魔女たちのチェスゲーム

私達の国は長く平和を享受していたが、ある時、その安寧が敗れる時が来た。
辺土にある暗き闇の森より、黒い魔女の王が来襲したのだ。

魔女という種族は外見は人に似ているが、人ではなく魔族の一員である。
誰も彼も皆、非常に美しい女の外見をしているが、その肌は蒼白で
瞳は鮮血のような紅の為、簡単に見分けは付く。

魔女の王の手勢は少数だったが、いずれも人を超えた力の持ち主であり、凶暴な魔獣であった
私達の国は小さく、軍隊も小さかった為に、長く苦戦を強いられることとなった。
それも、魔女の魔物はほとんど討ち取り、長かった戦いもようやく終わろうとしていたその頃・・・

剣の章

参ったな。

どうやら友軍から逸れてしまったようだ。
わたしは辺りを見回す。此処は、数ヶ月続いている戦火で廃墟になった農村だ。
どちらに火をつけられたのか、焼け焦げて、廃墟となった家屋が立ち並んでいる。

深入りしすぎちゃったか。

頬を指先で掻いた。此処は敵陣だ。見つかれば拙いことになるだろう。
人間いつかは死ぬものだが、魔族に捕まるのだけは御免だ。
魔女は捕虜を取らない。恐怖や苦しみ、苦痛といった人間の負の感情を食らうのだ。
奴らに捕まった人間の末路を目にしたことがあるが、いたぶり殺されるのは趣味ではない。

とにかく、味方の所に戻らないと。

方角の見当をつけて、歩き始めてすぐの事だった。建物の影から、子供の悲鳴が聞こえた。
此処は敵地、敵が複数いるかもしれないと考えて、一瞬躊躇したが駆け出した。
魔女の数は多くなく、既に戦で弱いほうの大半は討ち取っている。
こんな所に、複数いるとも思えない。
それに何より、子供を見捨てては寝覚めが悪い。

駆けつけると、武装した人間が地面に数人倒れ伏していた。
我が軍の兵士ではない。とは言え魔女や、魔女側の傭兵でもあるまい。
廃墟となった村を襲う、野盗の類であろう。
彼らは既に事切れ、そしておそらく最後の一人か。
男が剣を振り上げて、壁際に追い詰められた少女を斬ろうとしていた。

止めろ!その叫びで男が動きを止めた。短剣を投げつける。
男が振り返って仰け反って避けた。その隙に少女がこちらに駆け寄ってきた。

女!王国の兵士だな。正気か?そいつは魔族だぞ!



縋りつくような目をして、私の背中に隠れた少女。
確かに魔女だった。その抜けるような蒼白の肌に、金色の瞳。珍しい。
魔女の瞳は全て赤だと思っていたが。格好は、普通の子供のようである。
私が王国の兵士だという事実に今、気づいたのか。
少女が目を大きく見開き、恐怖を顔に浮かべて後ずさった。

まだ、子供ではないか。

苛ついた様子で男が叫んだ。

分かってねえ、そいつは魔女だ!殺せ!

私の前で子供は殺させぬ。例え魔女であろうと、だ。
私は言い切った。子供の死を見るのは、例えそれが魔女でも、もう沢山だった。

それ以前に盗賊が見つかって、ただで済むと思うなよ。

てめぇ・・・

下級兵ながら歴戦のうちに私は、相当強くなっていた。
あっさりと野盗の剣を跳ね飛ばし、腹を薙いだ。

畜生・・・どうして、こんな・・・死

傷口を押さえて、男が泣きそうな顔で首を横に振った。
魔女を目の前にして、人間同士で殺しあうことに悲しみを覚えたのか。
私もやりきれなかった。

止めを刺してやる。

・・・いらねえ

苦しむぞ。

ああ・・・苦しんで死ぬだろうな。

そうか

踵を返し、背後を見た。少女はまだそこにいた。

私を・・・どうするの?

どうもしないさ。今日は、もう、大勢死んだ。

見逃してくれるの?

此処はお前たちの世界じゃない。戦場であったら、容赦しない。

御姉さん、優しいね。でも、いいの?私は・・・

甘いんだろうな。出来れば、森へ帰れ。

そうね、互いに大勢死んだわ。

少女が真摯な表情で私を見上げた。
わたし、貴女が欲しいな。仲間だったら良かったのに。

その日、敵の本陣に辿り着いた私たちの前に立ちはだかったのは、三人の魔女だった。
恐らくは、魔女達の最後の生き残りだろう。彼女達は恐ろしく強く・・・

黒き魔女の王を前に、私は地面に這い蹲って惨めにうめいていた。

こんなに…強かったのか。あの時は、どうして……

疲れていたのよ。あの時は…。それに多人数相手は苦手なの。

少女の苦笑したような言葉を前に、私は自嘲の笑みを浮かべた。

甘か…た…のか。まさかこんな子供が・・・首魁だったとわ。

止めを刺すべく、魔女王の隣の黒い剣士が近づいてくる。

待ちなさい。その人は殺しては駄目よ。

え…しかし、この者は味方を大勢殺しましたよ?

どうせ、獣と一山幾らの傭兵でしょ

士気に関わりますから、味方の前でそんな言い方はよしてくださいね。

黒い剣士が、私を見下ろした。情けないことに、私の体はピクリとも動かない。

で、どうするんです?

かねてからの、欠員の補充にする。

なりますかね?

わたしが「説得」するわ。

分かりました。

黒い剣士が近づいてきて、私を抱え上げた。

少女の不気味で寂しげな微笑みを最後に、意識が遠ざかる。



槍の章
エレーンが帰ってこない。恐らくは死んだのだろう。
敵の本陣への攻撃は、やはり、まだ早かったのだ。
歩兵とは言え歴戦の戦士とその一団を失い、戦はやや膠着状態に陥りかけていた。
槍を手に取り、早朝の陣営を散歩する。彼方此方に早朝の白い霞が掛かっている。
我が友。我が幼馴染。御人好しのエレーン。

目から勝手に溢れ出た塩水が頬を流れていく。見られたくない。ひどくみっともない。
騎兵の装束をした栗色の髪の女兵士が一人、地面に座り込んでいた。
彼女の目の前には、幾つかの積み上げた石。墓標代わり。手に酒瓶を持っている。
「レイニア殿か」
「やあ、ミュラ。貴殿の幼馴染を弔っていたところだよ」
お前も付き合えと、酒瓶を差し出してきた。
槍を地面に置き、座り込んで素直に受け取った。
「殺しても、死なないような奴だと思っていたのになぁ」
レイニアがしみじみと言う。
二人して生き残れる目星が付いていたと言うのに、これだ。
「一緒に行けばよかった。そうすれば…」
私が嘆くように云うと
「確かにな。あいつ、本陣まで突破したそうだから」
問いかけるような視線を感じたのか。云いにくそうにレイニアが口を開いた。
生き残りの兵士が言ってた。
「あいつ、生きて捕まってしまった」
「そんな…」
足が震えた。顔から血の気が引くのが分かる。
ただ、敵も感じ入っていたようだ。あまり惨たらしくは…ミュラ?ミュラ?!

「大丈夫か。顔色が酷く悪い」
心配そうな顔をして、覗き込んでいる。正直、ほっといて欲しかった。
「弄り・・・殺されたのでしょうね」
「それは…」
独り言のように云って、一人で結論付けた。
「無理しなくて結構です。私たち二人とも、最初から覚悟していたことですから
仇は、取りますから。いえ。私が取らなくてはならないんです。」
「…敵に新しい魔女が出てきたのを知っているか?
三人目の黒い剣士だ。正直、エレーンと同じほど強い。」
「それが?」
話していいのか、どうか、レイニアは数瞬迷うようにしてから、言葉を続けた。
「兵士達の話では、そいつ、クリュエステを…持っていたと言うんだ。」
「……エレーンの剣を」
「もちろん、見間違いと言うこともある。
ただ、魔女の王から与えられたのかも知れないが、エレーンを倒して奪ったのかも」
「なるほど…」
かすれた声でつぶやいた
「そいつ、今は何処に?
「西の戦線。廃墟になったザスの町の辺りだ。あそこの近くの森に・・・」
互いに兵力の手薄なところだった。
「好都合ですね。」
毒蛇のように微笑む。
云ってよかったのか、な。
ほろ苦い顔をして、騎兵は呟くように云った。
「あんたらは仲が良かったから。知るべきだと思った。
隊長には、上手く言っておく。それと…」


「有難う、レイニア。」
今度は邪気の無い微笑み。
レイニアが私を見た。瞳に、懸命の願いを込めて、
「帰ってきておくれよ。ミュラ。あんたの分の弔いの酒はまだ、用意していない。」
「ええ、必ず。」
誓って、わたしは立ち上がった。

「何故…貴女が…」
震える唇から、血の吐くような思いで
「どうして?」
肌の色が違う。瞳の色が違う。
でも、それくらいで見違えるはずが無い。分からないはずがない。
幼馴染だ。世界で一番大切な友人だ。
森の中で邂逅したのは、姿形の変わった友人だった。
この魔女は、エレーンだ。太刀筋も構えも間違いない。
エレーンが、殺気を篭めた視線で、私を睨んでいる。
コレハ、嘘ダ。ナニカノ間違イダ。コンナコトアルハズ無イ。
エレーンガ、私ニ剣ヲ向ケルナンテ…アッテイイ筈ナイ。
腕が萎えた。力が抜けそうになる。
必死に衰えそうになる気力を奮い立たせて、睨みつける。それでも、足が震えた。

何があったのだ。どうしてエレーンが…
周囲では仲間の兵士たちが、悲鳴を上げてばたばたと倒れていく。
でも、動けなかった。
「エレーン。」
恐る恐る呼びかけた。エレーンは応えない。
周囲に静寂が立ち込めた。味方は全滅したのだろう。
背後から、落ち葉を踏む足音が近づいてきた。
「どうしたの?エレニュオス。」
「サリティルオ姉様。」
エレーンがこちらを睨んだまま、唇を動かした。
「この者は友人です。」
ああ、エレーンは私のことをまだ覚えていた。なら、まだ望みはある。
その時は、愚かにもそう思った。

「友達?」
その魔女が、私たち二人を見比べた。
「本当に仲が良かったのね。姿形が変わったものを、一瞬でその魂を見抜くなんて。」
「ええ、だから…私が殺します。」
あ…
それを聞いて、どうでも良くなった。どうでも良くなってしまった。
多分、その時、私の魂は打ち砕かれたのだ。
へなへなとその場に座り込んで、ほうけた顔でエレーンを見上げた。
「エレーン」
頬を涙が伝う。もう恥ずかしいとも思わなかった。そんなことはどうでもいい。
何があったのかは分からない。
でも、エレーンは変わった。変わってしまった。
かつては、二人で助け合ったその剣を使って、私を殺すなんて云う。
恐らく、魔女の王に変えられてしまったのだ。邪な力で。
魔女の王。急激に怒りが湧いてきた。感情を凍結させて、戦う為に立ち上がる。
「エレーン。魔女の王ね。そいつがあなたを変えたのね。」
「ええ。我が君が新しい命を与えてくださった。」
我が君…親友の口から出た言葉に、わたしは吐き気を覚えた。
かつては考えられなかったことだ。
「許さない。あんたをそんな姿にしたその怪物を殺して…そうしたら、あんたは元に戻る?」


「戻らないわ。戻る気もない。」
すがりつく言葉への否定を耳にして、冷ややかに決別を宣告した。
「そう。では、まずあんた達から殺すわ。」
槍を構えた。

「この子。面白いわね。」
「侮らないで、姉様。彼女はとても強い。」
「分かるわ。でも、二対一なら…」
「どうか手を出さないでください。」
緊迫した場に合わないのんびりした様子で睨み合う二人を見比べ
「…危ういわよ。」
「これは、私が蹴りを付けなければならないことです。」
「分かったわ。」

なんて事、なんて甘さ。最後に情が私の穂先を狂わせた。
エレーンを救うことも出来ず、わたしは地面に倒れ伏していた。
「あっ・・・がはぁっ・・・」
血の混じった咳を繰り返した。体の下の落ち葉に、血が滲みこんでいく。

立っているエレーンも満身創痍だった。だが、魔女だ。すぐに回復するのだ。
「エレーン…御免ね。あんたを…救えなかった。」
エレーンが手を伸ばしてきた。頬にそっと触れる。
「ミュラ…お願い。私と同じになって。」
「・・・同じ?
「そう、魔女に。それでずっと一緒にいられる。これから百年でも。千年でも。」
出血に朦朧とした意識で、言葉を返した。
「それは・・・出来ない…仲間は、裏切れない。」
「あなたの仲間は誰?私じゃないの?」
「どうして…
どうして…裏切ったの?どうして…
子供のようにしゃくりあげながら、わたしは繰り返し問いかけた。
エレーンは、辛そうに唇をかんだ。
「逆らえないの。魔女の王には。私たちは、そういう種族だから。」


森の一角に影がわだかまり、揺らぎ、その場に二人の魔女が生じていた。
「間に合ったかな…この子?
「なるほど…凄くいい。だけど、本当に仲間にしていいの?エレティニオス
もっとも若年に見える金色の瞳の魔女が、エレーンに問いかけるように瞳を向けた。
魂の半分は呪縛するけど、半分は自由よ。牙を剥くかもしれない。
「なった後は、私が「説得」します。時間を掛ければ…」
少し辛そうに、だけど瞳を潤ませ、頬を青色に紅潮させて。
「分かってくれるでしょう。」
そばに控えた第四の魔女が、渋面で少女にささやいた。
「危険です。エレニュオスはまだ日が浅い。二人して刃を向けたら…」
「黙って。」
手を振って、進言を退けた。
「分かった。あなたに賭ける。どの道、我が種は減りすぎた。この子を眷族に加えましょう。」

そんな言葉は、私に届いていなかった。
まだ昼時なのに、周囲は既に暗くなっていた。
虚ろに天を見上げ、死ぬのを待つばかりに…
ミュラ…
エレ…ン?
返事をして、ミュラ。
どう…して、泣いてるの?貴女…泣き虫だから…誰かに、泣かされたの?
ミュラ、ああ、ミュラ・・・
私が、まもら、なくちゃ…
守って、これからも、私と一緒にいて。
ええ・・・ずっと一緒、だよ、やくそく、したじゃ、ない。・・・へん・・・なエ・・
なら、私と同じなると云って・・・お願い・・・云って
それで・・・泣きやむなら・・・いうよ・・・
はやく、まにあわない・
おなじになる・・・なるよ・・・ああ、だからもうなかないで・・・えれ


目の前で肉色の壁が、脈動していた。
それが天井だと気づいた時、自分が気を失っていたのだと思い出して、半身を起した。
周囲は薄暗く、しかし、壁の彼方此方が薄い蒼の光を放っていた。その為だろうか。
私の肌も、蒼白の色に染まって見える。
裸か…それにしても…
周囲を見回す。壁は不気味に脈動を繰り返し、時々、生き物のように蠕動を繰り返した。
不気味な光景にも拘らず、奇妙に心安らかになる。
この、まるで我が家に帰ったかのような強い安心感と充足を覚えて、我ながら奇妙に思えた。

お目覚め?ミュラ
背後から声を掛けられた。
エレーン?
エレニュオスよ。
振り返ると魔女が二人、岩の上に座り込んで苦笑していた。
足元には縛られた娘が一人、転がっている。
三人とも、何故裸なのだ?

縛られた娘が声を上げた。
その声・・・隊長ですか?
シルクか、見えないのか?
こう真っ暗闇では、何も見えません。
シルクは辺りを見回していた。
何を云っているのだ。こやつは?
青白い炎がこれだけあれば、周囲の様子くらい分かるだろうに。

ミュラ
エレーン。
親しみを込めて呼びかけてくる彼女の顔を見て、胸がトクンと高鳴った。
ここは・・・
ここは家よ。私たち皆のね。
魔女達の本拠か。
ええ。魔女たちの、私たちの棲家よ。
私たちを強調した。その言葉と、静かな顔に不安と動悸が激しくなる。

居心地はどう?安心するでしょう?
傍らに立つ、もう一人の魔女。金色の瞳の少女。
彼女たちに対して不思議と敵意が湧かない。それどころか・・・

ここは瘴気が充満している。魔女なら心地がいいはずよ。
貴女も、ね。
「・・・馬鹿な。
情けなく声が震えた。
まさかと思った。だが一方でそんな予感もしていた。
もう、私は人間ではないと…
縛られて蓑虫みたいになっているシルクがわめいた。
魔女?何云ってるんだ。この怪物共!お前らなんかに隊長が・・・
少し黙ってなさい。人間。
少女が煩そうに、部下のお尻を蹴った。
ぎゃん!

貴女にも、見せてあげる。
少女が楽しげに言って、指先に赤色の炎を灯した。
部下が目を見開いて、私を凝視していた。
蒼い肌は、周囲を照らし出した赤い光の下でも変わらなかった。
魔女・・・
呆然としたその呟きに、私の胸で何かが割れた。
シ、シルク
歩み寄ってシルクの顔に恐怖が張り付いた。
よ…よるな!
あ…
言われ、脅えて後ず去った私の様子に、シルクが目を見開いた。
あ…ち、違う!違います。隊長、私は…
黄金の瞳の少女が、嬉しそうに、楽しそうに鈴のような声で高らかに哄笑を響かせた。


本当よ。
エレーンが近づいてきた。
耳元で小さく囁き、肩に手を回して抱きついてきた。
あ・・・
引き寄せられる。まるで嫌じゃない。それどころか、凄く嬉しかった。
まるで最愛の家族か恋人と数年ぶりに再会したかのような昂りだった。それ以上かも知れない。
私はこの二人、特にエレーンと心で繋がっているような安心感と愛情を覚えていた。
覚えていない?
首を傾げて、私の顔を覗き込む。
私の為に魔女に成っていいと、言ってくれたじゃない。
それは・・・
思い出す。あれは夢ではなかったのか。
凄く嬉しかった。

そう云って微笑むエレーンの顔は、過ぎし日の彼女と何ら変わりなく
「……」
「人としての命がそれほど大切?」
その問いかけに、胸が締め付けられる
「仲間は…裏切れない。」
「でも、人間達が貴女を仲間だと認めてくれるかな?」
「信頼していた部下さえ、否定されたのに。
「この体にしたのは…お前たちだろう」
「そうよ。だけどもう、貴女も私も人の世界では生きていけない。」
力なく肩を落とした。

ねぇ、キスしていい?
「・・・
躊躇していると、応えを待たずエレーンが、エレニュオスが首を傾けて口づけしてきた。
ん・・・
青色の長い舌が踊り、互いの口腔を嬲っていく。
手を後ろに回しあって、強く抱きしめる。
唾液を口の端から垂らしながら、長い長い口づけを交わした。

「ん・・・ぷはぁ・・・」
彼女と私の唇に、赤い光を受けて輝く唾液の糸が掛かった。
エレーン・・・エレニュオス・・・
「ずっと、貴女とこうしたかった。ミュラ」
見上げてくる顔は、凄く心細げで、捨てられることを恐れているかつての幼い日のように

頭のどこかで警報が鳴っていた。
「駄目だ・・・いけないよ・・・こんなの・・・
そう口では否定しながらも、体の奥底が熱く疼いていた。
這い回る手のそった肌が、冷たく熱い。

「しっかりしてください。隊長!」
シルクの悲痛な叫びも、まるで耳に入らない。
「どうしたんですか!貴女はそんな人ではなかったはず!」

「無駄よ。あの二人。やっと積年の想いを成就させるのだから」
部下の傍らで、少女がくっくっと笑う。
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてなんとやらよ。
最も、二人とも聞いてないみたいだけどね。」

「ねぇ、凄くしたい。」
潤んだ瞳のエレニュオスが腰を押し付けてきた。固く、熱い股間の剛直が、太ももに当たる。
「貴女と一つになりたいよ。ミュラ」


「いや?」
もう、どうでも良かった。熱で霞が掛かったようになった頭で、私は頷いた。
何がいけないのだ。私はずっとこの子を愛していたのだから。構わないではないか。
「いいえ。私も貴女と一つになりたい。」
応える。
「触って…ミュラ
互いの胸を押し付けあいながら、おずおずと股間に手を伸ばした。
エレニュオスの股間から生えたそれは、極彩色をした巨大な芋虫のようだった。
固く、太く、節々で大きな瘤が隆起しており、それ自体が一つの生き物のようにうねうねと動いていた。
「凄い…」
欲情に熱いと息を吐いて、ぬるぬるとした粘液を分泌しているそれに指先で触れる。
と、慄いたように動いた。

秘所から、とろりと蜜が零れた。
床に倒れて、マグロになる。というか、四肢の先端まで電気が走ったように痺れ、頭には熱く霞が掛かって、
動くよりもこのまま身を任せたかった。
「股を開いて……」
「うん」
エレニュオスの言葉に素直に従った。

部屋の隅で二つの影が蠢き、ひそひそと囁きあった。
新たな魔女が生まれる。新しい妹が誕生する。

少女が、シルクの背中を椅子にして目を細めた。
貴方は運がいいのか、悪いのか。
新しく魔女が生まれる瞬間を人間が見れるなんて、滅多にないんだから。

「……あ」
エレニュオスが芋虫をわたしの秘所にあてがい、じりじりと突き入れてくる。
「あ……ああ?ひぃあああ!!」
それは、周囲の秘肉を蹂躙しながら、ゆっくりと子宮の奥まで貫き通した。
子宮の奥から、甘い電気が走った。全身には暗い炎が踊り狂い、目の前にはちかちかと火花が散った。
「ひぎ……かはぁ……」
「苦しい?私も最初に、姉さまにされた時は苦しかったから」
「いい……動いて」
「ほんとに大丈夫?無理しなくて」
「いいから……続けて、貴女を感じていたいの」
果たして、私の彼女へと抱いていた想いは、こんな恋慕の類だったのだろうか。
だが、動かれると頭の片隅のそんな疑問も消散していく。


じゃ、いくよ
喉から出る声が甘くとろけていた。
エレニュオスが、腰を動かし始める。
右に左に、浅く浅く、深く、回転させ、その手と舌が這い回って、胸と首を別個に各個劇はしていく。
背中に、腋に、腹に、瞼に、額に、髪に、耳に、首筋に、胸の谷間を、先端を、柔肉を・・・
這い回り、噛み、舐め、撫で、擦り、揉み、掴み、また揉みしだく。
「ふあっ……ああ!……ああん!」

与えられる快楽のあまりの強さに、腰が、胸が、全身、自分の物ではないかのように勝手に踊り狂う。
狂う。気が狂う。躰が狂う。心が狂う。
「気持ちいい?ミュラ」
「あ、あぁん……いいっ……気持ちいい……凄く気持ちいい……はああっん!」
「ああっ、嬉しい。嬉しいよぉ!ミュラが私ので感じているぅ!」


魔女との性交が凄いとは聞いていたが。これほどとは思っていなかった。
なるほど……された者が虜になる訳だった。
なのに……

「ああ……いけない。いけないよぉ!」
エレニュオスに突き上げられながら、私は半狂乱になって叫んだ。
いきたいのに、いけない。
「どうして?どうしてぇ?」
白痴のように愚問を繰り返していた。

「それは、貴女が心から魔女になっていないから。
だから、肉は私のものになっても、心はまだ私と繋がりきっていない。」
少女が近づいてきて、背中からしゃがみこむと尻の後ろの穴の周りを長い舌で嬲りながら、尻肉を揉みしだいた。
「魔女になると誓えば、気持ちよくなれるわ。
心から私に忠誠を誓うの。そうすれば、魔女になれる。」
「ああ……なる。なるぅ……だから……」
「いいの?後戻りは出来ないわよ?」
少女が心底嬉しそうに、邪悪な笑みで尋ねた。

「もういいのぉ……どうなったって、いい。だから……だからぁ……いかせてぇ」
「では誓いなさい。」

教わることなく、私は少女の名を呼んだ。
それが魂を売り心の奥底で魔女の魂に繋がった証。
「『   』さま…夜魔を統べる御方……ああ、貴女に忠誠を誓います。
私の身も、心も、貴女のもの……」
少女に、我が主に手をさし伸ばした。
貴女の槍となり、あなたの敵を滅ぼします。
ふふ。いい誓約ね。まさしく、戦士の言ね。

『   』様が、私の指に優しく口づけて、顔を乗り出し耳元で囁いた。
許すわ。おいきなさい。

「いくよ、ミュラ。私イクゥ!」
「あああ……はああああああ、私もいくぅぅぅ!」

抱き合った私とエレニュオスが、同時にピィンと体を突っ張らした。
私は喜悦の絶叫を放った。エレニュオスが呻いて精を放った。
その精もまた全身にしみこんで、私の体を造り変えていく。
部屋の四方から、魔女達の祝福の叫びが上がった。

力尽きたように、エレニュオスが荒い息をしながら頭を私の肩にもたれてきた。
失神したようになった恋人の名前を呼んで、その髪を優しく撫でる。

「正しい者の魂を……それも自分の大切な者を、魔の精で穢したわね。」
少女がしゃがみ込んで、喘いでいるエレニュオスに口づけをした。
「これで貴女は真の魔女に成った。」

そして、私に向き直る。
「貴女は誰?」
全身に回った陶然とした酔いを、戦士の性で意識して急速に覚ました。
私は、主を見上げてはっきりと云った。
「我が名はミュラカナス。夜魔の女王に仕える魔女です」

「よろしい」
我が君が、御満悦の様子で肯いた。

「お腹が好いたでしょう。ミュラカナス」
食べていいわと、魔女の王がが手を伸ばして部屋の一点を指し示した。
指差されたシルクが、猿轡の下で恐怖の喘ぎをあげた。
信じられないものを見るように、大きく目を見開いて私を見つめ、いやいやと首を振った。
わたしは強烈な餓えを感じてふらふらと立ち上がりながら、部下の名前を呼ぶ。
「……シルク」

股に生まれつつある新しい器官を痛いほどに勃起させながら、脅える部下に近づいていく。
「嫌だ……こんなの嫌だよぉ……隊長、目を覚まして……」
縛られたまま必死に私と距離を取ろうとするシルクから立ち上る恐怖と絶望、
悲しみと怒りといった負の感情が酷く心地よい。
この者を犯し、弄り、その血と共に苦悶と魂を啜り喰らえば、幾らかこの空虚な心を満たせそうだ。

片膝をついて縄を解いてやった。
と、絶望に彩られていたシルクの表情がやや明るくなった。
「隊長……隊長!」
しゃくりあげる彼女を抱きしめて、耳元で囁いた。

「シルク……今まで気づかなかったけれど、貴女って凄く美味しそうね。」
「ヒィ!」
恐怖に強張った獲物の体を逃がさないように、私は腕に力を込めて抱きしめていった。





三日待って。さらにもう一日待って。ミュラも結局、戻ってこなかった。
全てを砦を守る部将に報告した。怒鳴られた。
魔獣や魔女に対抗できる戦士は、この国にはそう多くはいない。
まず、この騎士の中では、竜の騎士と天馬の騎士。
次に王より特別な称号を与えられた金の騎士と白銀の騎士が、各々四人。
後はずっと数の多い下級兵士に、四、五人いるかいないか。それくらいだろう。
そうした優れた戦士を二人立て続けに失って、陣営の空気は暗く重い。

馬鹿共。
そう云いながら、硝子の瓶を逆さにして琥珀色の液体を真新しい石の墓標にかけた。
戻ってくるって云ったのに。

「レイニア」
背後から声がかけられる。気配は、三人。振り返る、と
そこには苦虫を潰したような上司の部将と女性騎士が二人、立っていた。

何のようですか?
我ながら、冷ややかな声だと思う。
エレーンを犬死させた無謀な作戦。それを思うと、とても愛想良くする気にはなれない。
勇名を馳せていても、所詮は下級の兵士。
無責任な上層部にとっては使いでのいい捨て駒だったのだろう。
部将が口を開く。
「この方達が、お前に話があるそうだ」

三人だけになって、背の高い方の騎士が口を開いた。
「わたしはニケ。こちらはカミーラ」
ニケとカミーラの名は聞いたことがある。
金と白銀の騎士の中でも、一、二を争う剣の達人として知られた二人組みだ。
背の低い金髪が、白銀の騎士カミーラ。背の高い銀髪が名高い金の騎士ニケだろう。


白銀のカミーラが、ぶしつけに言葉をぶつけてきた。
「あの二人とは、親しかったのか?」
「ええ。まぁ、あの二人は元々の友人で、わたしはそこに加わった形ですが」
「あの二人、間違いなく人間だったか?」
「……どういう意味です?」
質問の意味が分かりかねた。いい意味ではないのは、頭の悪い私にも分かる。
怪しい素振りは無かったか?」
「云ってる意味が分かりかねますがね……」
「カミーラ、もう少し言い方を……」
ニケの制止を無視して、カミーラが言葉を続けた。
「魔女が人間の振りをして、我が陣営の中に潜り込んで……」
それが限界だった。
こいつを殺す。そう決めた。
剣の柄に手を伸ばし……あたしの喉元に相手の切っ先が止まっていた。
喉がごくりと鳴った。何時抜いたのかも見えなかった。
背筋の震えが止まらなかった。手を上げて、後ずさる。

「カミーラ!剣を下げろ!」
ニケが怒鳴る。何事かと、周囲の耳目が集まった。
カミーラはすっと剣を鞘に納めた。冷や水を掛けられたかのような背中の悪寒はまだ止まらない。
「すまない。怒らせるつもりではなかった」

バツが悪そうに詫びた白銀の騎士の顔に、こちらを弄ったりするような色はない。
そこにはただ、焦ったような切羽詰った表情があるだけだった。
「魔女が現れた。五人目の魔女だ」
カミーラが早口で続けた。
「四人目の魔女と組んで、暴れまわっている。
西の戦線はズタズタだ。この一週間で、百人近い兵が食われた」
一週間で百人というのは、この国には大変な人数だ。
魔女とは言え連日同じ調子で暴れ続ける訳にもいかないだろうが、
単純計算で一月で四百人。三ヶ月もやられたら、一軍団なくなってしまう。

「……それで」

「生き残った兵士が、魔女達の会話を聞いた
槍を使う方がミュラカナス、剣の使い手がエレニュオス。そう互いを呼び合っていた。
どこかで聞いたような名だと、思わないか?」
「まさか……」
「もしかしたら、あの二人かもしれない」
馬鹿な、筋があわない。
こちらも落ち着きを取り戻す為に、深呼吸した。
「あの二人は、何人も魔女や魔獣を倒してきた。
潜り込んだスパイなら、そんなことをする必要がない」
「……」
「あの二人は間違いなく人間でしたよ。人を苦しめて喜ぶ魔族なんかじゃない」
泣き、笑い、焦り、照れ、怒り、嘆き、喜び、恐怖。
共に過ごした時間、見てきた顔と言葉の数々が嘘とだは、あたしにはとても思えなかった。
「たかが名前だけで、戦って死んだ人間を冒涜する気なら……」
「すまない。そんなつもりではなかった。ただ……」
あたしは大切な物を冒涜されたような気持ちになって、
目の前の騎士たちのふざけた戯言をこれ以上聞きたくかった
「話がそれだけなら、あたしは失礼させていただきます。」
会話を強引に打ち切って、あたしは踵を返した。

「……怒らせてちゃったか」
「当たり前だ。馬鹿。言い方を少し考えろ。馬鹿
友達を悪く言われて、怒らない方がおかしい。この馬鹿」
「そんなに馬鹿馬鹿云うな!」
「……少なくとも、あの娘は人間だな。」
ニケは去っていく弓兵の背中を見てそう呟き、相棒を睨んだ。
「名前の件。ただの偶然かもしれないし、倒した強敵の名を奪うという
何らかの様式かもしれない。慌てて、聞きに来るようなことでもないだろう。」
「かも知れない。だけど、なにか嫌な予感がするよ」
「馬鹿の予感なんて当てになるか」
「なんだとー」


金の章

んっ……むぅん……あ、あはっぁ……ぁ……ああぁん……ちゅっ、じゅるっ……
いったい何の音だ。いやに艶っぽい呻きに私は目を開けた。
どこか、粗末な森のきこり小屋の中にいるようだった。
目覚めてすぐに、手が縄で縛られている事に気づいた。
捕えられている?
相棒の馬鹿も、ぐるぐる捲きにされて、床に転がされている。
「あ、ニケ。起きた?良かったー」
カミーラが呑気な声を上げる。

「それより見なよ。凄いよ、あれ」
部屋の中央で絡み合う二人の魔女を首で指し示し、カミーラはごくりと喉を鳴らした。
私は頬を紅潮させて、顔を背けた。

全裸で乳繰り合ってた魔女達が、口を離して私達ににやりと笑いかけた。
「私たちを探していたんでしょう?騎士どの」
ズキズキと痛む頭を振って、わたしは意識を覚醒させた。
何故、私たちの目的を何故知っているのか。疑問を抱いた。
王都でも二、三名しか知らないはずだ。スパイが居るのか。
「すると、貴様らがミュラとエレーンか」
疑問を一時胸にしまい込んで睨み付けると
「エレニュオスよ」
魔女が強い口調で訂正した。もう一人の魔女も、名乗りを上げる。
「わたしはミュラカナス、そんな人間だったときの名で、呼んでほしくないな。騎士殿よ」
その時は、魔女たちの言葉を意味を、人間に化けていた時の名という程度に受け取った。


「ところで、何故、私たちは捕えられている?」
カミーラが沈痛な表情で呻いた。
「薬を盛られたのよ。」
「何処でだ?」
「覚えていない?森に入ってすぐの古井戸」
「あの妖しい井戸か」
舌打ちした。
「どうもあそこで飲んだ水に薬が入っていたみたい」
「なら、飲むな!」
「な、なによ。あんただって飲んだじゃない!」
疑問が浮かぶ。
「待てよ、私は飲んだ覚えが無いぞ?」
「わたしの水筒から……」
「こん……馬鹿っ!怪しいから止せととめただろう!」
「それは……悪く思ってるわよ。」
私は本気で、こいつを相棒に指名した騎士団長を呪いたくなった。

「何が思ってるだ、馬鹿」
わたしは冷たくカミーラに云った
「な、何よぅ、人の責ばっかりして」
「お前の責だろう。」
「もう、いい。あんたとなんか話したくない」
プイッとそっぽを向いて、カミーラは魔女達の痴態を見物し始めた。

カミーラの視線を感じて、やりにくいのか。二人の魔女が
「え……と、その混ざる?」
「え……」
云われて、カミーラはちょっと嬉しそうに悩んだ。
「さっさと断れ。馬鹿」
その言葉が逆に天邪鬼な奴の背中を押してしまったのか。
「うんうん。
混ざる。混ぜてぇ」
「カミーラ、止せ!」
「だって、ここの所ご無沙汰だしぃ、魔女って凄いって」
足をもじもじさせて
「馬鹿!下手したら下僕にされてしまうぞ!」
「どうせ馬鹿よ。馬鹿でいいですー。」
「縄を解くけど暴れないでね。どうせ素手じゃ魔女には勝てないんだから。」
魔女、エレニュオスといった方が近づいてきた。
「うん、暴れない。暴れない。」
「お前には貞操観念ないのか。本気で死ね。バカミーラ」
縛られたまま罵った。罵りが返ってくる。
「五月蝿い、あんたこそ死ね。冷血意地悪ニケ野郎。ニケの癖に」

「漫才は、そこまでにして、ね?」
魔女がカミーラの服を脱がせると、背中に唇を這わせた。
「あ……」
カミーラは本気で嬉しそうな声を上げ、顔を蕩けさせる。
私は、顔を背けた。
本気で馬鹿だ。こいつ。そう思った。

三人が本格的に性交を始めた。私は聞きたくなかった。
縛られていては耳を塞ぐことも出来ず、淫らな音が嫌でも耳に入ってくる。

聞いているうちに足をもじもじさせていることに気づかれてしまったのか。
魔女の一人が近づいてくる足音。
ズボンの上からすっと股のうちに触れてきた。
それだけで甘美な痺れが広がった。ひくん、と躰が慄いてしまった。

「ニケ様。混ざりませんか?」
「嫌だ。」
力強く応えるが……
「一応、聞いてみただけです。実は貴女に拒否権はありません。」
「あっ、よせ」


「やめて!」
カミーラがそう叫んだ。
「あたしが犠牲になるからニケには手を出さないで!」
そう云って、魔女を呼び戻すカミーラの顔を見上げた。
私とカミーラの顔を見比べて
「ふふ、いいでしょう。可愛がって差し上げます」
魔女が戻っていく。
カミーラ。もしかして、私を庇ったのだろうか。
「ああっ!凄いの二本刺しキタァァー!三本目、クルぅー!!」
違う、やはりこいつはただの馬鹿で色情狂だ。
一瞬でも期待した私が馬鹿だった。

深夜。わたしが悶々とする横で、
「アア、いいよ。またいく、またいっちゃうううん」
無邪気に快楽を貪り続けるカミーラ
私は本気で、こいつを殺したくなった。

早朝。隣から響いてくる嬌声で、目が覚めた。
いつの間にか、寝ていたようだった。
朝っぱらから、元気な事だ。もう起こる気力もなく、げんなりとする。


前と後ろを巨大な性器に塞がれて、躰を反らせる。
「カミーラ、可愛いわ。カミーラ」
比喩ではなく、床に体液の池が出来ていた。
こいつら、もしかして一晩中やっていたのか。
尋常じゃない。背筋がぞっとした。
魔女はともかく、カミーラはただの人間だ。
底なしだとしても、こんな調子で体力が続くはずがない。
なのに
「はぁ、くる。またくる、もういきたくないのにぃ」
カミーラは腰を震わせている。
「駄目よ、可愛いカミーラ。たっぷりと中に出してあげるから。」
「はぁぁ、エレニュオス姉さまぁ」

何が姉さまだ。そう毒づこうとして、奇妙な寂寥の感が胸を付いた。
目の前に居るカミーラが、まるで遠くの世界へいってしまったかのような奇妙な感覚。
「私のも受け止めなさい。すべて飲み込むのよ。カミーラ」
「はい。ミュラカナス姉さまぁ」
仕方ないかもしれない。この馬鹿は完全に魔女の毒牙に掛かっているように見えた。
性に溺れきって、従順になりきり、甘えた声で魔女達を姉さまなどと呼んでいる。
遊びの延長だと思いたいが、ヘタすると、性の快楽と引き換えに、
本当に騎士団を裏切りかねない所まで、調教されているかもしれない。
「くっ……」
わたしは、小さく舌打ちした。

やがて三人は、同時に達したのか。体を震わせて倒れこんだ。
荒い息を収めて、二人の魔女が立ち上がる。
「じゃあね。カミーラ。楽しめたわ」
「約束通り自由にしよう。そちらも約を違えずに。その時は、皆で楽しもう。」
「ええ。お姉さま方」
にこやかに手を振って別れを告げるカミーラ。
二人が居なくなると、むくりと立ち上がった。
「行ったかな?」


カミーラはしばらく聞き耳を立てて様子を伺い。
「ふふふ、やるだけやって情に溺れ、この私を倒す千載一遇にして唯一の機会を
無にするとはやはり愚かなり魔女共。山賊共と同レベル。
次にであったら弁護士わたし、裁判官わたしの簡易法廷にて即決死刑判決確定!
よろしいですか、弁護人。よろしいです。裁判長!」

カミーラは仁王立ちしてそう言い放ち、壁にある剣を手に取ると、近づいてわたしの縄を解いた。
「ほら、ここから逃げるよ。ニケ。」
長い間縛られて体が痺れているわたしを、片手で立ち上がらせた。
随分とタフな女だと、感心した。
「ニケは今日以降、わたしを命の恩人と伏して拝むように。」
「元々は、お前の信じられないほど間抜けなミスで二人とも捕まったのだ」
云って体を揉み解しながら、チラリとカミーラを見た。

さすがに疲労の色が濃く、辛そうであった。
「酷い目に……あったな」

云うと、まるで応えた様子も無くせせら笑った。
「なぁに、慣れてるし、それなりに楽しめたわ。あいつ等、下手じゃなかったし」

「ニケも濡れてたでしょ。楽しめば……」
「御免だね。好きな相手の方が気持ちいい」
云いながら、二人で小屋の扉をくぐり、

カミーラの耳元、いや頭の中で声が響いた。
魔女の王と交わした契約を破れると思ったか?
「……え?」
偽りの言葉で我等を上手く謀ったと思ったろう
愚かな。偽りの言で交わした契約も、血と精の刻印で真物となる。
魔女達の高らかな哄笑とともにカミーラの周囲で世界が揺れた。



ぐらりと、カミーラが地面に倒れた。
「カミーラ?!」
地面に手をつき、蒼白な表情でカミーラが呟いた。
「来ないで……ニケ、逃げて、早く。」
「何云ってる?」
「魔女に……」

「……お前をおいていけるか。」

「私は手遅れだから……ほっといて早く行きなさいよ!

わたしは半ば失神しかけているカミーラを、肩に担いだ。
熱い。それに凄い発汗をしている。触れただけで辛そうに呻いている。
「くっ、重い。もうちょっと、甘いもの控えろ」
「置いてって……ほんとに、甘く見すぎた」
「黙れ、馬鹿。じっとしてろ。」

私は、カミーラを背負うと森の出口へと向かって歩き始めた。


日が暮れた。夕闇が周囲を圧して迫ってくるように思える。不気味な森だ。
「ひ、ひああ……負けるものか」
カミーラは苦しげにびくびくと体を震わせ、うわ言を呻いていた。
どうでもいいが、酷く艶っぽいうわ言だった。
我らなどどうでもいい存在なのか。魔女達の追跡は無かった。
歩きとは言え、大分距離を稼いだはずだし、このままいけば逃げられるだろう。
だが、かすかな違和感も感じていた。
この森はこんなに広かっただろうか。
同じ所をぐるぐると廻り続けているかのような、まるで森を抜け出せる気配が無い。
ため息をつく。
抜け出せないでも、最悪二日ほど経てば、後発の騎士がもう一組ここに捜しに来るはずだ。
だが、それまでカミーラが持つのか。
難しい顔をして、甘く呻いている相棒を眺めた。
連れ帰ってどうする?元へ戻るのか。神殿へでも連れて行けばいいのか。
それとも、時間が経てば媚薬にも似た魔女達の精液の効果は消えうせるのだろうか。

分からない。とにかく、それまではわたしがカミーラを守り抜く。
剣さえ持てば、私たちは誰にも負けない。負けるはずが無い。
私たちは、最強のコンビなのだ。

一方、カミーラは、熱と悪寒に苦しめられながらニケを見ていた。
毒づきながらも、自分を見捨てることなど考えもしない。
いい奴だ。
糞みたいな人生だったけど、あんたと組めて最後は悪く無かった。
カミーラは震えながら剣を手に取ると、切っ先を自らの喉元に当てようとして
何している。

わたしは、カミーラの行為に気づいて、間一髪剣を奪い取った。
「手遅れに……なる前に……」
「足手まといとでも考えたか?どうしようもない時は、そりゃ見捨てる。
だが、今はまだお前の命は預かっておく」
「魔女が……もう、持たない」
「近くまで来ているのか?」
「ちが……負ける…わたしが……」
私は熱に浮かされているカミーラから剣を取り上げるとそれ以上相手にせず踵を返した。
カミーラが哀しげにすすり泣いた。


やがて……
樹の根元に横たわり、虚ろにぶつぶつ呟いていたカミーラがカッと目を見開いた。
夜魔の…王……ああ…永遠の……忠誠を…捧げ
ふらっと立ち上がる。

一方、私は懐から出した火打石で、何とか火を熾そうと悪戦苦闘していた。
くそ、こういうのはどうも苦手だ。
「寒い」
カミーラが背中から抱きついてきた。
「待ってろ。もう少しで、火を起こせる」
カミーラは抱きついてくる腕を服の中にいれ、私の地肌……胸に直接触れた。
「何をしている?!」
「寒いの……暖めて」
どうしてこいつの吐息は、こんなに甘い匂いをさせているんだ?
まるでさっきの魔女達のように……
匂いをかいで、背中を甘美な悪寒が走り抜けた。
カミーラは息を荒げ、股間を隆起させながら……?……股間を?

「やっぱり、だめだよぉ、逃げるなんて。ニケもね、気持ちよくしてあげたいよ」
そう云うカミーラの瞳は、彼女本来の茶ではなく、赤い虹彩。
ルビーのような魔女の瞳。
ゾッとして大声で叫び、腕を振り解こうと暴れた。
「止せ、止めろ。カミーラ」
「カミュルナイヤよ。そう呼んで」
私の体を抱きしめたカミーラが牙を剥き出しにして、ずぶりと首筋に埋め込んだ。
「ひっ……」
最初に痛みが走り、次いで快感にも良く似た甘い痺れが首筋からわたしの全身に広がっていく。


「かはぁ……」
動けなくなったわたしの体を地面に横たえると
カミーラは自分の着物を脱ぎ捨てていった。
一枚一枚カミーラの着衣が地面に落ちるたびに、私は恐れ戦いた。
「嫌だ、頼む……カミーラ。後生だから、それだけは……」
「ニケが、わたしに頼むなんてね。珍しいにゃ。これは明日は、雪でも降るね。」
全裸になったカミーラがへっへっと笑う。
その股に隆起している、子供の二の腕ほどもある極彩色のお化け茸のような物体を見て、
剣を習得した十の歳以来初めて、私は恐怖に身も蓋も無く泣き叫んだ。
「殺して……殺してぇ!カミーラ!後生だから!」
「カミュルナイヤだって。もう、そんなに嫌がられると興奮しちゃうな、ニケ。」
わたしを裸にしていく最中にも、お化け茸から甘い白い液体が、ぶびゅる、びゅるっと
音を立てて放出される。
「うん、突き殺してあげよう、ニケ」
目の前にいる女は外見はカミーラだが、中身は別の何かだった。
わたしもこうなってしまうのかもしれない。それが一番恐ろしかった。

「綺麗」
わたしの全裸を見下ろして、カミーラがうっとりと言った。
「処女…じゃないよね。さすがに。けど、経験は少ないよね。」
カミーラが淡い翳りに口を近づけた、唇から這い出た青色の蛇のような舌が踊る。
「やめっ……いああああああっ?!」
気持ちよすぎた。頭の中で火花が散った。わたしは顔を伏せて、すすり泣いた。
変幻自在に動く長い舌で秘所の回りを嘗め回しながら、力強い指が秘所の周りの
盛り上がった肉を押し上げていく。
「あああっ……はああっ」
痛いほどに勃起した赤い小さな宝珠が外気に露になった。
恥ずかしさの余り死を願うほどに絶望しながらも、私はただ快楽に呻くことしか出来なかった。
恐らくそれは分泌された私自身の体液と、カミーラの涎で、艶々と濡れ輝いているのだろう。
「エッチだなぁ、こんなに濡れて。可愛い」
そう云われ、私は恥ずかしさの余り死んでしまいたかった。


「う……ぐすっ……ひっく……」
「うふふ、ニケを泣かしちゃった」
云ってにんまり微笑むと、カミーラはわたしの赤い真珠に口づけした。
そのまま弱く優しいタッチで、唇を使い、舌で撫で回しながら転がし始める。
「ん……うん……ちゅ……ちゅっちゅう」
「ひあっ……あひ……ひぃっひっぃ」
私は、ただただ下半身に襲い掛かってくる電気のような快楽に、支離滅裂な叫びを上げるだけだった。
その電気は、油断すると下半身のみならず、腹から胸、背中、肩まで登りつめて、全身を支配しようとする。
「やめてぇ!カミーラ……馬鹿に……ばかになっちゃうぅよぉっ!んほおおおおっ!」
達して体が、腰が、臀部が、勝手に痙攣した。

逝ったのにカミーラはやめてくれない。
敏感な箇所を重点的に吸いながら、腕を伸ばしわたしの胸を鷲掴みにし
「ちっ……」
何か不満げに呟いてから、容赦なく揉みし抱き始めた。
「あひっ……ふひゃ……ひゃあん……やあ」
わたしの内で何かが壊れ始めた。強烈な水流が防波堤を徐々に破壊し、やがて一気に
濁流が流れ出すのと同じように、わたしはこの倒錯した快楽に溺れ始めていた。
「カミーラ……ダメェ」
息も絶え絶えに、甘い呻きで訴え掛けたその声に
「カミュルナイヤ、そう呼んで」
快楽に溺れる部分とは別に、頭の何処かで砦で出会った騎兵の言葉が甦った。
二人は間違いなく人間だった。
魔女達の云う人であった時の名、そうして今のカミーラの変貌と性格の変化。
それらが一つに繋がり、
「ん……ふぅ……負けるものか……負けない」
ここで負けたら、私は魔族にされてしまう。
魔女は、人をその同類に変える力を持っているのだ。
誰かが王都へ報告しなければ、王国は魔女の力の前に呑み込まれてしまいかねない。
そう直感して、
胸を吸っていたカミーラが、熱い男性のそれを、わたしの女性に押し付けてきた。
「いくよぉ、ニケ」
自分自身の肉は、クパァと口を開いてそれを受け入れたがっているのを自覚しながら、
わたしは痺れる体を必死に動かし、腰を後ろにずらして、
欲しい……あぁ、ほしいぃ……たましいをうってもいい……はぁぁん
この快楽を我が物に出来るなら、まじょになってもいい……まじょになりたぁい
頭で囁きかけてくる狂ったその声を否定して、涎を垂れ流しながらも
「カミ……負けないで。」
「ふふ、勝負じゃ、ニケ。」
カミーラが、それを突き入れてきた。

「きぃ……やあああああああああああ!」
壊れた。決壊が一撃で粉微塵に粉砕された。脳の中枢が痺れた。赤い火花が……
「あああァッ! あふぁっ! ひいぃ…いっくううんぅう! 
あっはぁ……またまた…いッ…っくふッ……んんんぁっ!」

その一突き一突き毎に、意識は生と死を繰り返し、全身が踊るように跳ね飛んだ。
 
「はっ…はっ…はっ、ぁぁぁぁああんっ!……あっはあああん!
すごおい!……くうっくるっちゃう!……くるったたぁ!……あはあ……あははははあは!
わたし……こわれたぁ……あぁッ…んふあッ、ひぁッ……ァあぁッ!
ひぬ……ひんじゃうぅッ……わたし…カミィラにツキころされひゃうぅッ
 ひっ……きた……なんかきた……やッ……やぁぁ!おッ、おおッ!おああああッ!!!」

カミーラの中出しを受けてわたしは溶けた。
子宮が溶けた。全身が蝋人形のように黒い炎に炙り溶かされてゆく。
「あっはああぁぁぁぁぁん……うふぅぅ」
わたしは長い余韻に身を任せる。全身の心地よい快楽に身を任せ、身も心も弛緩させながら
「あはぁ……あらひの中れ……あならのが……ドクドクいってるよぉ」
呂律の回らない調子で彼女の顔に手を伸ばし、片手は首の後ろに廻して口づけした。
「よかったでしょう、ニケ?」
「ええ………………」
わたしは手の届く距離の腰帯を手に取って……
「はぁっ!」
一瞬の隙を突き布を巻くと、渾身の力を振り絞って彼女の首を締め上げた。、
「死んで……カミーラ!死になさい!魔女!」
「ニケ……がっ、がはっ!」
暴れるカミーラ。物凄い力だ。わたしも必死になるが、中々力が入らない。
カミーラが泣き出した。
「ニケ……助けて、ニケ」
「人を無理やり犯しといて、何が助けてだ!」
「ちょ……たんま。実はさっきまでの私は魔女に操られていたのよ
今の私は正気、かつての美しい友情の日々を想いだ……ゲボハァ??」
憤怒が、わたしの腕に力を与えたようだ。
「やはり貴様は、まだ操られている!」
「降参、降参だってば……離し、苦し……」
ギリギリと絞まっていく腰帯、カミーラは本当に苦しそうな顔になっていく。
やはり心が痛む。
だけど今振り絞っているのは、まさしく最後の力。
ここで手を抜いたら、二度と森を脱出するチャンスはめぐってこない。
あれはただの性交ではない。射精された時に何か黒い闇が私の中に入ろうとした。
もう一度犯されてあれほどの快楽を受けた時、私は元の自分でいられる自信は無かった。
「ニケ……助けてぇ……ニケェ」
だけど、もしかしたらカミーラは本当に元に戻ったのかも知れない。
首を締め上げながらも、わたしは激しく苦悩する。
どうすればいい……なにが真実なのだ。


二人の騎士が、古株にしゃがみ込んで、焚火の跡を調べていた。
夜営の後だ。
「地図によると、この先に小さな小屋があります。其処へ行ってみましょう」
騎士たちが小屋に入ると、先客の二人の女性が茶を飲んでいた。


わたしとその相棒が座っている卓には茶菓子と、三人分の茶が用意されていた。
来客を待ち続けていると、そこに扉を開けて無粋な闖入者が現れた。

「あ、イリアとボーグじゃない。げんきぃ?」

御無事でしたか、二人とも。
イリアがほっとした顔をして

「魔女の力が強い不気味な森ですから、万が一のことでもあったのかと」
「なによぉ、それ。イリアの癖に生意気だぞー!」
「お二人の事だから、心配はしませんでしたけど、」
イリアが笑う。
「心配はいらん。この森に、我等に害をなせるような生き物なぞ存在しない。」
云って、わたしは茶に口をつけた。

「お茶飲むぅ?この森の水で入れた特製のお茶なんだけど、凄くおいしいよ」
相棒のはへらへらした様子に、心配して損をしたと巨漢の騎士が肩を怒らせた。
「連絡ぐらい入れろ。
貴様まで、何たるざまだ。ニケ」
ボーグの怒気を受けて、私は思わずふっと笑った。
「これからの行動について、つい半日前まで、意見が割れていてな」
「ほんとーにもー、こいつって頑固だったんだから」
「しかし、もう心配はいらない……
姫殿下に謁見する前に、手柄の一つも立てておこう。そう思ってな」
わたしは静かな視線で、同僚の金の騎士と白銀の騎士を見つめた。
「お前達を待っていた」
「すると、何かつかめたのか」
「ああ、大体のところはな。これから、もう少し詳しい事も分かるだろう」
「よし、聞かせろ」
ボーグが卓に座った。
「その前に、カミュルナイヤ」
私は、相棒に呼びかけた。
「よし、きたぁ相棒!」
カミーラが何かをした。
ボーグにも、『何かをした』のは分かった。『何をした』のかは分からなかった。
どん、と天上に何か重いものがぶつかった。
卓の上に落ちてくる。イリアの首だった。
目を見開き、何故と問う形に唇を動かして、動かなくなる。
数瞬して、やっと首を飛ばされた女騎士の体が床にくずれおちた。
「う……うわぁぁぁぁぁ?」
ボーグが仰け反って、立ち上がるよりも早く。
激しい衝撃が彼の心臓を襲った。
「がっ……」
卓に崩れ絶命した騎士をわたしは冷たい目で睥睨した。
カミュルナイヤが手にした剣でツンツンとその頭を突付いた。
「こいつ、相棒より先に、あんたの突きで自分が死んでいたことにも気づかなかったね」


「この程度で金と白銀を名乗るのだから、王国騎士の質も落ちたもの」
わたし……魔女ニケヤガルラは、刃に付着した血液を持っていた布でゆっくりと
拭い去ると、再び茶に口をつけた。
「真の金と白銀の力、彼奴らに教えてやろうではないか?カミュルナイヤ」
「それいいね、とってもかっこいいよ、ニケヤガルラ。」
「知らなかったのか、カミュルナイヤ」
銀色の髪を撫で、金の騎士は誇り高く微笑んだ。
「私は元々、格好いい。それより……」

わたしは塵を見るような視線で、床の上の二つの死体を眺めた。
「果たして、こんなもので夜魔の姫への手土産となるか、どうか。」
「お土産っていうのはね、気持ちが大切なのよ。気持ちが。」

室内の、闇が濃くなっていく。
影が伸びていくにつれ、その影に触れた二人の騎士の肌が不吉な蒼い色に染まっていく。
二人の魔女は、新たな主の来訪を部屋で待ち続けた。そう遠い時ではないだろう。




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