DQ3SS

○性格設定

勇者『ユウ』    性格『がんばりや』
武道家『トウカ』  性格『まけずぎらい』
僧侶『プリス』   性格『やさしいひと』
魔法使い『マホ』  性格『あたまでっかち』

1『プリス:まもののきもち』

「これで…、本当に魔物さんたちとお話が出来るようになるのでしょうか?」
闇に被われた世界・アレフガルド。この世界に光を取り戻すため、諸悪の根源である大魔王ゾーマを
倒すために地上界からやってきた四人。
そのうちの一人、僧侶のプリスは一冊の本を前に頭を捻っていた。

話は少し前にさかのぼる。
僧侶としての素質、資質は文句なしのプリスだったが、彼女は自身の性格『やさしいひと』のせいで
自分を襲う魔物に対しても手を出すのを躊躇ったりすることがあった。
仲間からは自分の身は自分で守るようにならないと命がいくつあっても足りないと言われたが、心優しい
プリスはどうしても自分の手で他の命を奪うことに躊躇いがあった。
「魔物さんといえども生きているのです。なんとかして、暴力以外で解決する方法はないのでしょうか?」
こんなことを喋っても、リーダーのユウ以外は取り合ってもくれない。

トウカ:「向こうから突っかかってくるんだから、倒すしかないネ」
マホ:「意志の疎通が出来ないんだから無理に決まっているわ」

そう、ごく一部を除いて魔物たちとは意志を通わせることが出来ない。話し合おうにもその前提で話が
止まってしまうのだ。
「なんとか………、魔物さんともお話ができるようになればいいのですが………」
仲間のそっけない態度に気落ちし、気晴らしにと食堂を一人で出て外を歩いているとき、後ろからプリス
を呼び止める声があった。
「もし、そこのお嬢さん」
はて?と思いプリスが振り向くと、そこにはフードを深く被り、杖をついた一人の老人が立っていた。
「あのぅ…、どちら様でしょうか?私に何か御用ですか?」
「ワシか?わしはな、モンスターじいさんと巷では呼ばれておる。
「モンスターおじいさん。ですか?」
「そうじゃ。森羅万象古今東西、この世界の魔物のありとあらゆることまで知っている究極のモンスターマニア。
それが、このワシじゃ。先程おぬしと仲間が話していたこと、悪いとは思ったが横で聞かせて貰っておった」
どうやらモンスターじいさんと自称する老人は、さっきのプリスたちの会話を聞いていたらしい。
「例えモンスターといえども一つの生きている命に変わりはない。暴力以外で解決しようとするお主の
優しい心に、ワシは大いに感動したのじゃ!」
モンスターじいさんの言葉にプリスの心はパッと明るくなった。自分の意見に、恐らく初めて賛同してくれた
人間が目の前にいるのがとても嬉しかった。
「そ、そうですよね!やっぱり、無駄に命を奪うのは間違いですよね!そうですよね!」
「ああ。モンスターのことを何よりも良く知る、モンスターの言葉さえわかるワシが言うのだから間違いはない」
モンスターの言葉が分かる。この言葉にプリスはピクッと反応した。
「言葉が分かる?おじいさんは魔物さんの言葉が分かるのですか?!」
「当たり前じゃ。伊達にモンスターじいさんと呼ばれておるわけではないぞ。ワシはありとあらゆるモンスター
の言葉を理解し、心を通わせることが出来るのじゃ」
モンスターじいさんの言葉にプリスは満面の笑みを浮かべた。仲間が出来ないといって話にもしなかった
魔物と心を通じ合える人間が今、目の前にいる!

「す、凄いですおじいさん!どうすれば、魔物さんとお話が出来るようになれるんですか?!」
もし、その方法がわかれば無駄な殺し合いをしなくてすむ。暴力に訴えなくても先に進むことが出来るのだ。
「う〜〜〜む。こればっかりはな…。ワシは物心ついてからとにかくモンスターたちととことん、時には
命の危険を感じながらも付き合ってきた末にこの境地に辿り着いたからのう。おいそれとは…」
「あ、そうですか……」
モンスターじいさんの言葉に、プリスはがっくりと肩をうなだれた。まあ、一朝一夕に出来るならば
この世にすでに人間と魔物が争っている道理はないだろう。
が、肩を落としたプリスを見てモンスターじいさんはニヤリと微笑んだ。
「と・こ・ろ・が・じゃ。
ここに、すぐにでもモンスターと心通わせられる逸品があるといったら、どうする?」
「えっ?」
急な言葉に目を丸くするプリスの前で、モンスターじいさんは懐からかなりくたびれた本を取り出した。
「これはな、『魔物の気持ち』といって、ワシの数十年に及ぶ魔物との交流を一冊の本として纏めたものじゃ。
これさえ読み尽くせば、お主もすぐに魔物と心通わせられるようになること間違いなし!
で、おぬしが本当にモンスターと心通わせたいのならば、この本を譲ってやろうと思うのじゃが」
「ほ、本当ですか!!」
それが本当ならすぐにでも読みたい。
が、ここでプリス生来の『やさしいひと』が顔をもたげてきた。
「あっ……、でもその本って……、おじいさんの人生そのものといってもいいものではないでしょうか?
それを見ず知らずの私にくださるなんて、ちょっと、申し訳ないと………」
本は欲しい。しかし、本を手に入れるのは申し訳ない。
どちらともとれずもじもじしているプリスに、モンスターじいさんは笑いながら話し掛けてきた。
「いや、ワシももう年じゃ。このままではその本も誰の目にもとまることなく朽ち果てていってしまうだけじゃ。
それよりも心優しく、ワシと同じ気持ちを持つおぬしに貰われてこそ、その本も光り輝くことじゃろう。
だからこそ、ワシはおぬしに声をかけたのじゃ。お願いじゃ、その本を貰ってくれぬか?」
モンスターじいさんの言葉にプリスは目頭がじゅんと熱くなってきた。
あってほんの少しの自分のことをここまで信頼してくれ、自分の分身といっても挿し支えないものを
惜しげもなく他人に譲れる。
これで申し出を断ったら、この老人に計り知れない恥を与えてしまうだろう。
「わかりました。この本、譲らせていただきます。ほんとうに、本当に有難うございました!」
「うむ。他者を思いやるその心、忘れないでくれよ」
何度も振り返って頭をぺこぺこ下げるプリスを、モンスターじいさんは優しい微笑で見送っていった。


「まあ、とりあえずは読んでみましょう」
宿屋の個室に戻ったプリスは、ランプの頼りない光の下モンスターじいさんに貰った『魔物の気持ち』
の頁を開いた。
そこには、魔物の生態、生息域、見分け方、対処法などがこと細かく書き連ねてあった。
読み手を退屈させないように所々に洒落を散りばめ、自作と思えるへたくそな魔物の絵が心を和ませる。
「はぁ………、これは学問書としても一級品ですね。とってもタメになります…」
とりあえず最初は触りだけを読もうと思っていたプリスだったが、内容のあまりの面白さに読むことを
止められず、ずんずんと内容に魅入られていった。

「…………
魔物は人間よりもあるかに肉体的に優れた生物である………」

「…………
魔物が人を襲うのは、人が魔物より劣った生物だからである………」

「…………
人は魔物の供物であり、その魂を取り込むことで魔物はより強靭となる………」

「…………
アレフガルドを統べる大魔王ゾーマ様こそ、愚劣な人を滅ぼし魔物に永遠の繁栄を築く御方である………」

『魔物の気持ち』の内容は、先に行くに従い人間からの視点ではなく魔物から視点でものを書き連ねていっている。
書いてある文字も人が使う一般的な文字ではなく、魔物にしか判読できない奇怪な魔界文字で構成されていた。
が、それにもかかわらずプリスは何の障害もなく書かれている内容を黙々と音読していた。
その顔からは表情というものが消え、ただただ機械的に書かれているものを諳んじ……
いや、『入力』していた。
やがて本の頁も少なくなり、最後のページを読んだあと、プリスはパタンと本を閉じた。
すると、本は最初から何も無かったかのようにスッと消え去ってしまった。


「フェッフェッフェ。どうやら、読み終わったようじゃな」
ランプに照らされたプリスの影からしわがれた声が聞こえてきた。平面な影がニュウッと形を作り、
色を為していき………、そこに現れたのは、先程プリスに本を渡したモンスターじいさんだった。
が、その姿が突然飴細工のようにぐにゃりと歪み再構成されると、そこには大魔王ゾーマの側近中の
側近、アークマージが姿を表した。
「どうだプリス、『魔物の気持ち』を読んだ感想は?」
アークマージの言葉に、プリスはゆっくりと口を開いた。
「………はい。
これを読んで、魔物の気持ちがすごくよくわかりました…。魔物とは、魔族とはなんて素晴らしいものなのでしょう…
このことを知ってしまった以上、もう人間なんかバカバカしくてやっていられません……」
ぽそぽそと喋るプリスの瞳は、魔族のような縦長で切れ目のある瞳孔をしていた。
「そうだろうそうだろう。『魔物の気持ち』を読んでしまったお前の心は、もう既に魔物と同じ。
お前は我らと同じ大魔王ゾーマ様に使える魔神官となったのだ」
「はい。私は偉大なる大魔王ゾーマ様の下僕、魔神官プリス…。このアレフガルドに巣食う人間を滅ぼし
ゾーマ様の手助けをするのが、私の使命……」
その瞳が徐々に邪悪な悦びに彩られ、プリスは今までの彼女を知る人間からは想像も出来ないような
邪悪な笑みを浮かべた。
「ではアークマージ様、早速使命を果たしに参ります。
ゾーマ様に歯向かうあの邪魔な三人を、この手で始末して御覧に入れます」
プリスはその手に杖を持ち立ち上がった。隣で寝ているユウ、トウカ、マホを手にかけようというのだ。が、
「待て、プリスよ。
あの三人、殺すには惜しい使い手。お前と同じように魔に堕せよとゾーマ様の命令だ。
別命あるまでお前は人間のふりをし、やつらと共に行動せよ」
「………、畏まりました。アークマージ様」
プリスはこの手で三人を殺せないことに少し不満を持ったが、堪えてアークマージの命令に従った。
すると、アークマージは出てきたときと同じく影に溶け込み消えてしまった。
「………。
フフッ、そうよ。魔物と戦わなくてすむ方法。私たちが魔物になってしまえばいいんじゃない。
人間を全部殺してしまえば魔物と戦わなくてよくなるじゃない。何でこんな簡単なことに気がつかなかったのかしら?」
他人の命を奪うのに何のためらいも見せないプリス。
そこには『やさしいひと』だったプリスの姿は既になく、完全に『まもの』となったプリスがあった。
「早く他の三人も魔物にしなきゃね。ああっ、待ち遠しいな………」
微笑だけは昔の『やさしいひと』のまま、プリスは邪悪な思索に耽っていった。

そして、夜が明けた。

チャ〜ラチャ〜ラチャッチャッチャン

プリス
E:まもののきもち

せいかく
『やさしいひと』→『まもの』