッ!!」
水着に侵食された部分はどんどん広がり、もう体の半分以上を覆っている。不意に手に触れた部分か
らは、まるで自分の肌に触れたような感触が帰って来る…、いや、それはもはやマホの皮膚であった。
「まあ、私たちとしてはユウさんとマホさん、どちらが着てくれても良かったんですけど…、マホさん
のほうがより水着に興味持っていてくれていたみたいでしたし…」
「あ、あのときから私たちを嵌めようと………。?!」
待て、今プリスはなんと言った?
ユウさんと、マホさん?一人足りなくないか?
「あ、まだ気が付いていなかったんですか?マホさん、最初にその水着を手にした人、誰でしたっけ?」
意地悪そうにプリスがマホに問い掛けてくる。悪魔の水着を最初に手にした者。それは………
「そんな……、まさか、トウカも?!」
「はい。トウカさんはもうすでに魔族になっていただきました。ユウさんとマホさんは前から魔族と
一緒に旅をしていたんですよ」
「そ、そんなことが………、ひあああぁっ!!」
突如腰に異様な感触を覚え、マホが裏返った悲鳴をあげた。べったりと腰一面に広がった悪魔の皮膚
の尾てい骨の辺りがむずむずとしたかと思うと、ズルズルッと粘液を滴らせ爬虫類を連想させる悪魔の
尻尾が伸びてきた。
「や、やあぁ…、し、しっぽがぁ……」
「尻尾だけじゃないですよ。ほぉら」
背中まで達した皮膚から、みちみちと音を立ててせり出してくるものは、薄い皮膜を纏った鋭角な翼。
四肢の爪はどす黒く変色し、鋸の歯のように硬く鋭く変化していく。
「や、やあぁ…、魔族になんて、なりたく、ないぃ…」
「そんなこと言っていられるのも今のうちです。すぐにそんな気持ち飛んでっちゃいますから」
時間がたつにつれマホの体は人間から離れていく。
が、変化すればするほどマホの心に湧き上がってくるものがあった。
「いひっ!ひぃっ、いひいぃっ!!」
最初は恐怖に怯えていたマホの表情が、いつの間にか歓喜に潤んでいる。身に起こっている変化を受け入れ
むしろ促進を促している。
「こ、これ!凄い!しゅごいのぉぉっ!!
変わる!変わるぅ!わらし、変わっちゃうのおぉっ!!」
悦びに打ち震え開きっぱなしの口から犬歯がギリギリと牙のように鋭く伸びてくる。口元からだらしなく
零れている舌はピンク色から冷たい蒼に…、いや皮膚粘膜そのものが蒼色に変わっていっている。

メリメリィッ!

「あ、あぁ……、ぁ…………」
最後に脳天を震わせるような快感と共に耳元から角が伸び始め……、ついにこらえきれなくなった
マホの意識はぷつり、と途絶えた。
気絶する前のマホが最後に見たのは、冷酷に自分を見下す…、プリスの暗い笑みだった。


「うふふ、マホさん。もうそろそろ起きてもいいんじゃないですか?」
どれほど突っ伏していたのだろうか、プリスの声にマホはぴくりと反応し、よろよろと起き上がった。
「……………」
壁に立てかけられてある鏡に、マホは起き抜けからなのかまだはっきりとしない視線を向けた。
そこに映ったもの。それはまさに悪魔と形容するしかないものだった。
赤紫と群青に彩られた皮膚。蛇を連想させる切れ長の瞳。頭から伸びる一対の角。何者をも切り裂く鋭い爪。
背中から生える巨大な翼。そして腰から伸びる醜悪な尻尾。
だが、それらを構成する大本は…間違いなくマホだった。元々の容姿がよかっただけに、その姿は恐ろしい
もあるが、それすら凌駕する妖艶さを漂わせていた。
「………、フフ…」
自らの姿にマホは惚れ惚れしていた。先程悪魔の水着をつけたときもドキッとしたが、そのときとは
桁違いだった。
自分を構成する全てのパーツ、その全てがまるで誂えたようにピッタリとはまっている。内から湧き
上がる黒い衝動も、この外見を彩るのに欠かせないものだろう。
「あぁ………、素敵ぃ………。これ、最高……」
「どうですかマホさん、魔族になってよかったでしょう?」
自らに酔い続けるマホに、プリスがニヤニヤしながら話し掛けてきた。
「………えぇ。これは、凄いわ………。魔力が体中に漲ってるのがわかるくらいだもの…。こんな凄い
体になるのを嫌がっていたなんて……、バカみたいだわ」
「では、マホさんも……」
「ええ。私を魔族という素晴らしい種族に生まれ変わらせてくれたゾーマ様、私もゾーマ様に永遠の
忠誠を誓い、このアレフガルドから人間どもを一掃するお役に立つことにしましょう…」
プリスと同じ邪悪な笑みを浮かべるマホ。その表情に人間味はほんの少しも残ってはいなかった。
と、その時
「な、なんアルかお前は!!」
扉の前に驚いた表情を浮かべたトウカが立っていた。
「何でこんなところに魔族がいるアルか!!
そこを動くなアル!今すぐに斬って捨ててやるアルからな!」
低く腰をおろしたトウカは、そのまま目にもとまらぬ速さで跳躍し、マホ目掛けて鋭く手刀を打ち込んできた。
が、マホはかわすそぶりも見せず笑みを浮かべて立ち尽くしていた。
そして、手刀が命中する刹那
「……………っ!!」
トウカの手刀はマホと皮一枚の隙間を残してぴたりと止まった。
「トウカ、ふざけるのも大概にしなさい。貴方も『仲間』だっていうのはもう知っているんだから」
マホから発せられた言葉に、トウカはそれまでの緊迫した表情の仮面を脱ぎ、二人と同じ邪悪な笑みを浮かべた。
「なぁんだ……。つまんないアルなぁ。プリス、少しは黙っているアル。
それにしてもマホ……、また素晴らしく邪悪な姿になったアルな。ゾーマ様の下僕に相応しいアルよ」
「褒め言葉と受け取っておくわよ。で、ユウはどうするの?彼女も私たちの『仲間』に?」
マホの言葉に、プリスは少し困ったような表情を浮かべた。
「それが…、まだアークマージ様の命令が………」

「どうやら二人を魔族にしたようだな、プリスよ」



その時、部屋の影がニュウッと伸び、アークマージが姿を現した。
「「「こ、これはアークマージ様…」」」
三人は恭しく腰をおろし、アークマージの前に跪いた。
「これほど短い間に三人のうち二人を魔族化させるとは、さすがゾーマ様のお眼鏡に適った者よ」
「あはい、勿体無いお言葉でございます」
プリスはアークマージからの祝福に心からの笑みを浮かべ、トウカとマホは嫉妬からか多少顔を歪ませた。
「さて、残るはいよいよ勇者であるが……、あの者を堕すため面白い物を持ってきた」
アークマージは三人の前に持ってきたものを並べた。
「これを………、ユウさんに、ですか?」
「そうだ、そして、そのための手はずは………」
アークマージは訥々と三人の前で計画を吐露する。その話が進むにつれ、三人の顔に残忍な笑みが浮かんできた。
「そ、そんなことを………私たちだけでしてよろしいのですか?」
「凄いアル………、この上ない栄誉アルよ………」
「お任せください。必ずやご期待に答えてみせます……」

そして、夜はまだ明けない…

マホ
E:あくまのみずぎ

せいかく
『あたまでっかち』→『まもの』