セーラームーン




祭壇の上から悠然と見下ろすクンツァイト
その目線の先には4人の少女の姿があった―
呆然と立ち尽くし、意識朦朧となった4人のセーラー戦士
いや、かつてセーラー戦士と呼ばれていた4人の少女達

「さあ、目覚めるがいい」
その言葉を合図に、4人の両眼が一斉にどす黒く光輝く。
キィィィーーーーン・・・・

一度静かに目を閉じ、一呼吸あけたのち
主クンツァイトに曇りがかったまなざしが送られる。

「ダークマーキュリー」 「はっ」


「ダークムーン」    「はっ」

次々と新たな忌名が与えられていく。
そして、それを受け入れうやうやしく片膝を立て礼をする。
一片の迷いのない返事がクンツァイトの耳に心地よい。

「ダークマーズ」    「はっ」

水野亜美が―  月野うさぎが― 
そして今、火野レイまでがダークキングダムの軍門に降った。
そして―

「ダークジュピター」  「はっ」

最後の一人、木野まことが終わりを告げる言葉を発してしまった。

「さあ、行け」
静かにうなずくと、瞬く間に自らの指令を遂行すべく
4人の姿がその場から消えうせた。
ダークセーラー戦士の初陣である。



「「「「ダークメイクアップ!」」」」

その言葉が一斉に吐き出され
自らを取り囲む4人の新たな妖魔の姿を見たときの
愛野美奈子の絶望的な表情は語るまでもなかった。

じわじわと、美奈子に歩み寄る4人
「やだ・・・やだ・・・  」

「何をそんなにおびえているの?」


「目を覚まして、亜美ちゃん!
 あなたたちは操られているのよ!?」
「違うの・・・ 美奈子ちゃん・・・洗脳とかそんなじゃないの」
「クンツァイト様はきっかけを与えてくださっただけ」
「みんな、本当の姿に目覚めたのよ・・・」
「さあ、美奈子ちゃんも・・・」

「ひいいいぃぃぃ・・・・」
恐怖 絶望 悲しみ に覆われる美奈子
しかし、彼女はやがて、それらが無用な感情であったことを知ることとなる。
4人がやさしく美奈子の頬に手をかざすと、暗黒のエナジーが発せられ
戦闘意欲を失った美奈子に逃れるすべはない。
やがてエナジーは5人の身体を包み込む。

暗黒のエナジーの中では、5人の意識は共有されていた。

「そっか・・・ そういうことだったんだ・・・」
「ね。 わかったでしょ 」
「うん。」

美奈子を中心に、一つになって抱きしめあう5人。

そっと、誰かがつぶやく。
「私、幸せよ・・・」 「うん・・・」

「さあ、行きましょう」
「これからも」
「みんなで」



「「「「「 ただいま帰還いたしました 」」」」」
整然と謁見の間に整列するダークセーラー戦士達
もちろんそこには、ダークヴィーナスの姿も・・・

「くっくっくっくっ・・・・全員揃ったか。実に良い眺めだ。
  あの忌々しいセーラー戦士どもは一体どこにいったというのだ?」

「クンツァイト様 そのようなあさましき者はもはや消えうせました」
「ここに揃いし我等五名」
「ダークキングダムの忠実なる永遠の下僕」
「ダークセーラー戦士」
「クンツァイト様、次の御命令を・・・」


5人のセーラー戦士は戦いに敗れ、
あまつさえも倒すべき宿敵に完全なる忠誠を誓う。

ここにセーラー戦士は全滅した。

彼女達は、肉体的にも精神的にも敗れたのだ。
それは戦士としての完全なる敗北。
その彼女達に残された道は、完全なる服従以外にはない。
そう。彼女達は暗黒のエナジーを前にして
無意識のうちに、自分の意思で妖魔として従う事を選んだのだ。
甘美なる誘惑にうち負け、暗黒の世界に身を染めた彼女達が元に戻る事はない。
その肉体も心も力も、全て自らダークキンダムに捧げたのだから・・・

色とりどりの五つの暗黒の星々。
主人の命があるまでは、じっと瞬き一つせず、厳粛に息を潜め
敬愛の表情を浮かべつつ直立し、整列を崩さない。
その姿は壮観ですらあった。
にくき小娘どもが、今では自分の美しき手駒と化したのだ。
クンツァイトはただ完全支配の達成感に酔いしれていた。

「くっくっくっくっくっ  ふはははははは!! 素晴らしい・・・
   唯一つ残念な事は、この晴れ姿を
    かつてのおまえ達自身に見せてやりたかったものだな。
      どんな表情をするか想像するだけでもゾクゾクするぞ くくく 」

5人はその屈辱的な言葉にも、何らの表情も見せることはない。


ただ、静かに命を待つだけであった



END




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