【スキスキ】ハーレムな小説を書くスレ【独占】
17 :『狂竜』 ◆duFEwmuQ16 :2006/10/21(土) 04:11:23 ID:tFLLkOM7
『一(ひとつ)の魂かくかたるうち、一はいたく泣きたれば、我はあはれみのあまり、死に臨めるごとく喪神し
 死體の倒るゝごとくたふれき』
                                 ――ダンテ神曲地獄 第五曲




外では雨が降りしきっていた。並の雨ではない。本格的な土砂降りの雨だ。
矢のように激しく、窓ガラスに叩きつけられる雨滴が耳障りだ。外の景色は雨でぼやけて見える。
ダブルベッドのスプリングが激しく軋んだ。
ベッドで激しく絡み合う男女の姿が、雨で濡れたガラスに映った。
女は二十歳手前といった所か。楕円形の輪郭には、端正な顔立ちが飾られていた。
猫を思わせるアーモンド形の瞳が、いかにも男心をそそりそうだ。高くも低くもない小さな作りのすうっと通った鼻筋、
ふっくらとした赤い唇は、強いセックスアピールを感じさせてやまない。

十人中、十人の男が股間を押さえたくなるような女だ。熱い白絹のように美しくしなやかな裸体は、雌豹そのものだ。
男のほうの年齢は、女より年上にも、年下にも思えた。よくよく観察すれば、まだ二十歳手前にも見える。
やや、あどけなさを残す相貌は、恐ろしく秀麗だが、表情が険しい。禍々しいといってもよかった。
それが一種独特の風格を帯びさせ、この若者の実際の年齢を不詳にしていた。

流麗な弧を重ねた二重瞼と濡れた黒曜石のように輝く美しい明眸。
鑿で彫り上げたような形の良い鼻梁、凛々しく引き締まった唇は意志の堅固さを感じさせた。
ギリシャ彫刻などという陳腐な表現では形容できぬ、類稀なる美貌の若者だ。

若者の眼には、激しい怒りと憎悪が満ち溢れていた。底光りする冷たい眼。人の眼ではなかった。獰猛な鬼の眼だ。
地獄を見たものだけが持つ眼だ。哀しい眼だった。あまりにも哀しい眼だった。
若者の背中一面には、鮮やかな親子竜の刺青が彫られていた。見事な出来栄えの彫り物だった。初代彫三の作品だ。
我が子を慈しむかのように親竜が、幼竜をぐるりと囲んでいる絵柄だ。

後漢末期の学者である王符は、竜について次のように述べている。
『頭は駱駝に、角は鹿に、目は鬼に、首は蛇に、腹は蛟に、爪は鷹に、鱗は鯉に、掌は虎に、耳は牛に似る』と。
これを『九似説』と言い、頭から肩、肩から腰、腰から尾の先まで長さが等しいと説く『三停説』がある。
「ああ……欲しい……辣……あたし……もう、切なくて我慢できないよ……」
女の毛穴から滲み出る汗──室内に充満する体臭。愛液とザーメンの混ざった饐えた匂いが、辣の鼻腔粘膜を刺激した。
「入れるぞ、珠美……」


18 :『狂竜』 ◆duFEwmuQ16 :2006/10/21(土) 04:12:08 ID:tFLLkOM7
仰向けになった珠美に覆いかぶさり、辣は股間に腰を埋めた。双股を開かせ、屹立した肉根を珠美の秘所に突き刺す。
「ああ……あああ……」
愛液で濡れた隧道に怒張を一心不乱に叩き込む。珠美の喘ぎ声を聴きながら、辣は女をいかせる事だけに専心した。
顔色一つ変えず、ただ腰をリズミカルに動かす辣。汗にまみれながら、快感に顔を歪ませる珠美。対照的なふたりだ。
胸元から強い女臭が立ち上り、辣の肉根が硬度を増していった。膣内がぞよめき、肉根を優しく揉みしだく。珠美の荒い鼻息。
「ああ……いい……もっと、もっと深く……ッ」
肉の内部はうだるように熱かった。

貪欲なまでに珠美は快感を──辣を求めた。亀頭が膣の底を深く突き刺す。艶々と光る辣の茂みが、珠美の茂みと擦れあった。
分泌される蜜液が、二枚の肉びらを伝いながらシーツを汚していった。辣は珠美の乳房に顔を埋め、ピッチを早めた。
乳房の柔らかな感触が、頬に心地よい。薄桃色の粘膜は、随喜の涙をしたたらせ、肉根を濡れそぼらせた。

珠美は仰け反りながら、咽喉をしぼった。
「あう……っ、ああ……辣……辣……ッッ」
珠美が辣の背中に爪を食い込ませ、叫んだ。汗が飛び散り、きらめいた。辣はきつく眼を閉じた。
輸精管から力強く迸るザーメンが、子宮を打った。
「ああッ、ザーメン……ッ!辣のザーメンをもっと、もっとあたしの中に出してッ……もっとッッ」
珠美は絶叫し、身体を震わせながらハイレベルのオーガズムに達した。

辣は無言のまま、肉根を引き抜いた。淡い色合いの襞──毀れたザーメンがシーツに小さなシミを作った。
射精しても、衰えることなく聳え立つ肉根──可憐な水仙の花が咲いていた。辣はもう一度、窓を見た。
外ではいつのまにか、雨が止んでいた。

        *  *  *  *  *  *

新宿歌舞伎町。風林会館1Fにある喫茶店で、コーヒーを注文した。ウエイトレスが頬を染めながら、辣に軽く会釈し、立ち去った。
ウエイトレスの運んできたグラスの水──黙ったまま、見つめ続けた。キャメルを取り出し、咥えた。前歯でフィルターを軽く噛んだ。

ディポンのシルバーライターで火をつける。ライターの火を消した。深々と吸い込み、肺一杯にタバコの煙をおくり込む。
吐き出した煙が天井に向かって立ち上り、消えていった。ウエイトレスがコーヒーを運んできた。
運ばれてきたコーヒーを一口だけ啜り、床に視線を落とした。タバコを灰皿に押し付ける。

(もうすぐ……幸江と隆の一周忌になるのか……)
辣は殺された叔母と遺児を思い浮かべた。幸江──辣の実の叔母──辣を施設から引き取ってくれた。
辣が引き取られた三ヵ月後、ふたりは肉体関係を結んでいた。
隆──辣と幸江との間に出来た息子。辣が十四歳の時に幸江が妊娠し、愛しい我が子──隆が生まれた。
隆は私生児として届けられた。十八歳になったら幸江と結婚する予定だった。
結婚──幸江も隆も、もうこの世にはいない。幸福な日々は突如として失われた。

19 :『狂竜』 ◆duFEwmuQ16 :2006/10/21(土) 04:12:55 ID:tFLLkOM7
幸江と隆が殺された場所は近くの公園だった。障害者用のトイレの個室で、ふたりの遺体は発見された。
幸江の腹部には、鋭利な刃物による二十八箇所の、隆は全身に及ぶ三十四箇所の刺し傷が見つかった。
死亡推定時刻は午後四時二十分。正常な人間が出来る犯行ではなかった。
こういう類の事件を起こすのはジャンキーに多い。案の定、犯人は覚せい剤使用の前科を持つ若い男であることが判明した。

刑法三十九条とはよく言ったものだ。フラッシュバックで混乱してしまい、ふたりを殺害したと自供した男は
精神病院に放り込まれただけだった。その男も、もうじき退院してくる。やりきれなかった。男には必ず、血で償わせてやる。
血液が沸騰した。脳髄が憎悪で灼け爛れた。辣は虚空を睨みつけながら、男の顔を思い浮かべた。

辣がその背と男根に刺青を施したのは、殺されたふたりの供養の為だ。生前の幸江は水仙の花が好きだった。
辣は死んだ幸江を忍び、男根に永遠に枯れる事の無い水仙の花を彫った。
背負いし親子竜は、天へと昇っていったふたりを現す。
(待ってろよ……幸江と隆……俺が……俺が必ず、お前らの仇を討ってやるからな……)

ふたりを奪った男──必ずこの手で殺してやる。辣の胸裏深くに刻まれた激しい怒りが、螺旋状に渦を巻いた。
携帯が鳴った。ゆっくりと携帯を懐から取り出す。ディスプレイを見た。表示された電話番号──高津からの連絡だ。
「おい、辣。色男、元気にしてたかい?」
高津のダミ声が鼓膜に飛び込んできた。いつもの人を小馬鹿にした物言い。
「さっさと用件を言え」

「まあ、そう急かすなよ。客が来た。初見の客だぜ。前金でお代はもう貰ってるからよぉ」
携帯の向こうから聞こえる忍び笑い──高津が卑しい笑みを浮かべている姿が頭の中に浮かんだ。
「……場所はどこだ?」
「西麻布のマンションだ。×丁目××─×マンション名は『ライズ西麻布』だ。部屋の番号は一七階の六号室」
「わかった。すぐにいくと伝えてくれ」
「そういえばよ。辣、珠美とはどうなってるんだ。あいつは良い女だろう。情も深いしよ、どことなくお前の殺された女に……」
携帯を切った。辣はぬるくなったコーヒーを一気に飲み干すと、席を立ち、会計をすませると店を出て行った。



ライズ西麻布はエントランスが大理石造りの瀟洒な高級マンションだった。高津に告げられた部屋番号のインターホンを鳴らす。
「はい、もしもし」
女の声が返ってきた。落ち着き計らった、よく通る声だ。
「ご注文のコールボーイだ」
「ああ……待ってて、今開けるわ」

20 :『狂竜』 ◆duFEwmuQ16 :2006/10/21(土) 04:13:54 ID:tFLLkOM7
開いたガラス扉を潜り、エレベーターに乗り込んだ。敷かれた紺色の絨毯のフワリとした感触が、靴底を通して伝わった。
辣は一七階のボタンを押した。腕時計を見る。時刻は午後十一時を回っていた。

        *  *  *  *  *  *

薄暗いリビングルームに通された。よく整理の行き届いた綺麗な部屋だ。窓際には小さなコーヒーテーブルが置かれていた。
艶のある黒いベルベッドのソファーに、ベージュ色の厚いカーテンが、落ち着いたムードを感じさせる。
部屋に漂う柑橘系のアロマオイルの香りが、辣の鼻腔をくすぐった。女が嫣然と微笑みかける。中高の顔立ちをした美しい女だ。

ショートカットの髪は艶のある濡れ羽色をしており、幾分小さめの唇が愛くるしい。女は想像していた年齢よりも若いようだ。
それでも、透明感漂う白い首筋と、豊満な胸元からは成熟した女の色香が匂い立っていた。辣は久しぶりに男根の根元が疼くのを感じた。
「素晴らしく綺麗な子……ねえ、脱いで見せてちょうだい」
女は甘えるような口調で、辣の瞳に己の瞳を絡ませながら言った。
辣は言われたとおりに、チャコールグレイのハーフコートと漆黒のスラックスを脱ぎ、床の上に落とした。

一糸纏わぬ姿となった辣──細身だが、必要な筋肉だけが全てそろっている美しい肉体だった。黄金率によってのみ作られた身体だ。
白磁の如く滑らかな肌に、骨張ってもいず、筋肉張ってもいない裸体は、鋼のスプリングのような瞬発力を秘めている。
女が瞳を潤ませながら、陶然とした表情を浮かべ、喘ぐように呟いた。
「ああ……なんて美しいのかしら……」
「そういえば名前を聞いていなかったな」

辣が無表情のまま、女に名前を尋ねた。女は静かな口調で答えた。
「あたしの名前は圭子」
「圭子か。良い名前だな」
「ありがとう」
ブルーのブラウスを脱ぎ始めた圭子は、下着類は一切見につけてはいなかった。辣の真似でもするかのように、床に脱いだブラウスを放り投げる。
まばゆい光沢を放つ蜜色の肌が艶ましい。紡錘型の乳房は大きすぎず、小さすぎず、精妙なバランスを保っていた。
何かを期待するかのように、淫蕩に輝く圭子に瞳。圭子を抱き寄せ、顔を近づけると辣は唇を重ねた。
圭子の瞳を覆う潤みがどんどん広がっていく。舌先を尖らせて圭子の歯茎をつついた。次々に分泌される唾液が口腔内で滑る。
腰に手を回し、指先で繊細に尻の形を確かめるように撫でた。豊満で丸みを帯びた極上の尻だ。男を狂わせる淫蕩な尻だ。
辣は尻房の割れ目に指を差し込み、そっとアヌスに触れた。


179 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/10/27(金) 00:18:11 ID:qnD+F6iO
指腹で円を描くように肛襞を揉み込む。圭子が頬に赤みを差しながら、硬く尖った男根に指先を絡ませた。
自分の身体と同じ、氷のように冷たい指先だ。冷たい──辣は自嘲した。
そっと顔を離した。唾液で濡れたふたりの唇がキラキラと輝いている。激しい高ぶりに、圭子の膝が震えた。
「冷たい指だ」
「あたしの指はいつも冷たいって言われるの。だけど、あなたのここは凄く熱いのね……」
秘肉から湧き出る欲情の雫が、圭子の白い太股をつうっと伝いこぼれていく。
辣の薄い胸板に頬をすり寄せ、圭子は体温と感触を味わった。若者の芳香が、淫蕩な女の性を揺さぶる。
圭子はつらい眩暈がした。身体がくず折れてしまいそうだ。血が沸騰し、細胞の一つ一つが若者の肉体を欲した。

ゆっくりとアヌスに指を挿入した。第一関節ほど飲み込んだ圭子のアヌスが、ピクピクと収斂する。
「ああ……」
小さく喘ぎながら、圭子は辣の薄い乳首を小鳥のように唇でついばんだ。舌腹で胸の周りを回遊する。
巧みな口唇愛撫に、鳥肌が立つような鋭い快感が、辣の背筋を走り抜けた。
男根の先端からは、すでに透明な樹液の露が溢れていた。
「ねえ、お尻にいれて……あなたのペニスをあたしのお尻にちょうだい……」

指を引き抜くと、辣は耳朶に熱い吐息をふきかけながら、淫蕩な女の血をくすぐるかのように、甘く静かに囁いた。
「いいだろう。後ろに向いて尻を突き出しな……」
圭子は後ろを向いて前屈みの姿勢を取ると、辣に双臀を突き出した。シミ一つ無い、淡雪のような綺麗な肌だ。
脂の乗った尻肉をがっしりと鷲掴みにすると、尻房を割り開いた。
菫色の肛門と真っ赤な秘所が辣の目前に曝け出される。卑猥な光景だ。
「中々淫らな色合いだな。オマ○コがぱっくりと口を開いて涎を垂らしてるぞ」
「いや……言わないで……」

羞恥と期待に身体が疼き、圭子の淫裂からはさらに大量のねっとりとした蜜液が分泌された。
こぼれた蜜液が、床に小さな水溜りを作った。形の良い眉根をひそませ、圭子が激しい羞恥に耐える。
熱を孕んだ白桃のような尻肉から漂う淫らな雌の匂いが、辣の鼻腔をくすぐった。
激しい高揚に、圭子の肌が鮮紅色へと変わっていく。辣は最初からアヌスを責め立てた。
舌で襞の部分を丹念に舐めしゃぶってやる。
排泄臭とは異なるが、籠もった汗に混ざったアヌス特有の生々しい秘めやかな臭気と味がした。
「んくぅッ、お、お尻が、お尻の穴が感じるの……はうぅッ」
「美人でもやっぱりここは匂うな。そんなにケツの穴を舐められるのがいいのかい?」
鋭く尖らせた舌先でアヌスを蹂躙しながら、辣はサディスティックな快感を、わずかながら感じていた。
「いい……いいの……お願いだからもっと舐めて……ッ」
荒々しくアヌスをこじあけ、狭隘な穴の内部を舐め回す。括約筋が辣の舌を強く噛んだ。
舌による肛門愛撫を切り上げると、辣は立ち上がった。汗ばんだ白い尻房に一発、平手を食らわす。

180 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/10/27(金) 00:19:03 ID:qnD+F6iO

「これくらいほぐれれば充分だろう。さあ、いくぞ」
臀部の割れ目に亀頭を押し付け、唾液まみれの肛孔に狙いを定めた。圭子の尻肌がぞくりと粟立つ。
「ああ……きて……」
ゆっくりと息を吐きながら、圭子は括約筋を緩め、アヌスを開いた。硬くなった男根を根元まで貫入させた。
「うあぁぁッ、くうぅ……ッ」
直腸内が圧迫される感覚に、毛穴から脂汗を滲ませながら、圭子が身震いした。
アナルセックスは未だに多少の苦痛を伴うも、それでも快感の方が遥かに勝った。
肛門を男根で拡張される息苦しさに、圭子はゆっくりと息を吐いて耐える。

アヌス粘膜を傷つけないようにゆるやかに、腰を前後させた。狭窄な部分だ。さすがにきつい。
灼熱と化した男根に直腸内部が反応し、腸液を分泌しながら蠢動した。アヌスが根元を痛いくらいに締め付けてくる。
広がりきった肛門を、男根で擦られる刺激に、圭子は声を上擦らせた。その声が、男根をさらに充血させる。
「ひぃッ、ああ、太くなってきた……素敵よ……あなたのペニス……ッ──とっても素敵だわぁ……ッッ」

腸壁に亀頭を包み込まれる感触が、たまらない喜悦を辣に与えた。アヌスを抉る動きが激しさを増していく。
アヌスを穿ちながら、辣は白い背中と尻に浮かんだ汗をすくって舐めた。
亀頭の雁首が、肛門の入り口で引っかかった瞬間、力強く穿つ。
「こ、こんなの初めてよ……ッ、こんなに感じるなんて……あうあうぅぅッ」
被虐の陶酔に翻弄されながら、豊かな裸身をくねらせて圭子は啼いた。目尻から流れ出でるのは随喜の涙だ。
「出すぞ」
「出してッ、あたしのお尻にあなたのザーメンをぶちまけてッッ」
この美しい若者のザーメンがたまらなくほしかった。腸管にザーメンをぶちまけてほしい──圭子は切に願った。
腸内部で一際膨張した男根が、大量のホワイトリキッドを石つぶてのように放った。
「あああアアぁッ、イクぅッッ!」
激しくうなる生命の奔流が、勢いよく流れ込んだ。圭子の脳内に白い閃光が広がり、脳を灼きつくした。
噴き出すザーメンの圧倒的な感覚に悶えながら、圭子は肛交絶頂に達した。

ベッドの上で腹這いになりながら、キャメルをくゆらせた。
あれからふたりでシャワーを浴びて寝室のベッドでもう一度、セックスをした。圭子の愛撫は他のどんな女よりも巧みだった。
蟻の門渡り、肛門、睾丸、裏筋の四点を舌で激しく口唇愛撫する技術は、辣の萎えた男根にすぐさま力を漲らせた。
辣は圭子の口で二度、内部で四度ほど放出した。圭子が竜の刺青を掌で何度も撫で付ける。
「凄い刺青ね……素敵だわ。あそこにも水仙の刺青をしていたわね」
「ただの趣味だ」
乾いた唇に張り付いたタバコを引き剥がした。落ちた。灰がベッドに転がった。
転がった灰を手で払い、タバコをサイドボードの灰皿でもみ消した。
「冷たい背中……まるで死人のように冷え切ってる……あそこは火傷しそうなくらい熱かったのに」
圭子が辣の秀麗な横顔を覗き込んだ。感情の起伏が見られない貌。美しいがどこか無機質だ。

181 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/10/27(金) 00:19:43 ID:qnD+F6iO
辣の黒い眼を眺めながら、なんて哀しい瞳なのだろうと圭子は思った。今まで気づかなかったが、この若者はまだ少年ではないのか。
老人じみた諦観を纏わりつかせているが、本当は自分よりずっと年下なのかもしれない。
辣の眼からは、彼の歩んできた人生の重みが覗えた。それは決して明るい人生ではなかったのだろう。
若者の暗い過去──胸が切なくなる。抱きしめてやりたかった。

「ねえ、あなた本当はいくつなの?」
「忘れた」
「自分の歳を忘れたの?」
「そうだ」
口元を歪ませ、微笑みながら圭子は言った。それは母親が赤ん坊に向ける笑みに近かった。
「格好つけすぎよ」
辣がそっけなく答える。横顔の表情はそのままだ。
「そうか」
「無愛想なのね……ふふ……」
圭子は辣の顔に胸を押し付け、そっと頭を抱きしめた。淫蕩な女ほど、情が深いものだ。母性が強い証拠だ。
女としての本能が発達しているのだろう。辣は意識せずとも、女の本能をくすぐる不思議な色気があった。
男の色気だ。無愛想な癖に、女心を虜にする術に長けている。淫蕩、好色な女ほど辣の色気と性的魅力を見抜く。

圭子の腕に抱かれながら、辣は死んだ幸江の事を考えていた。幸江も情の深い女だった。
ふたりで過ごした狂おしき愛欲の季節。睡眠も食事も取らず、四十八時間ずっと繋がっていた事もあった。
獣のように唸り、法悦を貪りあいながら、ふたりは互いを愛し続けた。幸福だった。これまでの人生の中で一番幸福だった。
──幸江、幸江。
無意識に幸江の名前を頭の中で繰り返していた。辣が生きている理由──ふたりの仇を取る為だ。
仇を討ったらすぐにでも、幸江と隆のいるあの世にいく。それが最善の選択だ。生きていてもしょうがないのだ。
恋人と我が子を失い、刹那的な快楽だけを追い求めて生きてきた。刹那の快楽──あまりにも虚しかった。
復讐だけが辣の生きる因だった。いや、復讐こそがだ。復讐を果たし、残るは刹那のみならば、生きていても意味がない。
望まぬ生ならさっさと断つべきだ。未練がましく生きていて一体、何になるというのか。
殺すも地獄、殺さぬも地獄──同じ地獄なら、殺したほうがいい。冥い澱が、辣の腹の底に沈んでいった。

182 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/10/27(金) 00:21:08 ID:qnD+F6iO
辣は圭子の胸でまどろみそうになった。かぶりを振って眠気を追い出す。
酒が欲しかった。強い酒を胃に流し込んでやりたかった。
「今夜はもう帰るぞ」
圭子が寂しそうな視線を辣に投げかけた。
「もう、いっちゃうの……?お金なら出すから泊まっていってよ……」
「酒が飲みたいんだ。どっかで一杯、引っ掛けたい、それとも飲ませてくれるのか?」
「いいわ。ちょっと待ってて」

リビングルームから圭子がアードモアのボトルとグラスを持ってきた。身を起こし、ボトルを受け取るとキャップをはずした。
グラスに注がず、辣は一気にボトルごと呷った。流し込んだ酒が咽喉と食道を灼いた。胃袋がかあっと熱くなる。
かまわず、一気にウイスキーを飲み干すと口を離した。一息ついて手の甲で口元を拭う。眼球網膜がアルコールで真っ赤に充血した。
「そんなに飲んで大丈夫なの?」
「一本、空にしたくらいじゃそれほど酔わない。安心しろ」
ベッドの上に仰向けになり、両腕を大きく広げて辣は圭子を誘った。股間の黒い原生林から隆起する男根。
「さあ、来なよ」
「ああ……」
圭子は胸に飛び込み、辣にもういちど抱かれた。

518 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/11/12(日) 14:13:40 ID:izYtSUtW
『我を過ぐれば憂ひの都あり、我を過ぐれば永遠(とこしへ)の苦患(なやみ)あり、我を過ぐれば滅亡(ほろび)の民あり
義は尊きわが造り主(ぬし)を動かし、聖なる威力(ちから)、比類(たぐひ)なき智慧、第一の愛我を造れり
永遠(とこしへ)の物のほか物として我よりさきに造られしはなし、しかしてわれ永遠に立つ、汝等ここに入るもの一切の望みを棄てよ』
                                 ――ダンテ『神曲』地獄 第三曲




「姉ちゃん、ケツ貸してくれよぉ」
額にインプラントピアスをしたスキンヘッドが、ヤニで黄ばんだ歯をむき出しにしながら嗤った。卑しい笑みだ。
漆黒の闇に響き渡る嘲りの声が、綾の鼓膜を叩いた。恐怖に綾の歯がカチカチと音を鳴らした。身の毛がよだった。
「早く、やっちまおうぜ。俺、さっきからチ○ポがガチガチになっちまって痛てえんだ」
眉毛を剃った金髪が股間を抑えながら、下品な面を歪めて飢えた野良犬のように喘いでみせる。
綾は辺りを見回した。心拍数が上昇した。心臓が早鐘を打つ。焦りが身をじりじりと灼いた。
人気の無い深夜の公園──絶望的な状況だ。助けを呼ぶ事も出来ず、綾は震えた。緊張で咽喉がひりつく。

大声で叫びたかった。誰でもいいから助けを呼びたかった。開きそうになる口──懸命に閉じた。
大声を出せば、何をされるかわからない。男達が正常な精神を持ち合わせているとは思えなかった。
黙ったまま、言われたとおりに従えば、少なくても命までは取られないだろう。それでも、恐ろしかった。
下手に刺激すれば、レイプされるだけでは済まなくなる。殺されるかもしれない──血液が氷結した。
綾はまだ処女だ。それでも殺されるよりはマシだった。それとも殺されたほうがマシなのだろうか。
スキンヘッドが手を伸ばし、綾の乳房をワンピースの上から乱暴に掴んだ。
乳房が引きちぎられるような痛みに、綾は思わず顔をしかめた。自分はこんな所で処女を失ってしまうのだろうか。
腐った黄身を思わせるスキンヘッドの濁った眼──粘つく視線に、綾は皮膚をまさぐられるような悍ましさに襲われた。

「柔らかけえな。すげえ興奮してくるぜぇ」
スキンヘッドが顔を近づけ、綾の見開かれた眼を舌先で舐めた。涙が溢れ出てきた。恐ろしかった。
「しょっぺえな。そんなに俺達が怖いか」
金髪が掌で綾の口を塞いだ。くぐもった悲鳴が漏れた。膝がガクガクと笑い、綾は恐怖のあまり失禁しかけた。
口を塞ぐ掌の体温が、顎に伝わった。蛆虫を思わせる生白い金髪の指先が、綾の顎を曲げて横に振り向かせた。
酸っぱい胃液がこみ上げた。口角を吊り上げ、金髪が冷笑して見せる。男の生酸っぱい汗と生臭い息が、綾の鼻腔を不快に刺激した。
吐きそうだ。食道に達した胃液──なんとか呑み込んだ。脂汗が滲み出る。抗いたかった。

この恐怖に、悍ましさに。抗う──出来るわけがなかった。
底無しの諦観、底無しの無力感。非力な自分には何も出来ない事を綾は知っていた。

519 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/11/12(日) 14:14:33 ID:izYtSUtW
「大人しくしてりゃ、無茶はしねえよぉ。ただ、オマ○コとケツの穴を少しばかり貸してくれるだけでいいんだ」
ポケットから抜き出したバリソングナイフをチラつかせながら、金髪が綾の鼻柱を紫に変色した舌腹で舐め回す。
水銀灯の灯りに反射するナイフにブレードが、鈍い光を放ち綾の恐怖心を煽った。生温かい液体が太股を伝った。
「この女、小便漏らしやがったぜ。汚ねえなぁ」

        *  *  *  *  *  *

ワイルドターキーのボトルをぶらさげ、辣は新宿の外れにある小さな公園の近くに来ていた。人通りは途絶えている。
当たり前だ。時刻はすでに深夜だった。十一月の上旬になってからか、少しばかり肌寒くなってきた。

 また来ん春と人は云ふ しかし私は辛いのだ 
 春が来たつて何になろ あの子が返ってくるぢやない
 思へば今年の五月には おまへを抱いて動物園
 象を見せても猫(にゃあ)といひ 鳥を見せても猫(にゃあ)だつた 
 最後に見せた鹿だけは 何とも云はず 眺めてた 
 ほんにおまへもあの時は 此の世の光のたゞ中に
 立つて眺めてゐたつけが・・・・・・
 

辣は中原中也の詩を口ずさむのが好きだった。愛児を失った者の悲壮感が、中也の詩には感じられるからだ。
我が子を失った悲しみは、失った者にしかわからない。中也の詩を辣はこよなく愛していた。昔は暇さえあれば読み漁ったものだ。
ワイルドターキーをかっくらいながら、公園の柵を跨ぎ超える。ベンチで腰を下ろしたかった。
少しばかり歩くと、三つの影が視線に飛び込んできた。若い男女の姿だ。女ひとりに、男がふたり、それだけだった。
辣は構わず、ベンチの置いてある方向に移動した。自分には関わり合いの無い事だ。辣は無意識に首を鳴らした。
ボトルに口をつけ、咽喉を鳴らして酒を流し込む。その時、女の視線が辣の存在に気づいた。
同時に男達も辣のいる方向に振り返る。それでも気にせず、ワイルドターキーを煽りながら、辣はベンチのある場所へ歩いていった。

「お、お願いッ、助けてくださいッ!」
女が助けを求めてきた。辣の足が止まる。女が辣に助けを求めなければ、目の前で女がレイプされていても辣は放っておいただろう。
辣にとって、女がレイプされている事と、自分とは何の関わり合いもないからだ。だが、女は自分に助けを求めてきた。
充分に関わり合う理由にはなる。辣は方向を変えると黙ったまま、男女のいる場所へ歩み寄った。
「何だ、テメエ。邪魔すると怪我するぞ」
最初に口を開いたのはスキンヘッドだ。ボキャブラリーが低いお決まりの恫喝を吐く。何度も聞いた台詞だった。
寒空だと言うのに、男達は汗をかいていた。独特の体臭はスピードでもキメているのだろう。シャブ中は冬場でも汗をかく。
むかつくようなスキンヘッドの口臭に、辣は苛立ちを覚えた。胸糞が悪くなる。

金髪が何か言おうとした次の瞬間、ボトルがスキンヘッドの顎を砕いていた。飛び散るガラス片、ウイスキーが飛沫あげた。
間髪いれず相手の襟首を掴むと、ささくれたボトルをスキンヘッドの頭上めがけて突き刺し、頭部をえぐった。頭皮が剥がれた。
くぐもった唸り声を上げ、スキンヘッドが地面に崩れ落ちる。飛び散った鮮血が、辣の頬を汚した。
えぐられた部分から灰色がかった白っぽいモノが顔を覗いていた。スキンヘッドの頭蓋骨だ。
めくれた頭皮が剥いたミカンの皮のように垂れ下がっている。柘榴になった傷口から噴き出す血液が、地面の土に染み込み、広がった。
粘つく血の臭気が辣の鼻腔粘膜を刺激した。久しぶりに身体が疼いた。血管が膨張する。手の甲についた血糊を舐めた。
塩辛い味が口腔内に広がった。脳髄が痺れた。細胞が狂喜に叫んだ。男根が勃起し、あやうく射精しそうになる。

520 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/11/12(日) 14:15:29 ID:izYtSUtW
血を見るだけで、ペニスが反応した。いつからこんな身体になったのか。セックスも暴力も辣にとっては同じだった。
どちらも血を流すからだ。男は精液、女は生理、初夜には破瓜の血がこぼれる。血とは生命であり、温もりであり、それは生き物の本質だ。
人間とは生き続ける限り、絶えず血を流し続ける。いつのまにか辣は薄笑いを浮かべていた。あまりにも冷たく毒々しい笑みだった。
秀麗無比な容貌だけに、笑みで歪んだ顔は醜悪とさえ言えた。
迫り出さんばかりに見開かれた金髪の眼、まるで漫画のように滑稽だ。竦んだ女が地面に尻餅をついた。
「あ、ああ……」
女の声は言葉にすらならず、ただ同じ発音だけを繰り返す。辣は女を無視して、唖然と立ち尽くす木偶の坊同然の金髪に声をかけた。
「お前、障害者手帳は何級が欲しいんだ。それとも殺されるほうがいいか」
今度は金髪が怯える番だった。金髪の額から冷や汗がこぼれる。薄笑いの表情を崩さず、辣が嘲りながら囁いた。凍てつく視線が金髪を射抜く。
「親より先に死ぬのは不孝だぞ」

恐怖に駆られた金髪は、クルリと身体を反転させ、脱兎の如く逃げ出した。取り残されたスキンヘッドは、地面に蹲って唸っていた。
血の気を失い、襲い掛かる激痛に呻吟し悶えている。止めを刺してやる事にした。脇腹を爪先で蹴り上げた。
肋骨のへし折れる感触が爪先に伝わった。スキンヘッドは前蹴りのショックに昏倒した。
まな板の鯉のように身体をビクビクと痙攣させる。これ以上苦しませるのが可哀相だった。
仲間に見捨てられたスキンヘッドを、痛みから解放してやったのは辣の慈悲だ。それが慈悲といえるかどうかは別にしてだが。
「それで、あんたはどうするんだ」
尻餅をついたままの女の前にしゃがみ込み、辣は尋ねた。顔はいつもの無表情に戻っていた。
女は質問に答えず、口をただ開いたり閉じたりしながら喘ぐだけだ。

女の漏らした尿の匂いが鼻についた。よほど恐ろしかったのか。辣は女に哀れみを覚えた。
慰めるように血がべっとりと付着した掌で頭を撫でてやる。
「生きてりゃ、こんな事もたまにはあるさ。犬に噛まれたと思いなよ。レイプはされなかったんだろう。
あいつ等だって溜まってたんだろうよ。今夜の事はさっさと忘れるんだな」
いつもの、ぶっきら棒な物言いだ。それが精一杯の辣の慰めだった。それくらいしか思いつかなければ、それくらいしか言葉に出来なかった。
女は相変わらず、無反応だ。レイプされそうになったショックがあまりにも大きかったのか。
突然、辣は女の唇を塞いだ。積極的に吸い、舌を使う。数秒ほどして女が辣の背中を強く叩いた。唇をはずしてやる。
「どうだ、落ち着いたか」

驚きの表情で、女は眼を剥いたまま唇をわなわなと震わせた。少し間をおいて女が呟くように礼を述べる。
「は、はい……いくらかは落ち着きました……助けて貰い……その、ありがとうございます……」
女の言葉遣いは、丁寧でいかにもお嬢さん風だった。セミロングの亜麻色をした髪、上品そうな細面の美しい顔。
十五、六辺りだろう。自分と同じ位の年齢か。眼縁に飾られた瞳が大きな、清楚で百合のように美しい少女だ。
何故、こんな深夜の公園にいたのだろう。おそらくは家出か何かの類だ。
「今度からは気をつけなよ。ここらはやばい奴が多いんだ。あんたみたいな良い女はすぐに犯られるぞ。
あんた、なんでこんなとこにいたんだ。家出でもしてきたか」
女が俯いた。どうやら図星のようだ。このままにしておくわけにはいかないだろう。シャワーを浴びたかった。
「近くの交番までなら連れて行ってやってもいいぞ。家まで送ってやろうか。それとも家には帰りたくないか」
キャメルを咥えた。火をつけ、吹かす。冷たい風が頬を叩いた。熱いシャワーを浴びて、血を洗い流したかった。

521 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/11/12(日) 14:16:16 ID:izYtSUtW
「私の名前は『あんた』ではありません。綾……綾と呼んでください。家には戻りたくありません……」
「そうかい。所であんたはどうしたいんだ」
「私の名前は綾です」
「俺がどう呼ぼうが俺の勝手だ。とりあえず、シャワーを浴びたいんだがね。あんたも小便を漏らしたままじゃ気持ち悪いだろう
そういえば、俺も名乗ってなかったな。俺は辣だ」

        *  *  *  *  *  *

コンビニに立ち寄り、ジャックダニエルを二本購入する。閉っている店を無理やり開けさせて下着と衣類を買い、タクシーを拾った。
運転手は尿の匂いに顔をしかめたが、血塗れの辣が座席から睨みを利かせると運転手は押し黙り、ラブホテルへと走り出した。
金を払い、タクシーを降りる。シーツ代に諭吉を一枚渡してやったら、運転手は相好を崩した。
舗装道路に転がる空き缶にネオンが反射した。空き缶を踏み潰す。人影はまったくない。
「あ、あの……ここはラブホテル……ですよね?」
「ああ、そうだ。それがどうした。もしかして操の心配か。安心しろ。あんたに手は出さんさ」
綾がむっとするような顔になった。何を言いたいのかは、表情でわかる。これほどわかりやすい女も、そうザラにはいないだろう。
「勘違いするなよ。あんたに魅力が無いと言ってるわけじゃないんだ。俺は無理にはやらないってことだ。もし、あんたがその気なら喜んで犯るがね」
次に綾の顔が赤くなった。レイプされそうになり、さっきまで怯えていた女とは到底思えないだろう。辣は多少だが、綾を羨ましく感じた。

自分の失ってしまったモノを綾は持っていた。失ったモノ──それは人としての感情だった。日々、冷え切っていく心と身体が辣の精神を蝕んだ。
辣は己に問いかける。自分は本当に生きているのかと。いや、自分は生ける屍だ。
血管に流れるわずかに残った腐った血とアルコールによって、かろうじて生き長らえているに過ぎない。
愛する者を失ったあの日から、辣は死の世界を垣間見た。己の生命に対する執着は消え、死や苦痛に対する恐怖は失せた。
代わりに人間としての歓喜、感情のほとんどは失われた。血と暴力に狂乱し、女達との刹那の快楽に陶酔した。
アルコールに耽溺し、何もかも忘れ去ろうとした。いくら女を抱いても、いくら酒を飲んでも、忘れる事などできなかった。

出来るはずが無かった。最後に残るのはつねに空虚さだ。何故、俺は女を抱き続けるのだ。何故、俺は酒を飲み続けるのだ。
答えは見つからない。怒りと憎悪だけは失われなかった。それが辣の荒ぶる心に残った最後の感情だ。
血を見た時に湧き上がる冥い歓びは一時的なものでしかない。それはかりそめの感情でしかない。
埋火の如き、身を灼き焦がす冷たい情念が、始終耐えることなく辣を責め苛み続けた。それが生き残った者が受けねばならぬ業罰なのか。
秋風索漠とした孤独に晒され続ければ、魂は死に絶える。憤怒と激烈な憎しみが頂点に達した時、人間は凶暴無残たる魂へと変貌する。
悪鬼の誕生だ。辣という名の一匹の鬼は、こうして現世に生まれ出てきた。

無人のフロントで部屋を選んだ。点滅するパネルのボタンを適当に押した。部屋の番号を確かめ、狭いエレベーターにふたりで乗る。
二階でおりて、「二〇一」と書かれた部屋の中に入った。ジャックダニエルをラッパ飲みしながら、辣はベッドに座った。
「最初にあんたが風呂に入ってこいよ」
「あ、はい。あの……そんなにお酒を飲んで大丈夫なんですか……?」
「酒を飲んでないと逆にやばいのさ」
綾にジャックダニエルを差し出し、辣は言った。
「あんたも飲むかい。気付け代わりにはなるぞ」
「いえ、結構です。あの、少しの間だけ眼を閉じていて頂けませんか……」
部屋には身を隠す場所は無く、浴室もガラス張りだった。
ラブホテルの部屋とはみんなこういった作りなのかと綾は困惑しながら、流石に出て行ってくれとも言えず仕方なく辣に懇願した。
「わかった」


522 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/11/12(日) 14:17:30 ID:izYtSUtW
辣は眼を閉じた。綾が後ろ向きになってワンピースとパンティーを脱いで裸になる。辣は薄目を開けながら綾の背姿を眺めた。
年頃の娘にしては、あまりにも無防備だ。これでは犯してくれと言っている様なものだ。骨細で繊細な肢体はガラス細工の儚さがあった。
ほっそりとした腰に小ぶりの白い臀部、男を知らない少女特有の中性的な身体だ。綾は蕾だった。華を咲かせてみるのも悪くは無い。
白磁の如く透けるように白い肌は淡雪を思わせた。性的な雰囲気は感じられず、やや幼い。穢れを知らぬ純白な少女だ。
子供でもなければ、女でもないのだ。短く儚いがゆえに輝く清らかさ、それは両性具有的な美とも言えた。
バスルームにはいり、浴槽に湯を張ると綾はシャワーを浴び始めた。浴槽に湯を入れたのは辣への気遣いか。立ち上る湯煙が綾の姿を隠した。

体が弛緩した途端、悪寒が走る。汚いものでも拭うかのように、綾は石鹸で男達に掴まれた部分を何度も洗い清めた。
衣服を脱ぎ、辣は綾のいる浴室に入った。突然の出来事に一瞬、綾は身体を硬直させた。初心な反応だ。今まで抱いてきた女達とは違う。
「で、出て行ってくださいッ」
強い口調で綾が叫んだ。辣は押し黙ったまま、綾の瞳を見つめた。向かい合うふたりの姿が、揺れる湯に映った。
不意に顔を寄せ、もう一度唇を奪う。いたわる様に優しく、接吻愛撫をする。綾はゆっくりと眼を閉じた。
自分の身体がふわりと宙に舞うのを、感じた。不思議な気持ちだった。身体の芯がじわりと暖かくなる。一目惚れだった。
(初めて逢ったばかりなのに……何故、私はこの人に惹かれてしまうの……怖い人なのに……恐ろしい人なのに……)

身体を密着させ、お互いの唇を吸い続けた。熱いシャワーで火照った肌に、辣の冷たい体が心地よかった。
「俺が何もかも忘れさせてやる」
人に触れられて、これほどの快感を感じた事は無かった。この人になら処女を捧げたい──綾は強く思った。
いまのふたりにとって、言葉は無粋だった。互いに触れ合う肌が全てを物語る。綾は切ない息苦しさに胸を締め付けられた。
辣への淡い想念が、綾の心に浮かんだ。逢ったばかりのふたりは、まるで何年も連れ添った恋人のように、相手を癒し続けた。
水滴がしたたり落ちた。血がざわめく。いつのまにか、辣の掌が、綾の下腹部に添えられていた。
ゆっくりと瞼を開いた。熱く濡れた綾の瞳が、美しく輝いた。痺れるような快感に、全身が鳥肌たつ。

可憐な形状をした姫胡桃の亀裂に、辛は雄雄しくそそり立つ男根を押し付ける。綾の激しい心臓の鼓動が耳に届いた。
「こ、怖いです……」
「怖がる事は無い。ゆっくり息を吐いて力を抜くんだ。緊張すればそれだけ痛むぞ」
立ったままの姿勢で、辣は綾の両股を持ち上げた。艶やかな薔薇色の玉冠部を桜色の花弁に時間をかけて挿入する。
入り口が狭く、粘膜内部には小さな突起が無数に存在していた。男根をきつく圧迫する肉花を押し分けながら、辣は慎重に腰を進ませていく。
綾が背筋を仰け反らせ、辣の背中に爪を立てた。痛みに必死で耐えているのだ。

痛みに耐える綾の相貌は、なんとも言えぬ美しさが漂っていた。
三十分ほどかけてやっと半分が埋まった。出血はそれほど多くは無い。破瓜の血が、湯に混ざって排水溝に吸い込まれていった。
身を引き裂かれる苦痛すらも、愛しい歓びへと昇華していく。
「ああ……あああ……ッ」
こみ上げる切なさに、綾はおもわず声を発した。官能の渦に理性が呑み込まれていく。苦痛と快楽が綯交ぜとなって綾に襲い掛かった。
綾の脳裏深くに野原で戯れる夫婦蝶の光景が流れた。互いの舌がもつれ、絡み合い、口腔内で行き来する。
辣はゆるゆると男根を引き抜いた。首筋や顎に、べっとりと濡れて張りついた髪をそっと撫で上げた。

362 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:45:45 ID:cAz/VH2l
おれはいつも飲んだくれていたい男、俺の人生あまりに惨めだ 
おれはいつも飲んだくれていたい男、俺の人生あまりに惨めだ
もしも生き方を変えられるなら、とてもありがたいことだけれど 
おふくろの家を出てから、俺は追い立てられ通し 
おふくろの家を出てから、俺は追い立てられ通し
悪い女とどうして俺は手がきれないのかわからない 
おやじが死んで、かわいそうなおふくろが一生懸命にやってくれた
おやじが死んで、かわいそうなおふくろが一生懸命にやってくれた
誰しもラブは好きだろうけど、ちっともためにはならないものだ
おれはいつも飲んだくれていたい男、その原因は罪なんだ
おれはいつも飲んだくれていたい男、その原因は罪なんだ
悪い女で弱気になったら、それが男の身の破滅
 

ロバート・ジョンスンのブルース『Drunken Hearted Man』に耳を傾けながら、辣がスピリタスを呷った。
喉仏が上下するたびに、酒が臓腑へと送り込まれる。外ではクリスマスの夜に浮かれ、騒ぐ声が聞こえてきた。
流れるクリスマスソングが店内のブルースと混ざる。折角の酒がまずくなりそうだ。苛立たしいことこの上ない。
クリスマスほど侘しいものはない。クリスマスなんか糞食らえだ。
胸裡に眠る幸江と一緒にすごしたクリスマスの思い出は、今の辣にとってはただ、重苦しくのしかかってくるだけだ。
もう一度、スピリタスのボトルを傾けてラッパ飲みする。心臓が胸板を激しく殴打した。こめかみの血管が疼いた。
様子を見ていた綾が、辣の手からスピリタスをボトルごとひったくった。辣が舌打ちする。
「もうこれ以上飲んだら体に毒ですよ……」
「まだ飲み足りないんだ。飲ませてくれよ」
醒めた表情で綾の瞳を見据えながら、辣はボトルに手を伸ばした。綾が素早く身をかわした。
今日ですでに九本目のボトル──辣が酒に強いとはいえ、これでは身体を壊してしまう。辣は極度のアルコール依存症だった。
「いい加減にしてください。辣さん、こんな事では身体を壊してしまいます」
「俺の身体は……壊れるほど上等なもんでもない……いいから返してくれ」
それでも綾はボトルを離そうとしなかった。余計なお節介だった。辣の苛立ちが募った。その苛立ちも、すぐにどうでもよくなってきた。
身体が酒を要求した。酒を飲めと脳細胞のひとつ、ひとつが訴えてくる。このまま酒に溺れたい。酒に溺れて何もかも忘れてしまいたい。
辣は切に願った。酒を飲んで飲んで飲み続けて、死んでしまいたかった。辣は慢性的な自殺願望者だ。
ドラッグ、あるいはアルコールに耽溺する者は、真綿で首を絞めるかのようにゆっくりと自らの足で、死への道を歩み続ける。
綾にもそれがわかった。そうだ、生きているということは哀しい。自分で選んだ孤独は心地良いが、他人に与えられた孤独は苦痛でしかない。
目の前に広がる世界が灰色でしかないなら、人は何を思って生きていかなければならないのだろう。

363 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:46:18 ID:cAz/VH2l
人は互いに寄り添い慰め合うのだ。人は孤独と悲しみを分かち合う誰がいなければ生きてはいけない。
男は女を、女は男を求め、慰め合う──それが男と女だ。だが、辣の背負う孤独はあまりにも深すぎた。
愛しい人の孤独を癒せぬ無力感──綾の痛切な思いは辣の心には届かない。胸が張り裂けそうだった。去ってしまいたくなる時もあった。
それでも──綾は辣から離れられないでいる。初めての人だ。処女を奉げた相手だ。女の哀しい性だった。
──いや、綾は魅了されたのだ。辣の悪魔の如き極悪なまでの美貌と、綾にとって現実離れした、その取り巻く世界に。
世間知らずだった綾にとって、辣の存在そのものがあまりにも毒々しく鮮烈だった。あらゆる悪徳に身を染めし者は、美徳と魅力を兼ね備える。
辣はアウトサイダーだ。社会からのはみ出し者だ。少なくとも善人ではない。だからこそ色気がある。では色気とは何なのか。
辣と出会い、綾は理解した。色気とは孤独であり、腐敗だということを。孤独は人間を腐らせる。色気の本質とは腐臭なのだ。
綾から酒を取り戻すのを諦め、辣はマホガニー製のカウンターを叩き、バーテンに新しいボトルを持ってくるように言った。
「それよりも辣さん、注文の品が手に入りましたよ」
バーテンがウイスキーグラスを磨きながら、綾に眼をやった。思わず、綾が視線を逸らす。
「この女の事は気にするな、俺の情婦だ……それよりも四番のペイ(ヘロイン)、見せてもらおうか」
四番ヘロインとは八十%〜九十九%以上の高純度のヘロインを指す。
逆に六%未満の低純度ヘロインを三番ヘロインと呼ぶ。辣が綾にむかって顎をしゃくった。あっちにいっていろという合図だ。

バーテンと辣はカウンターの奥にある部屋へと消えていった。五分ほどでふたりが戻ってきた。
「いくぞ」
辣が綾の肩に手をかけた。そのまま店を出る。路地を少しばかり進むと客待ちのタクシーを見つけた。手を降ってみせる。
運転手が相好を崩した。タクシーのドアが開く。リアシートの冷えた感触が尻を撫でた。極彩色に輝くネオンが横顔を照らす。
「お客さん、どこまでいきましょうか」
「適当にそこらを流してくれ」
運転手はいぶかしげな表情を作ったが、黙って言われたとおりに車を走らせた。辣が綾の指先に自分の指を絡ませた。
湿り気を帯びて、しっとりと濡れた滑らかな辣の指が、綾の白い指の付け根を揉んだ。
女の裸体を愛撫するような繊細でエロティックな指の動き──綾の女芯がじわりと熱くなる。
「はあ……んん……ッ」
運転手が横目でふたりをみた。何やら物欲しげな顔つきだ。辣は運転手に、綾の唇をわざと下品に舌で嬲って見せてやる。
太腿に手を伸ばした。充血する運転手の眼。中年ドライバーの舐め回すような視線に晒され、綾が身悶えた。
そこで携帯が鳴った。運転手はお楽しみが中断されたことに不満の表情を浮かべた。
無視して携帯を取り出し、耳に当てる。隣では綾が瞳を潤ませていた。
「辣、仕事だぜ。圭子が客を紹介してくれてな、圭子も一緒だから今夜は3Pだ。とりあえず圭子のマンションにいってくれ、迎えがくるはずだ」
早口でまくしたてる高津の耳障りな声が鼓膜に突き刺さってくる。相変わらずむかつく声だ。
「わざわざ、マンションで待ち合わせてホテルにいくのか。まどろっこしいな。悪いが連れがいる。4Pに変更し直してくれ。嫌なら断るぞ」

364 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:46:51 ID:cAz/VH2l
「連れがいるって、誰だよ、また女か?」
「お前には関係ない。駄目ならもう一度かけ直せ。OKならかけるな。じゃあ、切るぞ」
一方的に携帯電話を切った。キャメルを咥え、火をつける。最後の一本──キャメルのパッケージを握りつぶす。ラクダの絵がひっしゃげた。
綾の耳元に唇を近づけ、耳朶を舐めた。熱い息を吹きかけ、耳孔を舌先でつつく。
「俺の仕事に興味があると言っていたな。丁度いい、どんなものか綾に教えてやろう」
運転手に目的地をつげる。万札を二枚差し出し、もっとスピードをあげるように急かした。諭吉ふたり分の効果は大きい。
通常の半分ほどの時間で圭子のマンションに到着した。マンションの入り口に黒いメルセデスが停止していた。
車の横に立っていた若いブラックスーツの男が声をかけてくる。がっしりとした体躯の持ち主だ。
呼びつけた客のボディーガード兼運転手なのだろう。少し窺えば勘の良い者であれば、男に隙がないのがわかる。
「失礼ですが、辣様でございますか?」
「ああ、そうだ」
「お迎えに伺いました。さあ、どうぞお入りください」
恭しくベンツの後部座席のドアを開き、どうぞとふたりを促した。ベンツに乗り込む。本革を使っているのか、座席の座り心地はよかった。
イブ・モンタンのシャンソンが静かに流れている。ムードがあった。悪くはないが気取っている。車は世田谷方面へと向かっていた。
閑静な住宅街にはいると、豪奢な煉瓦作りの邸宅前でベンツがストップする。ベンツのドアを開き、ロートアイアン風の門扉の前に降り立った。

敷地を見回した。最低でも四百坪はある。圭子は上客を紹介してくれたようだ。玄関のドアが開かれ、メイド服を着た端麗な容姿の少女が現れた。
紺色の衣装にフリルのついた白いエプロンとカチャーシャが少女のイメージに良く似合った。綺麗にカットされたショートヘア、
目鼻立ちがくっきりとした端正な顔に切れ長の二重瞼の黒い瞳、ウエストからヒップにかけての曲線が艶ましかった。
ある程度は男を知っている身体つきだ。辣がメイドの少女を眼で口説いた。一瞬、陶然とした面持ちを作る少女。数秒の時が流れ、少女が我に返った。
「も、申し訳ありません……つい、見惚れてしまって……お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
広い玄関ホールに入り、二階へ続く階段を昇っていく。案内された階段脇にある部屋──二重扉を通った。
天蓋つきの豪奢なベッド、緋色の厚いビロードに覆われた床と壁、室内には薄暗い光が燈されていた。
窓際の籐椅子にひとりの女が座っている。その傍らには圭子の姿があった。圭子と女はシルクの薄いブルードレスを身に着けていた。
「いらっしゃい、辣。そっちの女の子がさっき、高津さんから伺った子かしら?」
圭子は笑みを浮かべていたが眼だけは笑っていなかった。きつい視線が綾に突き刺さる。それは綾に対する嫉妬の視線だ。
それでも綾は怯まず、毅然とした顔つきで正面から敵意の視線を受け止めた。優越感の為せる行為だ。
「綾と言います。どうぞよろしくお願いします」
綾が圭子と女に軽くお辞儀をした。女が妖しい微笑を返す。物腰が静かな雰囲気の上品そうな女だ。美しい富士額と細面の顔のなかに飾られた
眼、鼻、口は小作りで全体がバランス良く整っている。薄茶色の長い髪の毛がセクシーだ。
実際の年齢より十歳は若く見える。それでも圭子より大分年上だと辣は見当をつけた。相手の雰囲気でわかるのだ。
二十代後半、三十手前だろう。新鮮な肉もうまいが、熟した肉もまた味わい深い。
ドレスの下に隠れてる柔肉はどんな味がするのか。いや、それよりもこの女からどれだけ金を引っ張れるかだ。
(この女、俺の情婦にすりゃどんどん貢ぎそうだな……)


365 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:47:53 ID:cAz/VH2l
辣の本職はスケコマシだ。女に貢がせてナンボの商売なのだ。スケコマシの語源とはスケ(女)にコマセ(餌)をまく事から来ている。
コマセは快楽であり、セックスを指す。己の股間の一物を竿にしてコマセをまいて女を釣り上げるのがスケコマシのスケコマシたる所以だ。
女から貢がれないのはただのスケベというものだ。スケコマシは女で稼いで始めてスケコマシなのだ。
スケコマシ、ジゴロは関東の極道社会においては外道と呼ばれ、蔑まれる。逆に関西ではスケコマシは立派なシノギの一つとして数えられる。
「……圭子さんから聞いていたけど、本当に美しいわ。オスカーワイルドじゃないけど、まるで象牙と薔薇の葉で作られたようなアドニスよ」
「それは『ドリアングレイの画像』に出てきたヘンリー卿のセリフだろう」
「貴方、ワイルドを読むの?」
以外といった顔つきで女が辣に聞き返す。どうやら綺麗な顔だけの男と思われていたようだ。辣は腹の底で苦笑した。
「まあ、多少はな」
やや皮肉を込めて言ってやる。女の表情が一瞬、強張った。こういう類の悪意には敏感な性質なのだろう。
「……クラシックはお好き?」
「クラシックよりもハードロックがいい。スリップノットか、マリリン・マンソンはあるか。なければロブ・ゾンビでもかまわないぞ」
「ごめんなさい。ないわ」
「あるとは思っちゃいないさ、それよりも本来の目的に戻ろうか。服を脱ぎなよ、それともドレスを着たままでセックスするか?」
ドレスの背中に手を回し、人差し指でつうっとなぞっていく。女が欲情しはじめるのを見抜くと、辣は細い首筋に軽くキスをした。
「んん……キスがとっても上手なのね……」
「いい肌だ。あんた、今までどれだけの男にこの肌を揉んでもらったんだ」
「ふふ、内緒よ……ねえ、名前で呼んで……由梨って……」
「由梨……由梨のおマ○コを味わってみてえな。パックリと割れた由梨のおマ○コに俺のナニを突っ込んでやりたいぜ」
由梨を椅子から立ち上がらせると、背中のファスナーをおろしていく。辣が圭子と綾に命じた。
「圭子も綾も黙って見てないで服を脱げよ。それとも俺としたくないのか」

圭子と綾が衣類を脱ぎ始めた。女達の甘美な香りが室内に満ち溢れ、辣の鼻腔に入り込む。香水と体臭が混ざった独特の甘い匂いだ。
「この香水の匂い……ゲランの『夜間飛行』だな」
「そういえば、圭子さんから聞いた話では貴方、背中とペニスに刺青をいれているらしいわね、見せてよ」
「いいだろう」
辣はハーフコートを剥ぐように脱ぎ捨てると、さっと向きを変えて背中の彫り物を由梨に見せた。蒼墨は濃く、紅はなお鮮やかな、親子竜のその姿。
「天才彫師と呼ばれた初代彫三が俺に残していった最後の作品だ。さあ、その眼でとくと拝みな」
        *  *  *  *  *  *
仁王立ちの姿勢で辣は女達に奉仕をさせていた。由梨が亀頭を咥え、圭子が肛門を舐めしゃぶる。由梨が舌を尖らせ、鈴口をつついた。
尿道から分泌されるカウパー液を唾液と一緒に喉を鳴らしてすする。
「あれだけしたのにまだ勃起してるなんて、本当にタフなのね……それにこの水仙の花もすごくエキゾチックでいいわ……」
負けじと圭子も激しく肛門を責めたてる。ベッドの上では失神し、顔を赤く染めながら仰臥する綾の姿が見えた。
「圭子、そんなに舐めたら俺の肛門がふやけちまうぞ。お返しに圭子のいやらしいアヌスをたっぷりと俺の舌とナニで可愛がってやる。
尻をこっちに向けな。由梨も舐めるのをストップして圭子と一緒に尻を並べろ」
「ふふ、またナメナメしてくれるのね……嬉しいわ……」

366 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:48:27 ID:cAz/VH2l
「次はどんな事をしてくれるの……」
圭子と由梨が四つんばいになり、尻を並べた。豊かに稔る四つの白い果実に両手の指を這わせ、辣が感触を味わう。柔らかく肉厚で豊満な美尻だ。
瑞々しくて弾力がある肌は、きめ細かくなめらかで光っていた。ふたりとも文句のつけようがない女盛りの臀部をしている。
「ふたりとも、自分の手で尻を開いてみろ」
「は、恥ずかしい……」
由梨が吐息を漏らしながら、ぐいっと尻肉を割り開く。茶色いイソギンチャクのような肛門と、真っ赤に熟れた襞肉が淫欲をそそった。
顔を近づけ、香りを堪能する。淫らな雌の刺激的な匂いが鼻をついた。男心を痺れさせる発情した女の匂いだ。
「いやらしい匂いがプンプンするぞ。この匂いで男を誘うのか」
「ああ、そんな事言わないでちょうだい……」
子供が駄々でもこねるかのように由梨は尻を振りたてた。舌で蟻の門渡りを舌でゆるやかに舐めた。
「あ……あああッ……あ……ッ」
ふっくらとした由梨の唇から法悦の呻き声が洩れはじめる。肝心の秘所とアヌスには触れないように絶妙な舌使いでじらしながら、辣がほくそ笑んだ。

長時間かけて門渡りを舐め続けていた辣は、次に肉の割れ目に舌を挿入し、右手を股の間にくぐらせた。
薄い皮に包まれた肉の芽──皮の上から触れるか触れないかのタッチで優しく撫でる。由梨が背中をぷるぷると震わせた。
あまり強い刺激を与えず、最初はゆっくりと感触を楽しみ、徐々に激しくしていく。こうしたほうが強い快感を得られる。
セックスとは何も射精だけが目的ではない。眼で見て、肌で触れて、舌で味わい、肉の喜悦に戯れる。深い快感を伴ってこそのセックスだ。
「はううッ……お願い……貴方のを入れてちょうだい……このままじゃあまりにも切ないわ……」
甘い嬌声を搾り出しながら、由梨が哀願した。蜜液がこぼれる襞肉から舌を抜き、口元を拭うと辣は圭子の尻に視線を移した。
「まだ待ちなよ。次は圭子の番だからな」
ラブジュースまみれの熱く濡れた由梨の肉穴に中指を差込みながら、辣が答えた。指を折り曲げ、ねっとりと粘つく膣壁をほじる。
「くうぅ……ッ」
由梨が鼻で鳴いてみせる。甘酸っぱい雌の粘液が中指から手の甲にまで伝っていった。
「ああ、嬉しい。辣、早くあたしのお尻を苛めて……」
大胆に尻を突き出し、自分の尻肉を左右にくつひろげながら圭子が肛門を収縮させて誘った。内臓まで見えそうだ。
口をパクパクとさせる開閉させる後ろの穴がユーモラスで愛くるしく感じられた。
真っ白い尻に隠された濃い菫色の排泄器官が淫猥な雰囲気を増していく。顔面を柔らかい尻肉に押し付けると、秘所を無視して肛門に舌を突き刺す。
「いひぃッ……さ、最初から激しいのね……ああッ……」
唾液を肛門にたっぷりと送り込みながら、奥のほうへと舌をねじこむ。直腸内部をえぐられ、圭子が上体をのけぞらせた。
「相変わらずたまらない尻の穴だ」
ドリルのように固く尖らせた舌でかき回し、唇を吸いつけて襞を吸った。内臓が吸引されるような激しい衝撃に圭子が目尻から涙を流す。
延々と肛門を舐めしゃぶられ、ついに圭子がけたたましく叫んだ。
「ああ……ッ、たまらないわ、入れてッ、辣のチンチンが欲しいのッ!」
「おいおい、順番だろう。次は由梨にいれてやる番だぜ。生憎と俺のナニは一本しかねえんだ、我慢しな」

367 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2006/12/24(日) 17:51:04 ID:cAz/VH2l
指を勢い良く抜き出し、由梨のうねる豊かな腰を両手でしっかりと抱いて一気に怒張を熟れた襞肉へと叩き込んだ。
「ひああぃ……ッ、し、死ぬッ、死んじゃう……ッッ!」
全身の肌がビリビリとひりつくような、凄まじい衝撃が股間から襲い掛かってきた。圧倒的な肉の塊に身体を貫かれる。
金切り声を響かせ、爪で床をかきむしりながら由梨が尻をゆすった。辣が荒々しく腰を叩きつける。子宮が粉々にくだけてしまいそうだ。
「あああ……ッ、こ、壊れるぅぅッ、壊れちゃうッッ!」
美しい裸身を汗で光らせながらわなないた。充分な愛撫を施せば、女はたったひと突きでアクメに達する。中出しされたと感じた次の瞬間、
堪えに堪えていた快美が怒涛の如く押し寄せ、由梨の脳天を直撃した。純白なる世界が由梨の目の前に広がっていく。
床にくず折れた由梨は眼球を上擦らせた状態のまま、裸体を痙攣させた。膣壁から引き抜かれた男根にはスペルマの残滓がこびりついていなかった。
空打ちだ。辣はある程度までなら射精もエレクチオンも自由にコントロールできる。青い血管が浮き出た、力強く脈打つ肉根の鼓動が圭子にも伝播した。
「次は圭子の番だな。忍び茶臼としゃれこもうか」
床にあぐらをかいた辣が圭子に向かって両手をいっぱいに広げて見せる。立ち上がり、圭子が辣に向かい合った。
またぐようにして座り、自分で肛門に男根を迎え入れる。対面座位の体勢だ。お互いの首に手を回し、きつく抱き合った。
女の欲望に潜む強烈な情念の業火が、圭子の芯を灼き焦がしていった。首に巻かれた圭子の腕──首の骨がへし折れそうだ。
突き上げた。何度も何度も激しく突き上げた。獲物を追い詰める狩人のように、辣の男根が猛り狂いながら駆け抜けた。
肛門を貫きながら、圭子の薄い唇を舌でつついた。すぐさま舌を絡める。唾液を流し込み合い、すすった。
唾液、愛液にアヌスの饐えた匂いが混ざり、鼻を突く。内臓の味と匂いだ。生き物の味と匂いだ。
「愛してる……ッ、辣、ああ……ッッ、お、お尻がめくれるぅぅ……ッ!」
腸管を圧迫される衝撃と快感に圭子は乱れ狂った。睫を切なげに震わせる。灼けつく直腸粘膜の刺激に息も絶え絶えに圭子が呻く。
今度は本物のザーメンを内部にぶちまけた。白い炎が圭子の網膜を灼いた。
「あああ……」
悶絶し、由梨と同じく床に後ろから倒れた。窓際を見ると外では雪が降っている。辣は吐き捨てるようにつぶやいた。
「バスタードメリークリスマス」

410 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/02/11(日) 21:42:59 ID:QHC+/ezi
         *  *  *  *  *  *
職安通りを渡って大久保にある焼肉店『叙客苑』に入った。辣は奥まった席に座った。無愛想な婆さんが無言で古びたメニューを投げてよこす。
メニューを見ずにマッコリを注文した。コップに注がれる白く濁った液体──運んできた酒を婆さんがぞんざいにドンとテーブルの上に置いた。
酒の表面が波立った。少しだけこぼれる。一息に飲み干した。薄汚い店だが、酸味のきいたマッコリはうまかった。これなら子供でも飲めるだろう。
いくらでも飲めそうだった。気に入った。万札を財布から何枚か抜き出し、婆さんに放り投げた。ついでにガラスのコップも床に叩きつける。
コップは良い音を立てて砕け散った。婆さんの顔色が見る見る内に、青白く褪色していく。心臓麻痺でも起こしかねない表情だ。
冷凍マグロのように硬直する婆さんに向かって、平然と辣が追加の注文をする。ガラスのコップを叩き割ったのはほんの気まぐれだ。
「一升瓶ごと持って来い」
タバコに火をつけながら、辣はいつもの癖で首を鳴らした。黒々としたでかいゴキブリが、素早く壁を横切っていく。よほど餌がいいのだろう。
口と鼻からタバコの煙を吐き出した。飛び散ったガラス片をホウキで片付けながら、婆さんがブツブツと文句を垂れる。うるさい婆だ。
「このヤクザのチョッパリ……」
辣は聞き流した。待ち人はまだ来ない。二本目のタバコに指先が伸びた。同時に、埃のかぶったアクリルの自動ドアが開く。
ドアの向こうからは見事に禿げ上がった頭をさすりながら、卑屈な笑みを浮かべる情報屋の森田が現れた。上目遣いに辣に視線を向ける。
「久しぶりです。辣さん」
朝鮮訛りの日本語で森田が辣に挨拶した。向かいの席に座り、せわしなく眼を左右に動かす。挙動不審だ。ヤクでも切れたのか。
「森田、面白い話ってのはなんだ」
辣が、感情の篭らない声で話を切り出した。森田の眼が爛々と輝く。歯槽膿漏で赤黒く腫れた歯茎をむき出しにして、森田は喋り始めた。
早口でまくしたてる森田──不潔な唾が頬に飛んできた。それでも辣は顔を背けず、話に耳を傾ける。
口腔内から放たれる悪臭は、腐った生ゴミの匂いのほうがまだマシだ。相変わらず不愉快な気分にさせてくれる匂いだった。
「やっこさん、いま自分のスケのヤサに転がり込んでるらしいんですよ。よっぽど恐ろしいんでしょうね。辣さんが」
サディスティックに口端を歪め、森田が忍び笑いを漏らす。こういう手合いにとって、他人の不幸は文字通り蜜の味がするのだ。
卑屈で薄汚い森田──見ているだけでぶん殴ってやりたくなる。タバコをくわえた。一升瓶に入ったマッコリが運ばれてくる。
森田が素早く百円ライターで辣のタバコに火をつけた。付き合う理由──森田は確かにむかつく男だが、無能ではない。仕事も如才なくこなす。
使える手駒は大いに越したことは無い。マッコリに口をつけ、一升瓶ごとラッパ飲みする。いちいちコップに注ぐのは面倒だ。
「ヤサも突き止めましたよ。詳しいことはこいつに書いてます」
森田が左手に握っていた紙切れと二本のキーを辣に手渡した。受け取った紙切れ、書いてある住所を暗記した。丸めて口の中に放り込む。咀嚼した。
喉仏を上下に蠢かせ、紙切れをマッコリとともに嚥下する。森田の不気味なモノでも見るかのような視線──どうでもよかった。
「報酬だ。持っていけ」
懐から金の入った封筒とヘロインのパックを二つを掴み、森田の目前に突きつける。餌を貰った野良犬のように息を荒げ、森田が何度も頭を下げた。
あらかた飲んだマッコリの一升瓶をテーブルに転がした。イスから立ち上がり、森田を一瞥すると辣は店を出た。
「しかし、倉木の野郎も馬鹿だよな。よりによってクレイジードラゴンの女に手あげるなんてよ」

411 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/02/11(日) 21:45:08 ID:QHC+/ezi
        *  *  *  *  *  *
辣は西永福にあるマンション前で、静かに夜空を見上げていた。ターゲットの部屋──明かりがついているかどうかを確かめる。
六〇九号室の明かり──ついていた。黒革の手袋を両手にはめて辣が行動を開始した。オートロックのドアをキーで解除し、エレベーターに乗り込む。
降りた。六〇九号室──ドアに耳を当てて気配を探った。男の荒い息遣い、女の喘ぎ声──セックスの真っ最中のようだ。丁度いい。
鍵を開けて一気に部屋の中に飛び込んだ。フローリング──倉木が女の身体にのしかかって、励んでいた。倉木と女が突然の侵入者の姿に驚愕した。
「あ、あなた誰よッッ!」
驚いた女がヒステリックに叫んだ──無視して辣は倉木に歩み寄る。凍てつく倉木の表情。辣が赤く薄い唇を歪めた。嗤っているのだ。
「倉木。よくも俺のスケに手あげてくれたな。可哀相によ。晶子の奴、三週間は店に顔だせねえってよ。おい、この落とし前どうつけるつもりなんだ」
倉木が声帯を震わせ、空中に視線を泳がせた。
「ゆ、許してくれ……まさかあんたの女だってのは知らなかったんだ……」
勃起していた倉木のペニスが萎縮し、女の秘所から抜け落ちた。赤ん坊並みのサイズに縮こまったペニス──爪先で蹴っ飛ばした。
「うぎゃあぁぁぁぁッッッッ!」
激痛に倉木が絶叫した。苦悶に充血する眼球をせり出し、フローリングの上でのた打ち回る。倉木の生白い脇腹を抉るように蹴った。蹴った。蹴った。
蹴った。蹴った。蹴った。蹴った。蹴った。蹴り続けた。絶叫、悲鳴、狂乱、絶叫、悲鳴、狂乱。倉木の身体がバウンドした。女が喚いた。
脇腹、太腿、肩、辣は滅茶苦茶に蹴りまくった。それでも、倉木がくたばらないのは辣が手加減しているからだ。
「馬鹿野郎。知らねえですまされる話か。テメエ、女相手によくもあそこまで痛めつけられたな」
太腿を何度も執拗に蹴る。真紫に変色する太腿。唾液と血の糸を垂らしながら、倉木が濁音交じりの声で辣に詫びを入れた。
「ず、ずびばぜんでじだぁぁ。お、お願いでずぅぅ、が、勘弁じでくだざいィィィッッ」
涙と鼻水、涎と血で顔面をドロドロに汚し、幼児のように泣き喚く。辣が蹴るのを止めた。倉木が頭を抑え、怯えながら辣を上目遣いに見る。
「立て」
ドスの効いた低い声で辣は倉木に言った。倉木がおずおずと立ち上がった。その刹那、辣の拳が唸った。倉木が吹っ飛び、後ろの壁に激突する。
顔面の皮が斜めに裂けた倉木──白眼を剥いて失神していた。引きちぎれた歯茎がピンクの肉を覗かせ、砕けた前歯が肉片にプラプラぶらさがっていた。
おびただしい血液が溢れ、フローリングに広がっていく。辣は吹っ飛んだ倉木に近寄り、靴底を睾丸めがけて叩き落した。
グチャッ、と陰嚢が潰れた。裂けた陰嚢から飛び出した網目状の血管に覆われた白い楕円の球体──倉木の精巣だ。
精巣が湯気を立ててフローリングに張り付いた。出血が倉木の太腿を赤く濡らした。
「いいか、よく覚えておけ。次は殺すぞ」
幽鬼の如く冥く彩られた辣の瞳が、女の心臓を鷲掴んだ。恐怖のあまり、歯茎の根が合わぬ女に向かって起伏の無い冷たい声を放つ。
「警察呼びたきゃ呼べや」
         *  *  *  *  *  *
──幸江、幸江……
──ああ、辣、辣……
魂がゆらゆらと揺らめいていた。辣が幸江の裸身を両腕で強く抱きしめる。ふたりは裸体を躍らせながら深く結合した。辣が荒々しく幸江を責めた。
圧倒的な極彩色の輝きが、ふたりを照らした。性の営みすら超越していた。この世のものならぬ美しき光景だった。哀しき光景でもあった。

412 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/02/11(日) 21:49:21 ID:QHC+/ezi
それは男女の魂の愛執だった。互いを求め合う男女の魂の愛執だった。ふたりの魂が溶け合った。茫々とした光の大海原が遥か彼方に映った。
溶け合った魂がゆっくりと分離した。辣が手を差し伸べた。だが、幸江はどんどん辣から離れていく。もがいた。
精一杯、手を伸ばして幸江の手を掴もうとした。どれだけ手を伸ばしても幸江には届かなかった。辣があらんかぎりの声を上げて叫んだ。
──幸江ェェェッッッッ、いくなッッ!いかないでくれェェェッッ!
絶叫──辣がベッドから跳ね起きた。心臓が激しく暴れまわった。夢だった。目頭を強く押さえて深く呼吸する。こめかみが疼いた。
無数の汗が毛穴からじわりと噴き出る。ベッドから降りた。ベッド脇のサイドボードに置いてあった飲みかけのジャックダニエルを引っ掴む。
脂汗まみれになった身体──不愉快にベトついた。冷たいシャワーを浴びたかった。バスルームにはいり、シャワーのコックを捻る。
頭から冷水をかぶりながら、辣はウイスキーをかっ食らった。
         *  *  *  *  *  *
「珠美、晶子の具合はどうなってんだ?」
「お医者さんが言うにはあと五日くらいで顔の痣は消えるって。怪我も大体は治ったわ」
「そうか。とにかく大事にしてやってくれ。あいつにゃ家族もいるんだ。店に出られるまで俺達がキチンと面倒みてやらなくちゃいけねえぞ」
「わかってる」
辣が財布ごと珠美に手渡した。ずっしりと重い本革の財布だ。七十万は入っているだろう。倉木から巻き上げた金だった。
「晶子の治療費やらなにやらで色々物入りだっただろう。そいつ、何かの足しにしてくれ」
珠美が受け取った財布を自分のバッグに押し込んだ。窓から差し込む陽射しが眩しかった。太陽の光が辣の瞼の裏を灼いた。身体がだるい。
「それよりも辣……」
何かを言いたげに珠美が身体をモゾモゾと揺すった。溜まっているのだろう。ここ一ヶ月間、珠美を抱いてやっていない。
「我慢しろ、珠美。夜になったら全員まとめて可愛がってやるからよ」
「だけど夜まで我慢できそうにないのよ……」
「しょうがねえな。それなら少しばかり可愛がってやるよ。ただし、セックスはまだお預けだ」
辣の身体にしなだれかかり、珠美が甘えるように鼻息を鳴らした。
クリスチャンディオールのプワゾンに混ざり合った珠美の汗の匂いが鼻腔をかすめた。
ワインレッドのフレアスカートを持ち上げる。ショーツに手をかけて引きおろした。白い臀部を撫でさすりながら、服の上から乳房を握る。
「気持ちいい……」
尻から後ろへと指を移動させた。割れ目には直接手をつけずに、辣は周りの軟肉を指でなぞった。珠美の細い首筋に口唇を滑らせた。
「くく……んん……ッ」
うなじと耳たぶを舐めれば舐めるほど、珠美の肌が発熱する。秘園に中指を入り込ませた。中は熱く湿っている。
「ああ……」
数回ほど女の器官をいじくられただけで、珠美は軽く達してしまった。辣が指を抜く。指は珠美の愛液にまみれていた。
「夜になったらちゃんとおまんこを舐めて、ナニも嵌めてやるからな。もう少しだけ耐えろ」



夜が更けていった。闇は艶やかな帳を垂らし、街を見下ろす。白金台にある高級マンションの一室──充満する悩ましい性の香り。
淡いルームライトに照らされた室内──裸になった十人の男女の姿がそこにあった。
ひとりの男──辣に9人の女達が群がる。

526 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/02/22(木) 01:40:30 ID:csa0A0Rm
『大空をたまげるばかりの輝きは死の輝きにほかならない。私の頭は空中でふらつく。
         頭が激しくふらつくのは死のなかに勝る場所はないからだ』
                        ──ジョルジュ・バタイユ「聖なる神」


辣が射精制御剤──亜硝酸アミルを服用した。ベラドンナカクテルの混ざったワインコブレットを掲げ、辣は女達に一口ずつ啜らせていった。
肉の群れ。肉の波が唸った。ディオニュソス的な狂乱の宴。女達の横溢する愛と快楽への欲求。一匹の竜を囲み、女達は肉欲の愛に溺れていく。
異様な光景だった。神聖な光景でもあった。神を敬愛する信者が祈りを捧げているようだ。ここにいる者達は全てがフリークスだ。
どこか歪なのだ。歪なのは彼等の心だった。美しくも歪んだ真珠のような女達。精神的畸形者の群れ。
姿形こそ正常ではあるが、その精神は跛者といってもよい。弱者──神に見捨てられた者達は互いに寄り添いあった。
ここにいる女達は、悲しい運命を背負って生きてきた者達だ。
胸奥深く刻まれた女達の暗い過去──辣は全てを承知し、その身に呑み込み収めた。不幸な女達だった。
男に騙され続けて全てを失い、身も心も疲れ果てた女。病気の家族を養うために自分の身体が壊れるまで売り続けた女。
レイプされて性器を滅茶苦茶にされた挙句、付き合っていた男に捨てられた女。
クスリをヒモに打たれ続け、客を取らされながらヒモがふるう暴力に、ただ咽び泣き続けた女。
幸福とは片手の指ほどにも無いが、不幸は星の数ほど存在する。それがこの世の常だ。どこかで人は狂わなければ生きてはいけない。
辣はそんな不幸な女達を救い出し、守った。守り続けた。それは辣が生来から持つ優しさだったのかもしれない。
禁断症状に苦しみ悶え、暴れ続ける女を何日も飲まず食わずで看病し、吐き出される吐しゃ物にまみれながら抱きしめてやった事もあった。
傷つき、排泄物で汚れた性器とアヌスを何十時間も舐め続け、癒してやった事もあった。
もっと酷い目にあってきた女もいた。辣は黙って女達を受け入れた。何も語らず、ただ偽りのない愛だけを女達に与え続けた。
もっとも、辣はそれを意識して行ったわけではない。救いを求められたからそうしたまでの話だった。
女達はそれを愛と受け取った。限りなく深い愛として受け取ったのだ。そして女達は辣にすがりついた。あたかも、神にすがりつくかの如く。
並の男ではどだい無理な話だ。辣のような狂った男だからこそ出来るのだ。狂人とは、同時に宗教家でもある。
アウトサイダーの優しさは、時として聖者の如き慈悲を垣間見せるものだ。辣が傍らにいた静美に口づけをしながら、労わるように髪を撫でつける。
女達の無数の指先と舌が辣の身体中の皮膚をまさぐり、愛撫する。男根の先を珠美が咥えた。美紀と紗枝子が同時に睾丸に舌を這わせる。
背筋に押し付けられる伸子の豊かなバスト、尻の表面をさする璃夏の掌、肛門を舌腹で刺激する麗衣那、辣の太腿に自分の太腿を絡みつかせる緋織、
一心に辣の乳首を赤ん坊のように吸う鈴子。辣はコブレットを空中に放った。コブレットが回転しながらカクテルを撒き散らす。
男根に咲いた水仙を珠美が唾液で丹念に濡らした。唾液で艶々と輝く男根は天を突かんばかりに屹立し、猛々しかった。
辣の男根はそれほど大きくはない。一五センチあるかないかだ。並のものよりは大きい程度だろう。男根の形状が見事なのだ。
特に亀頭の傘が恐ろしく発達していた。傘が横にぐっと突き出ている。女殺しの業物だ。それが女達を喜ばせる。狂わせるのだ。
「俺への愛撫はもういい。それよりもお前達を抱きたい。最初は静美、お前からだ」
尻の割れ目を沿りながら、静美の尾てい骨を指先で強く押した。数秒間ほどで静美の割れ目が濡れてくる。舌を鼻腔にこじいれた。

527 :ラック ◆duFEwmuQ16 :2007/02/22(木) 01:41:16 ID:csa0A0Rm
「あくッ!」
鼻腔の立派な性感帯だ。刺激してやれば、相手も感じてくる。リズムをつけて舌を出し入れしながら静美の下腹部に辣は怒張を当てた。
頬、首筋、耳朶、全てを舐め尽す。
「さてと」
仰向けになり、辣は静美に自分の上に跨るように命じた。多数の女を相手にする時はこの体位が辣にとっては一番いい。負担がかからずに済む。
なによりも、他の女達を愛撫する場合、手や唇が塞がっていてはどうにもならない。
多数の女を相手にする場合はつねに手と唇、出来れば足も空けておく事だ。足の指でも鍛錬次第では立派に女を悦ばせることが出来るようになる。
静美が腰を落として辣の男根を奥まで呑み込んでいった。自分で腰を使い出す。瞳がぼやけていた。媚薬が効いているのだ。
「ああん……ッ、素敵、とっても素敵よ……」
亀裂からこぼれる白濁したラブジュースが、辣の陰毛にまで絡み付いてくる。何もかも忘れようとするかのように、静美は腰を動かす事だけに集中した。
鼓膜に響く卑猥な粘着音が、よりいっそうと女達を昂ぶらせた。次に辣は、伸子のたわわに実った白い乳房に右手を伸ばして優しく掴んだ。
柔らかくも温かな餅のような感触だ。薄い乳輪を円を描くように指腹でなぞった。乳首を摘み上げ、捻る。
乳首が隆起しはじめ、伸子が長い睫を震わせながら苦しげに喘いだ。
「はあアァん……ッ」
左手が鈴子の陰核を捉える。指腹で陰核で擦りたてた。激しい劣情部分を刺激された鈴子が腰砕けの状態になった。
次に辣は両足の甲を璃夏と緋織の尻と内腿に滑り込ませた。両手と両足を同時に駆使して女達に法悦を与えるべく愛撫する。
「残りは口だけだな。おい、珠美と麗衣那。おまんことケツの穴を舐めてやるから尻を俺の顔に持ってきて突き出せ」


保管庫へ戻る