【エロより】ハーレムな小説を書くスレ【幸せ】 8P

613 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/04/29(日) 00:06:25 ID:JRIER5m2
 ぎゅるるるるるん。
 真昼間の工事現場は土煙が舞いドリルの音が響く。
 筋肉質の男たちが黄色いヒヤリハットを頭に被って白いタンクトップをぬらしている。そして額に落ちる汗をぬぐおうともせず汗砂袋や鉄骨を担いで砂舞う砂利道を右へ左へ走っているのだ。
 毎日の資金をその足を稼いで生き続ける日雇い労働者の男たち。歳も40歳から60歳になるという者まで。
 しかし、皆が様々な現場から流れてきた肉体労働のプロばかりであった。
 そんな男たちの中。一人だけ、現場に似つかわしくないほどの中肉中背の小さな少年が混じっていた。
 肉体を磨き上げた男たちの間を縫って、自分の全てを力を込めて砂の沢山乗ったネコ車を押している。その腕はまだ細身でなかなか上手く運べていない。
 しかし、気力と真面目さだけは人一倍強いようで、なんど転んでも誰の邪魔にもならぬように起き上がり、現場を走る。
 ようやく砂を運び込むとすぐさまネコ車を押して引き返し、持ち場へ戻った後シャベルを使って砂を掘り出す。それをネコ車に乗せるとまた走り出した。
 朝から続くこの往復をこの少年は泣き言一つ言わず延々と続けているのである。
「おい、わけぇの! まだ入って日が浅いのによう頑張るのぅ!」
 鉄骨を髭面の男が少年を見て、豪快に笑って話しかける。
「ええっ、はい。この砂、あっちでいいんですね!?」
 少年も辛い現場に似合わない笑顔で返す。まるで働くのが楽しくてしょうがないといった振る舞いに髭面の男は好感を持って、また笑う。
「おう、持ってってくれっちゃ! それが終わったら休憩とっていいけぇ!」
「はいっ。ありがとうございますっ!!」
 この少年が現場に入って2週間。
 給料の高さに釣られてここに来る学生は数多いが、皆あまりのキツさに2日で逃げていくものが多い。
 そんな中この少年だけは、文句も泣き言も言わず、2週間も朝から夕方まで現場を全力で走り回っているのであった。
 当初は、すぐやめていく若者に悪感を持っていた現場の古株たちから、偏見の目で見られていた少年だったが、
 さすがに一週間も続くとなると、感情も変わってくる。今では少年の健気で真面目な姿に皆好感を抱き、少年は現場のアイドルとなっていた。

 休憩を取っている少年に先ほどの髭面の男が近づいてきた。どうやらこの男も休憩らしい。
 やかんの蓋で麦茶をすすりながら、自分の息子ほどの少年にニカニカと笑いながら話しかける。
「しかし、お前ももう2週間か。お前みたいな若いやつが2週間も続くなんざ、ここに居る奴ら、だーれも思っちょらんかったわ」
「えへへ。そうですか?」
「どうだ、調子は?」
「まずまずです」
 少年はくすぐったそうに体を捩じらせて笑う。その手にある可愛らしい弁当箱の包みを髭面の男が見つけた。
「それにしてもいつもいつもかわいらしい弁当をもってくるのぉ」
「はい。いつも作ってくれるんです」
「コレか?」
 小指を立てる男に少年は恥ずかしそうに顔を赤らめて頷いた。
「はははっ。ええのうええのう」
 そう言って男は少年のすぐ隣に腰を下ろす。男が持っている包みを開けると赤ん坊の頭ほどもあるまん丸のお握りが三つも並んでいた。
「いつもいつも、このお弁当を食べているときが幸せなんです」
「そうかそうか。お前、若いのによくしっかりしとるわ。多分、その弁当のおかげなんやろうな。お前が泣き言も言わず現場で走れるのは」
「はい。これ食べてると疲れも吹っ飛んで頑張ろうって思うんです」
 少年は自分の弁当箱に視線を落とした。シャケの切り身と三色で分けられたふりかけごはん。
そして、醤油味・塩味・砂糖味の三種類の卵焼き。卵焼きだけで三種類もあるのである。
「いやぁ〜。若い! いいなぁ若さっちゅーもんは! それにお前は男や! さぞかし、お前に愛されとる女は幸せなんじゃろうなぁ」
「えへへっ、だといいですけど」
「お前もそいつのことめっちゃ好きやろ?」
 少年は自信なさげに笑っていた。しかし、男の単刀直入な質問、「そいつのことを愛しているか?」という質問には間髪入れずにすぐに本心から答えた。
「ええ、全員大好きですっ!」
「……ん、全員…?」
「はい?」


614 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/04/29(日) 00:09:05 ID:CNLpWhIZ
 少年の名前は西村隆という名前であった。

 日も沈み始め、夕闇があたりを包み始めたごろ。
「よーし、今日の仕事は終わりだ。さっさと帰れ」
 ようやく、隆は辛い労働から解放された。
 手には日当であるくしゃくしゃの千円札の束が数枚。泥が付いている。大事に持っておかないと。
「ありがとうございますっ」
「明日も早いからゆっくり休めよ!」
 親方から豪快に背中を叩かれて、隆はととととバランスを崩しながら現場を出てゆく。まだまだ夜の仕事があるのだろう。入れ替わりに筋肉質な男たちが作業着を着て、現場へ入っていく。
 ふぅ。現場から離れ、歩く少年。現場ではずっと走りこんでいた足だったが、疲れていないわけではなかった。というよりもうすでにボロボロである。
 歩くごとにRPGの毒の沼のごとく体力が削られ、足の痛みがぎしりぎしりと脳へうずく。ふらりふらりとまっすぐに歩けず、壁に手をやり一歩一歩苦しげに進む。
「……うぎぃ。この痛みはやっぱり慣れない……」
 現場では泣き言は言わない。しかし、それは現場の中だけで一人になれば体や言葉は正直であった。
 足の関節がカタカタを音を立てている。腰もなんだか大事なネジが数本ぐらいはずれてそうだ。体重が数割増しで重くなった? いや、重力がつよくなった?
 意識も遠く気が付けば、地面の石ころに足をかけてしまい、つんのめるように転びそうになったところで。
「タカシっ。あぶねぇぞっ」
 ぼふり。
 背中から体を抱かれ、体の反転が止められた。
 はっと気が付くと、白い綺麗な腕ががっしりと自分のわきの下に手を回されて掴まれているのが見える。この腕に支えられて落下を阻止されたようだ。
「タカシっ。おつかれだな」
 ハスキーボイスで声をかけられて、隆はふりかえってにへらと力無く笑う。ここでの力無くは揶揄ではない。
 隆の腕を掴んで支えていたのは、オレンジのシャツにGパンというラフな出で立ちの美女だった。ショートカットに切られた髪で目元をきりりと釣りあがっていて活動的な印象を受ける。
 むにゅりと柔らかな感触が隆の後頭部を触る。美女は隆の笑顔にむかってにぃっと白い歯を見せた。
「なっちゃんこそ、おつかれ」
「おうっ、おつかれ」
 なっちゃんと呼ばれた美女はぐりぐりと胸を押し付けるようにして隆を可愛がる。
 美女の名前は花火夏江。隆からはなっちゃんと呼ばれていた。少なくとも二人は5歳ほども年齢が違うが、ふたりのお互いへの言葉遣いはとてもフランクであった。
 なっちゃんは隆を掴んでいた腕を離す。隆をきちんと自立して立たせると、今度は隆の肩の上へ腕を回し首にするりと抱いた。
 彼女の身長は隆より一回りも大きく、彼女が隆に抱きつくとこのように胸元に隆の頭がきてしまうのだ。つまり、二人でキスする場合は隆は上を向かなければならず、なっちゃんはすこしかがまなければいけないのである。
 そんな感じなので、この状態ではちょうど隆の後頭部に夏江が自分の胸をおしつけた形となっているのである。
 ちなみに夏江の胸はそれなりに豊満で、隆は後頭部にモロにふにゅりと押し上げるような柔らかい感触を受けてしまう。
 少し前の隆なら、ここで真っ赤になって離れてしまうのだが、もうイロイロ慣れたのとそんな抵抗する力が残って無いので。
隆はそのまま柔らかなクッションに頭を埋めたまま、美女と帰り道を歩くのであった。
 人通りは少ないので誰の目も気にせず密着したまま歩く。二人でどちらもお互いの柔らかさを楽しみながら歩く。
「そういえば、なっちゃん。今日は早いんだね」
「いやぁー、それがな。レジ打ち。クビになったわ」
「またぁ? ランちゃんに怒られるよ」
「だって、あの店の店長あたしのケツ触ってきやがってさ。これでも二回ガマンしたんだよ? 調子に乗って三回目をやってきたときキレちゃって……」
「かかと落とし?」
「いや、大雪山おろし」
「できるのっ!?」

615 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/04/29(日) 00:09:36 ID:CNLpWhIZ
 思わず足を止めてしまい、おっとっとと後ろで抱きついたまま歩いていた夏江の胸が後頭部に一段と押し付けられる。
「あっはっは。で、ボコボコにしちゃったら、何も知らない副店長が来てクビって言われてさ。あたしこんな所二度と来るかぁー!って叫んで帰っちゃった」
 多分、その店長もボコボコにしちゃったんだろうなぁ……と思いつつ、隆はまた歩き始めた。同じく夏江も隆に合わせて歩き始める。
「まったく。夫持ちをセクハラするとはなんてヤツだろうねぇ。訴えてやればいくらかお金が入ってくるかしら?」
「訴えるのにもお金が居るんだよ」
「え、そうなのか。じゃあやめた」
「ところで……なっちゃん」
「なぁに。隆ぃ?」
「一応二日間は働いたんだからその分のお給料は?」
 今度は夏江が足を止める番だった。
「……………そういえば、一週間の現金渡しだったわ。あそこのバイト。給料もらいそこねちゃった……」
「………またかぁ」
 夏江はバイトをするが、持ち前の短気さや女なのに男以上の男らしさが障害となり、誰もが羨むような美貌でもすぐに手を出す投げる毒づくモノ壊す等の行動によって、ほとんど三日ほどでクビになってしまうのである。
 そして、ほとんどが給料をもらい損ねてしまうのだ。
「ありゃりゃ。うーん。またタカシに迷惑かける形になっちゃったね」
「別にいいよ。本当ならボクがみんなを養える分だけ稼がなきゃいけないんだから」
 夫として、と隆は続けた。
 夫。そう、隆はこの美女の夫なのである。戸籍上は違うが、二人の関係は夫婦といっても過言ではないほど強い。それがあるからこそ、二人はお互いを妻・夫と言い合っているのである。
 まぁ、隆の場合、妻と言い合う相手はあと二人いるわけだが……。
 しかし、夫として妻を養おうと決意を込めて言う隆を夏江は、肩に回した腕をぎゅっと抱いて優しげに耳元でささやきかけた。
「無理するなって。あんたが体を壊したらどうしようもないんだから」
「……うん。わかってるよ」
「蘭は家の事で精一杯だし、るるはあんなんだし……。あたしもタカシを楽にしてあげたいのよ」
「……ありがとう、なっちゃん」
「その言葉を家で待っている蘭とるるにも言ってあげてね」
「うん」
 鉄橋を渡って、公園を通り過ぎて、歩いて歩いて。
夜の闇が辺りを覆い始め街頭の電気が白く光り始めた頃。
二人の目の前に見えてきたのは今にも崩れそうな木造二階建てのアパートだった。表札には何十年も前に掘られたと思われる『くじけ荘』との文字が。
 六畳一間風呂なしトイレ共同の格安中の格安物件。不動産でも「こんなところ客に案内したら『てめぇふざけてんのか』とマジギレされるわっ!」と言ってしまうほどのボロ屋敷。
 入っている住人も倉庫として使っていたりとおおよそ人が住めるような場所ではない。
 しかし、これが隆と妻の夏江。そして同じく妻の蘭とるるの四人が、一つ屋根の下、夫婦生活をしている愛の巣なのであった。

678 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/02(水) 00:19:28 ID:nJzpkkUe
 日当たりの悪いボロボロの狭くて暗い廊下を歩いて、二人は奥の自分たちの部屋へ歩く。横に並べるほど廊下は広くないので、縦に並んで歩いている。
 夏江と隆の体はもう離れていた。
 各部屋各部屋、ほとんどの部屋が倉庫として使われているので人の気配はまったく無い。まさに幽霊アパートだ。
唯一奥にある隆の部屋とその向かい隣にある隣人の部屋だけが、ドアの隙間から明かりを漏らしていた。
「あ、珍しい。五十嵐さんが来てる」
 向かい隣の部屋の住人は御回利光という、イラストレーターだ。普段はここからかなり離れたところにある高級マンションにオフィスを構えているが、締め切り直前となると何故か度々ここへ逃げ込んでくるのである。
「本当だわ。また締め切りに追われてるんでしょうね」
「どうする? 久しぶりだし挨拶しとこっか?」
「別にいいでしょ。目に蜘蛛を飼ってる状態で用も無くお邪魔されたら向こうもこっちも迷惑じゃない」
「そうだね」
 それに、あんまり話したこと無いしなぁ。美人な人だったけど。
とりあえず、隆は心の中で「がんばれ」と応援していおいた。
 そうして、二人はもう一つの光を漏らす部屋の前へやってくる。部屋のドアには同居人である妻の達筆な字で「愛の巣」と書かれてあったかまぼこの板がセロハンテープで貼り付けてあった。
「なんか、BARの店名みたいだね……」
「あいつ、また勝手にこんなもん書きやがって……」
 隆はまたかと頭を抑え、夏江は呆れて頭をポリポリと掻く。ちなみに一昨日は「蜜月空間」だった。どういう意味だ。
 二人は顔を見合わせため息をつくと、自分たちの部屋の戸(引き戸)に手をかけて、がらりと開けた。
「おかえりなさいませ。隆様」
 開けた途端、とても綺麗で艶やかな声が足元から響いた。
 視線を落とすと、白の割烹着姿の女性が三つ指を付いて二人の目の前にひざまずいていた。男としては最上級の位に入る出迎えである。
 女性がゆっくりと顔を上げる。さらりさらりと流れる絹のような黒髪を割るようにして超絶な美貌を持った白い顔が二人を見上げた。
 まるで人形のように整った顔立ちに優しげで母性を感じさせるぱっちりとした瞳。ピンク色の唇は厚く、ぽってりとした口元が彼女の艶やかさを際立てていた。
 彼女の名前は水車蘭。隆の同居人であり妻だ。
「ただいま。蘭」
「今日もお勤めご苦労様でした。妻であるわたくし蘭は隆様のお帰りを心よりお待ちしてました。隆様も本日は私のために身を粉にして働いてらっしゃってお疲れでしょう、わたくしが精一杯癒させていただきます」
「う、うん」
「それでは隆様。ご飯にしますか? 湯浴みにしますか? それとも……わ・た・し?」
「それよりも、蘭。アンタ、また部屋の戸にこんなん付けたわね」
 ひざまずく蘭に夏江が戸に貼ってあった『愛の巣』(かまぼこの板)を剥がして、眼前を見せ付ける。
「あら。夏江さんもおかえりなさい。今日はお早いですね」
「うん。帰ったわよ。で、コレ」
 蘭は『愛の巣』(かまぼこの板)を受け取とると、くるくると360度回転させて全ての方向から板を見定めて……
「これが何か?」
「毎度毎度変なもの貼るんじゃないのっ!」
「ですけど。私たちにとってはこの六畳一間はまさに愛の巣ではないですか」
「それはあってるけど、貼る理由がわかんないわよ!」
「ええ、でもやはり表札というものはアパートの入り口だけではなく部屋自体にも付けるべきですし……」
「だぁーかぁーらぁー!」
 脳の回転が遅いのか蘭は夏江の言っていることが割りと理解できずポケポケと妙な会話のボールを投げ返す。そんな蘭に夏江は心底呆れたように一から説明していく。
 ちなみにこの説明は二日前もやっていた。
 二人ががみがみと話しているうちに、隆は蘭の間をすり抜けて部屋へ入る。
ボロい六畳一間の畳張りの部屋は、天井にある小さな蛍光灯のみの光で照らされていた。部屋にあるものは昭和の香りが漂う小さな丸いちゃぶ台と、四段タンス。押入れのふすまはところどころが剥げていて、表面に書かれた日本画が黄ばんでしまっている。
すぐ横の備え付けの簡易キッチンには少しヒビが入った炊飯器と冷蔵庫、大きな木のタライ、そして蘭が先ほどまで料理をしていたであろう熱せられたフライパンが蓋をされて、火の無いコンロにかけられていた。
奥にはテレビが斜めに置かれていた。ゴミ捨て場で拾ってきた14インチのボロいテレビでチャンネルが3つしかかからない(NHK総合・NHK教育・TBS)シロモノである。もちろんリモコンはなし。

679 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/02(水) 00:20:13 ID:nJzpkkUe
そんなわびしい部屋の奥の隅っこに少女が一人、がちゃがちゃと静かにプレステ2のコントローラーを動かしていた。
画面では体中に赤い刺青をした白いムキムキの筋肉男が鎖の付いた剣を両手に持って異形の敵をぎったんばったんぶちのめしている。いま、ゴルゴンの頭を掴んでねじ切った。画面が謎の液体で赤く染まる。
 コンボを決めたり、相手を掴んだりとかなりアクション製の高い難しいゲームを無表情でプレイしているのが。この部屋の同居人であり隆の妻の交通るるであった
「るる。ただいま」
「………」
るるは隆を一瞥すると、すぐに視線をゲームに戻した。またもや画面の中で殺戮が繰り返される。
 黒に青を混ぜたような色をしたグレーの髪の毛でふわりふわりと風で舞ったようにくるりんとクセ毛(アホ毛?)が上へ伸びている。隆より一切年下で、体つきもまだ幼さが抜けていない。
 容姿端麗でクールな横顔は、貴族のやり手お嬢様のようにきりりと引き締まっている。
「あ」
 そんな彼女が、操作していたゲームキャラクターが壁や地面から飛び出してきた針に突かれて絶命した。画面に赤い字でDEADと出てくる。
 彼女は無言でプレステ2の電源を切った。
「おわり?」
「うん」
 コントローラーを外しぐるぐる巻く。コード類も引き抜いて、ゲーム機を邪魔にならないところへ置く。
 そして全てを片付けると、
「おかえりぃ」
 ようやく隆を出迎える言葉を放つと、先ほどとはうって変わった笑顔で頬をピンク色に染めてるるは隆に正面から抱きついた。
 腕を広げて、隆の胸に自分の小さな体を預けるように体をぶつける。隆の背中に腕を回すと、そのまま隆の胸に自分の顔をまるでネコのように摺り寄せる。
「るる。僕、汗臭いよ?」
 さすがに、タンクトップが吸収した汗は乾いているが、今日一日ずっと隆の肌に張り付いてたものである。臭いは相当なものだ。
 しかしるるは、顔を押し付けたままふるふると首を振る。
「いい。隆の香りだもん」
 それだけ呟くと、るるはさらにぐいぐいと顔を押し付けた。くすぐったい感触。ボディランゲージは口下手で普段感情を表に出さないるるの愛情表現だ。
 蘭のような媚びるような口調や仕草ができないと自覚しているので、こうやって抱きついたりはぐはぐしたりぐいぐいしたりと動物のような愛の示しかたしかしないのである。
 それを知っているからこそ、隆は顔を押し付けるるるの頭に優しく手を這わせて、可愛がるように撫でてあげる。
「ん〜……♪」
 隆の手のひらがるるのつむじを撫でる度にるるは気持ちよさそうに、くぐもった声をあげていた。本当にネコである。
「ああっ。るるっ。なに抜け駆けしているのですか!」
 そんな抱き合う二人に、先ほどまで夏江と云々はなしていた蘭が気付いた。
 玄関で正座していた足を崩して、立ち上がるととてとてと玄関から部屋へ入ってくる。後ろからかまぼこの板を持った夏江も続いた。
「隆様はおつかれなのですっ。お離れくださいっ。ただでさえ私だって隆様とべたべたしたいのを我慢してご奉仕していますのに……」
 蘭は顔を赤く染めてるるに責めるように言うが、るるはあっちの方向を向いてそのまま隆の胸に収まったまま離れようとしなかった。
「るる! ほら、夏江さんも何か言ってください」
「いいじゃない。いつものことなんだし」
 蘭は困った顔で夏江に加勢するように話を降るが、帰ってくるまでの間ですでに隆分を十分に補充していた夏江はひらひらと手を振って、ちゃぶ台の前に座る。
 座ったな杖はううんと大きく背伸びをした。背筋と共にシャツも伸びて、彼女のフロントにあるつんと張った胸が強調されて浮き出る。
「それにアンタはいつも隆の体を洗ってるじゃない」
「そ、そうですけどっ」
 さらに夏江にそう続けられて、蘭が顔を赤くして納得いかないと言った風もごりもごりと口を閉じてしまった。
「べー……」
 隆の胸に顔をうずめるるるが蘭に見えないように小さく舌を出した。隆はそれを見て咎めるようにぺしりと軽くるるのおでこを叩く。むぅとるるはむずがゆいように呻いて、恨めしそうに隆を見つめた。

680 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/02(水) 00:20:56 ID:nJzpkkUe
 その視線から逃れるように隆は顔を上げると、キッチンにあるフライパンが目についた。そういえば、さっきから胃がぎゅるりと音を立てている。
「それよりも、蘭。ご飯にしようよ。おなか空いちゃったし」
「え? あ、はいっ」
 隆に言われて、蘭は慌てて立ち上がると、キッチンへと音も立てずに急いだ。

 今日もらった給料を、蘭が生活費として管理しているお札も入る猫型の貯金箱に差し込む。
 蘭は隆と夏江、そしてるる。三人の共同生活での掃除洗濯炊事などなどの家事全てをまかなっていた。
 この家では蘭が大蔵省であり、この猫型の貯金箱が隆たちの全財産なのである。これを触って良いのは家主である隆と蘭だけであった。
「今日のご飯はニラ玉ですー」
「ニラ玉ってなにさ?」
「カニ玉のカニをニラにした料理です。今日はニラが安かったのでぇ♪」
「ふーん……」
 蘭が大きな皿に盛られた料理をちゃぶ台の中央に置いた。まんまるの黄色い月のような玉子に刻んだニラが散らされている。
ちゃぶ台の上には全員分の箸と茶碗が東西南北四方に置かれていた。茶碗は100円ショップで並んでいるような小さな安物で、箸なんと何度も洗って繰り返し使われている割り箸である。
 そしてさらにこの家では全員の個別のお皿というものは無い。
 全員が真ん中に置かれた一つのお皿を全員で取り合う方式なのだ。だいいち全員分のお皿なんて置くスペースはこのちゃぶ台には無い。
 狭さと経済的事情を考えるとこの食事の形が最適なのである。なので隆たちの夕食は全員揃ってから食べるのが定例なのだ。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
 家主の声で全員が手を合わせて、合掌。北を隆として右回りに夏江、蘭、るると囲む。
「さぁ、食べよう」
 全員で真ん中のおかずを箸でつっついて食べる。薄暗い明かりの中でおかずはコレと沢庵のみというわびしい食事だ。
「もぐもぐっ、やっぱり蘭の料理は旨いっ」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「るる、あんた何も役に立ってないんだから料理ぐらい蘭に教わりなさいよ」
「……夏江だって役に立ってないよ」
「なによ。あたしはいつもバイトしてるじゃないっ。どこが役に立ってないのよ!」
「給料もらう前にクビになっちゃうじゃん……」
「くっ、何もしないアンタよりかはマシでしょ!!」
「なっちゃん。落ち着いて」
 夏江が思わず立ち上がりそうになったところを、隆がぽんぽんと肩を叩いて抑える。それだけで、夏江は立てた膝を落としてあぐらをかいて座る。
「夏江さん、るるさん。わたしたちは今のところ隆様一人で支えてもらっているのは事実ですから、どちらも喧嘩はやめましょう」
 蘭がポケポケと二人をたしなめる。この妻の中で年齢はちょうど真ん中なのだが、彼女が一番冷静である。というかこのなかのお母さん役をあえてかっているといったほうがいいかもしれない。
 ぱくりと、玉子をご飯に載せて食べていると、ふと横から箸が伸びてきた。
 もぐもぐと咀嚼をしながら横を向くと、るるが自らの割り箸に沢庵を挟んでくいとこちらに向けている。
「なぁに?」
「ん」
 るるはそれだけ言うと、主張を押し切るようにまたぐいとたくあんを押し付けた。口元に触れる。
「ん、ん」
「あーん?」
「ん、ん」
 こくこく。
「はい、あーん」
 ぱくり。
「ん」
 るるは満足そうに頷くと、自分の位置まで戻っていった。



681 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/02(水) 00:21:31 ID:nJzpkkUe
「あ、ずるっ」
 それを見て対抗心を燃やすのは夏江である。
「ほらほら、あたしもっ。タカシっ」
 夏江は乗り出すようにして、四つんばいにタカシのほうへ向くと、自分の割り箸を隆に向けて突き出した。
「タカシ。あたしもあーんっ」
「う、うんっ」
 隆が口をあける。しかし、ただ口をあけただけでは夏江は入れてくれない。
「あーんって言って」
「あーん」
 どうやら、夏江は隆が口を開けてあーんと言ってくれることが嬉しいようだ。雛鳥に餌を上げている親鳥の気分みたいなものだろうか。
「もう、可愛いっ」
 夏江は珍しく少女のような声ではしゃぐと、隆の口に箸を運んだ。
 そしてその様子を見ていたのが、隆の正面に座っている割烹着姿の蘭である。もぐもぐと二人にあーんされたモノを咀嚼している隆をじっと見つめている。
 その視線に隆が気付くと、蘭はもじもじといったふうに顔を俯かせた。
「どうしたの? 蘭」
「あ、あの……」
 隆が声をかけると、上目遣いに隆を見つめてもごもごと口ごもる。その可愛い視線にどきりとする。いつも母性を感じさせてくれる顔が少し赤い。
「皆さんがやるんでしたら……、わたしも……」
 どうやら、蘭は二人が隆にやった「あーん」がやりたいようだった。
 しかし、いつも淑女として振舞っている蘭にはすこし抵抗があるみたいで、なにかと恥ずかしがっている。そのわりには部屋に「愛の巣」とかけたりしていたが。
「はしたない女と思わないでいただけますか?」
「え、えっと」
「やりたいならやればいいじゃない。アンタも」
 夏江が珍しく援護する。自分はすでに「あーん」をやったのでもう満足らしい。
「隆様……」
「ねぇ、蘭」
「え、はい?」
「蘭の方にあるニラ玉が食べたいな」
 隆の隣でるるがナイスと親指を立てた。
「は、はいっ。じゃあ私が蘭様に食べさせて差し上げます!」
 蘭の目が歓喜にきらりと光った。うれしそうに頬を緩ませて、蘭は食事中だというのに立ち上がる。
 そして、蘭は自分のほうのニラ玉をを摘まみじゅるりと口へ含んだ。十分に咀嚼しねばりねばりと玉子が唾液と混ざって甘くなってきたところで、四つんばいのまま這い、隆の隣までやってくると、
「では、口移しで……」
「「待て!!」」
 夏江と隆の二人に止められ、るるにスリッパではたかれてしまった。

715 :赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/05(土) 00:55:32 ID:8Gys2SP3


 さて、食事も終わると隆は風呂に入る。
 いくら十代のズボラさを持っていたとしても、あんなに汗をかいた状態で風呂にも入らず眠るということを隆は容認できない。健康にも衛生にも悪いしね。
 が、ここは風呂無しのアパート。風呂桶なんてものは存在しなかった。
「隆様。お背中をお流しします。こちらへどうぞ」
 銭湯はここから歩いて数分のところにいくつもあるが、近頃の銭湯は一人入浴するだけでも隆の家の夕食分ほどの値段がかかる。
 いまのところ、この家族は隆の肉体労働の給料でしか収入が無いので、この銭湯一回だけでもかなりの財政を圧迫してしまうのである。
 さすがに、女の子三人は一日でも風呂に入らないなんてことは承知できないので、彼女たちは隆は銭湯へ向かわせていた。
 そして、対する自分はコレである。
「うん」
 隆は服を脱いで下着も脱いでバスタオル一枚になると、玄関のドアの前に置かれた大きなタライへ向かった。タオル一枚のままの隆をるるがじっと見ていたが隆は何も言わなかった。
 このタライは直系一メートルほどの大きなタライで、この洗濯機も無い家では、蘭による昔ながらの洗濯板を使った洗濯で大活躍している。
 そして、このタライこそが隆の風呂なのだ。
 というより、湯浴み、である。
 ぬるめのお湯が張ったタライに足を入れて、ゆっくりと座る。ちゃぷるという水音が気持ちいい。さすがに肩や腰まで湯に浸かることはできないが、目いっぱい疲れた後のこのリラックスした湯浴みは隆にとっては格別だった。
「では隆様、お体を洗わせていただきます」
 すぐ横で割烹着を腕まくりした蘭がひざまずいて、タオル片手にこちらに向いて笑いかける。
「ああ、頼むよ」
 隆がそう返すと、蘭は失礼しますと言って、隆の背中を優しく濡れたタオルを肌におしつけて拭き始める。右へ左へ背中を流れる蘭を手。
 ごしごしっと力強く、時にはゆるやかに動く腕に隆は体を預けていた。
 隆の体を洗う役は蘭がほかの誰もを押し付けて自分でやると言った仕事だ。彼女はこの仕事が一番好きらしく、全員でご飯を食べ終えるとすぐに隆に「湯浴みは?」と聞いてくるのである。
 そんな蘭の様子が可愛くて、隆は好きだった。
 肩や首元をタオルが這い、背中全体全てを拭き洗われてゆく。
「隆様、次は前です。こちらを向いてください」
 蘭は自然な口調で言うが、隆はさすがに恥ずかしくなって止める。
「いいよ、前は自分でやるから。タオル頂戴」
「……むぅ、わかりました」
 不満げだったが、蘭はこの妻たちの中でも妙に素直なのである。口答えせずに隆にタオルを渡してくれた。
 しかし、自分でごしごしと洗っているとじぃっと蘭の視線がこちらへ向いていることがなんとなくわかる。
「ら、蘭……なんで見てるの?」
「もし、どこかおかゆいところあればおかきいたしますが……」
 振り向いてみると、両手をわきわきと動かしている蘭が、頬を少しピンクに染めて呟く。なんとなく手持ち無沙汰のようだったので隆はなにかしてもらえないかと考える。
「それじゃあさ。疲れてるから……肩、揉んでくれないかな?」
 そう頼むと、
「は、はいっ!」
 蘭は瞳を目いっぱい輝かせて返事をした。隆の肩を細い指で優しく包むと、独特の指使いで刺激をしてくれる。
 肉体労働でこりにこっていた肩が凍らせたゼリーが口の中でとろけるように柔らかくなっていく。ふにりふにりと気持ちよさに湯の中で隆は眠たくなってきた。
 しかし隆をそう簡単にこの娘たちが寝させてくれるわけは無い。蘭の後ろから夏江がニヤニヤしながらやってきた。
「ターカシッ、そんなところで寝るんじゃないわよ」
 そういわれて、隆ははっとなる。首だけ振り向くと、スウェット姿の夏江が一枚の紙を持って立っていた。隆を見下ろすように笑う。
「今日も?」
 隆がおずおずと聞くと、夏江と蘭はもちろんと言った風に頷いた。このくじはこの家では恒例であった。
 夏江が持っていた紙にはあみだくじが書かれてあった。三本の線が引かれてそこに右へ左への平行線が各所に埋められている。
 上は右からハートマークに囲まれた番号が振り分けられており、下のほうは折り目で何が書いてあるのか隠されている。

716 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/05(土) 00:56:18 ID:8Gys2SP3
「隆、どーれだ?」
 この折り目の裏には実は彼女たちの名前が書かれてある。夏江・蘭・るるの名前が並んでいるはずなのだ。
「……じゃあ。三番」
「おっけー」
 夏江が楽しげに笑うと、上から右へ左へじぐざぐと指を動かし始める。先ほどまで肩をもんでいた蘭も、肩にかけた手を止めて右へ左へ動く指をじっと視線で追っていた。
 気がつけば、部屋の中でドリームキャストのローラーブレードで町に落書きするゲームをプレイしていたるるも、傍によって来てじぃっと顔を出してくじを見つめている。
 ふんふんふん〜♪と進められる指がついに下まで届いた。
 ぺろりと夏江が紙をめくる。
 そこにはハートマークに包まれて『夏江』と書かれてあった。

「やったぁぁぁっ!!」
「あらら、やっぱり三日連続はナシですか……」
「……ふんっ」

 一喜一憂する女の子たち。
 夏江は飛び上がるほど喜び、蘭はしょんぼりと肩をすぼめる。るるは不機嫌そうに鼻を鳴らすと、ゲームの中のシブヤチョウへ戻っていった。
「えへへっ。隆っ。今日はあたしだからねっ!」
「う、うん」
 はしゃぎまわる夏江
 そう、このくじは三人娘たちによる『隆っ、今日は誰と相手するの?』の相手役決めくじなのであった。
「あたち、6日間おあずけ……」
 るるは恨めしそうに夏江を見る。
「順番にすると忘れるから、完全確率にしようって言い出したのはどこの誰だっけぇ?」
 しかし、夏江はくじを見せ付けるようにひらりひらりとさせると勝ち誇ったような顔でるるに笑う。
 その笑顔にるるはさらにぶすっとむくれて睨んだ。
 なんだか、二人の間に陰険な雰囲気が流れる。蘭は二人のにらみ合いを無視するかのように隆の背中だけを熱心に洗っている。
「え、えっと」
 ただでさえ湿っぽい部屋の中がさらに湿っぽくなってきたような気がする。そんな雰囲気を打破しようと隆は背中を流されている状態で口を開いた。
「あ、あ、明日はお休みだからさ。み、みんなででも大丈夫っ!!」
 ……もちろん明日は朝七時集合の現場出勤である。
 そのことは蘭もわかっていた。しかし、
「「「本当!!??」」」
 全員の声がハモった。
「え、あ……」
「明日はお休みなのですね!?」
「うっそ、早くそれ言ってよ」
「いちゃいちゃ……」
 夏江は興奮して鼻息を荒くし、蘭はぽわぽわぽわと頬を両手で押さえてうっとりと微笑み、るるはにんまりとした顔でくすくすと笑う。
 隆は今言ったことを激しく後悔した。



717 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/05(土) 00:57:23 ID:8Gys2SP3


 湯浴みを済ませてトランクスとシャツだけの姿になれば、あとは眠るだけである。
 が、この家はいつも眠る前に大仕事があるのであった。しかも今日は大仕事中の大仕事である。
 六畳一間の床には白い布団がマットのように並べられて敷き詰められていた。布団は三つ枕は四つ。さすがに布団一つで枕四つの展開も考えていたのだがさすがに狭すぎるのでコレで勘弁してもらいたい。
 隆がふにゃりと足を崩して布団の中央に座り込む。
 そこへ、三人の美女が囲んだ。
「えへへへへっ。一応くじではあたしだったんだから最初はあたしだもんね」
 夏江はピンク色のタンクトップとホットパンツ姿で隆の右腕に抱きついた。夜のときにしか使えないようなレース状の下着は金欠のため買えない。そのせいで彼女の下着はいつでも色気の無い灰色である。
しかし、それでも艶やかに見えるのは天性の美貌と彼女の持つ肌の麗しさかもしれない。そしてそれを癖無くアピールすることも無くにっかりと明るく天真爛漫に笑う彼女はそれだけで魅力的だった。
「隆様、不束者ですが今晩もよろしくお願いします…」
 蘭が優雅な動作でにじり寄ると、三つ指をついて一礼をする。彼女は薄く柔らかい布一枚に包まれていた。俗に言う襦袢というヤツである。派手な赤い布に包まれた胸元から見える白い谷間がぷるるんと揺れる。この襦袢は一張羅であったりする。
 その大きな胸はブラの支えを受けず、重力によって下を向いている。ロケット型というのであろうか、楕円にみえる球体が遊ぶように弾んでいた。
 そのまま蘭は隆の右腕へ、自らの肢体を伝えるように体をくっつけた。
「ん」
 るる。彼女はその一言で十分だった。右と左、両腕をすでに取られているため、彼女は正面から隆に抱きつく。蘭のような優雅な動作も、夏江のようなリップサービスも、情緒もへったくれもない。
 しかし、それだからこそ、るるなのである。彼女はピンク色のネグリジェだったが、何か似合っていなかった。
 隆の体に二人分の体重が預けられ、そして正面からるるの小さな矮躯が押さつけられる。
 仕事で酷使した両足が痛いが……、全員に愛され抱かれている、この幸福感が疲れと体中の痛みを癒してくれている……と思いたい。
 三人の重さで右へ左へ隆の体は揺れて、最後には背中からどさりと倒れこんだ。それにつられて三人もどさりと布団に横になる。
「えへへ、じゃあ今日も頑張ろうね」
 夏江の言葉を合図に、蘭とるるが動き出した。
「ちゅぅ」
 右腕から伸びた夏江の腕が隆の頭を掴み抱くと、隆の唇に夏江の柔らかな唇が押し付けられた。唇の感覚にぷるんとした感触。
「むちゅるちゅる」
 そのままの勢いで、隆の口の中へ夏江の舌がもぐりこんだ。夏江の触手のように蠢く舌が口内を這う。 息継ぎも摺るときも唇は重なったまま。隆の歯や頬の内側がまるで歯ブラシのように夏江の舌でごしごしと磨かれていった。
「じゅるっじゅるっじゅる」
「う、ううん、うううん」
 右へ左へ。隆もそれに答えるように自らの舌を絡めさせる。二人で舌を重なり合わせ、交わらせ、そして今度は夏江の口の中へお互いの舌が移動する。夏江は誰かに見せ付けるように唾液の水温を響かせていた。
 それに伴い、隆も負けるかと音を立ててお互いを吸いあう。じわりじわりと口から伝えられる唾液の汁が二人の喉に溜まっていく。
 隆はそれをごきゅりと飲み込む。夏江の味。あまでんぷん。

718 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/05(土) 00:59:10 ID:8Gys2SP3
「えへへ、じゅるり、タカシの唾液、じゅる、おいしぃ」
 夏江はまるで美味しいジュースを飲んでいるかのようにごきゅごきゅと隆の唾液を飲んでいた。唇が結合された二人。舌同士も接吻をしているようだった。
 と、そこへ。
「ん、んっ」
 るるが、唇を重ねあう隆のすぐ脇から現れると、二人のキスしている結合部分に自分の唇を押し付けた。
「ん!」
「んじゅっ。じゅる、あらぁ、るるもぉ?」
「んっ!」
 夏江の言葉に肯定するように、るるも小さな唇から舌を出して二人の口元へもぐりこませた。トリプルキス。
 トライアングルのように三人の唾液が渡りあい、橋のように糸で繋げられる。じゅるりじゅるりという音がさらに重奏を加えて部屋の中へ響いていく。
 そんな二人を横目で見ながら、左腕を掴んでいた蘭がふふふ、と笑うと自分は隆の下半身へ移動する。襦袢の帯をするすると緩めて、白い絹のような肩をさらす。
そして、二人とのキスに夢中になっている隆のトランクスの前まで顔を近づけた。隆の下半身のアレはトランクス越しからくっきりと存在を主張して膨らんでいた。
「ふふふ。いま楽にしますわ」
 蘭は息を吹きかけるようにささやくと、繊細な指使いでトランクスを掴み、前割りから隆のアレを探った。
「うぉっ!」
 隆のアレに蘭の指が触れた瞬間。隆は刺激に声を漏らすが、
「じゅっるるるるる」
「べたべたべた……」
 二人との唾液交換ですぐに唇をふさがれる。
蘭の指が優しく慈しむように隆のアレの先端部分を摘まんだ。そしてそのまま、外へ引っ張られる。トランクスの間から隆のアレがびぃんと飛び出した。
 外気に晒されてたアレは先端がじんわりと潤んでいる。
「わぁ……いつ見ても、ご立派です」
 ぎんぎんと脈打つアレをすぐ眼前で目を輝かせながら蘭が嬉しげに声を上げた。
 自分のアレを眼前で見られ、さらに褒められるという状態になんともいえない羞恥が隆を襲ってくる。そのせいか隆のアレはさらなる膨張を見せた。
「じゅるり、じゅるり」
 キスする相手が二人居るため、下の様子はよく見えない。しかし蘭が自分のアレをまじまじと見ていることはなんとなく分かる。水音が三人の間でずっと響いていた。
「それでは隆様。私めのこのお口で隆様の……お、おちんぽぅをパクってさせていただきます」
 その言葉だけ、隆の耳に届いた。
 次の瞬間。

 パクっ。、

 下半身が温かい肉袋で包まれた。

729 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/06(日) 00:25:08 ID:Qwaw8qCJ


 蘭は隆の股の間に顔をつっこんで、間で自己主張しているアレを根本までくわえ込んでいた。
「もぶっ、もぶっ。ふふふふふふ」
 くわえ込んだアレをゆっくりと口元から抜いてゆくと、唾液にまぶされた隆のアレがねばぁりと出てくる。そして先端を見せずにまた深くまで押し込んでいった。
 口の中で蘭の蛞蝓のような舌が、隆の敏感な部分の穴を押し分けるようにほじくってくる。その刺激に隆の体は刺激にびくりとはねてしまう。それでも頭は二人に押さえ込まれたまま。
「ちゅるんっ。蘭さま、いきなりパクっは刺激が強すぎでしたか?」
 蘭は隆のアレから口を離した。蘭のぷっくりした口から怒張が顔を掠めるようにびゅんっと飛び出した。その勢いで先走りの汁と唾液がアレから飛び蘭の顔に少々かかる。
それをぬぐおうともせず、汁が垂れた顔で蘭は恍惚そうな表情をしたまま上目遣いで隆に聞く。
「ちょ、ま、んっ」
「んー、んー、んーっっ」
 いつのまにかるるが夏江の腕を振りほどいて、隆の唇を独占した。
「ちゅるちゅるちゅる。隆ぃ、すき、すき、しゅき、しゅき、しゅき!」
 うわ言に用に繰り返しなが小鳥が啄ばむような口付けを口、鼻、目、おでこに降らせる。
「ちょ、ちょっと。るる! まいっか。じゃああたしはこっち貰うわね」
 夏江が隆のシャツに手をかけた。くるりくるりと裾をまくっていき、隆のへそ、おなかを外気へ晒していった。そして首元までシャツを捲り上げると、小さな隆の乳首がふたつ。
 まるで鉱山に埋まっていた宝石を発見したように夏江は意地悪く笑むうと、先ほどまでキスしていた口で今度は隆の乳首を責めだした。
「い、いたいっ。ちょ、やめ、じゅる、じゅるる」
 夏江はいつのまにか全裸だった。そして隆の胸へ体をあわせ、片方の隆の乳首を口で、そしてもう片方の乳首を指でつまんだ。
「えへへ。やっぱり隆のココ、あたしすっげぇツボなのよ」
 頭はるる。上半身は夏江。下半身は蘭。三人が各場所で全力で愛をぶつけてくる。
「隆様、私のお胸。お楽しみくださいませ」
 襦袢が脱げて、メロンのような大きな胸を晒し、両手で上向きに支えた蘭が隆のアレの眼前で息を吹きかけた。
 そして、自分の豊満な胸で隆のアレを包み込む。
「んおっわっ。柔らかぃ……」
 突然下半身に覆われる安心感にも似た柔らかさ。
「んしょ、んしょ」
 しかし、その安心感はすぐさま快感へと変化する。蘭が隆のアレを挟んだ後、自分の胸をぐねりぐねりとこねくり回し、やわらかな自分の胸を通して隆のアレに快楽を与えようとする。
「わぅ、わぅっ、わぅぅ」
 左右から蘭が胸を押しつぶし、上下する。唾液で濡れて抵抗が少なくなっている隆のアレは簡単に肉の塊に抜かれ隆は腰が砕けそうになった。
 信じられないほどの圧迫でぎゅうぎゅうと締め付け、捏ね上げられる。根本から擦られ、アレの先端は大きな胸の谷間からひょっこり苦しそうに顔を出していた。
「隆様、いいですか? 気持ちいいですか? 私のお胸……」
「いいよぅ、いいよぅ、いいょうっ。う、じゅる、じゅるるるる」
 あまりの快感に声を上げる隆だったが、顔中をついばんでいたるるに唇をまたふさがれた。るるはムカっとしたような表情で唇を押し付けている。
 そんな隆の声を聴いて、対抗心を燃やすわけでもなくにんまりしたのは、乳首の周りを唾液でびしゃびしゃにしている夏江だった。
「ふーん。隆はいつもいつも蘭におっぱいでごしごしされるのが好きねぇ」
 彼女は乳首の周りで唾液を伸ばしていた舌をするすると下ろしていく。へそを挨拶するように通っていき、蘭の双球に挟まれてその口から涙を流している隆のアレの先端までやってきた。
「ふふふ。可愛い」


730 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/06(日) 00:26:41 ID:Qwaw8qCJ
 夏江はにっこりと笑うと、胸を動かしている蘭にアイコンタクトする。蘭もその視線の答えに頷くと、自らの胸を捏ねて胸の間から飛び出した先端をもっと晒す。
 蘭の白い谷間に埋まっている隆の赤黒いアレ。夏江はそこに顔を伸ばすと、真っ赤な舌を出して。
 ぺろり。
 むにゅぅ。
「うひぃぃっ」
 ぺろぺろぺろぺろ。
 びたんびたんびたんっ
「いいっ、ひぃいぃっ!」
 べたぁー。
 むにゅぅぅぅぅ。
 鈴口を舌でほじくるように押さえつけられ、竿部分は柔らかなマシュマロで摺られる。優しく柔らかで激しい刺激に下半身とびくりびくりと反応してどうしようもない。
 しかし彼女たちは愛撫を止めない。
 ふと、正面でキスの嵐を降らせていたるるが突然、接吻をやめる。
「……るるも…」
「え、ちょっとっ、るる!」
「あら、るるも来たの?」
「ふふふ。では皆さんでご奉仕しましょうか」
 ようやく口元が開放された隆だった。が、三人組の会話に何か不穏なものを感じ制止の言葉をかけようとした。
 しかし、それよりも早く三人娘は行動を開始していたのである。蘭が谷間から隆のアレを解放した瞬間である。
「あーんっ」
「しゃぶる…」
「れろれろれろ…」
 三人が一斉に隆の股間にそそりたつ肉のタワーにむしゃぶりついたのだ。

 じゅるりびじゅびじゅずぽずぽちゅるるるるっ!

 俗に言う、トリプルフェラチオである。
「んああっ ああぁぁああっ」
 夏江が先端の部分をくわえ込み、裏のスジの部分を舌先でちょんちょんと刺激させ、るるが竿の肉感部分を焼き鳥のように横から加え上下へ上下させる。そして蘭はアレのすぐ下に垂れ下がっていた隆のふぐりをすべて口の中へ納めこんだ。
「だ、だめだよっ。三人一斉ってっ。やめ、やめて、やめぇぇ!」
「だぁめ。今日はお祭りなんだからね」
 愛撫を開始した三人はもはや隆の命令なぞ聞く耳を持たない。
 夏江の舌と唇でぶっぽぶっぽと音をたてられるアレの先端部分は、もう隆の頭の中の感覚メーターをぐちゃぐちゃに狂わすほどの快感で、小さな鈴口から先走りの汁を放ちながらなんどもパクパクさせている。
「隆の生きてる音がするよ…。凄い……苦しそうに脈打ってる……びくんっびくんって」
 竿をシコシコシコと小さな口で刷り上げるるるが、どくんどくんと血液が流動する隆のアレを愛おしそうに頬ずりをした。
「もふふ。隆様のおちんぽぉ、ふっごく素敵でもふぅ……隆様のもふぅ、おたまたまの袋様から赤ちゃんの元を送り出しまふぅ……」
 ふぐりを口に含んだまま嬉しそうにしゃべる蘭の口の動きがすでに隆にとっては致死量の快楽であった。大きな袋のなかの精巣を蘭はコリコリと弄ぶ。
 隆が寝転んだまま下半身のほうを見てみても三人の頭で自分のアレがまったく確認できない。しかし、下半身から伝わる快感はこの世のものとは思えないほど濃厚で贅沢で快感だった。
「うううっ。や、やばいぃ。そ、そろそろ」
 先ほどからずっと限界だったが、我慢に我慢を重ねていた。彼にとってこの射精はとてつもなく貴重なものなのであった。
何故なら彼は毎日の激務(昼の)で体は常にボロボロなのだ。そんな彼が夜の生活でも若さに任せて働けるかといわれればNOである。しかし、それでも三人を満足させてあげなければ、夫として妻に申し訳が立たない。
 そのために、彼は体中の力を絞りに絞って毎日の受精を行っているのだ。彼は一晩で二回が限度だった。
 が、今彼はここでその貴重な一回を開放してしまいそうなのであった。
「やばいよ、やばいっ。そろそろ、出るから! 出るから! 出るからぁ!!」
 隆は「そろそろ出るから、ちゃんとしかるべきところに愛を注ぎあおう」という意味で叫んだつもりだった。
 が、しかし。明日は休みと聞いていて、すべての相手に平等に愛を注いでもらえると思い込んでいる三人は隆の意図をまったく汲み取らなかった。
 三人は口・舌をいっそう激しく動かして、隆のアレに射精を促す愛撫を音を立てて続けたのであった。

 ぶぱっぶぽっぶぱっ じゅこじゅこじゅこじゅこっ もぎゅもぎゅっもぎゅっもぎゅっ


731 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/06(日) 00:28:24 ID:Qwaw8qCJ
「いいよっ。出して! 出してよ! あたしたちに、タカシの白いのっ、頂戴ぃぃぃ!」
 先端を咥え込んで唇で空気の音を響かせながら抜き上げる夏江が叫ぶ。
「出す……!」
 唾液まみれの口を離し、自分の両手で隆のアレを掴み込みそのまま勢いよくハンドシェイクさせるるるが芯の通った声で言う。
「出すのですかぁ……? 隆様ぁ、おねがぃしますぅっ……はやくぅ、はやくぅ、隆様の、おちんぽぉから、白くて粘っこい幸せ赤ちゃんのもと、いっぱいいっぱい出してくださいませぇっ」
 蘭は普段の淑女ぷりから想像もできないほどの淫乱な言葉遣いで懇願すると、ふぐりから口から放し自分の手でわきわきとさせて、夏江とるるがむしゃぶりついているアレに、わくわくした顔を近づけた。
「だ、だめっ。みんなやめてぇ、みんなぁぁぁぁぁぁ」
「んーっ!」
 るるのシェイクハンドで隆の最後の堤防が崩された。
「でるぅぅぅぅっっ!」

 どびゅるっ! びゅびゅるっ びゅるびゅるっ びびゅる!

 隆のアレから白い液がまっすぐ上空へ噴き上がった。その量は一発目ということもあり大量だ。
「きゃぁっ」
「んーー〜〜〜っっ」
「わぁぁ、でましたぁぁ。隆様の幸せ赤ちゃんのもとぉぉ」
 むしゃぶりついていた全員が歓喜の声をあげた。その三人の美貌に落ちてきたゼリー状の粘っこい精液が均等に降り注ぐ。

 びちゃ、びちゃびちゃっ。

「あんっ、あんっ、あっついぃぃ」
 恍惚の表情で夏江は落ちてきた精液を顔面で受け止める。
「んっ」
るるも目をつぶって、隆の精液を静かに顔でびちゃりと受け止めた。
「ひゃぁぁ、あっついですぅ、白いの、白いの、隆様の赤ちゃんのもとぉ、ごきゅってさせてくださぁい、うんっんっんっごきゅ! う〜んっ」
 一人うるさかったのが蘭である。蘭は隆のアレから飛び出す前から口を半開きにしていて、口で受け止める気満々だったのだ。そのせいか落ちてきた精液を見事に口の中でキャッチする。
「ん、んぅぅ、出ちゃった……」

 どくっどくっ……。

 射精が止まり、独特のにおいが部屋に充満する。暗い部屋の中で隆の呼吸の音が静かに聞こえる。
「えへへ。いっぱいいっぱいかけられちゃった」
 夏江が顔中にかかった精液を指でとると、それをねばぁりと弄び口の中へ。そのままごきゅんと一飲みした。
るるは、顔中の精液はそのままに、夏江の髪の毛についた精液を口で啄ばみとる。夏江も別に怒るわけでもなく、髪の毛をちゅうちゅうと吸うるるに頭を任せていた。
「るる。くすぐったいっての」
「我慢して、隆のせーえき……とってあげるから」
「あんたが好きなんでしょう」
 二人が笑いあう。こんなときぐらいしか二人は仲良く出来ないのか。
「ああぁ、隆様のぉ、赤ちゃんのもとぉ、いいにおぉいでどろどろでぇぇ、もぎゅもぎゅぅ……うん、ううん、あぁおいしぃぃ……」
 蘭は結構異常だった。顔に乗った精液のドロドロさ、熱、匂いを顔全体で楽しみ、口へおちた精液は何度も何度も咀嚼して、本当においしそうに飲み込む。
 キラキラと光る汁にまぶされて、恍惚に顔を歪ませていた。
「……こいつはエッチの時だけ別人ねぇ」
「人なんてそんなもの……」
 るると夏江は一人狂ったように精液で遊んでいる蘭を見て、ふたりでくすくすと笑いあった。


732 :ハーレムは常に貧乏!? ◆oEsZ2QR/bg :2007/05/06(日) 00:30:12 ID:Qwaw8qCJ
「ん、あのー。みんな……」
 射精して数分。ようやくねっころがって息を整えていた隆が口を開いた。
「なぁに、タカシ? いいわよ休んで」
「え?」
 隆が頭をあげると、隆の横で寄り添うように夏江がにっこりと微笑んでいた。るるにとってもらった後でもちゃんとタオルで拭き取ったからか顔中にかかった精液はもう無い。
 るると蘭も二人で下半身から昇ってきて隆の隣に同じように寄り添う。そのついでに隆のズボンをずるずると引き上げてくれた。アレが再びトランクスの中にしまわれる。
 るるは隆の右腕に、蘭はるるの後ろへ蘭と同じく寄り添った。るるは蘭の胸を枕にするようにしている。まるで親子のようだった。ちょうど、隆は三人に添い寝された状態で横になっている。
「アンタ、明日が休みなワケないでしょ。あたし達の喧嘩止めたいからあんな出任せ言っちゃって」
「うんうん。無茶」
 夏江とるるが両サイドから呆れたように言った。
「え、もしかして、明日休みって嘘ですか?」
 一人蘭だけが、目を丸くしている。
「……うん、嘘だよ。明日も朝から仕事……」
「やっぱり」
 隆がすぐに嘘を認めて白状すると、るるがため息をついて答えた。
「もう、いつもいつもあたし達の相手ばかりでごめんね。毎日お仕事大変なのに、あたしたち隆に毎晩何回もやらせちゃうから……。だから今日はあたしたちを満足させなくていいわよ」
「私たちは、隆のそばに居るだけで十分だから」
 夏江の手が伸びて隆の頬を撫でた。
「なっちゃん。るる……」
 だから、三人はずっと愛撫を続けていたのかと気付く。いつもなら、三人にめがけて顔にかけるなんてもったいないと言ってあんまりやらなかったから妙だとは思っていたが……。
「だから隆も今日みたいにできるなんて言って無理しちゃダメだからね」
「う、うんっ」
「それに隆がいないとあたしたち生活できない……」
 るるも手を伸ばして隆の頬を撫でた、二人に頬を撫でられている状況。なんだか王様になった気分だ。いや、というか自分は確実に王様だ。
「ふふふ。だから今日はこれでおしまいっ。たまにはみんなでゆっくり寝るだけでもいいでしょ」
「そ、そうですね。いつもイカされていつのまにか寝ていましたから……」
 蘭が同意する。しかし、こいつら結構贅沢に隆を使っている。隆も毎晩本気で大変だ。
「そのかわり、あさっての休日は一日中いちゃいちゃさせてもらうから、そのつもりでね!」
「うんっ」
 夏江の言葉に隆は力強く頷いた。あさっては愛の日。心の中でハートマークがふわふわと湧いてきて、隆の心を幸せの色に染める。まったく、自分は可愛い妻たちに囲まれて最高だ。
「あは、あはは、あははははははは」
 気がつけば隆は自然に笑っていた。
「えへへへ」
「くすくす……」
「ふふふふっ」
 夏江も蘭もるるもつられて笑う。笑いあう。狭くて暗い部屋の中で四人の笑い声が響きあう。とても幸せに満ちた四重奏だった。
「じゃあ、みんなまた明日。お休みだね」
「うん、お休み。なっちゃん」
「おやすみ」
「ごゆっくりお休みなさいませ、隆様」
「うん、蘭もお休み」
「……グッナイ」
「いい夢を、るる」
 四人がお互いの肌を感じながら、目を閉じた。
 全員が同じ夢を見そうなほどくっついて布団の中に丸まって、眠りの世界へ落ちていく。

 くじけ荘の六畳一間の小さな部屋。ボロく、日は当たらず、風呂もない。底辺中の底辺で貧乏生活を送りながら生きている彼女たちの毎日は満足いかないことばかりだが。
 確実に幸せに満ちていた。

「……あーあ、せっかくあたし当たったのになぁ。コレ明日に繰越できない?」
「ダメ」
「やっぱりかぁ。あーあ、やっぱり愛されたいよう。口だけじゃやだよう。中までして欲しいよう」
「往生際が悪い……」
「と、こ、ろ、で、あんたの後ろでずっと一人エッチしている蘭を止めてくれないかしら」
「もごもごぉっ、もごぉ、もごもごぉ、たかしさまぁ、もごぉぉっ」←枕で口を押さえてる。
「無理。すでにスイッチはいっちゃってるからしばらく止まらない。でも隆を襲おうとしたら全力で止めるから安心して」
「……はぁ、隆も暢気ねぇ。あたしたちが毎日どれくらい我慢してるか、分かって欲しいわぁ」
「ZZZZ…」
 そんな秘密の会話も露知らず、隆の幸せな夜は更けていくのであった。
(終わり)




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