転職

『転職』



  私の名前は、エルザ。旅の僧侶をしています。
  ……いえ、もう元僧侶ですね。
  今日、私はダーマの神殿で遊び人に転職します。



  ジパングでヤマタノオロチを倒した夜、私達のパーティーのリーダーである勇者様は、私だけを宿屋に呼びました。
  神に仕える身ですが、何も期待していなかった、と言えば嘘になります。
  私より年下で、アリアハンを旅立った時には身長も私より低かった勇者様でしたが、最近は筋肉も付き、いつの間にか
 背丈も伸びて、私より少しだけ大きくなっていました。
  永い旅の間に、二人の間には信頼感が芽生え…… キャッ♪
  コホン。
  私は何を言っているんでしょうか。
  ともかく、勇者様の話の内容は、私の期待していたというか、期待していなかったというか、つまり想像していた内容
 とは違うものでした。
  
 「君に、賢者になってもらいたいんだ」

  勇者様は、私にそう言いました。
  その時、私達のパーティーには、勇者様、僧侶の私、元魔法使いで賢者のアリア、武闘家のミャオがいました。
  バランスの取れた良いパーティーでしたが、勇者様は、ヤマタノオロチに苦戦しているようでは、世界を狙う魔王バラ
 モスとの決戦は危ういと考えたようでした。

  私は、了承しました。
  こんなことを言うとアリアハンの両親に怒られそうですが、私が僧侶を志したのは、神様に全てを捧げる為というより
 も、好きな学問を続けていたいと思ったからなのです。賢者ともなれば、もし無事に冒険を終えることが出来れば何処か
 の国の宮廷に雇って頂き、様々な研究をする道も開けます。
  正直な所、悟りの書を使ってアリアが賢者になったのを、嫉ましく思うことも無かったわけではありませんでした。
  でもそこで、私は不思議に思いました。
 「勇者様、悟りの書はどうするんですか?」
  勇者様は、苦笑いをしました。そして、
 「理知的な君なら、きっと大丈夫だよ」
  と言ったのです。


  転職は思ったよりすぐに済みました。
  偉そうなオジサンがムニャムニャって呪文を唱えて、後は着替えてお仕舞い。
  ルイーダの酒場で遊び人のビビアン姐さんの格好を見てた時は、
 「自分があんな格好したら、恥ずかしくて死んじゃう」
  って思ってたんだけど、意外にそんなことはない。
  ダーマの辺は寒いから少し堪えるけど、その内に慣れるでしょ。




 <二日目>

  転職して困ったのは戦闘中にすることがないってことです。
  いや、してもいいんだけど、でも、それじゃ僧侶と変わらないんじゃない?
  賢者になる為には、「真面目に」遊び人をしないと。


 <七日目>

  最近、生きることが楽しい。
  前まで、色んなことを堅苦しく考えていた自分が馬鹿みたいに感じる。
  今日は勇者さまの剣を銅の剣にすり替えておいた。
  戦闘前に気が付かれちゃって、とっても怒られた。
  私は真面目に遊び人をしているだけなのになぁ。
  明日も何かたのしいことをして生きようっと!


 <十二日目>

  許せない。許せない。許せない。許せない……
  昨日の晩、偶然見てしまった。
  私が夜の燕狩りから帰って来たら、勇者クンの部屋からアリアが出て来たのだ。
  それで、ぜーんぶ分かった。
  アリアは、私が悟りの書を欲しがっているのを知ってて、わざと使ったんだ。
  勇者クンを誑し込んでまでそんなことするなんて最低だ!
  許せない!


 <十五日目>

  今日は、アリアの靴に画鋲を入れた。
  思ったより傷が深かったみたいで、今日の冒険は中止になった。
  ホイミで治せばいいのに。
  勇者クンは、
 「雨も強いし、休養も兼ねて」
  なんて言ってるけど。
  なんて言ってるけど!!


 <十六日目>

  今日も雨。
  暇だ。


 <十七日目>

  今日も、雨は止まない。
  退屈になったから、仲良くなった夜の燕と飲みにいく。
  そこで、面白いことを思いついた。
  酔った勢いもあって、燕クンに打ち明けると、彼もノリノリだった。  



 <十八日目>

  晴れ。
  でも、冒険は中止。
  何でって?
  そ・れ・は……
  アリアちゃんが行方不明だからで〜っす♪
  ほ〜んと、どぉ〜こに行っちゃったんでしょうねぇ?
  まぁ、悟りの書欲しさに勇者クンに股開くような女だから、どっかでヨロシク
 やってるんじゃない?


 <十九日目>

  ミャオが私に疑いの目を向けている気がする。
  ……気をつけないと。
  ちなみに、淫乱アリアちゃんは今も見つかっていませ〜ん♪


 <二十日目>

  アリアちゃんが見つかりました〜。
  何でも、草むらで独り者の男の人たちの相手をずぅ〜っとして上げてたんだって。
  女の鏡ねぇ〜
  まぁ、アリアちゃんの「女の子」はもう手鏡くらいな入っちゃうくらいになって
 るんじゃないかなぁ。


 <二十一日目>

  まずい。
  ミャオに気付かれた。
  今日、報酬を燕クンに渡しているのを、見られた。

  ……手を、打たないと。


 <二十二日目>

  そして、ミャオもいなくなった。

 <五十五日目>

  私の名前は、エルザ。遊び人をしてま〜す。
  ……あ、もう元遊び人かな?
  今は私、アリアハンの牢獄に繋がれてます。
  でも、普通の囚人さんとはちょっと違うんだ♪
  だって、私は囚人さんなんじゃなくて、囚人さんの相手をする為にここにいるの。
  ここに連れて来られる前に、ダーマの神殿って言うところで、「遊び人」から、
 「せいどれい」っていう職業に転職したの。
  ゆうしゃさまがそうしなさいって。
  だから、私は、ここにいます。
  いまも、これからも。

  ……真面目に、「性奴隷」として……


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