【まさに】ハーレムな小説を書くスレ【至上】 15P

973 :『島物二篇(しまものにへん)』:2008/06/21(土) 20:56:08 ID:BQO1xfYW



「かけたまえ」

部屋の主にそう促され、客人である男はその卓袱台の前に座った。


部屋は、この客人が来るときはいつもそうだが、沈む太陽の茜色に染められている。
時は夕暮れ、その目映く強いオレンジが、部屋の窓から室内を照らす。

そこに座った客人である男は、一つ小さく頷くように、この部屋の主に礼をする。

「またせたな」

そういったのはセブン、ウルトラセブンだ。
いまの姿は、この星の住人の姿、モロボシ・ダンである。

「なに、こちらは特に急がぬ身、待つことも楽しいさ」

身体をオレンジに染めて、その部屋の主、メトロン星人が言った。
隠された発声器官を震わせて、この星の言語を紡ぐ。その度に、備わった発光器官が明滅し、その言葉に語気のような物を与えるのだ。


「まずは借りていた、『これ』を返す」

セブンが、袂から二冊の本を取りだし、卓袱台の上に重ねて置いた。

「お気に召したかね?」

メトロン星人が、しばし自分の元を離れていた蔵書を愛おしむように眺めた。
彼からその本を借りていたセブンは、感想を問う問いにやや難しい笑みを浮かべ、答えた。

「これは、『良し』と答えるには、早いと思うな」

そうしてセブンは、ずい、とその二冊、『海の御先』1,2巻を、メトロンの元へ押し返した。
ttp://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000007189671&Action_id=121&Sza_id=B0&Rec_id=1008&Rec_lg=100813

「ふむ、そう答えるか」

メトロン星人は、セブンの答えに、幾分もがっかりした様子すら見せず、淡々とそう返した。
セブンもメトロンの反応に、少しも驚いた様子も見せず、ただただ思ったことを口にした。

「主人公が、『いい男』すぎる」





974 :『島物二篇(しまものにへん)』:2008/06/21(土) 20:57:39 ID:BQO1xfYW
 
舞台は、日本南方の離島。
主人公は、その小さな島に引っ越してきた高校生。
そこで出会う、魅力的な少女達。
明るく無垢な笑みを見せる『雫(しずく)』、ドタバタとした掛け合いが楽しい『火凛(かりん)』、冷たい態度をとる『そよぎ』。
彼女達は、龍神に仕える『御先の巫女』であり、島民から信仰の対象としてあがめられる特別な存在だった。

しかし、実は主人公こそが、巫女達が仕えるべき竜神であることが判明。

彼からの寵愛を受けることを使命として育てられた巫女達は、彼の身の回りの世話を始める。
あまり事情を理解できていない主人公はそんな彼女達に戸惑いつつも、その仲を深めていく。
巫女達も、初めは巫女としての役割からの奉仕だったが、次第に彼のひととなりに惹かれていくのだった。


「この主人公、青年誌なりに共感のもてる性格をしている。
 だが、あまりにも好青年すぎて、このハーレムな境遇を永続させるとは考えられない」

確かにセブンが言うとおり、この主人公は好青年である。
年相応に女の子に対する興味も持ちつつ、それでいてそれを前面に押し出したような行動をとることがない。
むしろ、彼女達に誠意を持って接する彼には、性的な下心がないのではないかとすら感じられる。

「ふむ。確かに彼は、彼女らに恋愛感情を持つ際、『三人とも選ぶ』などといった不義理はしないだろうね」

メトロン星人の言葉に、セブンはやや目を伏して、重く同意する。

「環境はハーレムであっても、この主人公はむしろその関係を清算しようと動くだろう、ということが予測できてしまうのだ」

ハーレム状態にある男が、そのうち一人を選び、他の女との関係を清算していく。
多くのハーレム作品が、終盤に向けて辿る破滅の道。
作品としては確かに、惹かれ合う二人が結ばれるクライマックスなのだが、
ここにいるセブンやメトロン星人のようなハーレム作品愛好家にとっては失望のエンディングなのだ。

「確かに、3人の魅力的なヒロインに囲まれている『今』は楽しい。
 だが、その今が楽しければ楽しいほど、終盤切り捨てられるヒロイン達との別れは辛いものとなる」

彼の言葉は、真実だ。
このセブンが、そして世にいる多くのハーレム愛好者達が経験した悲しみだ。

しかし、それはもちろん、このメトロンとて同じ事。
だからメトロンは、セブンの言葉を否定することなく、それでもただ言葉を繋ぐのだ。

「だが我々は、今を楽しむしかない」

絶望的な未来のなか、微かに瞬く奇跡に縋るしかないのだ。
そして、メトロン星人は、夕日に照らされるその身体を僅かにうつむかせ、感慨を込めて呟く。

「何度打ちのめされても、我々は希望を捨てるわけにはいかないのだ」



975 :『島物二篇(しまものにへん)』:2008/06/21(土) 20:58:26 ID:BQO1xfYW
 






「さて、」

メトロン星人がそう呟いて、一冊の本を卓袱台の上に乗せた。

「これが今日、君に勧める一冊だ」

ずい、とメトロンの触手にも似た手で、セブンの眼前にその本を押し出す。

「・・・一見して、の印象だが、・・・あまりこなれた絵ではないな」

その本の表紙を見て、セブンは多少の苦笑を交えての感想を漏らした。
ttp://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000007199067&Action_id=121&Sza_id=B0

その本のタイトルは、『ひめゆら』、著者は西野映一。
掲載誌の形態上、マークこそ付いてはいないものの、れっきとした性描写のある成年向けのコミックスである。

「彼の上梓する、初単行本だよ」

メトロンに促されその本を手に取ったセブンは、ぱらぱらとページを手繰り、荒く中身を眺めてみた。

「やや書き文字が五月蠅いようにも感じるな。このあたりは好みが別れるところか」

確かにセブンが指摘するとおり、性行為の描写においてその擬音や少女達の甘い嬌声が、写植ではなく手書きの文字によって表現され、
行為のクライマックスにおいてはそれがコマから溢れんばかりにこれでもかと盛り込まれている。
そのあたりを五月蠅く読み辛いととるか、主たる会話に対して取捨できる情報と取るか、確かに好みの別れるところだ。

「私はそれを、『せわしなさ』と受け取ることにしたよ」

アダルトビデオを早回しにしたような、そこにある息づかいのチープな凝縮。情報をとにかく詰め込み、少女の小さな呟きまでも漏らさず書き込んでいく。
動かない漫画だからこそ、そこにしつこいくらいの動きの情報を詰め込んでいくのだ。
そこにあるのは、激しく、それでいてコミカルな性行為。

「なるほど、『そういうもの』だと思えば、これもなかなか」

にやり、とセブンが笑みを浮かべる。
雑然とした情報を、BGMとして楽しむ、そんな感覚だ。

「続き物である本編以外に読み切りは一篇、これもハーレムものなのか?」

いや、とメトロン星人は首を振って否定した。確かに、ヒロイン二人と主人公一人の3Pではあるが、それはただの行きずりであり、それ以上の進展はない。
それよりも本編だ、とメトロンは、セブンにその粗筋を語って聞かせた。



976 :『島物二篇(しまものにへん)』:2008/06/21(土) 20:59:13 ID:BQO1xfYW
 



離島に住む主人公と、その幼馴染み3人。
沈み行く島に出ている避難勧告に、どんどん島民はいなくなる。最後まで残っているのは彼らのみ。
少女達は某か島への未練を持ち、それが故に島から離れようとしない。

そこへ、謎の少女が登場。
主人公に、彼女達の説得を依頼する。
彼女達の未練を解放し、島から出ていく決心を付けさせて欲しい、と。

彼女とのセックスを報酬とされ、前払いでそれを受け取ったスケベな主人公はその依頼を遂行することになる。


「なるほど。そして幼馴染み一人一人とセックスをして説得、最後はまとめてハーレムプレイ、か」

セブンはそう、粗筋を聞いての展開を読んだ。そして一言、安易だな、と呟いた。
しかしメトロン、それには彼なりの、くっくっくっと言う押し殺した笑いで返し、確かに安易だな、と意味ありげに同意した。

「しかしそれは、心地よい安易さだよ」

メトロン星人が語る。
物語のラスト、完全に沈んでしまった島から離れた主人公達。

「その後の多くを物語は語らない。ただ、それを読者に想像させる、見開きがあるのみだ」

そういってメトロン星人は、彼から一時その本を取り戻し、ぱらぱらと捲ってそのページを導き出した。
彼がそうやって、セブンにちらりと見せたラストシーン。

「あまり、結末について語りすぎるのも申し訳ないのだがね」

悪戯っぽい語調で、発光器官を小さく明滅させてメトロン星人は、再びぱたりと本を閉じた。
セブンが見たそのページには、主人公とヒロイン、そして彼らの子供達が描かれていたのだ。

そしてメトロンは、再びその本をセブンに差しだし、語った。



「彼と、彼女と、その子供達。彼らが一緒の方向を向いて共に歩いている姿が、わたしは気に入っているのだよ」



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