世界よ、瞼を閉じて


最近、冴姫ちゃんが変だ。
冴姫ちゃんは何かを隠している。最近私を避け、一人で何かをしようとしている。
私にはわかる。冴姫ちゃんが悩んでいるのが。自分ひとりで解決しようとして、自分ひとりでは
何も出来なくてどうしようもなくなっているのが。
私にはそれがわかる。私は冴姫ちゃんの一番の友達だから。冴姫ちゃんのことなら小さい頃から
何でも知っているから。
だから私は冴姫ちゃんに言い寄った。
「冴姫ちゃん、最近私のこと避けてないかなー?………どうして?」
そうしたら、冴姫ちゃんはとても困った顔をして、しばらくじっと黙っていたら、ふいっと目を
逸らしてボソリとこう言った。
「ごめん…、はぁと。今は、何も話せない…」
その時の冴姫ちゃんは、とても、とても悲しい顔をしていた。私を自分がやっていることに巻き
込みたくない。そう、顔が言っている。
でも、私も友達が一人ぼっちで苦しんでいるのを放っては置けない。
「…私たち、友達だよね?どうして、何も言ってくれないの?」
「だから………、だから!今は何も話せないっていっているでしょ!」
冴姫ちゃんが怒った。顔を真っ赤にして。
どうして?どうして何も話してくれないの?私は冴姫ちゃんの力になりたい。友達の悩みを解決
する力になりたい。それなのに、なんで?!
「ううぅ…、冴姫ちゃんのバカーッ!!」
「誰がバカなのよ!バカなのははぁとじゃない!いつも私の話し聞かない!」
「私、冴姫ちゃんの一番の友達だもん!冴姫ちゃんが、ずっと悩んでて、ずっと困ってるの知ってるよ!
知ってるのに、なのに、なのに私は何も助けて上げられないなんて!
うわーん!私のバカーッ!!」
悲しかった。困っている親友に何も出来ない自分、困っているのに自分を頼ってくれない親友。
勿論それが冴姫ちゃんの優しさなのは分かる。小さい頃から冴姫ちゃんはとても優しかった。私
に何も言わないのも、私のことを思っての事なのはわかる。
でも、でも…
「あ………、だ、だから…っ。ご、ごめん、はぁと……。全部終わったら、ちゃんと話すから………」
違う。私はそんな言葉は欲しくない。
ただ一言。
「私と一緒に来て」
そう言ってくれれば、よかったのに。



『世界よ、瞼を閉じて』 〜アルカナハート、バッドエンド・廿楽冴姫ルート補完〜



「冴姫ちゃ……、え…ええっ………?」
はぁとをじっと見つめる廿楽冴姫の瞳、その色は先程までの濃い茶色ではなく、鮮やかな緋色に彩られている。
いや、変わった色だけではない。自分を映している冴姫の瞳には、明らかに先ほどまでとは違った感情が篭っている。
それがなんなのかははぁとにはうまく表現できない。あえて言うなら、地面に降り立った雀を遠目
からじっと見ている猫のような、そんな感じ。
「冴姫、ちゃん。目の色、変、だよ………」
冴姫の瞳が醸し出す感情が心に響くからか、はぁとは努めて怯えを出さないように声を出したが、
やはりどうしても歯の根がかみ合わず声が震えてしまう。
「変?変なのははぁとよ。何をそんなに怖がっているの?私たち、親友じゃない。
小さい頃から、いつも一緒だったじゃない」
緋い瞳をスゥッと細めて、冴姫が優しく微笑む。一見見るものを安心させる慈愛の笑みだが、
はぁとはそこに非常に作為めいた、空虚なものを感じ取った。
冴姫は明らかにこの状況を楽しんでいる。はぁとが怯え、怖がる様を見世物でも見るかのような
感覚で味わっている。はぁとが知っている冴姫は、自分をそのような目で見たりはしない。
「冴姫ちゃん…、本当に、どうしちゃったの…。いつもの冴姫ちゃんに、戻ってよぉ………」
目の前で突如変貌してしまった冴姫。その状況を受け入れられないはぁとの瞳にうっすらを涙が滲んできた。
だがその瞬間、それまで笑顔ではぁとを見つめていた冴姫の表情に明らかな嘲笑と侮蔑の感情が表れた。
「戻る?何を言っているの、はぁと。
私は、新しい世界を生きる新しい種として創造主様に見出され、選ばれたのよ。
今更か弱く下賎で下らないヒトなんかに戻ってどうするというの?冗談じゃないわ」
新しい世界?新しい種?創造主様?
さっきから冴姫の語ることはまるで要領を得ない。
「私はヒトを超え、世界の創生を手助けしうる力を創造主様から賜ったわ。
だから、ね、今はこういうこともできるのよ」
うっすらと微笑んだ冴姫がはぁとの前に右の掌をゆっくりとかざした。すると、掌の前の空気が
歪み、無数の鎌鼬となってはぁとに向けて飛んできた。
「きゃあああぁっ!!」
全周囲から襲い掛かる鎌鼬にはぁとの皮膚はおろか、纏っている衣服もズタズタに切り裂かれてゆく。
たちまちのうちに服を剥かれ、傷だらけになったはぁとはがくりと片膝をついてしまった。
「な、なにするの冴姫ちゃん…。ひどいよ………」
「ウフフ…ご免。服だけを切ろうと思ったんだけれど、加減がわからないんでちょっと切り過ぎちゃった。
でも…、紅く化粧したはぁとの姿も…、とってもキレイね………」
はぁとを傷つけたというのに、冴姫にはまるで悪びれた感じが無い。それどころか、血が滲むはぁと
を見て綺麗とさえ言ってのけ、笑みさえ浮かべている。
はぁとはこのときに確信した。

(この目の前にいる冴姫ちゃんは冴姫ちゃんじゃない!)

今、自分の目の前にいるのは親友の姿形をしたまったく得体の知れないモノ。そう感じたはぁとは
体を蝕む痛みのことも忘れ、この場から距離をおこうと後方へ跳ね飛んだ。
が、それを黙って見過ごす冴姫でもなかった。
「はぁと、逃がさない」
再び冴姫が掌をかざすと、今度は空中に描かれた魔法陣から金色に輝く植物の蔓が無数に現れ、
四方八方からはぁと目掛けて襲い掛かってきた。

「な、なにこれぇ!!」
身体の動きが鈍っているはぁとが蔓の襲撃をかわせるはずもなく、たちまちのうちにはぁとの四
肢に蔓が巻き付き、雁字搦めに絡め取られてしまった。
「や、やめて!放してぇ!!」
「はぁと…、何で逃げようとするの?せっかくはぁとに、素晴らしいことをしてあげようとしているのに」
悲しそうな調子の声ではぁとに語りかけてくる冴姫だが、やはりその表情の底には現在の状況を
楽しんでいる節が垣間見えている。今の冴姫にとって、逃げ惑うはぁとは体のいい獲物なのだろう。
「だって、だって冴姫ちゃんが怖いんだもん!おかしいんだもん!!冴姫ちゃんが冴姫ちゃんじゃ
なくなっちゃったんだもん!」
「私は、冴姫よ。新しい世界の創造主、ミルドレッド・アヴァロン様に最初に御仕えする栄誉を担った
最初の新しいヒト、廿楽冴姫よ」
「ほら!そんなこと、私の知っている冴姫ちゃんは言わない!ミルドレッドって誰なの?新しい世界ってなんなの?!
もし、冴姫ちゃんをそんな風にしたのがミルドレッドって人なら、私、絶対その人を許さない!」
はぁとが怒りに燃えた目を冴姫に向ける。それを見た冴姫はムッとした表情ではぁとを睨みつけ、はぁと
を拘束している蔓を操り、はぁとの全身を締め上げてきた。
「やっ………、痛ぁぁいっ!」
「創造主様のことを悪く言ったら、はぁと、貴方でも許さないわよ。創造主様がなさることのなにかも
分かっていないのに。
はぁと、創造主様はね、私たちの世界と聖霊たちがいる世界を一つになさろうとしているの。はぁと
が大好きな天使や聖霊たちとも、いつでも、いつまでも一緒にいられることが出来るようになるのよ。
それって、とってもいいことだと思わない?」
「天使さんや、聖霊さんたちと、一緒に………」
日常の中に聖霊や天使が住まう世界。確かにそれははぁとにとって魅力的なものだった。
しかし、それが決して望んではいけないものだということもまた感じていた。言葉ではうまく表現できない。
が、人間は人間がすむ世界。聖霊は聖霊が住む世界があり、それは互いに決して干渉してはいけないものだ。
ということは認識できた。
「それは、確かに嬉しいかもしれないけれど…、でも絶対、ぜぇったい何か間違っている気が、するよぉ…」
苦しそうにしながらも、なお反論してくるはぁとに、冴姫は心底がっかりしたような表情を浮かべた。
「はぁと…、ここまで言っても分かってくれないのね…。どうしてわかってくれないの?」
「だって、だってこんないじわるする冴姫ちゃんの言うことなんか、わかるわけ、ないもん…」
『いじわる』。その言葉に冴姫は少しきょとんとし、直後にクスッと微笑んだ。
「ああ…、そうね。確かにはぁとから見たら今までの私のやっていることは『いじわる』にみえるか…。でもね」
冴姫の掌からはぁとに伸びている蔓がピクッと動き、しゅるしゅると魔法陣の中に吸い込まれていく。
蔓が半ば没したところで、冴姫の眼前に動きを封じ込まれたはぁとがその肢体を晒していた。
「これも全て、はぁとに知ってもらいたいから。新しい世界に生きる素晴らしさを。そして………」
冴姫の顔がはぁとの顔に近づいていく。その頬には薄い紅が入り、瞳は熱く潤み始めている。
「私の、はぁとへの想いも…」
「さ、冴姫ちゃ?!んぐっ!」
驚きに目を見開くはぁとの唇に、冴姫の唇がふわりと重ねられてきた。
「ん〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
不意をつかれたはぁとの口腔内に冴姫の舌は易々と侵入を果たし、内部を想う様蹂躙する。舌同士を
絡めあい、歯の裏筋を擦り上げ、唾液を喉の奥に流し込み、頬の肉を舐めしゃぶる。それにより発生
する今まで感じたことの刺激にはぁとの思考はパニックに見舞われていた。
はぁととて、キスを知らないわけではない。日常の他愛ない会話でネタにすることもあるし、小さい
頃、冴姫とおふざけで実際にしてみたこともある。
しかし、そのときのキスはただ唇を重ね合わせただけのものであり、それ以上の知識にははぁとにはない。
キスとは『唇を重ねあう』という認識しかはぁとは持っていなかった
よって、冴姫によって行われているキスは完全にはぁとの想定外の出来事であり、はぁとから思考力
を奪うには充分すぎるものだった。
しばしの間はぁとの口腔を嬲り続けた後、冴姫は唇をはぁとから離した。唾液の糸が引く先のはぁと
の表情は、経験したことの無い刺激に呆け、目にはピンク色の霞がかかっていた。
「あ、あ………冴姫、ちゃ……」
「どう?はぁと、気持ちよかった?私のキス。好きな人としかしない、大人のキス……」


あれが気持ちよかったのか?あれを気持ちいいというのか?ああいうのが気持ちいいのか?

それを『気持ちいい』と解釈するには、はぁとには知識も経験も不足していた。
「わかんない……、わかんないけど、頭が、ぽーっとして、心臓がドキドキしているの……」
それでも自分の知識で捻り出せる精一杯の表現で冴姫に現在の自分を伝えると、冴姫は満足した
のか軽く微笑むと、はぁとを地面に下ろすと、束縛していた蔓を消失させた。
「あ…」
急に蔓による支えがなくなったことと先ほどのキスによる刺激からか、はぁとは身体のバランス
を崩しその場にぺたりと尻餅をついてしまった。心の奥底でなにかが『今のうちに逃げなきゃ』と
小さく叫んだが、今のはぁとの心にこの場から逃げるという選択肢は存在していなかった。と、言う
より選択肢を取捨選択する思考力そのものが冴姫のキスにより消去されていた。
全く無抵抗で全身を曝け出しているはぁとを眼前にし、冴姫の眼が喜悦に歪んでいる。
「ああ…可愛いわ、はぁと…。その綺麗な身体、他のヒトを全く知らない身体…」
冴姫は自らも纏っている衣類を脱ぎ捨て、放心しへたり込んでいるはぁとを自らの肢体で包み込んだ。
艶かしい肌が触れ合う感触、感じる互いのの体温。冴姫は今度は唇同士が触れ合う程度の軽いキスを
交わすと、血が滲んでいるはぁとの傷に舌を伸ばしてきた。
「こんなに傷をつけちゃって…。ごめんね、はあと。痛かったよね…」
ぴちゃり、と肩口の傷に舌を這わし、滲み出てくる血を掬い取り、労るように丁寧に舐め上げてゆく。
「んぁっ…」
傷を舐められたときに起こるピリッとした感触に、はぁとは思わず声を漏らしてしまった。ざわざわと
肌を擦り上げられる感触は、決して不快なものではない。
「んっ、んっ…、んっ……」
肩口、二の腕、うなじと少しでも傷がついているところを冴姫は両手を添えてゆっくりと舐め清
めていっている。冴姫の舌が一筋這うごとに、くすぐったいような、むず痒いような感覚が背骨
の中を走り抜けていっている。
「ああ……、冴姫ちゃん。なんか体がむずむずするの…。胸の奥がキュウキュウってなって、
とっても変なの…」
「はぁと、それは変じゃないのよ。それが『気持ちいい』ってことなのよ」
「き、気持ちいいの………、これが、気持ちいいなの……?」
今まではぁとにとっては、『気持ちいい』という単語は『爽快』と同意語であった。故に、『爽快』
とは程遠い今の感触を、『気持ちいい』と表現することは困難だった。
「そう、『気持ちいい』の。とっても、『気持ちいい』のよ……。だからこんなのとかは…」
はぁとに『気持ちいい』という単語を刷り込ませるかのように喋り続ける冴姫は、その口元が捉
える先を胸元に膨らむ先端に絞り、ゆっくりと顔を傾けてきた。
「とっても、『気持ちいい』のよ」
くぱぁと開いた冴姫の口から伸びる舌が、はぁとの左胸の乳房をちょんと突付いた後、口全体で
左胸をやんわりと包み込んできた。
「ひゃああああぁぁっ!!さきちゃああぁん!」
甘い悲鳴をあげるはぁとを無視し、冴姫は口の中に含んだ乳頭を舌で転がし、舐め上げ、甘噛みし
空いている右胸を左掌でさわさわと摩り、親指で右の乳房をこりこりといじり続けた。
「ああああぁっ!うああぁっ!!」
(こ、これがっ、『気持ちいい』なのっ?!そうなのっ?!)
目の前が電気が走っているかのようにチカチカと明滅している。閃光が一閃するたびに、はぁとの
中の『気持ちいい』への認識が書き換えられていっている。性感というものを殆ど知らなかった肢
体が、急激に、かつ貪欲にそれを吸収しようとしつつあった。
「だ、だめっ!冴姫ちゃん!体が変、変なのっ!!」
両方の胸に断続的に与え続けられる快感、ひとつひとつは左程のものではないが、切れ目なく続け
られることにより細い糸は太く束ねられ、一本の大きい快感としてはぁとの体内を暴れまわり、音
叉のように反射と共鳴を繰り返してその大きさを次第に広げていっている。
「なにかが、なにかが来る。来ちゃうの!!あっ、ああ、あああっ!!」
体内で膨らんでゆく快楽の波動に、次第にはぁとは言葉をなくし、喘ぎ声しか口元から発せなくなってきている。
そして、その快感がはぁとの耐え得る容量を満たし溢れる寸前になった時、冴姫は、

カッ

咥えていた乳首に、徐に歯を立てた。

それまで甘い刺激しか受けてこなかった乳首に急激に与えられた痛覚により、決壊しつつあった
はぁとの心の容量は、急激に膨張し、高みに上り詰め、崩壊した。

「あ!あああああーーーーーっ!!!」

人生最初の絶頂を向えたはぁとは、全身を強張らせ、目を見開いて絶叫したあと、カクンと突っ伏した。
ハァハァと息を切らせぐったりとしているはぁとを見て、冴姫はニタリと微笑んだ。
「どう、はぁと……『気持ちよかった』?」
「あ………、あ……………」
はぁとは何も答えない。与えられた快感の大きさに言葉を紡ぐことすら出来ないでいる。
「……そうよね、今のはぁとじゃ気持ちよすぎてそうなっちゃうわよね。
でも、まだこれから」
はぁとの上に馬乗りになった冴姫は、緋の瞳を欲情にぎらつかせて呟いた。
「ここまではヒトでも与えられる『気持ちよさ』。これからは、ヒトの域を越えた『気持ちよさ』
を与えてあげる。はぁとの体の隅々まで、私で満たしてあげる……」
半開きになっているはぁとの唇に、冴姫の人差し指がスウッと差し込まれた。誰から言われたわ
けでもないのに、はぁとは入ってきた指に舌を這わし、チュッ、チュッ、と音を立てて吸っていた。



冴姫ちゃんに触れられたところが『気持ちいい』。
冴姫ちゃんに吸われたところが『気持ちいい』。
冴姫ちゃんに舐められたところが『気持ちいい』。
冴姫ちゃんに噛まれたところが『気持ちいい』。
先ほどから冴姫により与えられ続けている肢体への刺激。その都度脳内へ囁かれていく『気持ちいい』の単語。
何度も何度も反芻される『気持ちいい』という言葉と行為、それによりはぁとの体の奥から次第
に込みあがってくる得体の知れない『なにか』。
そして、はぁとの中で『なにか』が膨れ上がって爆発し、全身を駆け巡ったとき、はぁとの脳が
感じた『なにか』の正体は、は紛れも無く『気持ちいい』だった。


(なんでだろう……冴姫ちゃんに体を触られるとなんかむずむずする…。
さわさわされて、なめなめされて、こりこりされると体がビクビクってしちゃう…
もっと、冴姫ちゃんに体を触ってもらいたい…。

でも、されるのが怖い…。さっきの、体に電気がビリビリッて走ったような時、まるで自分が
自分じゃなくなったような感じがした。心が、体が言うこときかないで勝手にだだーって走って
いっちゃったような…。
私は、もっと冴姫ちゃんに私を触ってもらいたい。でも私は冴姫ちゃんに触られるのが怖い…)


「さあ…、はぁと。あなたに天国を見せてあげる」
だから、はぁとは冴姫の言葉に期待に胸を弾ませる反面、恐怖に心を竦ませてもいた。
「ところで、はぁとはここが何をするところだか知っている?」
そう言って冴姫が指さしたのは、はぁとの太腿と太腿の付け根。
「そ、そこは………」
言うまでもない。そこは用を足すところだ。絶頂の余韻で思考が働かないはぁとだが、さすがに
この質問には赤らんでいる頬をさらに赤くし言いよどんでしまう。
「なぁに?」
「そこは………、…っ…を、するとこ…」
ぼそっと、擦れたような小声で答える。が、冴姫は容赦しない。
「ちゃんといわなきゃダメ」
真面目な顔で睨みつけてくる冴姫を見て、はぁとは観念するしかなかった。
長くも短くも取れる逡巡の果てに、
「………、ぉ……、ぉしっこを、するところ………
もうやめてよ冴姫ちゃん!恥ずかしすぎるよぉ!!」
「残念。不正解よ」
「こんなこと言わせて…………、え?」
冴姫の言葉にはぁとはあっけに取られてしまった。
不正解?不正解とはどういうことだろう。
「ここはね………、こうするためにあるのよ」
そういうと、冴姫は指差していた右手をすっとはぁとの股下に動かし、ちょんと付け根に触れた。

ぴちゃり

「ひゃあぁっ!!」
突如、敏感なところに針が触れたような感触に反射的に声を上げてしまったはぁとだが、
それよりも、冴姫が触ったところが音がするくらい濡れていたことに軽い衝撃を受けていた。
「な、なんでぇ…、なんで私のそこ、そんなにびちゃびちゃなのぉ?!」
もしや、自分が知らないうちにお漏らしでもしてしまったのではないか。さっきの言葉責めと
併せて倍増した羞恥心に、緩んだ涙腺から涙がじわりと溢れ出してきた。

「もう、もうやだよぉ…。冴姫ちゃん、もういやなのぉ…。いやあぁ…」
頬に手を当て、いやいやをしながらすすり泣くはぁとを見て、冴姫は優しく囁いた。
「大丈夫よ、はぁと。女の子はね、気持ちが良くなるとみんなそうなるの。だから、ね。ほら、私も…」
冴姫の手がはぁとの手を取り、自らの股間に導く。はぁとの手が触れたそこは、自分と同じくぬらぬらと濡れていた。
「今のはぁとの姿を見ているだけで…、こんなになっちゃったのよ」
「冴姫ちゃん………」
「だからね、なにも嫌がることはないの。私がこうすることではぁとは…」
再び、冴姫の手がはぁとの中に埋没する。
「うあぁっ!」
「もっと、『気持ちよくなる』ことが出来るのだから」
冴姫の指が、はぁとの敏感なところをなぞり、擦り上げ、奥に向って指し入れる。
その度に、先程までの胸とは比べ物にならない快感がはぁとの全身に行き渡っている。
特に指が中に入ってきたときは、一触ごとに心臓が飛び出しそうなほどの快感をはぁとにもたらしていた。
「あはは…はぁと、そんなに締め付けないでよ。指が痛いじゃないの」
「だ、だって!こんな、こと、されるの、は、初めてだから!!
ああっ、ダメ!冴姫ちゃん、怖い!そんなに、したら、また来ちゃうぅ!」
冴姫がグチグチとする度に、さっき自分に襲い掛かった『あの衝撃』が鎌首を上げてきている。
さっきは訳もわからず達してしまったので何が起こるか考えることも無かったが、今は先程の衝撃を
知っている分、あの『気持ちよさ』をまた味わえるという期待以上に、自分を忘れてしまうほどの
強い衝撃に対する恐怖がはぁとの心を占めていた。
が、冴姫がそんなことで手を緩めることも勿論なく、むしろ、はぁとの奥へ奥へと指をより深く埋めていっていた。
熱をもった粘膜、柔らかい感触の肉、滑る媚液の感触を存分に味わった指は、やがて行き止まりへと到達した。
「あっ………
うふふ、ちゃんととっておいてくれたのね。私のために…」
「な、なんのことぉ………。とって、おいたって…」
「こ・こ」

ちょん

「あうっ!」
「私が、はぁとのはじめてになるのね」

ちょん、ちょん

「や、やぁっ!!」
「ちょっと痛いけれど、我慢してね…」
行き止まりに達した指に、冴姫はぐいと力を込めていく。ぎりぎりと突き進む指から、まわりの肉が
ぷちぷちと音を立てて裂けていく感触が伝わってくる。
「い。痛っ!冴姫ちゃん、やめて!!痛いよっ!!!」
今まで快感を全身に伝えていた下腹部から突如として発生した激痛に、はぁとは苦痛の悲鳴を漏らした。
「やめて、やめてっ!!いたあぁい!!」
「もう少しだからっ、もうちょっと辛抱して!」

ブツッ

「きゃあああああぁっ!!」
はぁとの中でなにかが裂ける音がした。おへその下あたりから、異物を差し込まれている感触と
共にズキズキとした疼痛が発生し、快楽浸けにされた肢体に苦痛という真逆の感覚を送り込んできている。
「うう…、痛いよぉ…。ひどいよ、冴姫ちゃん…」
「そんな事いわないでよ…。これではぁとも立派な『女』になれたんだから」
『女』になれた。そういわれてもはぁとには何のことだかピンと来ない。ただ、自分にとって
なにかとても大事なことが起こった。という事は苦痛と快楽で霞む頭でも理解することは出来た。

冴姫がはぁとの中から指を引き抜くと、その指先は真っ赤な鮮血と粘液で濡れ光っていた。
「これが…はぁとのはじめてなのね…。ふふっ、おいし」
冴姫は血に濡れた指をひと舐めすると、とろとろと破瓜の血が流れ落ちてくる下腹部に顔を近づけていった。
その口元から真っ赤な舌が覗いているのが見えて、はぁとは冴姫が何をしようとしているのかを悟った。
「さ、冴姫ちゃん…、なにを、するの………。やめて!そんなとこ、きたないよぉ!!」
「はぁとの体に汚いところなんてない。それに、ここ、痛いんでしょ?癒してあげないと…」
「や、やだ!そんなことされたら、頭がバクハツしちゃ

チュッ

「ああーーーっ!!」
痛みが走る下腹部に、冴姫が唇をつけてきた。柔らかい唇の感触と冴姫の体温が、粘膜を通して感じられる。
そのことによってもたらされるむず痒さにより、確かにズキズキした痛みは少し引いたように感じられたが
それ以上に親友に自分の不浄な部分に口をつけられているという恥ずかしさの方が勝っており、
はぁとは両手を冴姫の頭に添え、必死になって引き離そうとした。が、

ぬろり

「うああっっ!!」
間髪入れずに冴姫が濡れそぼる舌で舐め上げたことでその目論見は脆くも失敗してしまった。
(あああっ!冴姫ちゃんが舐めてる!私の体、なめてるっ!!すごいっ、こんなの、初めてぇ!!)
ぴちゃり、ぴちゃりと舌と粘膜が擦れあう音、ふわりと感じる唇の感触、ひと舐め毎に体を突き
上げる強烈な快感は、蜘蛛の糸のようにはぁとの心をじわじわと絡めとっていった。
今まで恐怖、衝撃しかなかったはぁとの表情に、明らかに快楽と思われる表情が出始めてきている。
口元には緩い笑みが浮かび、瞳があらぬ方向へ泳いでいる。
最初引き離そうと冴姫に添えていた両手は、いつの間にかにより強く冴姫を感じようと自分の股
間に押し付けるように見受けられる。
そして、ゆっくりと快楽に溺れはじめたはぁとの体にも変化が起こり始めていた。
ほんの少し、ほんの刹那の時間だが、はぁとの双眸が緋く明滅し始めていた。今、自分を責めて
いる親友の瞳と同じ色に。
その変化の様を目の当たりにして、冴姫の眼がきらりと光った。
(フフッ、じゃあ最後の一押しをしようかしら…)
冴姫の口元になにか小さく光るものがあった。よく見るとそれは植物の種のようにも見える。
冴姫は『それ』を舌に乗せ、はぁとの中に舌とともにずぶりと押し込んだ。
「さっ、冴姫ちゃんが、冴姫ちゃんがぁ!入ってくるうぅ!!」
歓喜に震えるはぁとをよそに、冴姫は舌の先の種をはぁとの奥へ奥へと送り込んでいく。それが
子宮口の奥まで届いたのを確認すると、冴姫はずるりと舌を引き抜いた。
「あ……、冴姫ちゃん、今の、すごいの……。もっと、し、してほしい、の…」
「あ〜あ、すっかりいやらしい子になっちゃったわね。そんなにしてほしいの?」
「う…うん…」
「じゃあね…、こんなのはどう?」
不敵に笑った冴姫の指先が金色に光り、はぁとの下腹部にちょんと触れた。なにをしたのか解らず
小首をかしげたはぁとだが、その回答はすぐに理解することになった。自分の身を持って。

ドクン!!



「いっ!!」
突如、はぁとの下腹部に強い衝撃が走った。いや、衝撃なんて生易しいものじゃない。
なにか得体の知れない物が自分の腹の中で急に発生し、ぐんぐん大きくなってきている。それは
たちまちのうちに子宮を満たし、出口を求めて暴れ回っている。
「な、なにこれなにこれぇ!!お腹が、お腹がぁっ!!」
腹部を襲う強烈な圧迫感にお腹を抑えて絶叫するが、はぁとの顔に浮かんでいるのは何故か笑みだった。
やがてお腹の中のなにかは出口への道を見つけたのか、産道を一直線に下ってきた。
「あ、あ、あっ!出てくる!なにか、出てくるよぉぉっ!!うあああああああっ!!出るうぅっ!!」
ブシャッという粘液と共に出てきたもの。それはさっきはぁとを拘束していたものと同じような
金色に光る植物の蔓だった。
膣口からズルズルと出てきたそれは十重二十重と枝分かれし、はぁとの四肢に絡みついてきた。
はぁとは腕に巻きついてくる蔓を反射的に払おうとしたが、蔓を手に握った瞬間、ゾクリとした
快感が背筋を貫いた。
「ひゃっ!なに、これぇ!!」
蔓を握っていた手をパッと離してしまったはぁとを、冴姫は楽しそうに眺めていた。
「凄いでしょ、その蔓。お腹の中ではぁとと感覚が繋がっちゃっているから、蔓が受けた刺激を
はぁともまんま感じるようになっちゃっているのよ。だから、こうやって撫でると…」
「ひゃぃっ!!」
冴姫が蔓をさわさわと撫でる。すると、剥き出しの神経をさわさわとされている感触がはぁとを襲った。
「他にも…」
また冴姫の手が光り、蔓にちょんと触れと、絡み付いている蔓がざわざわと動き出し、
はぁとの肌の上をずるずると駆け巡る。
「うわああああぁぁぁっ!!」
すると、肌と蔓が擦れる刺激がはぁとの脳髄に直接送り込まれてくる。肌に与えられる刺激が蔓
によって与えられる刺激を増大させ、蔓に与えられる刺激が肌によって与えられる刺激をいや増していく。
「あ…、が……、が………」
逃げようにも自分の体から生えてきているから逃げようがなく、逃げられないが為に受ける快感は
天井知らずに上がっていく。あまりの刺激にもはや呻き声しか上げることができず、瞳孔は完全に開ききっている。
「どう?はぁと。ヒトでは絶対に味わえない『気持ちよさ』よ。凄いでしょ」
浜に釣り上げられた魚のように全身をビクビクと痙攣させているはぁとに冴姫は尋ねかけたが、
勿論はぁとにはそれに答えかけることなど出来はしない。
「………、しょうがないわね。じゃあちょっと緩めてあげる」
その一声で、はぁとの全身を弄っていた蔓の動きが少し緩やかになる。それに伴いはぁとの瞳にも
少しだけ光が戻ってきた。
「はぁと…、私の言っていることがわかるわね?」
「ああっ……、あっ……、さき、ちゃ………」
「これから、あなたに私の力を分けてあげる。私と共に、新しい世界を生きる資格を与えてあげるわ」
そういうと、冴姫ははぁとから伸びている蔓を一本手に取り、自らの下腹部に導いていった。
「んっ………」
蔓の先を自らにあてがい、ゆっくりと埋めていく。粘膜が擦れる感触が蔓を通して、はぁとにも伝わってくる。
「こ、これっ冴姫ちゃん?!あっ、あつぅいっ!!」
「あ、ああっ!!はぁとのが、はぁとのが私に入ってくるうぅっ!!」
冴姫の中を、自らを刺し貫いている蔓によって感じているはぁと。自らを刺し貫いている蔓に、
はぁとのモノを想像している冴姫。はぁとはともかく、冴姫も刺し貫かれる快感に興奮し嬌声を張り上げてた。
どちらもより深く互いを感じようと、腰を掲げ、足を絡めあい、腕を回して抱きしめあっている。
その最中、二人を繋いでいる蔓が蛍の光のようにポゥ、ポゥと光り輝いている。
よく見るとそれは、冴姫を貫いている方から発生し、蔓を通ってはぁとの貫いているほうへ移動し
はぁとの胎内へと消えていっていた。
「冴姫ちゃん!もうダメ!!私、おかしくなっちゃう!死んじゃう、死んじゃうよぉ!!」
「いいのよ、死んじゃって!死んで、生まれ変わるの!!生まれ変わって、新たな存在に、なるのよ!!」
「しんじゃう、しんじゃ、ああーっ!!」
喉の奥から搾り出すような大声を張り上げ、はぁとは絶頂に行き付いた。その瞬間、その瞳がそれまでに無いほど
真っ緋に輝いたように見えた。

「冴姫ちゃん………」
どれほど抱きついていただろうか。達した後意識が飛んでしまったはぁとがぴくりと体を動かすまでの
時間が、冴姫には永遠の間とも感じられていた。
「………、冴姫ちゃん………、あのね………」
うっすらと目を開けたはぁとが冴姫に囁きかけてきた。まだ意識がはっきりしないのか、吐く息は荒く
声も擦れている。
「なぁに?はぁと………、えっ?」
冴姫の前に広がるはぁとの顔に、不意に笑みが浮かぶ。すると、はぁとの全身に絡み付いている
蔓がゆっくりと動き出し、冴姫の体に絡み付いてきた。
「冴姫ちゃん………私、すっごい、すっごい『気持ちよかった』よ………。うふふ…」
冴姫を見るはぁとの双眸は、冴姫と同じく鮮やかな緋色に光り輝いている。そして、自らに埋も
れる蔓を明らかに自分の意思で動かしている。
はぁとが、冴姫と同じ存在になったのは今や明らかであった。
「ああ………、はぁと!」
「冴姫ちゃぁん、今、私すっごい感じるの。この世界に広がりつつある聖霊さんたちの力と、新しい世界の力を。
これって、凄いよね。私、なんであんなに嫌がっていたんだろ。みんなが同じ世界で一緒に暮らす。
考えてみれば当たり前のことなのにね」
「そうよ………。はぁとも、やっとわかってくれたのね」
「うん…。新しい存在になれたからね。ヒトのままだったら正直、わからなかった。
聖霊さんたちと同じ体になれて、初めて本当に聖霊さんたちのことがわかったような気がする、よ」
冴姫がはぁとに向ってにっこりと微笑む。はぁともそれに微笑み返した。
「ねえ、はぁと………。私と一緒に、来てくれる?」
言うまでもない。この言葉こそはぁとが一番聞きたかった言葉。
「勿論だよ、冴姫ちゃん」


東京上空に浮かぶ城…夢幻宮周辺が突如光り輝き始めた。
いや、力あるものがそれを見た場合、その光の中に無数の人影があるのを確認しただろう。
そこにいるのは新たな世界の創造主により使わされた使途。ミルドレッドの手にかかったかつて
英国聖霊庁に所属していた聖女や夢幻宮で力尽きた数々の聖女が転生した姿。
勿論、その中には廿楽冴姫や愛乃はぁとの姿も見て取れることが出来た。

「「我らは代弁し、代行す。神は我らと共にあり」」

冴姫とはぁとが祝詞を奏でる。

「「「力ある者は我らと共に。力なき者は我らの糧に」」」

夢幻宮に集う使徒たちが言霊を唱える。彼女達が生み出す光、創生の光はその光度をどんどん増し
周辺に広がってゆく。光に囚われた力なき者はその強さに耐えられず光の中に融解し、力ある者は
光に取り込まれ高次の存在として転生する。やがて光は世界を覆い尽くし、世界はかつてあった姿
に戻るだろう。そのことによって起こる災厄が、どのようなものかは知る由も無いが。

この日、関東は崩壊した。
そしてこれこそ、この世界そのものが崩壊する最初の一歩だった。