【一夫】ハーレムな小説を書くスレ【多妻】 9P

873 :あさひ:2007/07/16(月) 02:42:05 ID:ADHo5s2q
 さて、もてる事は良い事だ。

 つい数分前までは僕もそう思っていた。
 だが今はとても辛い事なんだと理解した。
 何故なら――。


「「「好きです! 付き合ってください!!」」」


 三人の女の子から同時に告白されたからだ。
 なに?
 うらやましいだって?
 君は状況を理解していないのか?
 同時に告白されたんだぞ?
 誰かひとりを選べるわけがないだろうがっ!

 誰かを選べば残りの二人を傷つけることになる。
 三年で上級生。
 僕と同じ文芸部の部長。
 おしとやかで優しい君島信子さん。
 二年で同学年。
 クラスメイトにして気さくな友人。
 元気いっぱいの谷川里美。
 一年で幼馴染。
 いつも頼ってくれる下級生。
 甘えんたがりの美空遥。
 僕には選べない。
 いっそ、誰も選ばないと――。


874 :あさひ:2007/07/16(月) 02:42:49 ID:ADHo5s2q

「誰も選ばないというのは無しで」
 先輩がにっこりと。

「好みの子を選べばいいの!」
 谷川がちょっと怒った風に。

「それで試しに付き合ってみようよー」
 遥が舌足らずに。

 僕をさらに追い込むんだ――。
 この状況で好みの子といったって……。
 実は、初恋もまだな僕にとって、そんなことが分かるわけが。
 いや、それでも普通は分かるのか?
 ここは答えを先延ばしに――。


「「「先延ばしは駄目!」」」


 無茶言うな。

 それから十分。
 僕は悩みに悩んだ。
 もうそろそろ限界だ。
 この八方塞の中、ひとつだけ道がないわけではない。
 それはこの窮地を切り抜ける切り札になるだろう。
 成功か失敗か。
 どちらに転んでも何とかなるだろう。

 それは半ばやけになった僕が選んだ答え。
 それは――。



875 :あさひ:2007/07/16(月) 02:43:29 ID:ADHo5s2q
「三人とも付き合ってください!!」


 そう答えた僕の前で三人ともあっけに取られている。
 そりゃそうだろう。
 いくら三人から告白されたからといって、三人とも付き合うなんてずうずうしすぎるってもんだ。
 だが、僕は後悔していない。
 ハーレムは男の夢だ。
 これが成功すればその夢が叶うのだ。
 失敗した所でこの状況から抜け出せるだろうし。
 損はないはずだ。
 いや、実際には失敗すれば損ばかりだが、追い詰められた僕はそこまで頭が回らない。


「「「ちょ、ちょっとまってね」」」


 混乱した三人は少し離れて座り込み、ぼそぼそと相談を始めた。
 どうやら完全に想定外の返答らしく、すぐに対応できないみたいだ。

「ど、どうする?」
「どうするって言っても……」
「これってありなの?」
「一応、だめとは言ってなかったですし……」

 なんて、会話が途切れ途切れに聞こえてくる。
 ここまで来たらなるようにしかならないだろうと、ちょっと、達観した心境のまま三人の相談が纏まるのを待つ。

「分かりました」

 ちょっと、居眠りしてしまったらしく、いきなり声を掛けられてびっくりしたが、どうやら答えが出たらしい。
 まあ、駄目だろうなぁ。そう覚悟を決めて相手の言葉を待つ。


「「「よろしくお願いします」」」


 え?


「いや、だから」
「四人でお付き合いしましょうと」
「そういう事になったんだよ!」


「マジで?」

 思わず聞き返してしまった僕に三人とも頷いて肯定した。

 こうして、僕は三人の女の子と付き合う事になったんだが。
 もてる事は良い事だ。
 前言を撤回してそう言っていいものか。
 とりあえずはいいことにしよう。
 うん。


77 :あさひ:2007/07/19(木) 21:03:04 ID:8szTNwtq
「恋人できたって本当か?」

 帰り道、バイトの先輩にそう聞かれたわけだが。

「ええ、できましたよ」

 いたって平静を装って返事をする僕。
 正直、このまま流れてしまえばいいと思っているのだが、そうそう上手くは行か

ないらしい。

「何でも、三股とか聞いたんだが?」

 二股は特に気にならないのに、三股だと違和感があるのは何でだろ?
 そんなことはどうでも良く、やっぱり知ってたというか、突っ込まれましたか。

「いえ、そんなことはないですよ? 誰に聞いたんです?」

 とりあえず、間違った情報は訂正しないと。
 三股じゃなくて、三人と付き合ってるハーレム状態だからね。
 うん。わかってる詭弁です。

「で、誰と付き合ってる?」
「君島信子さんと谷川里美と美空遥」
「やっぱり、三股じゃないか!」

 しまった、根が正直者だから、つい。


78 :あさひ:2007/07/19(木) 21:03:59 ID:8szTNwtq
「どうしてそうなったんだ?」

 うーむ。
 何と言うか、先輩怒ってるなー。
 正直、この人の怒りに触れるのは避けたい。
 何せ、暴漢を回し蹴り一発で倒したのを直接見てるからなー。
 その後泣きついて来たのは可愛かったけど、アスファルトに倒れた暴漢が死んで

やしないかと、そちらの方が気になってしょうがなかったなあの時は。
 たしか、首の骨にひびが入ってて過剰防衛になりかけてたし。
 ちっこいのにどっかで格闘技を習ってるらしく、やたらと攻撃力があるんだよね


 というわけで、正直に話しました。
 わが身が可愛いですから。
 いや、正直に話しても救われるとは限らないけど。

「そういうことか、それは災難だったな」

 おろ?
 どうやら、僕に同情してくれたらしいぞ?
 らっきー。
 助かったらしい。

「おっと、どうやらここまでのようだ。また明日会おう」
「はい、お気をつけてー」

 と言って、先輩が家に入ったのを確認してから歩き始める。

 あれ?

 明日はバイトシフト入ってなかったような?

 まあ、いっかー。


181 :あさひ:2007/07/24(火) 22:36:12 ID:8Ut0VJEv
 バイトの次の日の昼休み。
 男友達と昼飯を食った後に、クラスメイトから誰かが会いに来てると告げられた。
 ちなみに、彼女がいるのに友達と飯食ってたのは出来るだけ交際は伏せることにしているからだ。
 世間の風は冷たいからね。

 というわけで、会いに来ているのは彼女じゃないはず。
 会うときはメールくれるはずだし。
 なのに呼びに来た男子の目が冷たいのは何故だろう。

「あれ? 先輩?」

 会いにきたのは先輩だった。
 と言っても、君島先輩じゃなくてバイトの先輩。

「話があるちょっとついてきてくれ」

 腕を組んで仁王立ちしている先輩は何と言うか、気合が入ってる。
 空気もピリピリしている気がする。

「何だ? どうした?」

 ボーっとしている僕に先輩は不審そうに再び声を掛ける。

「先輩この学校だったんだ……」

 色々意外だった僕はそんな間抜けな声しか出せなかった。

182 :あさひ:2007/07/24(火) 22:37:20 ID:8Ut0VJEv

   ***

 しかし、先輩については色々と意外な事実が判明してびっくりした。

 僕がバイトを始めたのは高校に入ってすぐの事だった。
 その時点で先輩はベテランのように仕事をこなしており、指導も先輩から受けたのだ。
 それで年下だとは……。
 しかし、先輩の制服にはしっかりと一年生の証であるカラーが彩られている。
 確かに体は小さいが、一年と仮定した所で小さい事には変わりないのだから、そこから年齢を推測することは難しいと言わざるおえない。
 第一、中学生以下の子供がバイトできるわけがないんだし。
 一年以上同じ職場で働いていてそんなことも知らなかったのは「女性に年齢の話をするものじゃないぞ……」と、しみじみと実感のこもった話をしてくれた父の教えを守っていたからだ。

 そんなことを考えているうちに、場所は屋上に到達した。
 学校によっては解放されて人がいるかもしれないが、うちはほとんど人がいない。
 今もいるのは先輩と僕の二人だけだったりする。
「さてついたぞ」
「先輩のスカートはじめて見ましたけど、可愛いですねー」
 先を歩いていた先輩が振り返ると同時にカウンターの一撃。
「な、何を言ってるんだ君はっ!」
 先輩は赤くなって廻し蹴り。
 あぶねぇ。
 冗談ひとつで死ぬ所だった。
 スパッツか……。
 ちっ。
「いや、いつもスカート穿かないじゃないですか。だから、思わず褒めちゃいました」
「世辞はいい。本題に入ろう」
 その本題に危険を感じたから何とか誤魔化そうとしたんだが……。
 まあ、いい。
 何とかな……、ならないだろうなー。
「何でしょう?」
 出来るだけ本心を悟られないように平静を装いつつ、話を促す。
 だが、それっきり、先輩は話を始めない。
 ちょっと俯き、心なしか顔を赤くし、言いかけては止めを繰り返している。
「先輩?」
 その様子を不審に感じたので声を掛けるが、どうやら聞こえていないらしい。
 うーん。
 どうしたもんだろう?
「よし!」
 対応に困っていると、ようやく腹が決まったのか気合を入れる先輩。
 何と言うか、本能が逃走を促しているが逃げられるとも思えん。
「三人と付き合っていると言ったな?」
 ああ、やっぱりその話か。
 突き出した拳が怖いです先輩。
 声を出すのもはばかられる雰囲気になってきたので頷く僕。
「なら……」
 なら?



183 :あさひ:2007/07/24(火) 22:38:05 ID:8Ut0VJEv
「ボクと付き合え!」


 は?

 すみません先輩。
 話が飛びすぎていて訳が分かりません。
「三人と付き合うのは倫理的に問題がある」
 どうやら僕が理解して無いと分かったのか先輩は説明を始める。
「なら、その三人と別れてボクと付き合えばいい」
 だから何でそうなるのか。
「ボクならその三人が何かしてきても撃退できるだろう?」
 あー、そういうことですか。
 でも、先輩が撃退すると三人の命が危ないですから。

「で、返事を貰いたい」

 今すぐですか?
 だから、そのこぶしが怖いんですって。
 えー。この提案を呑むと修羅場になると思うのですが。
 というわけで断ろう。
 考えを纏めて、返事をするために息を詰めてこちらを窺っている先輩に向き直る。

 そこで。

 先輩が宙に浮いた。


184 :あさひ:2007/07/24(火) 22:38:47 ID:8Ut0VJEv
「えーー!?」
「な、なんだ!?」

 先輩も突然の事態に混乱している。
 先輩からは見えていないのだろうが、先輩の後ろに人がいる。

 長いストレートの黒髪。
 三年を示すカラーリングの制服。
 すらりと均整のとれた長身。
 日光に反射してキラリと光るめがね。

 君島先輩!

 って、先輩は被るな。
 部長と呼ぶことにしよう。
 そう、部長がいつの間にやら先輩の背後に周り。
 先輩の上半身をその両腕で拘束。
 一気に持ち上げ、自由を奪う。
 見事だ……。
 流石に握りつぶせるだけはある。
 何を、かは知らない。
 怖いから聞いてないので。

「やっぱりこういう展開になってたかー」
「へ?」

 後ろから声が聞こえてきたので振り返るとそこには谷川と遥がいた。
 部長といい、みんないつの間に……。

「いや、わたし教室にいたでしょ。
 で、二人にメールして遥の発案で君島先輩が実行。
 アーユーオーケー?」

 その英語はあってるのかどうか。
 クラスメイトだし、そりゃいるわな。
 それで動かない三人でもないし。
 なるほどなるほど。
 遥を見ると、にっこり笑ってる。
 恐ろしさを感じるのは何故?


185 :あさひ:2007/07/24(火) 22:40:28 ID:8Ut0VJEv
「放せ! 放さんか!」

 先輩が抵抗してるが、無駄っぽいな。
 先輩は体格が小さく非力な分をスピードと技術で補ってるから、こうなると手も足も出ないっぽい。

「で、おにいちゃん。どうするの?」
「へ? どうするって?」

 主語がないから遥が何を言ってるのか分からない。

「いや、そこの人が告白してきたんだから、その返事は?」

 あー、そのことか。

「いや、断るつもりだったけど?」

 その言葉を聞いた先輩がピタっと抵抗を止めてうなだれる。
 遥はやっぱりにっこりとしてるけど、さっきより怖い気がする。
 なぜだ。
 それと、そこ。部長と谷川は溜息をつかない。

「ふーん。お兄ちゃんが告白を断るんだー」
「へ? いや、提案を断るだけだぞ?」

 あれは告白とは違うだろ?
 だから笑顔が怖いって遥。

「そこの人? ちゃんと言わないと伝わらないみたいですよー?」

 最後に小さく「この鈍感には」と言う言葉が聞こえた気がするが、気のせいだと言うことにしておこう。

 そして、静寂が支配する。
 誰も何も言わない。
 次に発言すべき人物が誰なのかみんなが分かってる所為だろう。


186 :あさひ:2007/07/24(火) 22:41:11 ID:8Ut0VJEv
「彼は……」

 昼休みも残り僅かになった所で、その人物は言葉を紡ぎ始める。

「去年、暴漢に遭った時に助けに来てくれたんだ」

 何も出来ませんでしたけどね?

「怖くて何も出来なかったボクの代わりに警察とかに電話してくれて、最後まで傍にいてくれて」

 いやー。犯人が死んじゃうんじゃないかと必死でしたし。

「それからはバイトが終わるといつも家まで送ってくれるようになったし」

 店長にも頼まれたし。
 って、店長って、先輩のお母さんだったっけ。
 つまり先輩は家の手伝いで昔から店を手伝ってたから、あんなに仕事に慣れてたわけか。
 納得。

「あれからずっと、好きだったんだ!」

 そうか、好きだったのか。

 ……って、なにー!!

「それで今回の件に乗じて付き合おうとしたわけですね」

 珍しい部長の突っ込み。
 先輩は真っ赤になって俯いてしまった。
 なるほど。
 そういうことですか。

「で、おにいちゃん。どうするの?」

 遥がもう一度同じ質問をする。
 どうするって……。

 どうする?

 昼休み終了、五分前の鐘が鳴る中、僕が出した答えは……。



 こうしてバイト先の先輩、檜山 要ちゃんが僕の四人目の恋人になりました。
 いつかきっと刺されるな……。




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