短編劇場 現在4本(+おまけ1本)


短編SS あゆちゃんと真琴ちゃん
  原作:Kanon
 投稿先:梁山泊 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6300/

「髪型よしっ、荷物よしっ、たい焼きよしっ」
 手鏡と櫛をポーチの中にしまって、月宮あゆちゃんは曲がり角を飛び出しました。
 手にはもちろん、たい焼きの紙袋。
「祐一くんと一緒に食べるんだよっ」
 よくわからない熱意に燃えたあゆちゃんは、水瀬家のドアの前に立ちます。
 ドアのチャイムを押そうとした時、あゆちゃんは近くに人の気配を感じました。
「おまえっ」
 庭のしげみから飛び出してきたのは水瀬家の居候、沢渡真琴ちゃんです。
「うぐぅ、な、なにっ」
 驚いたあゆちゃんは、たい焼きをうしろに隠して後ずさります。
「ここを通りたかったら、あたしと勝負して行きなさいっ」
 あゆちゃんを指差して言い切ります。
 祐一くんに会ったときと同じように、見た目だけは格好良かったりします。
「しょ、勝負、まさか、美少女コンテスト?」
 口元に手を当てて驚いたように言う、あゆちゃん。
 ボケのように見えますが、本気です。
「ははぁん、あたしの美しさにかなうと思って・・・じゃ、なあああああいっ」
 それにのってくれる真琴ちゃんも、いい人なわけじゃなくて本気なのです。
「勝負はぷよぷよ地獄よっ!」
 真琴ちゃんはゲーム機のあるリビングへ、あゆちゃんを連れて行きます。
「あっ、真琴ちゃん、通さないんじゃなかったの? ボク通っちゃったよっ」
「あうーっ、いいのっ! 叩き出してやるんだからっ」
 リビングに駆け込んだ真琴ちゃんは、机の下からゲーム機を取り出します。
 それは、祐一くんが友達の潤くんに500円で売ってもらったセガサターン。
 最新鋭なんだぞという祐一くんの言葉を、真琴ちゃんはいまだに信じています。
 あゆちゃんもやっぱり、ソフトがCD−ROMなことに時代の進歩を感じていたりする
のです。
 勝負の結果はここでは言わないことにしておきましょう。
 その日の夕方、リビングに下りてきた祐一くんが見たのは、肩を寄せ合って昼寝してい
るあゆちゃんと真琴ちゃんの姿でした。




短編SS 繭ちゃんと澪ちゃん
  原作:ONE−輝く季節へ−
 投稿先:梁山泊 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6300/

 昼休み。
 浩平くんの周りでは、いつものように2人の部外者が昼食の最中です。
「あのさあ、折原くんって、なんか繭ちゃんのお父さんみたいだよねえ」
 唐突に、詩子さんは言いました。
「みゅっ?」
 繭ちゃんが不思議そうに詩子さんの方に向き直ります。
「ねえ。折原くんって、繭ちゃんにはなんかお父さんって感じじゃない?
 ほら、おとーさんって言ってみなよ」
「みゅぅ、こーへーおとーさん」
「おとーさんねえ」
 浩平くんは興味なさ気に呟きます。
「やっぱよー、お父さんよりお兄ちゃんだろ。それが男の王道だよなっ」
 そう言ったのは、浩平くんの親友の護くんです。
「でもさあ、折原くん、もう妹いるじゃない」
 詩子さんが教室の入り口の方を指差します。
 澪ちゃんが扉に隠れるようにしてこっちを見ています。
 さっきからずっと繭ちゃんと浩平くんが仲良くしてて、澪ちゃんは入れなかったのです。
「どうしたんだ、澪?」
 ねえ? 入ってもいい?
 澪ちゃんが視線でそんなことをききます。
「どしたの? 澪ちゃんおいでよ」
 詩子さんがいうと、澪ちゃんは浩平くんの左袖にしがみつきます。
 浩平くん、両手に花です。
「だれ? こーへーの、いもーと?」
 繭ちゃんブレインが、この新たな登場人物の正体を明かそうと超音速で回転します。
 こーへーはおとーさん。おとーさんのいもうとの子は――
 チャキーンと、繭ちゃんコンピューターが答えを出します。
「みゅっ、よろしくっ、おばちゃん」
 繭ちゃんは曇りの無い笑顔で澪ちゃんに言いました。
 その言葉が澪ちゃんのハートにぐさりと突き刺さります。
(澪はお姉さんなの。泣かないの)
――ううっ
(小さい子がひどいこと言っても笑って聞き流せるもん)
――うるうる
(泣かないの、泣いちゃいけないの)
――えぐえぐ
(でもね、でもね、おばさんはいやなの)
 だんだん涙目になってきた澪ちゃんは、浩平くんを突き飛ばして教室を飛び出してしま
いました。
 どうやら、“おばちゃん”と呼ばれたことはとってもショックだったようです。
 でも、繭ちゃんには何がいけなかったのかわからなくって、ヘンなおばちゃんだな、と
思っただけなのでした。


おまけSS 澪ちゃんと、美汐ちゃん 
  原作:ONE−輝く季節へ−
     Kanon
 投稿先:梁山泊 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6300/

 教室を飛び出した澪ちゃんは、自分の教室に戻ってきました。
 涙目のままきょろきょろと教室内を見渡すと、友達の美汐ちゃんが自分の席で教科書を
眺めていました。
 澪ちゃんが飛びつくと、美汐ちゃんは澪ちゃんを受け止めてくれます。
 美汐ちゃんの胸の中で、とうとう澪ちゃんは泣き出してしまいました。
「どうしたんですか」
 背中をぽんぽんと叩いてあげる美汐ちゃんは、まるでお姉さんみたいです。
『あのね』
 澪ちゃんがスケッチブックに言葉を書きます。
「愚痴でもなんでも聞きますよ」
 美汐ちゃんはもう1度優しく呼びかけます。
 澪ちゃんはぐしぐしと手の甲で目をこすって、それからペンを走らせました。
『おばさんはいやなの』
 美汐ちゃんはその台詞に凍り付いてしまいます。
 大変です。澪ちゃん、友情の大ピンチです。




短編SS 舞先輩の罰ゲーム
  原作:Kanon
 投稿先:梁山泊 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6300/

――ぐしゃん
 熟れ切ったトマトは祐一くんを外れ、佐祐理さんの顔を真っ赤に染め上げました。
「あ……」
 小さく開いたドアの向こうで、真琴ちゃんが凍り付いています。
 硬直と沈黙が3秒間。
 舞さんは反動もつけずに立ち上がると、真琴ちゃんをカーペットに組み伏せます。
「ぎゃああああっ」
 両腕を決められた真琴ちゃんは、必死にもがいて抜け出そうとします。
 けれど、舞さんは真琴ちゃんのお尻の上に乗っかって、両腕を背中側にきりきりと極め
てしまいます。
「佐祐理を傷つけた……許さないっ」
 舞さん、怒ってます。
「あははーっ、悪い子には罰が必要ですね」
 佐祐理さんは普段どおりににこにこと笑っています。顔に張りついたトマトの切れ端が、
まるで人間のお肉みたいで、なんだかとってもスプラッタです。
「真琴ちゃんは食べ物が好きみたいですから、人参の刑にしましょう」
 佐祐理さんの合図で、舞さんは真琴ちゃんを仰向けに寝かせました。
 真琴ちゃんは身体中からくてっと力が抜けてしまって、抵抗することができません。
「い…いや…… 怖い……」
 怯える真琴ちゃんに佐祐理さんは言います。
「平気ですよーっ。舞はとっても上手ですからねーっ」
「信用していい。痛くないようにするから……」
 代わる代わる真琴ちゃんに話しかける2人の姿がとても淫靡に思えて、祐一くんは唾を
飲み込みます。もちろん、佐祐理さんはとっくに顔についたトマトを拭っています。
「ちょっと祐一っ、黙って見てないでなんとか言いなさいよおっ」
 真琴ちゃんの言葉に、祐一くんはなんだか見透かされたような罪悪感を感じました。
「恥ずかしいから出て行って」
 舞さんが頬を赤らめて言います。
「祐一さんにも見てもらいたかったんですけど、舞がそう言うんなら仕方ありませんね」
 佐祐理さんに追い出された祐一くんは、ドアに耳を当てて中の様子を探ります。
「いやっ。あたし、怖いっ」
「あははーっ、大丈夫ですよーっ、じっとしてれば痛くありませんよーっ」
「服、脱がせて」
「はいっ」
「いやっ、やだっ、なにするのよおっ」
「あははーっ、人参さんですよーっ」
「ちょっと、それ、どこからっ。い、いやっ、真琴痛いのも血が出るのもやだー」
「ダメですよーっ。おしおきですから」
「もうやめてよお、真琴いい子にするからー」
「動かないで」
 舞さんの台詞の後、真琴ちゃんは黙り込んでしまいました。
「う……く……」
 息を押し殺したようなうめき声がかすかに聞こえてきます。
 舞さんと佐祐理さんはいったいなにをしているのでしょう。
 数秒間そんな時間が続いてから、真琴ちゃんは、溜め込んでいた息を吐き出しました。
「…………ああああああっ」
「真琴ちゃん、いい子でしたねっ」
「偉かった」
 そんな会話が中で交わされています。
 祐一くんは健全な男の子です。もう我慢できません。
 部屋に飛びこんでいった祐一くんが見たのは――
 真琴ちゃんの白いお腹と、その上に転がる微塵切りにされた人参の姿でした。
 舞さんは刀を持って立っています。
「……あれ、佐祐理さん、人参の刑って」
「あははーっ。見ての通り、舞の一発芸ですよーっ」
「真琴がらみの悪戯で、いちばん成功した例のような気がするんだが」
 なんだか疲れてしまった祐一くんに、真琴ちゃんは一言言いました。
「ねえ、祐一。このSS、ばっちぃオチつけていい?」
「なんだ?」
「祐一のズボンの中、にんじ\h.

 以下、データ破損、復元不可。




短編SS 祥子さまと祐巳ちゃん
  原作:マリアさまが見てる
 投稿先:天戯の鬱なZ・HARD
      特別企画『紅薔薇三姉妹祭』参加作
      http://sh-bf5b.hp.infoseek.co.jp/onikagura/
 初出時タイトル:ポテトチップス

 お姉さま、お姉さま、私の大好きなお姉さま。
 名家で実業家の小笠原家のお嬢さまで、高等部全生徒から全幅の信頼を集める紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)
 容姿端麗、頭脳明晰、成績も運動神経も抜群の、究極無敵なお姉さま。
 颯爽と風を切って歩くカッコいいお姿はまるで戦女神の進軍のよう。
 平凡を絵に描いたような私には、勿体無いような立派なお方。
 でも、お姉さまが決して完全無欠ではないことを、今の私は知っています。
 短気だし、わがままだし、私でなければ妹(プティ・スール)はつとまらないかななんて思っちゃうことも。
 それに――
 お姉さまは、俗世間の食生活にひどく疎いのです。
 食パンをオーブンじゃなくて電子レンジにかけちゃって、「祐巳、ちょっと来なさい」だとか――
 カップ焼きソバの麺を流しに出しちゃって、流しの立てるベコンって音に「きゃっ」なんて悲鳴をあげたり――
 コンビニおにぎりのビニールを上手く剥けなくて、私の膝をつついて小声でこっそり「開けてちょうだい」だなんて――
 お姉さまったら、なんてかわいいんでしょう。
 ほら、今も――

「あああっ、お姉さまっ。
 ポテチの袋を縦に開けちゃいけないってあれほど言ったじゃないですかっ。
 湿気っちゃう前に全部食べろってことですか?
 もうっ、カロリーが気になる乙女になんて仕打ちを……」
 祐巳ちゃんが百面相のNO.57“祐巳ちゃん怒ってます”で睨みつけると、祥子さま
はハッとして手もとの袋を見ました。
「ごめんなさい、祐巳」
 祥子さまが、自分より頭半分ぐらい小さい祐巳ちゃんを、上目遣いで見つめます。
 祐巳ちゃんだけに見せてくれる、祥子さまの新しい一面です。
「仕方ありません。2人で全部食べちゃいましょう」
 祐巳ちゃんはにっこり笑って、ポテチを広げたティッシュの上に開けてしまいました。
 “食べ終わるまで帰さないぞー”と、ポテチが祥子さまに無言で訴えてます。
「そうね。紅茶を淹れてあげるわ。アッサムのミルクティーでいいかしら?」
「はい、お願いします」
「礼儀として、私がやりますとか言うものではなくて?」
 祥子さまが叱るような口調を作ってそんなことを言います。
 でも、その言葉が本気でないのは、ティーポットに添えられた優しい手つきで明らかです。
「だって、お姉さまが淹れてくれる紅茶は、とても美味しいんですもの」
「これだけは、まだまだ祐巳たちには経験が必要なようね」
 祥子さまは、ちょっと得意げに、ティーカップを祐巳ちゃんの前に差し出しました。
「あれ? この紅茶、いつもとちょっと違いませんか?」
「キャラメルとバニラのフレーバーを試してみたの。祐巳ならきっと気に入ると思って」
「えへへー」
 際限なく緩んでいく祐巳ちゃんのほっぺ。
 最近、このアッサムティーのように、祐巳ちゃんにだけなんだか甘くなった祥子さま。
 ご機嫌取りじゃなくて、祐巳ちゃんのためになにかしようとしてくれてる祥子さまの気持ち。
「お姉さま、大好きです」
「それは紅茶が? それとも私がという意味?」
「もちろん、両方です」
「そう。私もよ」
「それは紅茶が? それともポテチが?」
「もちろん、両方――って、祐巳?」
「くすくすっ、くすくすくすっ」
 祐巳ちゃんは口元をおさえて笑っています。
 ダメですよ、祥子さま、返事をする前に気づかなければ。
「ひどい子ね。あなた最近、聖さまに似てきたんじゃないの」
「そうですか? それならきっと、私たち、お似合いですね。
 蓉子さまと聖さまが、あんなに素敵なお友達なんですから」
「私は、お姉さまに似ているのかしら?
 去年のことを思い出すたびに、遠く及ばないと思うのだけど」
「お姉さまは、立派な紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)ですよ。
 それに、お姉さまに足りないところがあれば、私が精一杯助けますから」
 祐巳ちゃんは祥子さまの耳元で優しく囁きました。
「ポテチの袋が開けられなくても、コンビニのおにぎりが開けられなくても」
「祐巳っ」
 あ、祥子さまついにキレました。
「きゃはっ。布巾、濡らして持ってきてあげますね」
 祐巳ちゃんは跳ねるようなステップで流しへ逃げていきます。
 祥子さまは手に油がつくのがとても苦手な方なのです。

 ごめんなさい、お姉さま。
 お金がないっていうの、あれは嘘です。
 ジャンクフードを買ってくると、お姉さまが無力な女の子になっちゃうから――
 お姉さん気分に浸れるから、私はそーゆーのばっか買ってくるんです。
 ごめんなさい、お姉さま。