【みんな】ハーレムな小説を書くスレ【仲良く】 10P

123 :順風満帆!01/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:50:32 ID:5ZWAywyz
夜の内海、群島海域の沖は波も低く、陸の明かりも届かないこの場所でも静かに風を通している。


──緩やかな波の動きに合わせるように、シェロは緩やかに腰を動かす。
船は静かに揺れ、シェロたちのいるベッドも揺り籠よりもゆっくりと揺らしている。
シェロは陰茎を密着させるようにオルダの内壁に擦り付ける。
粘膜全ての襞を引っ掻くように丁寧に掻きだし、オルダの最も感じるところを抉り押すように挿し入れると、
「ひっお、おおおおおおぉぉぉぉl、うっぎ、うぐぅぅぅぅぅぅぅぅ…………」
オルダは呼吸するように喘ぐ。

そこには普段の、

『赤鷲』こと女海賊オルダ・カラミティの威厳などかけらもない。

霞がかかった目でシェロを見上げ、口からは喘ぐ犬のように舌をはみ出させ、上気した肌は快感に痙攣し、愛壷はこれ程蜜を湛えながらも咥え込んだシェロの芯棒を離そうとしない。

ぬちゅふっ。
「はぎゅっ、」

じゅるるるるるる。
「ふぎぃぃぃぃぃぃぃ……」

ぷじゅっ。
「ひぉっ」
るぬぬぬぬぬぬぬぬ。
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」

シェロがゆっくりと抜き挿しするたびに、オルダはそのだらしなく開いた口から涎と嬌声を漏らす。
その蕩けきった表情に『翼の生えた髑髏にカトラス二刀』の眼帯は似合わないが、『海賊』の表情に勝る『女』の表情が愛おしくなり、シェロはオルダにキスをした。

「あ、あぅ、」

一瞬オルダの表情の『快楽』がより以上の『喜び』にすり変わり、

じゅパン!
「は!?」

その一瞬に急に激しくなったシェロの動きに、緩やかな動きに慣れてしまっていたオルダの膣は瞬時にして頂点に突き上げられる。



124 :順風満帆!02/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:51:39 ID:5ZWAywyz

パンぱんぱんぱンじゅパンパンパン……!
「やッやッやッやッやッやッやァッ……!? イッイッイッイッ、イッいぎ……!」

『イク』という言葉も口に出させないように、シェロは唇と舌でオルダの口を塞ぐ。

「いっ、いいいいいいぃぃぃぃぃぃ…………!」
ビクビクビクビクビクビク…………

やがて、オルダはシェロの身体にきつく抱きついたまま腰を中心に身体中を震わせてイってしまった。動きが激しくなってからほんの数秒しか持たなかった。

「ひ、ひぃ、ひぃふ、ふぅ、ふぅっ……」

絶頂に必死で呼吸を整えるオルダ。しかしその間もシェロは緩やかに動きを止めない。

シェロは上気した顔で荒く息をつくオルダの目をじっと見つめている。
その動きは今度はオルダの快感を高めようというより、自身の快感を保とうという動きである。

その懇願するような目に、快感の余韻の中でやっと気付くオルダ。
ほんの少しだけ余裕を取り戻したオルダは、小さく笑いながら頷いた。

するとシェロは再びオルダの腰に自身を打ちつけ始める。
パンっ、パンっ、パンっ、パンっ……。
「んッ、んッ、んッ、んッ……」
オルダも再び息を弾ませる。

シェロの頭を胸で抱くようにして彼を受け入れているオルダ。
さっきまで彼女はまるで気付かなかったが、シェロも随分と息を荒げ、快感に耐える表情をしている。それを見て、オルダの表情が幸せに緩む。

「いいよ……。イっちゃいな……♪」

ぐっ。

「うくゥゥゥゥッ……!」
ドッ! びゅぅぅぅぅぅぅぅッ! ドびゅゥゥゥゥゥッ! びゅゥッ……。

シェロを抱く腕と同時にグッと締め付けたオルダの膣に、シェロの白濁が勢いよく膣内に吐き出され、オルダは再び芯から絶頂を味わった。



125 :順風満帆!03/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:52:41 ID:5ZWAywyz

「──終わりましたか」


脱力するシェロを抱いたまま、満足と気怠さで眠り込みそうになっていたオルダは、すぐ傍からかけられた声に不機嫌そうに顔を上げることになる。
少し上気して、不機嫌な顔の、マチルデ・ブリンクマン。副長でオルダの右腕。
海賊のクセに堅物で、奔放なオルダにいつも振り回されている。

「何だよ〜、邪魔すんなよ。私はこれからこの人間抱き枕を抱いて昼まで寝るんだからさ〜」
「もう夜明けです。シェロはもうすぐ食事当番の仕事に就かなければならない時間よ。可哀想に、シェロはこのまま寝ないで今日の仕事に就かなければならないわ」
ぶ〜、と唇を尖らせるオルダ。オルダの上で脱力していたシェロが身体を起こす。

「──シェロ、もうすぐ仕事の時間よ。目を覚ましなさい」
「あ、はい! 申し訳ありません。副長」
「眠る時間はないけど。仕事の手は抜かないように」
「はい!」

オルダの上、ベッドから降り、急いで服を着始めるシェロ。
オルダは人間抱き枕ではなく普通の枕を抱いて、胡坐をかいたまま不機嫌にシェロを見ている。
どうやら、あまりにも余韻なく睦事から離れようとしているシェロに不満があるらしい。

「──最初あなたがファシナ海軍の見習い水夫なんか拾った時は、何をトチ狂ったかと思ったけど」
すると、すぐ横で同じくシェロを見ていたマチルデが、横目にオルダを見ながら皮肉げに話しかけてきた。

「あなたよりあの子の心配をした方がいいみたいね? 絶倫な船長にヤリ潰されちゃうかも」
どうだという顔で首を傾げて見せるマチルドに、

「ヤリ潰すのは、はたして船長じゃないかもしれないんじゃないか?」

──「女だけの海賊船」、『大乱の赤い翼』号の船長は、含みのある表情で返した。
同じくその船の副長は、赤い顔で目を逸らした。



126 :順風満帆!04/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:53:35 ID:5ZWAywyz
ファシーナ〜フォルトナ間の沖でのファシーナ軍船との奇襲戦で、『赤鷲』オルダの海賊船、『大乱の赤い翼』号は圧倒的な力量差で勝利を収めた。
相手はファシーナ海軍の輸送船団で、その身の内にあるのは兵ではなく兵糧。その鈍重さは、内海でもその名の売れた『赤鷲』の敵役にそぐう相手ではない。
結果這う這うの体で逃げ出した、その船団から海に放り出された見習い水夫。

それがシェッロ・ルッジェーリ──シェロだった。

最初はオルダが気まぐれから掬い上げた只の捕虜だったのだが、「この船に無駄飯を食わす甲斐性もなし」との副長の言葉に、各所の下働きに借り出されるようになった。
──実は拾い上げてからしばらく、オルダは軍船の見習い水夫など拾ったことを忘れていた。
改めて彼女がそれを思い出したのは、毎日の飯が何故か美味しくなり、船の各所で華奢な見習い水夫の少年を見かけるようになってからである。

そして気付いたその日に、シェロは奔放な女海賊の閨に引っ張り込まれていた。



127 :順風満帆!05/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:54:32 ID:5ZWAywyz
──下層船室の廊下は照明がほぼ落とされていて、わずかに四つに一つつけられているランプの弱い光のみがシェロの視界を守っている。
ほとんどの船員にとっては今はまだ夜であり、見張りや幾つかの当番だけが今を朝(もしくは就寝前の時間)として認識しているだろう。

厨房の責任者であるキアラ・アッカルドはどちらかと言えばぐうたらな人間で、シェロが食事当番の日はそもそもまともに起きて来ない。
「自分より料理の上手いシェロがいるのだから厨房の仕事は押し付けなければならない」というのは、本来の仕事は『砲手』である彼女の宣言だ。
シェロはこれから厨房に行き、竈に火を起こすところから一人で仕事を始めなければならない。
部屋を退出する間際にキスをしたオルダは、シェロが「いってきます」と言うと、少し機嫌を直してくれた。これから彼女は昼近くまでゆっくり眠る。
一緒に部屋を出てきたマチルデもこれから自室で床に就き、皆が起き出す朝方には眠さなどおくびにも出さず食堂に姿を現すだろう。

だから、今同道するようにシェロの少し前を先行しているマチルデは、これから仕事に行くシェロとは関係ないはずだ。
それは、マチルデの私室がオルダの部屋と同じ上層船室にあるはずでもだ。

「シェロ」

無言で前を歩いていたマチルデが、前を向いたままシェロに話しかけてくる。

「何でしょう」
答えるシェロ。すでに厨房のドアはすぐ目の前だ。

「ここのところオルダばかり構っているのは不公平です。私のことも……ちゃんと可愛がりなさい」

上気した顔で振り返ったマチルデは、静かなランプの光の中スカートをたくし上げ──すでに濡れそぼった下着を着けていない股間をシェロの前に露わにした。

唐突なことで顔を真っ赤にするシェロの目の前で、マチルデは壁に背中をもたれさせた。
そのまま腰を突き出して、はしたなくもガニ股に開いた脚の間、ポタポタと愛液を溢す股間を開いてみせる。

「──シェロは酷い人だわ。私からおねだりしないと抱いてくれないのでしょう?」

捲ったスカートの端を咥え、上目遣いにシェロを見遣るマチルデ。
クールで堅物の副長はおらず、生娘のような表情で淫らな姿の『女』そのものがそこにいる。

「そ、そんなことないですよ。その、忙しくて、僕も、その……」
真っ赤になってたじろぎつつ、しどろもどろに答えるシェロ。
それを見てクスリと笑うマチルデ。

「就業時間までもう少しだけあるわ」
拗ねたようなマチルデの顔に、徐々にこれでもかという淫らな表情が浮かぶ。

「──シェロ、副長命令です。今から時間まで、私を『あなたの女』にしなさい」



128 :順風満帆!06/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:55:16 ID:5ZWAywyz

「はァッ、はァッ、は、激しッ、シェロぉぉぉッ! てッ、手加減ン、してぇッッ!」
シェロの激しい責めに、マチルデは泣き出してしまう。
手を壁に突いてしっかりと身体を支えているつもりだが、快感に耐え切れないマチルデは、ズルズルと少しずつ壁に沿ってずり落ちている。
「やッ! やゥゥゥゥゥっ!? そ、そんなにィィィィ! 急がなくてもォォォォ! はッ、はぁッ! うぎぃぃぃ、ま、まァッ、またキタぁぁぁぁぁぁぁ!」
マチルデの身体がビクビクと痙攣する。もうこれで三回目。

そんなに急がなくてもまだ時間はある。
マチルデの言うとおり──というより、最初から十分に一回は愛し合う時間があったのだ。
しかしマチルデはこうしてそのわずかな時間にもう、シェロの激しい責めに四回目の絶頂めがけて突き上げられているのだ。

「なゥ、何でぇ! もっとゆっくりィ! す、すればいいじゃない! うッ、うぐッ、うギュゥぅぅ!」
ガクガクと腰を揺らし、口の端に涎の泡を浮かべて、マチルデは暴力的な快感に必死に耐えている。
快楽と涙に霞んだ目には、シェロの姿がはっきりとは映っていなかったが、

不意に、

「──じゃあ、マチルデさんは時間いっぱい優しくゆっくり抱かれるのと、時間いっぱい何回もされるのと、どっちがいい?」

シェロが発したそんな時間が一瞬止まってしまいそうな言葉にマチルデはキョトンと目を見開き、

ずじゅんッ!
「はぎゅ! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッ!!」

ねだるようにシェロが囁く間止まっていた腰を大きく打ち付けられ、四度目の絶頂を味わわされた。

「は、はヒィ、ひィィィ……」
脱力からズルズルと床まで崩れ落ちながらマチルデは、

「時間い、いっぱチュぷゥ──」

答えを口に出せぬうちに、シェロの絡み取るような口づけにその唇を塞がれた。

129 :順風満帆!07/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:56:22 ID:5ZWAywyz

「──はい、そこまで♪」

そしてシェロの舌がマチルデの口の中に啜り込まれる前に、シェロの頭を抱いてマチルデの唇から引き剥がした者により、あっという間にその口づけは終わる。

「シェロはお仕事、私との蜜月の時間で〜す♪ 副長殿、夜更かしは身体に悪いですよ?」
「な! あなた、キアラ!」

シェロの頭をヘッドロックしているのは、厨房責任者のキアラ・アッカルド。
毎日の食事当番をシェロに押し付け、いつもならば自室でまだ寝ているはずのお気楽『砲手』である。

「あなた、ど、どうして……! この時間は寝ているはずじゃ……!」
「副長は知らなかったでしょうけど、私は毎朝早朝、仕事に出てきたシェロを襲って、一本抜いてもらってから眠るんですよ。
 ふっふっふ、私の生息時間に厨房の前でシェロを犯すなんて、脇が甘いと言わざるを得ない! ですね〜」

理不尽な自分の発言に胸を張るキアラ。マチルデは呆気に取られる。

「じゃあ、シェロは私としましょうね〜♪ 副長お休みなさい〜♪」
その隙にキアラは、シェロをマチルドから引き離そうとする。

「わっ! 馬鹿! 私まだ射精してもらってないのよ! いつもしてるなら今日くらい我慢しなさいよ!」
持ち上げられそうになっているシェロ、しかしマチルデは繋がったままのシェロの腰を両足をガッチリ絡めて押さえつける。

「わッ!? 副長、脚、お離しなさいな!?」
「やァ────っ!  射精ィ──────っ!」

シェロからマチルデを引き剥がそうとするキアラ、しかしマチルデはシェロにしっかりとしがみついて離れない。結合部分も離れない。
「は・な・せ・ェ───────ッ!」
「しゃ・せ・い・ィ───────ッ!」
やがて強引にシェロを持ち上げるキアラ。マチルデの身体もそれについて浮き上がる。

──つぷリ。
「ひッ!?」

その時マチルデの後ろに立った人物が、彼女の後ろの穴に指を挿し入れた。



130 :順風満帆!08/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 21:58:03 ID:5ZWAywyz


「マ〜チ〜ル〜デ〜……♪」

下着姿のオルダである。
「な、何をッ!?」
「私ン所からシェロ取ってったくせに、こんなところでナニしてるのさぁ?」

「うわっ!? 船長!? 何なさってるんですか!」
キアラが声を上げる。
オルダはマチルデの後門に中指を差し入れたまま、残った指でその周囲を撫でる。マチルデは自分の尻に伸びているオルダの手を凝視し他まま動けない。
「マチルデはシェロの射精が欲しいんだって? なら……」

ニヤリと笑み、オルダが──マチルドの中に入っている指を激しく動かした。

「わっ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅ、ひぎぃぃぃぃ!?」
「うわっ!? あ、うぐッ!?」

急に後門の中に刺激を与えられて、マチルデの膣内が激しく収縮する。

びゅルルルルルルッ! ビュ─────ッ!

そしてその収縮に締め付けられたシェロが、動く暇も与えられずマチルドの中に射精した。


「──よしよし、射精してもらってマチルデも満足だろう。じゃあ、シェロは私の抱き枕な♪ 食事当番はキアラがやっとけ」
「うわ!? そりゃありませんよ船長!」
言ってシェロをマチルデから引き離すオルドに、キアラが反発する。マチルドは今の射精でイってしまって、恍惚の表情で気絶している。
「オルダ様……僕はこれから仕事なんですけど……」
「そうですヨぉ、船長ぉ〜。副長に怒られちゃいますよ?」
シェロはオルダの肩に担がれていて、困ったような顔になっている。オルダに頭の上がらないキアラは、シェロの言葉を頼りにオルダに反抗する。
オルダは、シェロの精液を股間から溢れさせながら床に横たわっているマチルデをチラリと見た。
「これこのとおり副長は熟睡中だ」
「その為にイカせましたね!?」
「ふふ〜ん、抱き枕〜♪」
「うわ〜、ズルいですよ!」

シェロを抱えたままのオルダと、それに縋り付くように掴みかかるキアラ。
しかしそこへ駆け込んできた観測手のアリチェが二人の油断を切り裂く。


「船長! 敵影です! ファシーナ軍船、大型船1隻、中型護衛船2隻!」



135 :順風満帆!09/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:28:03 ID:5ZWAywyz

「アリチェ、射程範囲内までの時間は!?」
「15分でこちらの有効射程内に入ります!」
「キアラ! 10分以内に砲手配置! 有効射程に入っても先走らないように! アリチェ! 全員たたき起こして! 戦時警戒態勢で待機!」
「承知しました!」
「了解です!」
キアラとアリチェが勢いよく返事してすぐさま駆け出す。
毅然とした態度で二人に指示を出したマチルデは、次に下着姿のこの船の船長を見る。

「あなたはとっとと見栄えのする服を着てきなさい!」
「そりゃお互いさん。シェロ、着替え手伝ってくれ」
「あ、は、はい!」

上層への階段へ向かいながらオルダはすでに下着を外し始めている。わざわざ『勝負下着』で臨んでやろうというのだ。
ブラジャーを受け取りながらオルダについて行くシェロは、『お互いさん』という言葉の意味を一瞬 図りかねているマチルデに振り返る。
「その……副長、御召し換えお手伝いできなくて申し訳ないんですが……お早く着替えられた方がいいと思います」
そのままシェロは、愛液と精液に塗れたマチルドが羞恥の悲鳴をあげるのを聴いて喜ぶオルダと共に階段を上ってゆく。


「シェロ、どっちがいいかなぁ?」
オルダが鏡の前で、二つの下着を比べている。片方は白で緻密なレースの入ったもの、もう片方はもっとシンプルなつくりの赤いものだ。
「オルダ様にはどれもお似合いですよ」
答えるシェロの手には、女海賊『赤鷲』ノコスチュームとも言える真紅のジャケットと大鷲の羽飾りのついたキャブリーヌが置かれている。目の前のオルダは裸だ。
「……じゃあ質問変更。シェロはどっちが好み?」
オルダがそう言ってシェロのほうに振り向く。手に持ってブラジャーを両方胸に当てて見せている。
裸のオルダを目の前に赤面していたシェロの顔がより赤く染まる。

「…………………………………………………………………………………白、が、可愛く見えて……好きです」

シェロは少しそっぽを向いて困ったように言うと、オルダは笑み、赤い下着を放り投げた。



136 :順風満帆!10/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:29:11 ID:5ZWAywyz
「んっ、しかひ、ひぇロは、んっんっ、りゅぷ、りゃんでこんらに、セックひゅが、ぷは、セックスが上手いんだ? 
 水夫なんて男所帯にいたら、そうそう女とも知り合わんだろ? ましてファシナ軍の偉いさんには部下にも娼館通いを許さんやつもいるって言うし」
シェロの股間に顔を埋めていたオルダが、口を離し、そのまま手で扱きながらシェロの顔を見上げる。

「私が身奇麗にするんだから、シェロもちゃんと綺麗にしておかないといけないだろ?」と言ったオルダは、シェロの選んだ下着を身に着けて彼の股間に唇を寄せてきた。
有効射程までで15分。その後接近して中距離での砲撃戦に入り、接舷するのはさらにその後だ。一回は出来るというのがオルダの判断らしい。

「さぁ、時間がない。さっきのマチルデみたいに、大急ぎで私を抱いてくれ」


──窓から見える海上に、高く水柱が上がった。水音は近く、船からさほど離れていないように聞こえる。
「んっ、んぅッ、はぁっ! ゆ、有効射程外で、あふ、初弾が来たな。あぐ、あゥ、ふふ、も、もうすぐ砲撃戦に入るぞ。さぁ、早く、あっあっあっ、イ、イカせてく、くれ」
「はッ、は、はい! んッ、う、ココですね?」
シェロがオルダの膣中を斜め下から抉るように擦りあげる。
「うんィィィィィッ! そ、そうだ! はッ、はッ、ほら、もっと激しく!」
「は、はい!」
恥丘の裏を引っ掻くシェロの屹立にオルダが高く啼く。シェロはオルダの懇願にさらに激しく責め立てる。

「ひゥッ! は、はぁッ、は、ンぐッ、はヒ、はァッ! はァッ! あぁッ、シェロ、シェ、はァッ!」
「はゥッ、はゥゥッ! オ、ルダ、さまァッ! オルダ様ァッ!」

その時、部屋のドアがドンドンッ! と激しくノックされる。

「船長! お早くなさって下さい! もうすぐ砲撃戦に入ります!」
呼びに来た船員の声。
マシルデが、敵船の接近に焦っているというか、現状でとっとと出てこない二人に業を煮やしたらしい。

「あ、あ、あ、ゥ…………」

「はァ、はァ、は、す、すいません……その、驚いてイっちゃって……」
シェロの腕の中で、オルダが脱力している。身体が小刻みに震えて、膣内は射精したシェロの陰茎を力無くもさらに絞るように蠕動している。
「ん……ぃ、いいよ……私も今のでイっちゃったし……」
鏡の前で壁に手を突き、幸せそうな顔で啼くように呼吸を荒らくしているオルダに、シェロは肩越しに後ろからキスをした。



137 :順風満帆!11/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:30:25 ID:5ZWAywyz
ファシーナは内海を囲む国々の内三つの大国の一つで、海軍力も南大陸のマウリュケアに次ぐものを持っている。
だが近年、剣竜連峰を挟んで隣接している小国フォルトナとの戦争において敗戦が続いている。陸戦においても、海戦においてもである。
フォルトナの海軍力はファシーナに劣るものだが、フォルトナは自国領海内外に多数の私略船を放ち、また、それらは内海中の海賊とつながりを持つ。
フォルトナはファシーナの海上軍事行動の予兆を察しすると、海賊達に情報を流し物資強奪の手引きをする。
海賊達は幾つもの島の浮かぶ二国間の群島海域において、自由がごとく振舞う。
故にファシーナの海軍にとって、海賊は不倶戴天の敵なのである。

群島の民は皆独立不帰の民であり、侵略者であるファシーナと戦う海賊達の味方である。
幾たびもファシーナの侵略を受けている彼らにとって、海賊とは彼ら自身の『自由』と『不屈』の象徴なのだ。
もちろん残虐であったり非道であったりする者は疎まれるが、奔放にして誇り高く、汚い真似は絶対しない一部の海賊達は彼らの英雄なのだ。

故に、ファシーナ〜フォルトナ間の群島海域は称して『海賊天国』と呼ばれる。
『赤鷲』オルダ・カラミティも、そんな『海賊天国』の海賊の一人である。


真紅のジャケットのベルトに二本のカトラスと二挺のフリントロック銃を下げ、シックな黒に銀の縁取りのキャブリーヌに何本もの大鷲の羽を飾っている。
ついと帽子を上げれば、その下にはどんな男よりも精悍な表情と、海賊『赤鷲』のトレードマーク、『翼の生えた髑髏にカトラス二刀』のアイパッチが現れる。

海賊船『大乱の赤い翼』号の船長──海賊『赤鷲』こと、オルダ・カラミティはその表情に凶暴な笑みを浮かべ、

「じゃあ、いくか」

と言った。

窓の外からは、連続する着弾の水音が聞こえてくる。



138 :順風満帆!12/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:31:44 ID:5ZWAywyz

「僕はですね、昔から海に落ちて漂流したり、乗っている船が難破したりすることが多かったんですよ」

操舵室への入り口に駆けながら、シェロがそんなことを話し出した。
「? 何の話だ?」
同じく、というより先に立って駆けていくオルダが目線だけシェロに送りながら訊ねる。

「ああ、さっきの……『何でセックスが上手いのか』っていう話です」
「あ? ああ、そういや訊いたな。何でだ?」
「はい……」

シェロは足を止めずに続ける。
「その、そうやって漂流したりするたびにですね──何故か、女の人に拾われることが多かったんです」
「──何?」
オルダの足が止まる。
「な……な、え?」
「その……それも大体女の人ばっかりの、集団だったり集落だったり前みたいに軍隊だったりで、あの、何人もの女の人に一時期に関係を迫られることが多かったので……
 何人もとするために女の人を先にイカせる必要があったんです。まぁ、そういうところで色々な仕事とか覚えたんですが」
「何人も……」

もう二人は操舵室への階段の目の前まで来ている。
だが、オルダは階段を上るどころか、むしろ引き返してシェロに詰め寄ってくる。

「シェロ」
シェロの胸倉をつかんだオルダが、殺気さえもこもるような目つきでズイとシェロに顔を近づける。
「何でしょう」

「お前、まさか今までの女と私らを同列に置いて、また他の奴に拾われたら終わる関係だと思ってるんじゃねェだろうな?」
恫喝するように問うてくるオルダ。胸倉をつかんだ腕に力が入り、シェロの足が床から離れる。
「オルダ様……」
「軽く見てんならお前──殺すぜ?」


「──僕は」


「オルダ!! いい加減にしなさい! 敵船あと50mないわよ!」

階段の上、操舵室のドアが開き、マチルデが飛び出してくる。


139 :順風満帆!13/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:32:36 ID:5ZWAywyz
「もうちょっと待て! 今大事な話を……!」
「敵船一隻中破、一隻は威嚇にビビッて海流に嵌ってるわ! メインのデカイのは接舷してくるわよ! 他のことは後に回しなさい!」
階段を一足飛びに下りてきたマチルデが、オルダの首根っこを引っ掴む。オルダがあくまで拒もうとするも、

「メインのデカい船は『海鳥騎士団』の旗立ててるわよ!」

マチルデのその言葉に、オルダの表情が変わった。
「ファシーナ海軍の親衛隊じゃねぇか──停戦中に群島に出張って来てていい連中じゃねえぞ!?」
「だから! 早くしなさいってのに! シェロは他の連中と合流しなさい!」
驚いているオルダを、マチルデが操舵室に押し込む。

「オルダ様!」

ドアが閉まる前、シェロの声に一瞬オルダが振り返る。


そして、ドアが閉まる。ここからは戦場だ。

「艦砲、敵護衛船に命中! 二隻とも航行停止!」
「敵巡洋艦、約1分で接舷します!」 
「総員に指示! 白兵戦の準備をしろ! ファシーナの鉄鎧どもを溺れさせてやれ!」

「何の話してたのよ?」
マチルデがサーベルの鯉口に手をかけながら、まだ入り口の方に目をやっていたオルドに声をかける。

「ん? ──いや……」
少し呆けたような様子のオルダだったが、


──ドアが閉まる直前、シェロは微笑んだ。
──オルダの笑みにもほんの少しだけ似た、ちょっと精悍な笑顔で。


「──アレは、裏切らない」
そう呟くと、女海賊『赤鷲』は、嬉しそうに凶暴な顔で笑った。


140 :順風満帆!14/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:33:31 ID:5ZWAywyz
風も少ない中、『大乱の赤い翼』号の水夫達は巧みに舵と帆を操り敵船に近づいていく。
すでに両船の距離はほとんどなく、斜めに併走して互いの舷側の艦載砲を避けつつ渡しい板を渡すタイミングを計っているような状態である。

ファシーナ海軍親衛隊、『海鳥騎士団』。

ファシーナの海軍省直属の、海軍映え抜きを集めた親衛隊。
貴族国家であるファシーナでは珍しく、貴族権威の発言力が低い実力本意の部隊である。
『ファシーナ海軍の威光を示す部隊』と言われ、作戦行動力は内海でもトップクラス。海賊討伐などに出てきて良い部隊ではない。

「接舷するぞーっ! 総員戦闘準備!」
「乗り込ませるな! 続け──ッ!」

自船の斜めを走る敵の船に互いにボウガンの矢や銃弾が打ち込まれる中、ついに並んだ両船の間に、渡し板が渡される。
同時に、少し高い位置のファシーナ船の甲板から銀色の胸甲を身につけた海兵たちが、『大乱の赤い翼』号の甲板に乗り込んでこようとする。
それを迎え撃ちカトラスを構えた『大乱の赤い翼』号の船員達が、海兵達と渡し板の上で切り結び、海賊が、海兵が海に落ちていく。


だんッ!!


ファシーナ軍船の甲板上に、両手のカトラスを翼を広げるように構えた赤い影が降り立つ。

「海賊『大乱の赤い翼』号の『赤鷲』だ……海賊にケンカ売ったこと、後悔しろ!!」

周りのボウガンやサーベルを持った海兵たちが、敵が空から現れたことに気を取られ、動きを止めてしまった隙に──血煙が立った。

自船のマストの上から飛び移ってきた赤い猛禽が翼を広げるように二刀のカトラスが舞わせると、周囲に立っていた胸甲の海兵達は、首を、腕を、斬られて床に這う。


141 :順風満帆!15/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:34:14 ID:5ZWAywyz
突然自分達の後ろから悲鳴が上がり、『大乱の赤い翼』号に乗り込もうとしていた海兵たちに混乱が生じる。
「今だ! 押せ──────ッ!!」
マチルデの号令に、立て板を盾にした海賊側の水夫達が一気に海兵達を押しやってファシーナ船に乗り込む。
戦闘の場が広がり、事態は一気に乱戦に踊りこむ。


ファシーナ船の甲板。
両手のカトラスを振るって自由に舞っていたオルダに、横から裂帛の銀光が突き込まれる。
ギリィィィン! スァッ!
オルダはクルリと回した右手のカトラスでそれを受け流し、反撃に半身を返して左のカトラスでわき腹を狙い斬り上げる。

相手がそれを同様半身を返し、左手のパリィングソードでそれを受け流したのを確認したオルダは、

「てめェ……何だ?」

ほんの数センチの距離で背中越しに向かい合ったその女を睨みつける。
女は殺気のこもった目でオルダを睨み返す。

「アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエ──この巡航船『メーヴェ・ブランシェ』号の船長、だ」


142 :順風満帆!16/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:34:57 ID:5ZWAywyz
その頃シェロは船医のファビオラ・アロンソと共に、『大乱の赤い翼』号の内部に敵を入れぬべくカトラスを振るっている。
剣を取る力のない何人かの見習い船員が、負傷者を船内に引っ張り込むのを援護しているのだ。
ファビオラは医者のクセに剣技にも堪能で、サーベルを振るって進入しようとするファシーナ兵達を押し返しつつ、
「そこを縛って止血しろ! 違う、もっと上だ!」
とか、
「とっとと縫って消毒しろ! 躊躇するな!」
などと、手近な部屋で応急手当している見習いたちに指示を出している。これでは誰が医者か分からない。

「だめです! 分かりません〜!」
見習いが泣き言を入れる。
「くっ、使えない……! シェロ、お前確か、縫合できたな! 代われ!」
「はい! わ、分かりました!」
シェロに掴みかかろうとしていたファシーナ兵を蹴り飛ばしつつ、ファビオラは位置を変え、シェロの抜けた穴を塞ぐように船内へのドアの前に立った。

船内、ファビオラの救急キットとわずかな種類の薬品類だけ運び込まれた急ごしらえの臨時医務室には、すでに何人かの負傷者が運び込まれている。
僅かな傷の者は今だ甲板で戦っているため、ここにいるのは即座に治療が必要な者ばかりだ。
シェロはまず太股を刺された者を看る。出血が酷い。
「大丈夫、絶対助けますから、ベネデッタさん!」
シェロの励ましにベネデッタが微笑む。止血をきつくして、麻酔を掛ける。いったん切り開いて血管を縫合しなければならない。
麻酔が効くのを待つ間に、入り口近くに寝かされている背中に傷を負った者を看る。他の見習いは既に、また外に負傷者の救出に出て行っている。
「テレザさん、今から治療しますよ! 少し我慢してください!」
シェロの服のすそを力なくつかむテレザの背中を消毒し、大きな傷口を縫う。傷は幸い浅く、命に別状はなさそうだ。
麻酔なしで耐えたテレザの頭を撫でて褒め、(テレザは「えへへ」と笑い、)今度は麻酔が効いたベネデッタの傷を開く。
血管を縫合しながら、隣に寝かされている腹を斬られて内臓を手で押さえている者に声を掛ける。
「次だから待ってて下さいね──キアラさん」
「うん、だから早く救けてね、シェロ」
キアラが青白い顔で微笑む。

「出来た! もう大丈夫ですよ、ベネデッタさん!」
ありがとう、と、か細い声でベネデッタが言う。
「よし──次は……!」

キアラのほうを振り返ったシェロは、
「──シェロ、ごめん……!」
軍靴に踏みつけられたキアラと、自分に突きつけられたサーベルを見る──


143 :順風満帆!17/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:35:48 ID:5ZWAywyz
二刀のカトラスを振るう海賊船船長のオルダと、二振りの突剣を操るファシーナ船船長アドリエンヌの攻防は一進一退。
本来ならば華麗であろうアドリエンヌのレイピア捌きは、その細い体躯の見た目に反して重く、攻撃的なオルダの剣術に防御を強いる。
アドリエンヌの剣戟を重くしているのは──彼女の目に宿る『怒り』だ。

「勝手に喧嘩売ってきて、逆ギレかい?」

攻め手受け手を緩めずに、オルダがアドリエンヌを挑発する。もう少し怒ってくれれば攻め手の隙も大きくなる。
しかし相手は、殺気ののった高速の飛び込み斬りを放ってくる。その速さ、オルダはギリギリでそれをかわすが体勢も崩れてしまう。

「ふざけるなよ……海賊め──どの口がそれを言う……!」

しゃらんと細身の剣を振ってアドリエンヌは一瞬で体勢を整える。その表情にはさらに強い怒りが浮かぶ。
その理不尽にも見える怒り様に、オルダは体勢を立て直すのも忘れ呆気に取られる。

「そりゃあ私は、ファシーナのお貴族様には恨まれることばかりしてきたけどね……」
「ふざけるな!!」

アドリエンヌの突き。突き。突き。
体勢の崩れているオルダは必死でそれを避ける。

「貴様が……ッ!」
「私がなんだよ!?」
 さらに攻め込んでくるアドリエンヌを避け往なし、攻めのチャンスを窺うオルダ。アドリエンヌは一撃一撃に必殺の気合を乗せてくる。

──瞬間、至近距離で開いた身体の正面に隙が出来、

オルダの蹴りがアドリエンヌの腹に打ち込まれる。
舷側まで吹っ飛んだアドリエンヌは、倒れてもなおオルダを睨みつける。

「貴様が奪った私のモノは返してもらうッ!」

「お前のモノって……」
怪訝に思ったオルダがアドリエンヌに近づこうとした時──。

「目標確保──ッ!」

剣戟の喧騒を裂くように、よく通る声が両船の甲板上を通り抜けた

144 :順風満帆!18/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:36:35 ID:5ZWAywyz
嫌な気配を感じ、オルダは周囲を見る。

『大乱の赤い翼』号の方に渡っていたファシーナ海兵たちは、押し戻されたように皆ファシーナ船のほうに戻っている。
航行停止していたはずの他の船が、既に中破した方の船の船員を全て収容している。
さらに接舷していた『大乱の赤い翼』号とこの『メーヴェ・ブランシェ』号は、いつのまにかその今にも沈んでいく中破した船の方を進路の前方にしているのだ。

「全速前進──!! 離脱しろ!」
叫んだのはオルダではなくアドリエンヌ。ガクンと『メーヴェ・ブランシェ』号が帆を広げ加速し始める。

「全員退避────ッ! 操舵、取り舵いッぱいッ! 前方の渦を避けろ───ッ!!」
一瞬遅れたオルダの叫びに、『大乱の赤い翼』号の船員たちが反応する。
可能な者は、外れかけていた渡し板を駆け抜けて『大乱の赤い翼』号に必死で転がり込むが、遅れた者は渡し板と共に海に落ちていく。

甲板を駆け抜け助走して、『大乱の赤い翼』号にギリギリで飛び移ったオルダは、自船と敵船が、沈没する船が作る大きな渦を隔てて分かれたことを確認する。
幸い船は渦にこそ飲まれなかったが、すでに敵船はスピードに乗っていて、渦を廻ってから追いかけても随分水を空けられてしまう。何より、海に落ちたものを放ってもいけない。
「落ちたやつ、急いで救助しろ。 あと、けが人の治療。ドクター呼んでくれ。マチルデ、被害確認しろ」
冷静さを取り戻したオルダが、手早く指示を出す。
既に船上はてんやわんやで、船員達が素早くやるべき事を始めている。


「連中、一体何のために来たのかしら──?」
横に来たマチルデが呟く。被害確認をしたところ、幸いこちらからの死者はほぼ出ず、重傷者達も命は落さないで済むようだ。
「──分からん。目標確保とか言っていたが……」
オルダは腕を組み考える。『私のモノを返せ』と言っていたが、ではアドリエンヌの『私のモノ』とは一体──?

「船長、来てくれ──」
船医のファビオラの声だ。
臨時の医務室に使っていた船室から呼んでいるらしい。
行ってみると、治療を受けた負傷者たちが何人も横たえられている中、腹に包帯を巻いたキアラの傍らにファビオラがいる。


キアラは血の気のない顔でオルダ達を見上げ、──言った。

「申し訳ありません──シェロを……持っていかれ、ました」


145 :順風満帆!19/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:37:34 ID:5ZWAywyz
シェロは、『メーヴェ・ブランシェ』号のサロンで、アドリエンヌに抱かれていた。

「よくぞ……よくぞ戻ってきた、シェロ!」

シェロの上に乗って、アドリエンヌは激しく腰を動かす。唇は同様に激しくシェロの唇を貪っており、腕はシェロを抱きしめて離さない。
ファシーナ軍人の威厳、ファシーナ貴族の誇り、そういったもの全てを忘れたものがシェロの身体を貪っていた。

サロンにはアドリエンヌの部下と思しき者が何人か立っていたが、アドリエンヌはそれを気にかける様子もない。
ただただシェロと二人きりの世界において、自身の痴態をさらしている。

「ゆ、輸送船から放り出、しゃれたと聞いた時は、はァ、胸が、張り、張りしゃけるかと、お、おもぉッ……!」
話す暇も惜しむように、アドリエンヌは腰を振り、快楽を貪り続ける。
やがて、絶頂。

「ひィっ、ひ、イゥゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!」

ビクンビクンと身体を痙攣させ、派手に潮を吹いてアドリエンヌはイった。そして、陶酔した目で自分の腕の中にいるシェロを見る。
「アドリエンヌ様……」
「どうした……? 動いていいのだぞ? お前も気持ちよくなるがいい」
シェロは自分を抱きしめる貴族出身の海軍将校を見る。愛しい『モノ』を見るような目──。
「シェロ、お前は私のモノだ。もう他の何者に所有されることも許さん──」

「──アドリエンヌ様、シェロはあなた様のものであると同時に、我々の部隊の一員です。我々にも再会を喜ばせて頂く権利があると存じます」

室内に控える他の者達よりも高い階級章をつけた女将校が言った。他の者達も、何も言わぬがシェロとアドリエンヌに一心に視線を向けている。

「……まぁ良い。海賊なぞに使われていたシェロには、ファシーナ軍人の何たるかを教え込まねばならぬからな。
 お前達も教育してやるが良い」

アドリエンヌの許可が下りると、全員が服を脱ぎ始める。いち早く裸になった先程発言した女将校が、ベッドに腰かけシェロの顔を覗き込む。

「シェロ。あの負傷者どもが心配か? 情の深いやつめ、海賊どものことなどとっとと忘れてしまえ」
シェロの全身にアドリエンヌの部下達が舌を這わせてくる。

『メーヴェ・ブランシェ』号。『海鳥騎士団』のうち、女が船長を務める女だけの部隊の船。
シェロは『大乱の赤い翼』号に拾われるより以前、この海兵部隊の軍属であった。


146 :順風満帆!20/20 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/23(月) 22:38:40 ID:5ZWAywyz
負傷者達を人質に取られたシェロは、船室の窓から入り込んだファシーナの将校によって連れ去られた。
「お前が戻ればすぐに戦闘は終わる。戦闘が終われば怪我の治療などいくらでも出来る。ここでお前がいくら負傷者を治療しても追いつかないぞ」と言われ、シェロはそれを承諾した。
キアラなど何人かのそこにいた負傷者がそれをとどめようとしたが、負傷箇所を痛めつけられて傷が広がり、一時は彼女らの命も危うくなっていたらしい。

「私達がいながら……」

血の気を失った顔でキアラたちが言う。
ほとんどの者は麻酔で動けず、動ける者は傷を広げられ、まともに戦えるものがいなかった部屋。
彼女達は無力感に苛まれている。

「──マチルデ」
傍らのマチルデが苦く頷く。
「海戦を見咎めて、フォルトナ軍が来るでしょうね。それにつかまれば、こちらの船がまともに行動できるようになるには二週間はかかる。
 ──怪我人も多いし、少人数で動いてもらうことになるわよ」
「当然だ、構わねぇ」

オルダ・カラミティは、海賊『赤鷲』の顔で言った。
「海賊の身内に手を出して、只で済ます訳にはいかねェ。マチルデ、しばらく船はまかすぞ」
『赤鷲』の右腕は頷く。


「シェロを『モノ』扱いしやがったな……!!」


344 :順風満帆!2 01/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:16:08 ID:SY9PzTUO
軍属兼見習い水夫であるシェロの仕事は、基本的に雑用である。
あちらで倉庫整理に呼ばれれば行って倉庫で荷物を運び、こちらで書類整理に呼ばれれば行って資料整理や書類の複写・清書などをする。
基本的に真面目な性質なのか仕事はちゃんと覚えるし、覚えた仕事はちゃんと自分でこなせるようになるのだから大したものである。

『大乱の赤い翼』号からファシーナの『海鳥騎士団』海軍砦に連れ戻されて、もう三週間が経つ。

捕虜になった見習い水夫を助けるためだけに護衛艦一隻を沈めたアドリエンヌは、もちろん今回の件でペナルティを受けていた。
ファシーナ海軍の輸送船も多々被害を受けている海賊『赤鷲』を完璧に出し抜いて目的を遂行したことは、もちろん快挙である。
しかしそうやって果たした目標条件が、

『捕虜になったたった一人の見習い水夫の救出』

と言うのでは、美談以前に笑い話だ。
アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエの直属の上司に当たるベルティール・ショーヴェ第四船団長は、『メーヴェ・ブランシェ』号並びに同行した二船の乗組員全員に緘口令を敷いた。
曰く、『メーヴェ・ブランシェ』号並びに護衛艦二隻の航海は海上演習のため、うち一隻の沈没は航海中の事故のため、である。
結果、沈没した船の航海士及び操舵士は降格、船長は謹慎。

そして船団の責任者であったアドリエンヌは、一週間の謹慎、及び二ヶ月の陸上勤務である。


もちろんシェロも、アドリエンヌに陸に引っ張り上げられ、書類整理などの内勤につき合わされていた。



345 :順風満帆!2 02/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:17:04 ID:SY9PzTUO

「まだ私のやり口が気に食わないか?」
「いえ……」

海軍駐屯地の事務棟は軍港横の岬に建っており、裏手はすぐに海になっている。
そこでシェロは、アドリエンヌの代理で『メーヴェ・ブランシェ』号の隊長を務めている女将校と共に休憩していた。

──アドリエンヌはデスクワークが苦手と言うより嫌いのようで、実はほとんどの仕事をシェロに投げっ放している。
そのためシェロは自分の種々の雑用仕事の他に、書類の処理や作成、さまざまな手配など、アドリエンヌでなければ出来ない仕事以外ほとんどをこなさなければならない。
さらにアドリエンヌは、結果として出来た仕事の空き時間に、シェロを襲ってセックスを強要してくるのである。
そのため昼間にあまり時間の作れないシェロは夜間に仕事をまとめ、昼間はアドリエンヌの我侭に付き合う。
結果、シェロは部署の違うベルティール船団長がオーバーワークを心配して、このように休養を与えるほど忙しくなってしまった。

「目標が僕だったあの場合、アドリエンヌ様のように正面突破オンリーでは双方死傷者ばかり増えていたと思います。
 あのイングヒルトさんの作戦は正しい」

イングヒルト・ブランケ。没落貴族出身の女将校。『メーヴェ・ブランシェ』号の副長にして代理船長。
人に疎まれる性質のため昇進は遅いが、船長であったアドリエンヌより年上で作戦能力も高い。
貴族出身者が多い『メーヴェ・ブランシェ』号の船員の中で、身寄りのないシェロをまともに扱ってくれていた数少ない人だ。

──そして、『大乱の赤い翼』号で、負傷者達を人質にシェロに帰順を強要した人物でもある。

「だけど、あの連中を痛めつけたのは許せないんだろ?」
シェロは答えない。

イングヒルトは苦笑と言うには少し苦味の過ぎる笑みを浮かべる。
「嫉妬──かな」
聞かせるでもなくイングヒルトの呟いた言葉に、シェロはイングヒルトを見上げる。

「でも、私もお前が戻ってきてくれて嬉しいのは本当なんだよ」

また気怠げな無表情に戻ったイングヒルト──。
シェロは、イングヒルトが自分を押し倒してきても抗うことはしなかった。


346 :順風満帆!2 03/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:18:03 ID:SY9PzTUO

──すぐ頭上の窓の内側は、海軍駐屯地の事務棟の廊下なのだ。少し張り出し窓から身を乗り出せば、シェロたちの姿は見えてしまうのだ。
イングヒルトは両手を口に当てて必死に声を殺しているのだが、すでに表情は蕩けきって鼻息も荒く、いつ声を漏らしてしまうか分からない。

「ンふゥ──────ッ……、ンふゥ──────ッ……」
シェロの上に腰を落とし、プルプルと震えながら動けない。真っ赤に染まった顔には、涙すら浮かんでいる。
「動きますよ……」
シェロの言葉に目を見開き、首を振ろうとしてまた動けない。自らの首を振る動きさえ腰に伝わり、快感に変わってしまうからだ。
イングヒルトは肯定の返事も否定の返事も出来ぬまま、自ら下に敷いた少年が自分の腰に当てた手に力を込め、突き上げてくるのを覚悟も出来ず待っている。

「──ッッ!? ────────ッッッ!!? ンひゥッ!」 

シェロの腰に力が入り、一気に貫かれる──と言う予想は外され、シェロは一瞬だけスピードを上げたのち、全体を擦り付けるように緩く重いストロークに変わる。

ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞくッッ!!

「……ッッ!? ッッッ!! ッ……ケヒッ……ッ! はッあ……ッ! ………………ッ!!」

身体の芯から神経を侵食する重厚な快楽に、イングヒルトの呼吸が詰まる。
肌からはぶわっと汗がふき出し、目からぼたぼたと涙が零れる。
今にも大声で啼き出しそうになる口を必死で押さえても、その口は身体の痙攣のままに快感を囀りそうになる。
「は………………………ッ!! は………………………ッ!!」
もうとっくに身体はイキそうになっているのに、快感は津波ではなく満ち潮のようで、これだけ力強くありながら彼女を一気に快楽で押し流してはくれない。

「────────────────ッッッ!!! ────────────────ッッッッ!!!!」

イングヒルトはあっという間にイキそうになった後、イケないまま頂上の手前でずっと引きとめられているのだ。

もう彼女はほぼ正気を保っておらず、シェロに動かされるままにガクガクと揺さぶられていた。

その時、

「お待ちください、ショーヴェ准将!」

すぐ横の廊下から荒々しい足音と同じく荒々しい声が聞こえてきた。
声の主は、アドリエンヌのようである。


347 :順風満帆!2 04/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:18:55 ID:SY9PzTUO

「どうしました? デュバリエ三等海佐」
「どうしたじゃありません! シェロをどこへやったんです!」
「シェロ?」
「私の軍属です!!」

シェロがこうしてのうのうとイングヒルトに襲われていられるのも(実際は逆のようになってしまっているが)、ベルティール・ショーヴェ准将が休憩を与えてくれたからだ。
ベルティールは『メーヴェ・ブランシェ』号の所属していた船団の船団長なので、全ことの経緯を全て知っている。
実際は彼女は、将校であるアドリエンヌがただの軍属であるシェロに耽溺することをよく思っていないのかも知れない。
事実、ベルティールの声には大分険があるように思える。

「少しオーバーワーク気味に思えましたので。こちらで休養を取るように指示しました」
ベルティールはヒートアップしているアドリエンヌに対し、涼しげな声で答える。アドリエンヌの激昂などどこ吹く風だ。
「しかし、あなたは所属が違う! 彼は……シェロは私の軍属です! 口出しはご遠慮願いたい……!」

「──デュバリエ三等海佐」

アドリエンヌをピシャリと押さえるように、ベルティールとは別の声が答える。軍人らしい硬く冷たい声だ。

「マルシェ二等海佐……」
「貴殿は自分が謹慎中だという自覚があるのか?」

アドリエンヌが言葉に詰まる。

「しかし……謹慎は、もう終わって……」
「謹慎とは職分停止期間のことだけを言っているのではない。軍規を逸した行動で処分を受けた者は、その後の行動で自身の精勤を証明しなければならない。
 軍属にかまけている暇があるなら、実戦部隊に戻れるように少しでも勤務に励むべきではないか?」
「そ、それは……」

「デュバリエ三等海佐──あなたが『騎士団』本部に提出してくる書類、大変よくまとまっていると思います。
 ですが、このままだと船長として『メーヴェ・ブランシェ』号に戻るのは、あの軍属君ということにもなりかねないわね」
ベルティールの口調はあくまで変わらない。表面上柔らかく優しげなのも──その底に冷たいものが流れているのも。
三人の言葉が止まる。一人は屈辱と焦燥のため、二人は無言の圧力を与えるため。

「し、……失礼するッ!」
またドカドカと荒い足音がして、アドリエンヌの気配が廊下を遠ざかっていく。


348 :順風満帆!2 05/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:19:51 ID:SY9PzTUO

「アドリエンヌお嬢ちゃん、やり込められたみたいだな」
廊下の様子に聞き入っていたシェロに、上に乗っているイングヒルトが話しかけてきた。
「あ……すいません、集中するべきでしたね」
「いや……」
イングヒルトが少しバツの悪そうな顔でそっぽを向く。こういう表情を見せる人物ではないのだが……。
シェロは結合部に視線を落す。
「…………………………………………………何も言うな」
「……漏らしちゃったんですね」
「言うなと言うに!」

「──折角休養をあげたのだから、ちゃんと休めばよかったのに」

二人は顔を上げる。そこには二人を見下ろす准将の階級章をつけた女。顔に笑みを浮かべているが、どこかうそ寒いものを感じる。
ベルティール・ショーヴェ海軍准将。

「あなたのお気遣いを無にしてしまって申し訳ありません──ショーヴェ准将」
イングヒルトがベルティールを睨み、言葉を返す。すでにいつもの無愛想で皮肉げな口調に戻っている。
ベルティールは少し目を丸くして、
「あー……お漏らししないで言えたら良かったわね」
と言った。少しだけ本気の同情が含まれているように思える。その口調にイングヒルトが顔をしかめる。

「お前達、とっとと服装を整えろ」

ベルティールの後ろから硬い声がかけられる。ベルティールが後ろを振り向くと、彼女の後ろに立っていた人物が一歩前に出てくる。

「盛りのついた犬ではあるまいに、勤務時間中の海軍基地で何をしている」
鉄錆のように日に焼けた身体と、潮風に洗われ退色した髪。身長こそベルティールより低いが、軍人らしい硬さを持った女。
確かアドリエンヌがマルシェ二等海佐と呼んでいたか。
「軍規を乱す上官の下では、やはり規律を守れる部下は育たんと言うことか」
「お言葉ですが、私どもはただ今非番中でしてね」
マルシェ二等海佐の投げてくる皮肉にイングヒルトが皮肉を返す。交流が在るのかないのかは知らないが、馬は合わないようだ。

「──でも、それじゃ宿舎まで戻ることも出来ないわね」
ベルティールが窓枠にひじを突いて呆れたように言う。見た目は貴族然としているのに、どこかはすっぱな感じだ。
確かに、イングヒルトはズボンを脱いでいたから無事だが、シェロの服はイングヒルトが絶頂時に漏らした小水でびしょびしょである。

「メール、あなた、この子の着替えを持ってきてあげなさい」


349 :順風満帆!2 06/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:20:37 ID:SY9PzTUO
「……私がですか? この慮外者の着替えを?」
メールと呼ばれたマルシェ二等海佐が、自分を指し示して面食らった顔をする。
「ええ、そうよ」
「冗談ではありません。何故私が……」
渋るマルシェ二等海佐に、ベルティールが笑顔で言った。
「何故? それはね、私が命じたからよ」


十数分後、マルシェ二等海佐はシェロの着替えを持って戻ってくる。
シェロの着替えと言っても『海鳥騎士団』の基地には少年兵用の軍服など置いておらず(シェロの服はアドリエンヌが調達していたらしい)、一般兵用のSサイズの軍服だ。
それも、面倒な書類を提出しなければ新しい軍服は支給されないので、マルシェ二等海佐が自室から持ってきた自分の服である。
シェロたちが居た事務棟の裏手に戻ると、すでにベルティールとイングヒルトは居らず、びしょ濡れの服を脱いで慰みに下着だけ着けたシェロだけが残っている。
シェロは海の方を向いて座っていた。

「ベルティール様はどこへ?」
変わらず仏頂面のマルシェ二等海佐がシェロの後ろに立つ。
「ショーヴェ准将は先に執務室の方に戻られましたよ」
「……そうか。ホラ、着替えだ。サイズは合わんが」
変わらず海の方を向いているシェロの後ろに持ってきた着替えを置く。
「ありがとうございます」
ここでシェロはマルシェ二等海佐のほうを振り向き、笑顔を見せる。
「……」
マルシェ二等海佐は少し不機嫌な表情だが。

「海を見ていたのか?」
着替えを始めたシェロから目を逸らしながら二等海佐が訊ねる。シェロは湿った下着を脱いで素肌にマルシェ二等海佐の軍服を着ている。
シェロは上着に袖を通しながら、少し無表情に答える。

「僕は、陸から海を見ません」


350 :順風満帆!2 07/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:21:30 ID:SY9PzTUO

昔、『海』と『空』と言う名前の二人の子供がおりました。
二人は親が無く、海に消えたという親が迎えに来るのを待ちいつも海を見ていたので、町の人々はその二人の子供を不憫がっていました。
ある日、その町を訪れた船乗りが言いました。
「海に消えた人は空に行くんだ。海を待っていても、海に消えた人は来ないよ」
それを聞いた『空』はじゃあ僕も海へ行こうと言いました。『海』はそれは嘘だ、待っていればいつか来てくれると言いました。
『海』は『空』もいなくなってしまうのが嫌なので、『空』を止めようとしました。しかし『空』は言いました。
「僕は『空』。父さんたちが空にいるなら、僕は空に行く」
『海』は言いました。
「私は『海』に行きたいのに。私は『海』。母さんたちもきっと海にいるわ」
『空』は海に消え、空に行ってしまいました。『海』は陸でずっと海を見ているうちに海になってしまったそうです。


「陸から海を見る者は待つもの、海から空を見る者は追うもの、なんだそうです」
シェロはすっかりマルシェ二等海佐の服に着替え終わった。袖や裾を随分捲り、長さの余る服をごまかしている。
マルシェ二等海佐はふん、と鼻で笑った。
「しかしお前は今、海を見ていたはずだ。ふん、何を待っているのかは知らんが」
皮肉げにそう言うマルシェ二等海佐に、シェロが呟く。
「そうですね、待ってるのかもしれないし、追っているのかもしれないです」
答えるでもなくそう言って、シェロは襟を閉める。

「僕は昔名前が無かったんです。僕の名前は、その話をしてくれた人がつけてくれた」

その昔、待つことしか出来なかった頃。望むものを追うべし、と、その人がつけてくれた名前。

「僕の名前は、シェッロ。シェッロ(il cielo=空)というんです──」

そう言ったシェロは、ぼそっと「陸勤はつまらないですね。海に出たいなぁ」と呟いた。


マルシェ二等海佐──メール・デル・マルシェは、自分と同じ名前の──海(la mer)を見た。



351 :順風満帆!2 08/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:22:26 ID:SY9PzTUO

──夜。
シェロはここに来てからの慣例のように兵站部の執務室に籠り、明日アドリエンヌに渡す資料や書類などを作成している。
渡したからといって彼女が真面目に仕事をしてくれるとは限らない──実際こうして作成した書類のほとんどはシェロ自身が処理する羽目になる。
このまま遊蕩に耽る生活が続けば、彼女の進退はあまり良いことにはならないと思うのだが、アドリエンヌが自分の言葉を素直に聞き入れるとは思えなかった。
実際、もう深夜になるつい先程、この部屋に入る前まで、シェロはアドリエンヌの相手をしていたのだ。

──ココンコン。

入り口のドアがノックされる。窓からランプの光が漏れるので、ここに誰かいることは外から容易に分かる。
しかしこうして夜間に仕事をしていても、これまでこの時間に誰かが訪ねてくることはなかったのだが──。

シェロはペンを置き、入り口のドアノブに手をかけた。



自分を起こさないようにベッドを出て服装を整え部屋を出て行ったシェロを、背を向けて寝たふりをしたままアドリエンヌは見送った。

ベルティール・ショーヴェ。イラつく女。シェロに色目を使って。

シェロを助けるために船を出したことに後悔はない。
そのための作戦を立てたのはイングヒルトだが、実際に実行して海賊に一泡吹かせたのは自分なのだ。
それで多少ペナルティを喰らっても表面的にはたかが船一隻沈めただけのこと。
ほとぼりが冷めればまた船に戻れる、それまではシェロを構い、何もせずに待てばよい。アドリエンヌはそう考えていた。

だからベルティールに釘を刺されたことも、単に手柄を立てたこと、シェロを囲っていることに対するやっかみであるとしか思えなかった。

──シェロは毎晩こうして、アドリエンヌが眠ると部屋を出て行く。
アドリエンヌはシェロがこうして自分に隠し事をしていたことを、不快に思っていた。
ただただシェロと淫蕩に耽る日々、ただほとぼりが冷めるのを待っていればいいと思っていたが、実際はシェロが自分のフォローをしているという。
アドリエンヌはそれを素直に喜べない。
貴族に生まれ、才能と誇りのままに生きてきたアドリエンヌ。シェロは自分の所有物だ、それに守られるというのは無能を責められている様で不愉快なのだ。

憤懣やるかたないアドリエンヌは、部屋の窓が音も立てずに開いたことなど気付きはしない。



352 :順風満帆!2 09/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:23:22 ID:SY9PzTUO
「ぅ、わ、私です……つ、連れてまいりました……」
「うん、入って」

部屋の中から声をかけると、外にいるマルシェ二等海佐がドアを開いた。

部屋の奥、さして広いともいえない船団長執務室のデスクに、ベルティール・ショーヴェは寄りかかって立っていた。
ベルティールは部屋に入ってきたマルシェ二等海佐の様子にうっすらと微笑む。

「メール、その様子だと、彼は『覚えていた』ようね」

「──僕は、世話になった人を忘れるほど薄情ではない、つもりです……『ベルお嬢様』」

メールの腰を押して自分も部屋に入ったシェロは後ろ手にドアを閉めた。



兵站部執務室のドアを開けると、そこに立っていたのはマルシェ二等海佐である。
「こんな時間までご苦労なことだな」
ふん、と鼻を鳴らすマルシェ二等海佐は部屋に入り、そのままデスクの上の、作成途中の書類を手に取る。
「さ来週の搬入物資の書類か……ふん、本当にデュバリエ三等海佐は全てお前に仕事をさせているのだな……ん、これは」

「『メールさん』」

──久しき声で名前を呼ばれ、メール・デル・マルシェ二等海佐は、一瞬で軍人の顔を蕩け崩した。

少女のような顔で振り返ったメールは少年の顔を見つめる。少年は少し寂しそうな顔で、

「ショーヴェ家の行儀見習いだった夢見る少女は……軍人になったんですね」


353 :順風満帆!2 10/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:24:34 ID:SY9PzTUO
名無しであった少年に『空』という名前を与えたのはショーヴェ子爵夫人──少年を拾った海軍将軍の妻だった。
その海軍将軍は戦死してしまったが、夫人は残された一人娘と家を守るべく奮闘、武家として貴族としてのショーヴェ家を見事守りぬいた。

その武家貴族の女主人こそが、最初にシェロを抱いた女であった。


メールは正面からシェロを抱きしめたまま動けない。
年上なのに真っ赤になった顔を見せたくない。恥ずかしくてシェロの顔を見られない。もう、どうしていいのか分からない。
「……そう言えば、あの時もこうやって、どうしたらいいのか分からなくなってましたね」
シェロは抱きしめられたままメールの太股から尻、背中までを撫で上げた。メールの身体がゾクゾクと震える。

ショーヴェの屋敷に行儀見習いで預けられていたメールは、ショーヴェ夫人の娘と行動を共にしていた。
夫人がシェロを連れ寝室に消えると、二人はそれを追い、母の顔、女の顔で夫人がシェロと睦みあう様を、ドアの隙間から秘所に指を潜めそれを見ていた。
メールたちはやがて、夫人がするようにシェロを寝室に連れ込み、夫人のようにシェロと交わろうとした。

「でも僕を抱きしめたらそのままカチカチになっちゃって……」

言いながら、シェロはメールの上衣の中に手を滑り込ませ、素肌の背中を柔らかく優しく撫で続ける。
腰のベルトの隙間から尻の窪みに沿って小指を差し入れ、くすぐるようにさする。
メールの身体からは少しずつ硬直が解けてゆき、メールも彼女の胸に顔を埋めているシェロの髪に顔を埋め、ピクリピクリと背を這う快感に酔い始める。

シェロはそのままメールを少し押し、デスクの上に座らせる。
「う、う、ううぅ……」
メールはシェロと身体を離すことで彼の顔を見てしまい、恥ずかしさに緊張をさらにつのらせる。
シェロの「ちょっとだけ腰を上げてください」という指示に緊張しながらも素直に応じる。ひょっとしたら混乱してまた何も分からなくなっているのかもしれない。

「ひ、ひ、ひ、ひ、ひ…………」
メールは快感と混乱で訳が分からなくなっている。
ズボンを脱がして現れた少し子供っぽい下着に顔を埋めて、シェロがモグモグと唇と舌、歯を動かしているからだ。
既に木綿の下着には大きく染みが出来ており、シェロが口を窄めてじゅうじゅうと吸うたびに、どこかツンと甘い匂いのする液体がシェロの口に吸い込まれる。
シェロが鼻から息を抜いては吸い、吸ってはんふ〜と鼻から吐いているうちに、メールは快感に耽溺しきった表情になっている。

シェロはそのまま犬のように下着の布地をはみ、少し力を入れて下に引っ張る。



354 :順風満帆!2 11/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:25:31 ID:SY9PzTUO

「わ、わっ、馬鹿もの、そ、そんなこと……」
メールはそれを抑えようとするが、シェロが下着を咥えたまま見上げるようにメールの顔を覗き込むと、メールは弱々しく抵抗をやめる。
足の指先まで下ろしきった下着を、シェロはそのままとさりと下に落す。
そしてそのまま、脚先から沿うようにメールの上体に上って来る。

「…………い、言っておくが。お、お前が出て行ってから、ずっと……その、私は男と交わっておらんのだからな!」
顔を真っ赤にしたメールが言う。
ああそう言えば、初めてする時もこんな顔だったな、などと思いながら、シェロはキスしようとしてメールの唇まで背が届かず、乳房の下をついばむ。
キスが来ると思って目をつぶっていたメールは身長差があることに考えが及ばず、いきなり乳房の下肉に来た愛撫に仰け反る。

「シ、シェロはスケベになった! スケベになったァ!」

キスして欲しいタイミングを外されて、胸に顔を埋めているシェロの頭を弱々しくポカポカ叩くメール。
「……僕の背じゃメールさんの顔まで唇が届かないんです……キスしたいなら、屈んで?」
「ばッ……! わ、私は別に、キ、キスとか……!」
胸の谷間から顔を覗かせるシェロを見下ろすと、シェロの顔のすぐ横に、期待にあふれ硬直している自分の乳首が見える。
それをシェロに悟られたくなくて、メールはほんの少し視線を逸らし、素直に膝を突いてシェロの目線に合わせた。

シェロのキスは甘美でありながら淫らではなく、舌を絡めあいながらも口の中の快感を刺激し過ぎない。
甘酸っぱいというか、メールの少女である部分に口づけをされているようで、ロマンティストな女将校は実に心地よく夢中になってしまう。

自身が睦みあいに不慣れなせいもあるが、メールは自分がシェロにキスされている間にも身体に愛撫が加えられ、交合の準備が出来ていっていることには気付かない。
その甘美さがシェロのキスのものなのか秘所に与えられるシェロの指の刺激のものなのか、蕩けきったメールの頭には分からない。

ぷは、と二人の唇と舌が唾液の糸を引きながら離れると、シェロはそのままの至近距離で、

「ベルお嬢様が呼んでいるんでしょう?」

と言った。メールの身体がビクンと震える。


355 :順風満帆!2 12/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:26:34 ID:SY9PzTUO

メールにとって『ベルお嬢様』は絶対の主人である。
少女の頃から使えてきた、ショーヴェ家の令嬢。逆らうことなど考えることが出来ない。しかし。

「いきましょうか?」

シェロが自分の腰を抱き、立たせるに至り、メールの心中の混乱はいや増す。

再会を喜びたい。もっと抱き合いたい。お嬢様に逆らえない。抱かれたい。逆らえない。セックスしたい。お嬢様。セックス。

ふらふらとシェロに腰を抱かれドアに向かいながら心中定まらず、しかしたった今受けた愛撫に体は蕩けきっていて足元がよろめく。
そしてメールは、よろめいたところを抱きすくめられ。
一瞬のうちに、シェロの屹立の侵入を受け入れてしまった。

「……、……!? …………ッッ!!」

孤閨久しく、堅くなっていたメールの胎内は、しかしシェロの丁寧な愛撫によって既に完全に華開いており、シェロの屹立は易々と襞の間を進む。
その刺激はまるで身体中の神経が肉棒で犯されるかのように脊椎を通して全身に広がり。
電流が流れたかのようにぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞっぞぞぞぞと体を震わせ。

ぷしぅッ、ぷりゅ、ぶしゃぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ……
「へひッ、へぁ、ひゃあぁぁぁぁぁぁァァァァァァァ…………」

先端が胎内の最奥をコツンと叩いた瞬間──開ききったような表情で盛大に失禁しながら、メールは絶頂から降りてくることが出来なくなった。


356 :順風満帆!2 13/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:27:30 ID:SY9PzTUO

ギャキッ、ジャリィィィンンッッ!!

寝巻きのままで突剣を振るったアドリエンヌは、すんでのところでもう一刀のカトラスの斬撃をかわす。
やっと手に取った剣は未だ鞘も払えぬまま。それも急襲のせいである──と思いたかった。

「ちッ、てっきりシェロを寝床に引っ張り込んでると思ったら、寂しく一人寝かい」

海賊『赤鷲』。悔しいがこの女の剣技はアドリエンヌを上回っており、さらに急襲による焦りや服装・装備の不備もあり、いかにしても勝てそうもない。

「……シェロを奪いに来たのか」

息を整えながら言う。二人の動きは止まっているが鞘を払おうと動けばその瞬間に喉首に切り込まれるだろう。
「当然。テメーは船にも乗れないらしいが、そんなヤツにシェロを預けとくのはもったいないだろ?」
直立しているようでいて『赤鷲』オルダの体からは余分な力が抜けており隙がなく、自分の背後のドアに走るも助けを呼ぶも侭ならない。間合いを外せないのだ。
「さっさとシェロを捜しに行かなきゃならねェ。正直テメーはどうでもいいんだ。邪魔ってゆーか」
オルダが悪態をつく。アドリエンヌには言い返す余裕がない。

棒のように鞘が突いたままの剣をつかみ、隙を見出すことも出来ぬままアドリエンヌが動けずにいると、

「デュバリエ三等海佐、曲者か?」

背後のドアが開き、軍刀を抜きつつ将校の階級章をつけた者が入ってくる。
ありがたい援軍か、とアドリエンヌが一瞬気を抜き剣を抜こうとすると、

ガッ、

後頸に鈍い衝撃を感じ、脱力感と共に気を失った。



357 :順風満帆!2 14/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:28:29 ID:SY9PzTUO
「海賊『赤鷲』、オルダ・カラミティだな」
気絶したアドリエンヌを肩に担ぎながら、その女将校はオルダを睨む。
「…………そうだが」
オルダはその女将校にかつて会った事があろうかと考える。
ファシーナの海軍に敵といえど面識のあるものは少なく、かろうじてアドリエンヌのように『赤鷲』と会って生き抜いたものがいる程度だ。
まして『海鳥騎士団』。前回の海戦がオルダにとって初顔合わせである。
「お前何だ? 悪ィが軍人に知り合いは多くない、私を睨んでるやつが友達だとも思えんのだがな」
女将校はキリ、と歯噛みする。オルダはその表情にあるのが憎悪というより嫉妬や羨望なのではないかと気付く。
「…………メール・デル・マルシェだ。貴様をシェロのところに連れて行く」


群等海域からファシーナの『海鳥騎士団』海軍港まで、小型艇と陸路を利用して約二週間。
『メーヴェ・ブランシェ』号のような大型船ならば一週間程度なので、遅れること約一週間。
駐屯地近辺の街に入り込んで情報を仕入れ、シェロが例の女軍人アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエの下にいることを突き止めるのに数日。
基地の見取り図などはさすがに入手できなかったが、アドリエンヌの宿舎を突き止め、チャンスを待ってさらに数日。
──結果、いい加減痺れを切らしたオルダがさしたる計画もなく基地に忍び込んだのが今夜だった。
幸い月は翳って雲は多く、闇は彼女の身体を隠してくれる。
脱出のための仕掛けも、一緒に侵入した者が別行動で進めているはずだ。
オルダは一人シェロを取り戻し、アドリエンヌに落とし前をつけることにだけに集中すればよかったのだが──。


「シェロは毎晩事務棟で仕事を片付けていた。宿舎に行っても無駄だ」
アドリエンヌを肩に担いだ女将校──メールは、見回りに見つからないルートを辿ってズンズン進んでいく。
オルダはメールの表情の複雑な奇妙さに気を取られたままついていくが、この女が何者なのかが分からない。
「なぁ……アンタ何モンだ?」
「うるさい。ガタガタ言わずついてこい」
オルダの質問にもメールは取り付く島もなく、オルダはメールに先導されるままに軍港の方に向かっていく。
こちらでは一緒に侵入した者が仕掛けをしているはずだが。

軍港に係留されている軍船の中で、『メーヴェ・ブランシェ』よりも二周りほど大きな図体の船、第四船団の旗艦『ラ・ブリッラント・ブリーゼ・メール』号。
この船の船長室でシェロは──

「はァッ、はググッ、いグ、いきゅぅぅぅぅううううううううッッッ!!!」

『大乱の赤い翼』号砲手兼厨房責任者、キアラ・アッカルドとセックスしていた。


358 :順風満帆!2 15/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:29:29 ID:SY9PzTUO

「うっ、うギュぅッ、はぁ……や、やっぱりシェロにシテもらわないと、ダ、だめみたいだわ……」
シェロにガッチリと抱きつき、顔中をキスしたり舐めたりして、膣奥への射精の快楽の余韻を味わうキアラ。
腹には未だに包帯が巻かれているが、今それを濡らしているのは血ではなく汗と愛液である。
「ね、ねェ、しぇ、シェロ? このまま、もう一回続けてもいいかなぁ……? お、お子宮タプタプにして欲しい……」
一心にシェロにキスしながら膣の中をにぷにぷと動かし、射精したばかりのシェロの肉棒を緩々と刺激し続ける。
「キアラさん……」
シェロの声を肯定と受け取ったキアラは、
「んッ……じゃあ、う、動かすわね……」
胎内でコプコプと動くシェロの精液を感じながら、ゆっくりと腰を上下し始め──、

ぱぐりっ。

暢気な音だが威力は苛烈、オルダのパンチに頬を射抜かれ、体面座位でシェロと繋がっていたキアラは横っ飛びに吹っ飛んだ。

シェロが攫われたことに責任を感じていたキアラは、怪我を押してオルダについてきていた……はずなのだが。
「痛たたたた……ショックで膣痙攣が起こったらどうするの……あら、船長? 今のもしかして船長がなさったんですか?」
頬を摩りながら起き上がるキアラに、もう一度顔面に今度は前蹴りを叩き込もうと脚を上げるオルダ。
「わーッ、わーッ! ちょ、やめて下さいッ!」
船長を出し抜いてシェロとサイカイをヨロコビあっていたことは謝りますからッ! と、眼前に迫る靴の裏を見ながらキアラが言った。

「オルダ様……」

噴飯やる方ならぬオルダが軸足に力を入れ、キアラの顔に一歩踏み出そうとした時、オルダの手を引く者がある。

「シェロ……」

シェロは無言のままオルダの行動を制しようと視線を彼女と合わせる。
「……やっと逢えたな……シェ」
瞳をわずかに潤ませてオルダはシェロに抱きつこうとする。が、

シェロが──上着ははだけて下半身裸、全身キアラの体液まみれなのを目にして。

やはりオルダは、キアラの顔面に前蹴りを入れたのだった。


359 :順風満帆!2 16/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:30:43 ID:SY9PzTUO

オルダたちと合流したシェロが、掻い摘んで状況を説明する。

海軍提督であるベルティール・ショーヴェ准将、並びにその副官のメール・デル・マルシェ二等海佐は、かつてシェロと想いを交わした女たちである。
彼女達は、海軍基地を抜け出そうというシェロの望みを手助けしようというのだ。

「久しぶり……といっても、顔は合わせていたわね。シェロ」
下半身裸のまま、胎内からシェロの精液を溢したままで支えられて歩くメールと共に、シェロはベルティールの執務室に入った。
灯りはほぼ落とされているが、ベルティールのいる執務机の上の燭台だけはわずかに彼女の横顔を照らしている。
「…………」
わずかに懐かしむような寂しがるような表情のベルティール、部屋の中には未だ荒いメールの呼吸音だけが聞こえる。
しばしの沈黙を置いて、ベルティールが口を開く。
「さて、ここに来たということは、このベルお嬢様にお願いがあるんじゃない? 再会を祝って、聞いてあげないでもないわよ」
そこまでの寂獏など微塵も見せずに、ベルティールは手をパンと打ち合わせながら言う。悪戯げな表情は、昔シェロたちとはしゃいでいた頃と変わらない。

「僕は、海へ戻ります。手伝って下さい」

シェロに支えられたメールがドキン、と硬直する。
心細そうな視線を送るメールに一瞥をくれ、

「もちろん。喜んで手伝うわ」

「……っ!」
何をか言おうとしたメールを、ベルティールは視線で制する。
「六年前に言ったはずよ。私たちは、シェロのものになりたくてシェロに抱かれたんだもの。シェロの望みは叶えてあげるわ」

ベルティールの柔らかい笑顔には、しかし昼間見たように、そこに冷たいもの──諦めが通っているように見える。


360 :順風満帆!2 17/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:31:55 ID:SY9PzTUO

港内に、ガアァァァァァァアアアアアアアンン…、と、打ち付けるような重い音が響き渡った。

見れば、係留されている中型船の一隻が、派手に爆発して火を噴いている。
「──来ましたね」
キアラがニヤリと呟いた。この爆発は彼女の仕掛けによる。
連鎖するように次々と船は爆発していく。キアラが火薬庫に取り付けた時限発火装置のためだ。
「これだけじゃないですよ〜♪」
さらには爆発した船の、装填されていた艦砲が次々と発射され、周りの船や兵舎、その他の棟を破壊していく。
これだけ派手にやるとさすがに基地の人間達が騒ぎ出しているが、とにかく爆発が大規模なためまともな動きが取れていない。

「あとはこの騒ぎにまぎれて……」
「いや、それじゃ足りないわね」
『ラ・ブリッラント・ブリーゼ・メール』号の船長室、自分の執務机に着いていたベルティールが言った。
見れば、どうやら爆発の影響を受けていないところから小型艇が何艘も出てきて、消化・救出を始めているようだ。
「別の場所に離れの隠し港があるのよ。そう易々とはいかないってこと」
「なら、どうしろってんだ?」
淡々と言うベルティールにオルダが食って掛かる。
「……来るわよ」

時計を見て言ったベルティールの言葉に合わせ、

ドドォォォォオドォォォォォォォォ──────ン!!!!

『ラ・ブリッラント・ブリーゼ・メール』号にも、爆発が起こった。

ギョッとした顔で、メール以外の全員がベルティールを見る。

「あとは救助を待つだけね」


361 :順風満帆!2 18/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:33:06 ID:SY9PzTUO

「お待たせ! さぁ、帰るわよ!」

オルダは呆気に取られる。
『ラ・ブリッラント・ブリーゼ・メール』号爆発の中、救出の小型艇に乗ってきたのは、『大乱の赤い翼』号の副長、マチルデ・ブリンクマンである。
どうやら隠し港の方に忍び込み、この騒ぎに紛れ船を奪ってきたらしい。小型艇の乗組員は、いずれも『大乱の赤い翼』号の船員達だ。
「私が隠し港の情報をリークしといてね。非常時にはそっちから駐屯地に船が廻ることを教えておいたのよ」
ベルティールが言った。どうやらシェロが基地に来た時から、脱出時の準備を整えていたらしい。
港湾内はてんやわんやで、他者の行動に目を向けている余裕はないのだが、マチルデはこのまま一回他の救助艇と共に隠し港の方に向かうという。
「タイミングを見て、隠し港を『大乱の赤い翼』号が襲う手筈になってるわ。合流はあっちよ」

オルダたちが隠し港につくと、そこはすでに押し寄せた救助艇でごった返し、さらに残っていた中型船二隻と『大乱の赤い翼』号の海戦が起こっていた。
小型艇だらけで身動きの取れぬ中型船たちは、あっという間に海賊船の艦砲に撃たれ中破する。
その混乱の中でオルダたちは『大乱の赤い翼』号にサルベージされ、見事損壊なく脱出に成功した訳である。

「で、だ」
オルダが振り返る。

「何でアンタたちがついてきてるんだ?」

混乱の最中のファシーナ軍港を颯々と離れ行く『大乱の赤い翼』号の甲板には、ちゃっかりベルティールとメールの姿があった。

「何でって? そりゃー口説かれちゃったし♪」
ベルティールが嬉しそうに言い、シェロに目線を送ると、メールが顔を赤らめる。

『大乱の赤い翼』号の一同がキッとシェロを睨んだ。

362 :順風満帆!2 19/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:34:24 ID:SY9PzTUO

本当はベルティールたちは海軍の隠し港の方でシェロと別れるはずだった。
しかし、一行が『大乱の赤い翼』号にサルベージされる段になり、シェロは小型艇に残ろうとする二人を引き寄せた。

「ベルお嬢様は六年前に、僕に抱かれるとき何て言ったか覚えていますか?」

忘れるはずがなかった。
ベルティールとメールは、ショーヴェ夫人の個人的な従僕であったシェロに、スカートを捲り秘所を晒しながら、真っ赤な顔でこう言ったのだ。

『私達をシェロの従僕にしてくださいッッ!!』

此度の再会においても、既に自分達はシェロの下僕であるのだからシェロが何を言おうと従おうと考えていたのだ。ただ、彼が自分達を覚えてさえいれば。
結果として自分達は捨てていかれるだろうが、それも仕方なしと。
しかし、二人を抱き寄せたシェロは、耳元で言うのだ。

「──二人は、僕のものなんでしょう? ……ベルティール、メール……こ、今度は僕に、ついて来なくちゃダメだよ?」

二人の胸ほどまでしか身長のない少年は、ファシーナ海軍の准将と二等海佐に、自らの従僕になることを命じたのだった。


374 :順風満帆!2 20/21修正版 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/31(火) 01:24:56 ID:iJyB9wvl

海軍将校であるアドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエが目を覚ますと、そこは見慣れぬ船室だった。
記憶を辿ると寝室に入り込んだ海賊と剣戟を交わした覚えがある。そこにマルシェ二等海佐が助太刀に入り──。

「気が付いたみたいだな〜。海軍のお嬢ちゃん♪」

ムカつく声に顔を上げると、そこには件の海賊、『赤鷲』ことオルダ・カラミティがニヤニヤしながら覗き込んでいる。
跳び起きようとして、自分が縛られて床に転がされていることに気付く。
「きッ……貴様ぁッ!」
「いや〜、てめェにゃシェロをぞんざいに扱ってくれた礼をしなくちゃならねェな〜、と思ってたんだ。
 ぐっすり眠ってたんで、楽に運ばせてもらったぜ」
見ると、オルダの後ろに、両脇を固めるようにベルティール・ショーヴェ准将とメール・デル・マルシェ二等海佐がいる。
「貴様ら! 裏切ったのか!」
すると二人がアドリエンヌの横に寄ってきて、嬉しそうに耳元で言う。
「私達は元々シェロ『様』のモノだったのよ。だから、シェロ様がこっちに戻りたいって言うんなら当然手伝うでしょ?」

挑発するようなベルティールの言葉。
アドリエンヌは卑しい身分のものに所有されるという大貴族ショーヴェ家のベルティールの言葉に混乱する。

「ばッ……馬鹿な、シェロのような孤児になど仕えて何が嬉しいと言うんだ! シェロ『様』などと……ッ!
 貴様らは貴族の誇りがッ……だ、第一ッ! シェロは私のものだ! 私以外のものが勝手をすることなど……!」



364 :順風満帆!2 21/21 ◆eUGz.uKlsw :2007/07/30(月) 23:37:13 ID:SY9PzTUO

そこまで言ったところで、オルダが嬉しそうなニヤニヤ笑いをさらに強くしていることに気付く。
「なッ、何だその顔は……き、気味の悪い……」
オルダがアドリエンヌの両脇の二人に目配せを送る。するとベルティールとメールがアドリエンヌの身体を引き起こし、
「デュバリエ三等海佐……シェロ様をモノ扱いしていたこと、私達も怒ってるのよ?」
「本当ならば全身の骨を折ってやっても構わんのだがな」
そう囁く。
アドリエンヌは部屋に備え付けの姿見の鏡の前に引っ立てていかれ、

「誰が、誰の、ものだって?」

鏡に映った自分の全身を見ることになる。
下着一枚を残し全裸に剥かれた身体の下腹部には、

『Adrienne è lo schiavo di sesso di Cielo! (アドリエンヌはシェロのセックス奴隷!)』

と、下腹部を斜めに横断するように大きな字で刺青が入れられていた。


「なッ、なッ……!!!?」
「あぁ〜、そんな刺青が入ってたら、もう海軍には戻れねェなぁ〜。シェロのセックス奴隷として、この船に置いてやろうか?」
嬉しそうに言うオルダ。ベルティールとメールは「いいなぁ、私も入れて欲しい」「そうですね」などとはしゃでいる。



アドリエンヌの悲鳴が夜の内海に響き渡った頃、シェロは連日の徹夜疲れで沈み込むように熟睡していた。

550 :順風満帆!3 01/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:38:02 ID:A9EfEj0s

『メーヴェ・ブランシェ』号の船長室、現在は船長代理室のデスクの上に二通の辞令が届けられている。


一つは現状一等海尉であるイングヒルト・ブランケに三等海佐への昇進を知らせるもの。
これは同時に現在『メーヴェ・ブランシェ』号の船長代理であるイングヒルトに、正式に船長への就任を知らせるものでもある。

先だっての『海鳥騎士団』基地の炎上事件で、『メーヴェ・ブランシェ』号の船長であるアドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエ三等海佐は行方不明になっている。
隠し港への海賊船の襲撃を含め死傷者も多いこの事件では、第四船団長であるベルティール・ショーヴェ准将も副官と共に行方不明。
船団の旗艦である『ラ・ブリッラント・ブリーゼ・メール』号も爆発炎上し、港にその骸を晒している。
その中で比較的無事であったイングヒルトたちの『メーヴェ・ブランシェ』号は、その機能回復を急ぐ必要があったのだろう。
そこに行方不明者の安否を慮る余裕などはかけらもない。

もう一つは、『第七次群島海域海賊討伐作戦』への作戦参加指令──である。

此度の炎上事件において、隠し港への襲撃は群島海域──通称『海賊天国』の海賊、『赤鷲』によって行われている。
フォルトナのいわゆる『海賊天国』は、かねてよりファシーナ海軍によるフォルトナ侵攻のための作戦行動を著しく阻害するものとして、軍首脳部を悩ませていた。
言うなれば敵国の一大私掠船基地である。
複雑に入り組んだ海流と、海水によって浸食された洞穴や入り江の多い地形により、ここは海賊達にとって絶好の隠れ場所なのだ。
この海域を迂回すれば非友好国である南の大国マウリュケアの商業航路に近づいてしまい、かの国を刺激することになる。
過去幾度も討伐が計画されたが、完全な成功に至ったことはない。

しかし、今回のこの作戦は勝手が違うのだ。
第二・第三船団の三割近い損壊、第四船団の旗艦と艦艇六割の撃沈、軍事基地に与えられた致命的な損害──それに対する報復。
指令書によれば、これはほぼ『海鳥騎士団』の独断で、『騎士団』の行動可能な艦艇全て──総勢五十数隻が作戦に参加することになる。

つまり、目的は侵略ではなく復讐。

辞令には、『海鳥騎士団』現司令である海軍大将のサインが入れられている。

『L'oiseau de mer Fait chevalier Commandant Suprême  Général Aurélie=Emmanuelle=Chauvet 』
                    (海鳥騎士団最高司令  オーレリー・エマニュエル・ショーヴェ大将)

件の事件で行方不明になっている第四船団長ベルティール・ショーヴェの母──ショーヴェ家の現当主である。

彼女は自身の娘を失った復讐をしようというのだ。


二通の辞令を確認したイングヒルトは、特に反応も示さぬままそれを机に投げ出した。
再び自分の元を離れていったシェロの顔を思い浮かべ、船長用のふかふかとした椅子に深く腰掛ける。
やっぱり上級貴族様はいい椅子に座っているんだな、などと益体もないことを考える。

「私は──裏切られるのは嫌いなんだがなぁ……」

イングヒルト・ブランケ──金に困った親に軍隊に投げ込まれ、入隊金を持ち逃げされた没落貴族の娘。親とはそれきり会っていない。
イングヒルトは、感触のいい船長の椅子のすわり心地にも、嘲笑われているような不快感を感じていた。


551 :順風満帆!3 02/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:39:23 ID:A9EfEj0s

ドン引き。
ドン引きである。
『大乱の赤い翼』号の副長マチルデ・ブリンクマンは医務室の入り口で、質の悪い酒に酔ったかのような狂乱を見せつけられていた。

例えば、テレザ・アルバネーゼは優秀な航海士だ。
天候の読みや群島海域の複雑に入り組んだ海流の読み、気温による海流の変化予測など、ベテランの船乗りも顔負けの腕前を持つ。
「あ、副長。どこか怪我なさったんですか? それとも病気?」
ナース服である。
ピンクと白のストライプ。フリルで飾りまくったエプロンにザ☆ナースキャップ。
クリミア戦争のナイチンゲ−ルよろしく、怪我人病人(どいつも軽傷軽症であるようだが)の間を忙しなげに動き回っている。
その服は裾のブワリと広がったブッファンスカートなのだが、尻の部分が極端に短くなっている。
つまり、少し前屈すると可愛い服装に不似合いなラベンダー色のOバックの下着の尻が見えてしまうわけだ。
現に、待合席の代わりに入り口近くに置かれた椅子に座るマチルデにも、チラっチラ、チラっチラとテレザが行動するたびに何かが見えている。

例えば、ベネデッタ・デ・サンクティス。『大乱の赤い翼』号の掌帆長である。
速度が出るかわりに喫水の浅いこの船で、バランスを崩さず自在に巡航・旋回を行えるのは彼女のおかげだ。逆風でも順風に近い速度が出せるほど、風を掴むのが上手い。
「………………どうも」
マチルデの個人的な見解だが、包帯は服ではないと思う。
目の前を通り過ぎるベネデッタは、身体中に包帯を巻きつけていた。他には下着すら身につけていない。
彼女はファシーナ軍船襲撃の際の怪我が治りきってはいないが、もちろんこんな身体中に怪我をしていたわけではない。
それに、おっぱいや尻がこう、むちりとはみ出る感じで締め付けているのは、包帯の巻き方としては不自然だ。というか、包帯の上から服を着て欲しい。
何より、両腕を後ろ手に廻して、拘束するように包帯で縛っているのはもう怪我も何も関係がない。

例えば、ファビオラ・アロンソは優秀な船医であり、剣士だ。『大乱の赤い翼』号の、通称『ドクター』、『死神医師』。
剣技だけなら船長の『赤鷲』オルダに次ぎ、元は南の大国マウリュケアの従軍医師であったらしい。
「む。どうした副長。風邪でもひいたか」
「いや、本当に思うんだけど、服を着なさい」
白衣。裸。白衣の下は裸である。
気だるげに水タバコのパイプを咥え、手にはマチルデのカルテを持ち出してきているが、その白衣の下は裸である。
黒のレース編みのストッキングを穿き、首には同様の黒いチョーカー。
ついでに白衣の隙間からチラリと見える下腹部、豊かな茂みのほんの少し上に小さく、いつのまにか、
『Solamente per Cielo(シェロ専用)』
という刺青が彫られているのを見て、マチルデは爆発した。

「あんたら、一体何をしてるのよ!?」



552 :順風満帆!3 03/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:40:06 ID:A9EfEj0s
「いや、これには訳があるんだ。副長」
憤慨するマチルデをファビオラが制する。
「アレを見てみろ」
その前にお前が見せてるものをしまえ、と言いたいのを押さえ、マチルデはファビオラの指差す方を見た。

シェロが医務室の助手をしている。これは、ファシーナ海軍にさらわれる前からのことで、彼は船内のあらゆるところで重宝がられている。
ここではあくまでファビオラの手伝いなので、カルテの整理や指示された道具や薬品を持ってきたりしまったりすることが主な仕事だ。
もちろん、助手であるシェロにさらに助手が必要な仕事ではない。

それが白の清潔な下着にストッキング、ナースキャップだけ身につけた助手が二人、となればなおさらである。
今この世界に、『ナースランパブ』という言葉でもあったなら良かったのだろうか。

「えーと…あの、湿布薬をお願いします……」
「はい、どーぞ♪ シェロ様」
「あ、あの、ほ、包帯を……」
「ホラ受け取りなさい、シェロ様」

白衣(を着てない)の天使、二人──ベルティール・ショーヴェ元ファシーナ海軍准将とメール・デル・マルシェ元ファシ−ナ海軍二等海佐。

シェロについて海賊船『大乱の赤い翼』号に乗り込んできたファs−ナ海軍脱走兵の二人は、軽傷でやってきた船員に治療を施すシェロを甲斐甲斐しく手伝っている。
その様はまるで、主人に尻尾を振る飼い犬のようである。
「──な?」
と、あんぐり口を開けているマチルデにファビオラが言った。
「つまり、負けていられんわけだ」
「あんたらねぇ……」

「そうですよ! 負けてはいられないんです!」
「……(コクコク)!」
マチルデの後ろから恥ずかしい格好の二人。テレザが大声で言い、ベネデッタがそれに勢いよく頷く。
マチルデはその勢いに気圧されてしまう。

553 :順風満帆!3 04/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:40:49 ID:A9EfEj0s
先の、ファシーナ海軍『メーヴェ・ブランシェ』号との会戦にて、テレザとベネデッタは重傷を負い、シェロの手で応急処置を受けている。
戦闘の終了後に改めて船医であるファビオラの治療を受けているのだが、自分達の目の前でシェロが攫われたこともあり責任を感じていた。
自分達はオルダたちと共に救出に向かうことは出来なかったが、シェロが戻ってきたらもう、たっぷりと可愛がってやろうと思っていたのである。

ところが。

戻ってきたシェロは女連れ。
しかも海賊である『大乱の赤い翼』号乗組員にとって最大の敵であるファシーナ海軍の提督と将校。
その連中はシェロの僕を自任し、元偉いさんのくせにシェロの雑用の仕事にチョロチョロついて廻るのだ。
誇り高き群島の海賊、『赤鷲』の部下たるものがそれに負けていられるわけなど、あろうはずもなかった。

『大乱の赤い翼』号の船医、ファビオラ・アロンソは、助手として医務室の仕事を手伝いに来るシェロを気に入っていた。
仕事の覚えも早いし、丁寧で手を抜くということがない。
船長のオルダや砲手のキアラがシェロを手篭めにしていく中、自分はちょっと厳しい上役として受け入れられ、その上で寝技に持ち込もうとしていたのだ。

ところが。

戻ってきたシェロは女連れ。
シェロの従僕を名乗る元ファシーナ海軍の高級将校たち。しかも自分の狙っていたものと同じお姉さんキャラのクセにである。
シェロが『大乱の赤い翼』号に来て以来、副長のマチルデとお姉さんキャラの座を争ってきた自分がそれに負けるわけにはいかなかったのだ。


そうやって新入り二人に刺激され、船内は負けてはおれぬとシェロの寵を競って乱痴気騒ぎ中なのである。
「副長だって負けていられないのは分かっているんだろう? ほら、勝負下着を身につけてるじゃないか」
そう言ってファビオラは、聴診器を当てるべく上着を開いたマチルデの、形の良いおっぱいを包む鮮やかなオレンジ色のレース編みを懐柔するように揉む。
「う……。だって、攫われて以来だから、シェロともう一ヶ月以上してないし……」
「な? だから、負けてはいられないんだ」

その時医務室の外から、ドタドタと荒い足音。

「そう! 負けてはいられねーんだッッ!!」

バタ────ン! と開いたドア、そこに仁王立ちの『大乱の赤い翼』号船長、オルダ・カラミティ。

全裸の全身に、マーキュロクロム液──通称赤チンを塗りたくっている。

「船長〜、それはさすがに違いますよ」
後ろから砲手のキアラ・アッカルド。

「アンタは自重しろ────────────────ッッ!!?」

鬼ツッコミ副長、マチルデ・『キレツッコミ』・ブリンクマンの登場であった。

554 :順風満帆!3 05/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:41:37 ID:A9EfEj0s
『大乱の赤い翼』号に収監されて以来、ファシーナ海軍三等海佐であるアドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエは船室の一つに『繋がれて』いた。
牢に当たる施設がないため、最初は船底の一室に転がされていたのだが、剣を奪って脱出を企んだのをきっかけに束縛と見張りがつけられたのである。

彼女の腹には拉致された当初に彫られた『Adrienne e lo schiavo di sesso di Cielo! (アドリエンヌはシェロのセックス奴隷!)』という刺青がある。
その上首に錠の付いた首輪を嵌められ鎖で繋がれていると、見た目はまんま奴隷そのものになってしまう。
屈辱のままに眠りに逃げ込もうにも、彼女を繋いでいるこの部屋はそれを容易には許してくれない。

「ふぐぅッ……! はァッ、は、はゥう、ん! き、気持ちィ……!」
「ひッ……! そ、そこ……も、もぉ……!」

身体を背け、目を耳を塞いでも、その濡れた音は部屋中に響く。
するとアドリエンヌの身体は、その音が奏でる快楽に聞き惚れるが如く、眠りに落ちるのを拒み始めるのである。

ベッドの上では、一人の少年と、二人の女が、肉体の快楽を合奏する。

アドリエンヌを繋ぐこの部屋はシェロに与えられている物置兼用の船室なのだが、普段彼はこの部屋で夜を明かすことがほとんどない。
大半は船長であるオルダの部屋、時には副長の私室、そしてファビオラの医務室、キアラやテレザたち一般船員のベッドルームなどに毎夜連れ込まれる。
とかく仕事も情事も多く、睡眠時間を取るのが一番の困難と言えるシェロの生活の中で自室に入るのは最大の休養のはずだったのだが──。

今この部屋には、シェロのベッドと共にベルティールとメールの寝床も設置されていた。
ほとんどハンモックに近いような吊りベッドで、ファシーナ海軍の一般海兵の寝床と似たような造りのものである。
さすがにシェロの夜毎の蜜事にはついては行かない二人だが、珍しく部屋に戻ってきたシェロに蟻地獄よろしく圧し掛かっていったのである。

「ひぃうぅぅぅぅぅぅぅうううううッッ!!」
「あイぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいッッ!!」

シェロに貫かれたメールと、シェロに絡みついたベルティールが同時に絶頂に達し、淫靡な啼き声を上げた。
メールは絶頂と同時に気絶してしまったようで、そのままベッドに力なく横たわる。
ベルティールは息を荒げたシェロに後ろからもたれかかったまま、絶頂の余韻を味わうようにシェロの首筋を啄ばんでいる。

──そして、今メールの内側に吐き出したばかりのシェロの視線がこちらを向く。

アドリエンヌは身動ぎし、薄く覗き見ていた目を慌てて逸らした。

アドリエンヌはシェロとは何度もセックスしているが、シェロのことを身分が自分よりもずっと下の者と思っていた。
彼とのセックスは常に自分がリードする形で行ってきたのも、自分がシェロを指導するくらいのつもりだったからだ。

だから──このように、シェロが自分よりも……アドリエンヌよりも身分が上のものに対して翻弄すらするような巧みで激しいセックスをしているところを見るのは初めてなのである。

私は眠っているのだ。はしたなくも情事の覗き見などは決してしない。ばれないように。ばれないように──。

自分がシェロのセックスに度肝を抜かれていることなど、決してばれてはいけない。
しかし、どぎまぎと激しく脈打つアドリエンヌの心音に、悪戯心などを催したのは、果たしてシェロではなかった。

555 :順風満帆!3 06/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:42:25 ID:A9EfEj0s
「ひぐッ!!?」
いきなり後ろから下着を引っ張られ、その生地がギチッと食い込んでアドリエンヌは声を上げる。
もちろん股間の生地は、引っ張られれば飛沫が立つほどにたっぷりと体液を含んでいる。
「気付かれないと思った?」
ほとんど耳を舐め上げるかの様に唇を近づけて囁くベルティール、アドリエンヌの身体はゾクゾクと愛撫されたかのように力を奪われる。
「腰が動いてたわ。人前でオナニーなんてして、恥ずかしいと思わなかったの?」
違う。オナニーなどしていない。私はそんなに恥知らずではない。
アドリエンヌがそう反駁できなかったのは、ベルティールの口調がからかったり嘲ったりするものではなく、悪いことをした子どもを叱るようなものだったからだ。
軍人であるアドリエンヌには叱責に対して言い訳を述べるメンタリティがない。例え、こんなシチュエーションであっても。
自分の行為が露見したことに対する緊張で動けないアドリエンヌは、そのままあっさりとベルティールに仰向けに転がされてしまう。

「アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエ三等海佐。今あなたは何をしていたの? 答えなさい」
自分の上に覆いかぶさったベルティールを見て、アドリエンヌはびくっと身を縮ませる。

全裸で、身体を自分の愛液とシェロが吐き出した精液で汚し、淫らな汗をかき身体全体を上気させながらも。

ベルティールはアドリエンヌの上官の顔でそれを言うのだ。

アドリエンヌは武家の娘で、海軍士官学校も優秀な成績で卒業し、『海鳥騎士団』に配属されて後も軍人として誇るべき結果を残してきている。
そんな中、同じ武家の娘、同じ海軍士官学校卒業、同じ『海鳥騎士団』配属で、常にアドリエンヌよりも明確に、輝かしい戦果を残してきた人がいるのだ。

アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエはベルティール・ショーヴェ海軍准将の劣化版コピーなのである。

「どうした。答えられないようなことをしていたと言うのか」
仕官学校時代の研修航海ですでに二隻の海賊船を沈め、首席で卒業している。
海軍に入って後もいくつもの海戦で活躍、生え抜きの海軍人として『海鳥騎士団』に配属されている。
『海鳥騎士団』の司令であるオーレリー・エマニュエル・ショーヴェは彼女の母親だが、むしろベルテイール自身が母を司令として迎えるに足る立場なのだ。
「言いなさい。何をしていた」
アドリエンヌは羞恥に真っ赤になったまま俯いている。
シェロと出会った事で軍人としては身を持ち崩し、シェロに近づくものに当たるを構わず噛み付くようになっていたが、彼女はベルティールを尊敬していた。
今目の前のベルティールは淫らな行いに興じ、身体に何も纏わぬままだったが、

彼女はそれでもアドリエンヌの上官のままなのだ。

アドリエンヌは目を伏せ、視線をベルティールに合わせぬまま、緊張に耐え切れぬように答えた。

「じ……自慰を、し、していました……」

まさに上官に叱責されるが如く身を竦ませるアドリエンヌ。
しかしそのように、上官に叱責される部下であるという姿に逃げ込むことはできなかった。


シェロが、惨めなアドリエンヌの姿をを見ているのである。

556 :順風満帆!3 07/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:43:24 ID:A9EfEj0s
「デュバリエ三等海佐。脚を開きなさい」
ベルティールの指示に、目に涙すら浮かべたアドリエンヌはもう逆らうことが出来ない。

見られた。
見られた。
シェロに浅ましい自分の姿を。


アドリエンヌ・ゾーエ・デュバリエは軍人としては成功していた人間とはいえない。
『海鳥騎士団』に配属される前はそれこそ順風満帆で、海軍人としてのエリートコースを辿ってきたと言える。
そして『海鳥騎士団』にはベルティール・ショーヴェがいた。
華やかな戦歴に彩られる、美貌と才能の海軍提督。ベルティールが居ろうと居るまいと、アドリエンヌはそんな姿を目指してきたつもりだった。
しかし『海鳥騎士団』はファシーナ海軍の最精鋭である。
アドリエンヌと同様に将来を嘱望された若い軍人だけではなく、着々と経験と実績を積み素質を能力に変えた熟練の軍人達のいる部隊だ。
若い海軍一尉として配属されたアドリエンヌは、そこで挫折したのである。

どれだけ頑張ってもこの部隊ではそれが当然で、自分よりも経験・実績秀でる者達がさらに鎬を削る場所。
やっと一護衛艦の副長という肩書きを得た頃にはすでに精も根も尽き、軍人などいつ逃げ出してやろうかと思い始めていた頃である。

その護衛艦の参謀官として乗り込んでいたイングヒルト・ブランケが、海賊に沈められ漂流していた商船から見習い水夫のシェッロ・ルッジェーロを拾い上げたのは。


シェロはアドリエンヌの股を割り、腹のあたりに顔を置いてアドリエンヌの顔を覗き込んでいる。
どこを隠そうにも腕はベルティールに押さえられており、アドリエンヌに出来る抵抗はと言えば羞恥の表情のままに顔を背けることくらいである。
そして涙すら浮かべているアドリエンヌに、ベルティールは言うのだ。
「デュバリエ三等海佐。もう一度答えなさい。あなたは私たちとシェロのセックスを見て何をしていたの?」
アドリエンヌはもう、身も世もなく泣き崩れ、許しを請うてしまいたくなる。
しかしそれでも、アドリエンヌの腹に顔を乗せたシェロが、心配したような表情で彼女の顔を覗き込んでいる事実には何の変化もないだろう。

「しぇ、シェロとショーヴェ准将がァ、せ、しぇ、セックしゅをしていりゅのを見てェ……あ、あさましく、オ、オ、オナニーをしていまひた!!」

そこまで言って、アドリエンヌはもう耐え切れぬとばかりに、ボロボロと涙を溢し始めてしまった。

「アドリエンヌ様……」

あっというまに涙で曇ってしまった視界の中、シェロがアドリエンヌの腹部に、心配そうに、愛おしそうに、口づけをしているのが見える。

『Adrienne è lo schiavo di sesso di Cielo! (アドリエンヌはシェロのセックス奴隷!)』

そこには、アドリエンヌがシェロの奴隷であると、シェロがもうアドリエンヌのものではないという刺青が彫られている。

557 :順風満帆!3 08/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:44:10 ID:A9EfEj0s
「申し訳ないです……こんな風に、身体に傷をつけてしまって……」

自分の身に刻まれた不浄の身の証明にシェロが口付けるのを見たアドリエンヌは、もう羞恥も卑下も捨ててシェロに縋りつきたい。
しかしアドリエンヌがシェロとの間に作ってきた関係は──肉体関係などを含んだどれほど奇妙なものであってもそれは、上官と部下、貴族と従僕のものでしかない。

シェロと出会ってからのアドリエンヌの全ては、シェロと共にあった。
シェロが好きだ。
シェロを手に入れたい。

しかし海賊船『大乱の赤い翼』号の水夫に捕虜の軍人の女がそんなことを言えず。

「しぇ、シェロ……わ、わたひは、ファシーナの軍人な、なのぅ……」

アドリエンヌの呟きを耳にしたシェロは──そのまま存分に刺青の彫られた腹部を啄ばんで、それから顔を上げる。
「はい」
アドリエンヌは羞恥に頬を真っ赤に染め、涙や鼻水で汚れた顔のまま、こらえたような、それでも耐えかねているような表情でシェロを見ている。

「わ、私は、か……帰れる?」

また泣き出してしまいそうな顔のままアドリエンヌはシェロを見つめている。シェロは何も答えず。
アドリエンヌはシェロの答えを待たぬまま、言葉を継ぐ。

「わ、私が『メーヴェ・ブランシェ』に帰るときには、シェロも、わ、私の従属として……か、帰るんだぞ?」

またポロポロと涙を溢し始めながら言ったアドリエンヌの言葉に、シェロの目が少し驚いたように開かれる。
そのままシェロの言葉を待っていたアドリエンヌは、シェロの表情がやがて子供をあやすような、すまなそうな、愛おしむようなモノに変わったのを──見てしまった。


ポロポロと、ほろほろと、子供のように泣き出してしまったアドリエンヌは、シェロの優しくほぐすような愛撫を受けた。
いつもアドリエンヌがシェロにしていた奪うようなセックスではなく、抱き合い、睦みあい、愛し合うようなセックス。
その最中でアドリエンヌはシェロに、腹部の刺青への口づけや愛撫を幾度もねだる。
やがて何度か果てて後、泣き疲れるようにアドリエンヌは眠りに引き込まれた。

もう例えアドリエンヌがファシ−ナに戻り、再び『メーヴェ・ブランシェ』号に乗ったとしても。
そこにはもうシェッロ・ルッジェーロという見習い水夫が戻ることはないのだ。


558 :順風満帆!3 09/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:45:03 ID:A9EfEj0s

「この刺青、消せるぞ」
アドリエンヌは医務室で、ファビオラの言葉をぼんやりと聞いていた。
「尻とか背中とか、皮膚の広いところからこう、皮膚を移植するという技術があってな……」
今日のファビオラは昨日のように頭が沸いたような半裸(というかほぼ全裸)のような格好はしておらず、普通の服装をしている。
今日はシェロがここにいないからか他の船員達もここにはおらず、ただ仕事があるのでシェロを追いかけていけないのかファビオラだけがここにいた。
アドリエンヌもただシェロの部屋に繋がれていたときのように全裸ではなく、適当に見繕ったらしい服を渡されていた。
まだその皮膚を移植して刺青を消すと言う技術のことを怠そうに説明しているファビオラの言葉を聞き流しながら、アドリエンヌは不意に聞く。
「──私は帰れるのか?」
気の抜けているような様子のアドリエンヌの言葉に、ファビオラはキョトンとしたように言った。
「ああ、聞いてないのか?」
そう言ってからファビオラは、まだほとんど何も書き込まれていないアドリエンヌのカルテを机に置き、アドリエンヌに正面から向きなおる。

「この船は、もうすぐまた戦場になるからな。捕虜とかを置いておく余裕がなくなるのさ」


『大乱の赤い翼』号の船員達が一箇所に集まっていた。
場所は船内で最も広い、船員達のサロンである。
サロンの中心には船長のオルダと副長のマチルデがいて、周りを船員達が囲んでいるような形である。
そして中心にいるオルダと向き合って、『大乱の赤い翼』号は今、一人の客を迎えていた。

ファシーナと長く交戦関係を続けるフォルトナは、その海軍力の一部が国に認められた海賊──いわゆる、私掠船によって占められている。
その中で、最大クラスの規模を誇る私掠船団、海賊艦隊『ティグレ・マリーノ』。
『虎』の異名を持つ海賊にして海軍提督、カーロッタ・バルトロマージ海軍准将は、その『ティグレ・マリーノ』の女首領である。

カーロッタはその獰猛な肉食獣に例えられる視線を、まっすぐにオルダに向けている。

「──言い訳は、あるか?」

殺気立ったカーロッタの言葉を、しかしオルダは鼻で笑って切り捨てる。
「何に言い訳の必要があるんだ?」
からかうようなオルダの言葉にカーロッタはさらに殺気を増す。
「てめェ、『大乱の赤い翼』一隻で、戦争なんざ出来ねェことァ分かってんだろが!」
ダァンッ! とカーロッタが大きな樫のテーブルを叩いた衝撃で、オルダが飲みかけていたラム酒のジョッキが床に転がった。
「もうてめェらを向こうに引き渡したところで収まる話じゃねェんだ──。『海鳥騎士団』のやつら、面子にかけて群島を潰しにくるぞ」
憎々しげに言うカーロッタ。キアラが新しくオルダに持ってきたラム酒のジョッキを引っ手繰り、やおら飲み干す。
「このまま『海鳥騎士団』と正面衝突となりゃ、こっちの損壊も馬鹿にならねェ」
そして、正面のオルダを見据えたまま空になったジョッキを横に投げ捨てた。カーロッタは一層眼光を鋭くする。

「勝算は──あるんだろなァ?」

オルダはその顔に不敵な笑みを浮かべた。


559 :順風満帆!3 10/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:45:56 ID:A9EfEj0s
今いるフォルトナの群島海域からファシーナに戻るとなると、海路で南大陸のマウリュケアを経由し、内海西端の海峡を渡って帰ることになる。
しかしフォルトナとマウリュケアを結ぶ海路はファシーナの戦略海域に比較的近い場所を通っている。
正式に、ファシーナ海軍『海鳥騎士団』による群島海域の海賊討伐宣言、つまりはフォルトナへの宣戦布告が為されてからでは封鎖されてしまう。

ファビオラと共にサロンにやってきたアドリエンヌは、フォルトナの誇る海賊艦隊の提督の言葉を呆けたように聞いていた。

──実感がない。
もちろんファシ−ナ・フォルトナ間の紛争はちょくちょく起こっているものだし、アドリエンヌ自身も何度も海戦に参加している。
しかし実感が湧かない。
例えば戦争になれば多くの仲間が死ぬとか、この戦争の発端は自分が起こしたものだとか、そういったことは分かっているのだ。
今の自分はファシーナの人間でありながらフォルトナの海賊の捕虜で、戦争を前に船を降ろされようとしている。
原隊復帰した頃にはすでに戦争など終わっているだろう。

──何より、この船を下り海軍に戻ったところで、自分が乗る船にはシェロはいない。

シェロがまた漂流すれば捜せばいいし、奪われれば取り返せばいい。
しかしシェロと別れるということがどういうことなのか、もうアドリエンヌには想像すら出来なくなっていた。

「──おい」

凄みを帯びた声に、アドリエンヌはハッと顔を上げる。すると、カーロッタの剣呑な視線が自分の方を向いている。
「『赤鷲』ィ……。あいつァ、『海鳥騎士団』の将校じゃねェか? 何でここにいやがんのよ?」
……自分は悪名高い『虎』などに、顔を覚えられる理由などあっただろうか?
覚えなど全くないが、しかし『虎』ことカーロッタの視線は居竦んだアドリエンヌを捉えて離さない。
今にも足が震えだしそうなアドリエンヌがそのまま動けずに居ると、
「将校じゃなくて、提督だわ。まぁ、今はもう、どちらでもいいんだけど」
その肩にポンと手が置かれ、いつの間にか自分の後ろに居た者がスィと前に出た。
「『ティグレ・マリーノ』の雌虎さんには久しぶりの御目文字ね。ベルティール・ショーヴェ『元』海軍准将よ」

ベルティールは優雅で厳格なフォルムの『海鳥騎士団』の制服ではなく、他の船員達が着ているようなラフな服装で登場した。
下は七分長けのパンツに、上半身は素肌の上にシャツを羽織り、前を絞って縛ってあるに過ぎない。それはまるで──海賊の服装である。
それはまるで、自分が『ファシーナの軍人』ではなく『海賊』であると主張しているかのようである。
その後ろにはベルティールと同様、彼女の性格にしては少しだけラフな格好の、ベルティールの元副官であるメールが控える。
アドリエンヌは『虎』の視線が自分を向いていたのではないとわかって、少しだけ息を吐く。

「どういうこッた!? おいッ、『赤鷲』!」

カーロッタがテーブル越しにオルダの胸倉に掴みかかる。


560 :順風満帆!3 11/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:46:53 ID:A9EfEj0s
「どうしたも何も、メインキャストの一人だよ、そいつァ。第四船団の旗艦に火ィつけて、基地ごと沈めて逃げてきてんだ」
掴まれたままのオルダが面倒くさそうに言う。それを聞いて、カーロッタはほとんど目を丸くして、よほど奇異なものを見る目でベルティールを見た。
「……ファシーナ海軍の偉いさんが、一体何をやってんのよ?」
その視線を向けられたベルティールはというと、涼しい顔で、
「あら。私だって、女ですもの。男の子に誘惑されちゃったら、どこにだってホイホイついていくわよ?」

そう言って──周りの船員達に紛れていたシェロを引っ張り出し、身を屈めて後ろから抱きついた。

呆気に取られるカーロッタ。嬉しそうに少年を抱きしめるベルティールを指差して、
「……おい『赤鷲』ィ、コイツは一体何の……」
コイツは一体何の冗談だ、と言おうとして、カーロッタはオルダを振り返り心底苦虫を噛み潰しきったような顔になる。

シェロに抱きつくベルティールを見て、オルダは今にも唸りだしそうな威嚇の表情を作っているのだ。

「こらァ、ベルティール! お前は昨夜しっかり可愛がってもらってるんだろうがァ! シェロにベタベタするんじゃない!」
「……船長さんはちょくちょくシェロをお部屋に引っ張り込んでいらっしゃるようですけどねェ……。
 こっちだって毎晩シてもらいたいの。一晩くらいで満足するわけないでしょ!」
怒るオルダに対して、ベルティールはベェと舌を出して言い返す。後ろに控えたメールは自分の主の様子に眉根を寄せるが、シェロの肩に置いた手をどかすつもりはない。
そのまま睨み合いを始める双方に、カーロッタは唖然として、オルダの後ろに立っていたマチルデを見上げる。
マチルデはそのカーロッタの視線に気付いていない。
というか、マチルデもオルダと同様にシェロを抱きしめるベルティールを歯噛みして睨んでいる。
「おい……」
苦りきったカーロッタの声に、マチルデはハッとして顔を赤らめコホンと咳をした。

「いいからその手を離しやがれ!!」
「い〜や〜!!」

ついにベルティールに踊りかかるオルダ。
カーロッタは、シェロの腕を掴んで引っ張り合うオルダとベルティール、それを周りから真剣な様子で囃し立てる『大乱の赤い翼』号の船員達を見て、マチルデに声をかける。
「って言うか、お前ら……全員あのガキにヤラれてんのか?」
マチルデは赤い顔のまま目を反らす。

561 :順風満帆!3 12/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:47:37 ID:A9EfEj0s

目の前で、海賊『赤鷲』とショーヴェ提督がシェロを奪い合って取っ組み合いをしている。

何故自分はそれをただ見ている?

『大乱の赤い翼』号の船長は、シェロを奪い返すために敵国の海軍基地に直接乗り込んできた。
ファシーナの海軍提督はシェロのものになるために自分の船も地位も捨てた。

『海鳥騎士団』の駆逐艦艦長である自分は、シェロを手に入れるために何をした?


至近距離で睨み合うオルダとベルティール。しかしその二人の間に走った剣光に、二人はバッと後ろに飛び退いた。
見ればシェロが、こちらに向けて剣を突き出したアドリエンヌに抱き寄せられていた。

「何のつもりだ、おい?」
「──デュバリエ三等海佐、剣を引きなさい」
険を帯びた二人の声に、アドリエンヌは自分の剣を握った手元と胸元に抱き寄せたシェロを見て唖然としている。
自分の行動が信じられないようだ。


アドリエンヌが初めてシェロと肉体関係を結んだのは、イングヒルトに拾われたシェロが船の雑用として細々とした仕事を手伝っていた頃だ。
仕事をするシェロの明るく楽しそうな様子が癇に障ったのだ。
最初は絡む程度に言いがかりをつける程度だったが、シェロの首筋にキスマークを見つけてしまった。
自分が真面目に仕事をしているのに、情事に耽っているやつがいる。しかもシェロの出てきた部屋が、当時の直接の上官である女の部屋だった。
アドリエンヌは逆上し、気が付けばシェロを押し倒し、犯していた。
──泣きながらシェロを犯していたアドリエンヌは、そのままシェロの優しくほぐすような愛撫を受け、抱きしめられるようなセックスをした。

シェロに情を与えられたことを屈辱と感じたのか、その後アドリエンヌはそのことに触れることはなかったが、彼女はその後自分の船を得る。
アドリエンヌは駆逐艦『メーヴェ・ブランシェ』号の船長となり、予てよりの目論見どおりシェロをその内に引き込んだ。以来、どんな任務にもシェロを連れまわすようになる。
少なくとも通常護衛艦の副長から駆逐艦の船長に昇格するのに五年以上かかるのを、シェロを獲るためにほんの半年ほどに縮めたのだ。


アドリエンヌは自分がオルダとベルティールに向けている剣を呆然と見ていた。
シェロが他の人間に奪われるのが我慢ならなかった? 違う気がする。
抱きしめられたシェロは腕の中から自分を見上げていて、気遣うような視線を向けている。──ああ。

例え私が去ったとしても、シェロは私のことを忘れないだろう。自分が決してシェロのことを忘れないように。
しかし、それではやがて、自分もシェロも、互いのことを過去の思い出にしてしまうだろう。

それは、忘れてしまうのではなく──失くしてしまうのとどう違うと言うのだ?


562 :順風満帆!3 13/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:48:26 ID:A9EfEj0s

「おい、海賊」

オルダとベルティールに剣を突きつけたまま、アドリエンヌはシェロを離さずに言う。
剣を奪って脱走しようとしたことに関して前科者であるアドリエンヌは、すでに周り中の船員に剣を突きつけられているが、彼女はそれを気にすら留めない。
そもそもオルダとベルティールにはすでに間合いを空けられていて、突きつけた剣ももう意味を成していないのだが。
「──シェロを離せ、バカ軍人」
「デュバリエ三等海佐」
オルダとベルティールが睨みを聞かすが、アドリエンヌは何処吹く風と表情を変えない。
剣を突き出したまま抱きしめたシェロの髪を撫で、その自分の仕草に少し驚いた表情になる。

「私は海賊になるぞ」

……サロンから、数秒間音が消える。
最初に声を発したのは、直接自分に声をかけられたオルダだった。
「…………はぁ!!?」
もちろん目を丸くして、驚愕の表情。周りの人間もみんなである。
「お、まえェ……何言ってんの?」
「とりあえず、お前が船長のままだとお前の言うことをきかなければならんわけだが……それは不愉快だな」
オルダが眼光鋭く睨みつけるが、アドリエンヌは何処吹く風だ。ブツブツと何か呟いている。
「……デュバリエ三等海佐……あなた」
困惑したままベルティールがアドリエンヌに近づこうとすると、アドリエンヌはふと思いついたように、

「そうだ。シェロが船長になればいいのか」

と呟いた。

「賛!!」
「成ィィッ!!!」

そこにいたベルティール、メール、ついでにそこにいたキアラが、ほとんど反射神経だけでシュバッと手を上げ同意する。
視線は、言い出したアドリエンヌより勢いの良かった三人に集中している。
「それいい! シェロ、クーデター起こそう! 船乗っ取ろう!」
「もちろん何処までもついていく」
「あ……」
突然テンションが上がったベルティールとメールに対し、つられて反応してしまったキアラは周りから白い目で見られている。さらには、
「お前は普段何を考えてるのかな〜……ァ?」
「いたたたたた! い、痛!」
こめかみに薄く青筋を浮かべたオルダに捉まえられ、バックブリーカーをかけられる。
その間も、シェロの方に寄っていったベルティールとメール、アドリエンヌは、
「でも普通にやるとあの『赤鷲』がいますからね……」
「シェロの泣き落としとか効くんじゃない?」
「それなら先にあの副長をオトしましょう。『赤鷲』含め船員達の弱みとか握ってそうですし……」
シェロを取り囲んだまま、船内クーデター計画を推し進めている。
シェロ自身はというと突然の展開に困惑しているようで、三人の真ん中でオロオロしてたが、
「あ、あの!」
やっとのことで三人を制すべく口を開く。
アドリエンヌたち三人は、シェロが言葉を発するとアッサリ黙り、シェロの言葉を聞く体勢になる。

563 :順風満帆!3 14/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:49:27 ID:A9EfEj0s
「あのですね……僕は『大乱の赤い翼』号の船員で、オルダ様に逆らう気とかはないんですけど……」
困ったように言うシェロに、アドリエンヌは言い返す。
「しかし、ただそれだけならばこんな船ではなく私の船でも構わなかったはずだ。何せこの船の船長は下品だ」
その言葉に勢いでオルダが剣を抜こうとするが、傍らのマチルデとキアラが止める。周りの船員たちはアドリエンヌの言葉にウンウン頷く。
「でもですね……」
さらに言い募ろうとするシェロ。しかし、

「シェロ」

真剣な顔でアドリエンヌが、
バッ、
と、いきなり自分の着ていた服を脱ぎ捨てたために、驚いてシェロの言葉もまた止まる。
「シェロ」
上半身裸になったアドリエンヌが言葉を続ける。
腹部に掘られた『Adrienne e lo schiavo di sesso di Cielo! (アドリエンヌはシェロのセックス奴隷!)』の刺青はもう、隠そうともしない。


「このとおり、私はお前の奴隷である。故に、他の者ではない、お前にのみ従う用意がある」


「アドリエンヌ様……」
「お前の奴隷である。アドリエンヌと呼び捨てるがいい」
アドリエンヌが誇らしげに言う。
「私はお前に忘れられることも、思い出にされることも望まない。身分も、過去も、行く末も、すでにこの刺青ほどの価値もないことだ」
「アドリエンヌ様……」
「アドリエンヌと呼び捨てるがいい」
感動的に見つめあう二人。そして、

「ちょっと待て────────ッッ!!!」

押さえられていたオルダが暴発した。
「さっきから見てればお前ら! 何だその、プロポーズみてェな!!」
半切れで叫ぶオルダを周り中の人間が寄ってたかって押さえる。すると、オルダを押さえる側に廻っていなかったファビオラがシェロに近寄り、
「私もここに刺青を入れてみた。私もシェロの奴隷と言うことでいいな?」
と、自分の穿いているズボンを半分下ろして、生え際に彫られた『Solamente per Cielo(シェロ専用)』という刺青を見せる。
「ああッ!? ズルイぞ、ドクター!!」
「ふふ、船長、勝負は先手先手を打っていかなければイカン」
喚くオルダ。周りにいた船員達がドクターに詰め寄り「私にも刺青を入れてくれ」と頼み始める。
さらに気の早い者達は、二の腕や背中にナイフで思い思い奴隷だ何だと刻み始めている。
「──今だッ! シェロ〜!」
隙を見て逃げ出したオルダがシェロに抱きつく。
「あッ! コラ!」
「抜け駆け!」
それを機に、サロン中の人間がシェロに殺到し、圧倒し、圧壊する。
わやわやと積まれている人間の山──その中へ、

置いてけぼりになっていたカーロッタが呆れ顔で手を突っ込んだ。

「……シリアスな話を続けていいかい?」
「……はい」
山の中から抜き出されたシェロは、首根っこを掴まれた猫のように神妙に頷いた。

564 :順風満帆!3 15/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:50:20 ID:A9EfEj0s
「つまり、ベルティールが切り札になるってことかい?」
「いえ、切り札と言うより釣り餌ですね。オーレリー様は娘が人質になっても取り乱さないでしょうが、敵ぷ」
横から顔を掴まれて、シェロはベルティールに強引にキスをされる。するとオルダが、それを脳天への拳骨で止めさせる。
「ぷはぅ、て、敵に回っていたら多分最優先で標むぐ」
今度はオルダが胸でシェロの顔を挟み込む。どうだと言う顔をベルティールに向けた瞬間、メールに横合いから頬をパンチで打ち抜かれる。
「う、うぐ、し、失礼。さ、最優先で標的にするでしょう。それも、確実に自分で仕留めおぉう」
テーブルの下に潜り込んでいたアドリエンヌが、シェロの陰茎を咥えている。オルダとベルティールがテーブルをバン、と叩くと天板が落ち、アドリエンヌの頭を直撃する。
「う、う、そ、その本当に失礼を……」
ほとんど涙目になりながらシェロはカーロッタへの説明を続けようとする。しかし今度はファビオラがシェロの首筋を舐め上げ、オルダに頭突きを喰らう。
「アンタたち、いい加減にしなさい!」
マチルデが叫ぼうとも何処吹く風、オルダたちは互いに睨みあい・奪い合いを止めようともしない。

「お前と坊や以外、真面目に話そうってヤツはいないのか?」
「……返す返すも申し訳ないです」
カーロッタが呆れた顔で、オルダを止めようとして眼窩に一撃喰らったマチルデに言う。
「……噂じゃァ聞いたことがあったが、まさか自分で目の当たりにすることになろうとはなァ……」
「──噂、ですか?」
顔に疑問を浮かべるマチルデに、カーロッタは溜息をつきながら続ける。

「フォルトナの女海賊に海軍上がりの政治家。ファシーナの女提督に豪商の娘。マウリュケアの海運商にロトナのヴィーキング、クルジェの水軍……」

指折り数えていくカーロッタ。。
「何ですかそれ?」
「いや……どっちかッてェと、怪談の類かね」
マチルデが目を濡らしたハンカチで押さえながら聞くと、カーロッタはまたもみくちゃになっているシェロを見て、

「内海には女の船乗りを誘惑し、虜にしちまう子供の妖怪が住んでいるってェ──嵐の日に出航できねェで酒場でくだを巻く船乗りどもの噂があんのさ」

マチルデが目を丸くする。
「妖怪……ですか?」
「ああ」
目の前ではついにシェロが服を剥かれ、オルダ・アドリエンヌ・ベルティールに圧し掛かられようとしている。
それを、ファビオラ・メール・ベネデッタがさせてはならじと羽交い絞めにしてひっぺがすが、その隙にキアラとテレザが潜り込む。
「これが……ですか」
呆れたように言うマチルデに、
「事実、あんたら全員コマされてるじゃん」
と、返すカーロッタ。マチルデの顔が赤くなる。
「私の知り合いにもいるんだよね〜、その妖怪に誑かされたってヤツ。マウリュケアで商人をやってるヤツなんだけどね。
 漂流してる子供を拾って見習いとして使ってるッて言ってから、一ヶ月程で、すっかりメロメロになっちまって……。
 その前まではただの鼻っ柱の強い小娘だったんだけどね。そっから二年足らずで豪商になっちまった。金にあかせて、また漂流しちまったそいつを捜すんだと」
「うわ……それは確かにシェロっぽいな……」
シェロは良くも悪くも、関わった人間の人生に波風を立てる。オルダやベルティールは良くなった方か悪くなった方か。
「とにかく、これじゃまともに話も出来ないね……」
「……申し訳ありません……」
いいんだよ、と手を振りつつ──、

カ−ロッタは着ていた上着を脱ぎ去った。

「坊や〜、私も混ぜて♪」
オルダとアドリエンヌを引っ剥がしシェロに飛びついていったカーロッタを見て。
マチルデは自分が完全に出遅れたと悟った。

565 :順風満帆!3 16/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:51:08 ID:A9EfEj0s

「ふッ……あぁぁぁァァァァッッ!! シェロぉッ! シェロぉぉぉぉぉォォォッッ!!」

シェロの上で腰を振るアドリエンヌの首筋に、ベルティールが歯を立てる。
その前、シェロの腹の上にはメールが跨り、アドリエンヌの乳房に舌を這わせる。
オルダとカーロッタは、シェロの両脇からシェロの胸や耳、唇に、彼の腕を抱いたままキスをしている。
キアラやマチルデはシェロに触れたくもそのスペースがないため、キアラの尻やメールの背に愛撫を与えている。

「シェロぉぉ……わ、わたひはぁ……は、はゥッ!」

どうやらシェロに抱きつきたいらしく、アドリエンヌは必死に手を伸ばすのだが、メールに遮られ上手くいかない。
その向こうでは当て付けのようにオルダがシェロの舌を吸い、うっとりとした表情をしている。
「うゥッ、海賊、貴様ぁ……」
憎々しげにオルダを睨むが、腰から来る快楽が強すぎるようですぐに声が上擦ってしまう。
「文句があるなら早く変われよォ……ンちゅプ、りゅ」
オルダも存分にシェロのものを味わうアドリエンヌに羨む様な視線を向けるが、こちらも舌で味わう快感に意識を持っていかれ、目に霞がかかってしまう。
「……スゲェな、しかし……」
カーロッタはゆっくりと自分の指で快感を高めながら、シェロの耳元に囁く。
シェロはオルダに唇を貪られながらも、カーロッタに視線を向けニコッと微笑む。
上気した顔に汗を浮かべたシェロの微笑みに、カーロッタはドキッとしてしまう。

(いかん……セックスだけのつもりだったのに、コイツホントに可愛いわ……)

そんなことを考える暇もあらじ、抱きついているシェロの左手がカーロッタの股間に伸び、細やかに動き始める。
「ひャッ!?」
その指は恥丘を撫で、淫唇を擦り、突起を刺激して──そこに伸びていたカーロッタの手を、優しく力強く握った。
「…………」
他の皆に見えぬよう、こっそりと自分の手を握っているシェロを見て、カーロッタは照れたような拗ねたような顔になる。
シェロはオルダが息継ぎのために口を離した一瞬にカーロッタの方に首を伸ばし、彼女の唇をペロリと舐めた。
何故か「負けている」という気分になり、カーロッタは離れたシェロ追って自分からその唇にキスをする。
シェロはそれに応じ、舌を絡めとって動けないようにして、その裏側をクリクリと舐める。
舌を捉えられたまま、シェロの歯茎を噛んだり、唇を唇で擦り上げているうちに、カーロッタは次第に自分がこの少年に翻弄されているような気がしてくる。
上目遣いにシェロの目を覗き込むと、シェロがまたにっこりと笑い、絡めた下をくぷりと一廻し、舌全体を抱くように舐めた。
カーロッタはまるで小娘になったような気分で、握られた手と絡め取られた舌に与えられる愛撫を堪能する。

「ふィ! へゥ、んィィィィィいィィィィッッ!! はァッ、シェロぉぉぉォォォォォォォォッッ!!」

そうしている間にも腰を振るアドリエンヌの快感は高まり、繋がったままでの二度目の絶頂に突き上げられる。
ビクビクと痙攣し意識を失うアドリエンヌを、彼女に愛撫を加えていたベルティールとメールがそのままシェロの上からどかすように横たえた。

『じゃあ、次は……』

そのまま、アドリエンヌから抜け出た愛液と白濁塗れの肉茎に、オルダ、ベルティール、キアラがすり寄っていく。

566 :順風満帆!3 17/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:52:08 ID:A9EfEj0s
「順当に、次は私だろ?」
オルダが言えば、
「いやいや、アドリエンヌをイカせるの手伝ってた私のほうが、功労者手当てをもらうべきじゃない?」
とベルティールが答え、さらに、
「お二人は最近も可愛がってもらってるでしょう? 私が先でいいじゃないですか」
とキアラも反発する。

その隙に、シェロはテレザとベネデッタに導かれ、二人に両手の指を差し入れながらファビオラに後ろから挿入している。
「はふッ、ふンふッ、ふゥッ……! う、嬉しい、シェロぉッ……ついに、ちゅいにッ! おま、おまえのぉ!」
ファビオラの首筋を甘噛みしながら彼女に突き入れるシェロに、ファビオラの身体はあっという間に陥落していく。
絶頂に導きながら、しかしファビオラが達する瞬間に、シェロはファビオラの膣中から自分の陽物を抜いてしまう。
「あ、あふッ……な、何で……」
ファビオラがシェロに再び挿入を懇願しようとすると、シェロはファビオラの茂みの上、恥丘と下腹の間に屹立を擦りつけ始めた。
(何……?)
四つん這いになっているファビオラが身体の下から覗き込むと、シェロは、
『Solamente per Cielo(シェロ専用)』
という、ファビオラが自分で彫った刺青に、ファビオラ自身の愛液に塗れた陽物を擦り付けている。

「ふぁい゛おあ゛はんはァ、お゛ふふぇんおう(ファビオラさんは僕専用)」

首筋を噛んだまま、シェロが延髄から直接脳に響かせるかのようにそう呟く。
(………………ッッ!!)
ファビオラの身体に、刺青の箇所から首筋、脳を繋ぐような、暗示のような快感が走る。
ゾクゾクゾク! と振動するような刺激が感覚神経を通って身体中にいきわたる前に、シェロはもう一度、首筋を噛む力を少しだけ強くして、
「ふぁい゛おあ゛はんは、お゛ふふぇんおう……(ファビオラさんは僕専用)」
と呟いた。

(ふぃィィィィィィィィィぃぃぃぃいいいいいッッ!???)

今度こそ、身体中が痺れた。ファビオラは、挿入どころか、性器にも直接触れられていない状態で潮を吹きながらイってしまった。
まるで肉食獣のように捕らえた獲物の首筋に噛み付き、それだけで獲物の身も心も制圧した。
力なく崩折れたファビオラは、もう自分がシェロに従う以外の選択肢を選ばないものになったと、その喜びに震える身体から直感した。

567 :順風満帆!3 18/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:52:48 ID:A9EfEj0s
横たわるファビオラを仰向けにして、シェロはその上に並んだテレザとベネデッタに交互に挿入している。
ほんの数回ずつの緩やかな抽送でも、すでにシェロの指で襞の間までも出来上がっていた二人の身体は、否応なく絶頂へ押し上げられていく。

「タフじゃないか、坊や」

タンっ……

後ろから忍び寄ったカーロッタが、ゆっくりと襞を絡ませるように動かしていたシェロの尻に自分の腰を打ちつけた。
「はッ…………────────ッッッ!!!」
急にリズムを変え奥に打ち込まれたシェロの陽根に、ちょうど膣中を擦られていたベネデッタは何の準備もなく絶頂に押しやられてしまう。
「そォら、こっちもだ!」
「ひ! キャぁぁぁぁぁァァァァァッッ!!??」
インターバルにあったテレザの膣も、ちょうど内部を刺激していたシェロの指をカーロッタが急に激しく動かしたために一気に頂上に達する。
「はッ……はァッ、はァッ……」
ベネデッタの絶頂の痙攣に締め付けられ、内部にあったシェロも同時に精を吐き出している。
カーロッタは息を切らすシェロの肉茎を丁寧にベネデッタの中から抜き出し、やわやわと刺激して途中に残っている精液もベネデッタの尻に搾り出す。

「坊や……次は私な……♪」

カーロッタは後ろから、一時的に力を失ったシェロの肉茎を指で刺激し、掌で包み込んで、再び血を注ぎ入れる。
そのまま後ろのカーロッタの胸に甘えるように身を預けるシェロ。
チラリと横目で見れば、オルダとベルティールの順番争いはまだ続いている。
シェロがすでにオルダのパンチで順番争いからリタイアしていたキアラを見ていると、上からカーロッタがシェロの唇を奪った。

568 :順風満帆!3 19/19 ◆eUGz.uKlsw :2007/09/10(月) 18:53:55 ID:A9EfEj0s
「この戦い、勝とうが負けようが、結局はお前ら群島にいられなくなるだろうな」
カーロッタが言った。
これから起こる戦争の発端は、『大乱の赤い翼』号によるファシーナ海軍『海鳥騎士団』基地への襲撃にある。
さらに遡れば、『メーヴェ・ブランシェ』号の無断出撃と『大乱の赤い翼』号襲撃、ひいてはシェロにたどり着く。
負ければオルダやシェロ含め『大乱の赤い翼』号の全員の命がファシーナ側に差し出されるだろう。
──しかし、勝ったとしても、和睦の条件として彼女らの身柄が要求されないとも限らない。
何より、シェロの存在が明るみに出れば、かつて彼と情を交わした女達がアドリエンヌのように『大乱の赤い翼』号を襲撃してこないとも限らない。
「女達に奪い合いされる気持ちってのはどうだい? 坊や」
シェロが情を交わした女達の中には、ベルティールのように国や一勢力の中で地位を築いているものもいるのではないだろうか。
そうなれば、シェロは重要な人質、もしくは交渉材料に使われることになる。それでは肩書きは『見習い水夫』ではなく、『虜囚』である。
「何、誰が来たって私が守ってやるって」
オルダは気楽に言ったが、『メーヴェ・ブランシェ』号の実例もある。
シェロの奪い合いでまた戦争が起こるなどといったら、今度はシェロを始末しようという人間も出てくるかもしれない。
「……ま、何にしろ、今後どうするかは考えておくんだな」
そう言って、海賊艦隊『ティグレ・マリーノ』の首領カーロッタ・バルトロマージは、自分の船団に戻っていった。
「オルダ様……」
カーロッタを見送った甲板で、シェロはオルダに話しかける。まだ甲板にはマチルデやベルティール、アドリエンヌたちがシェロについて残っている。
「──何だい? シェロ」
オルダは夜の水平線を見つめるシェロに答えた。

シェロはそのまま水平線を見つめたまま、呟くように、しかし力強く言った。


「この戦争が終わったら、オルダ様と、『大乱の赤い翼』号、僕に預けてもらえないでしょうか」


──二日後。
ファシーナ海軍『海鳥騎士団』、最高司令オーレリー・エマニュエル・ショーヴェ大将の名において、正式に『群島海域の海賊討伐』が宣言された。
これは事実上、停戦状態にあったフォルトナへの、ファシーナからの宣戦布告である。

これをきっかけに、『第四次群島海域会戦』の火蓋が切って落とされる。





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