【男一人】ハーレムな小説を書くスレ【女複数】
840 :便乗の埋め小ネタ1/5:2006/10/22(日) 01:25:54 ID:zXJWm1UZ
 小高い丘の上。
 もうもうと上がる煙を見ながら、私が煙草を一本、吹かしていると、
「ヴァン隊長ーー!!」
 と、後ろの方から可愛らしい女性の声が響いた。
 振り向いて顔を見るまでもなく分かる。あれは私の副官であるシャルラ少尉の声だ。
 声に溢れんばかりの喜色がある事から、きっと朗報を伝えに来たのだろう。
 結構な事だ。
 私は振り返って、緑色の短髪を揺らしながら走ってきた、ややボーイッシュな顔をした副官の顔を見据えて言った。
「反乱貴族の残党は、一人も残さず捕らえたようだね」
 その言葉に何を驚いたのか、シャルラは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で、
「え!? な、何で分かったんです!?」
 と良く解らない事を言う。
 そんな大仰に驚いたら綺麗な顔が台無しだぞ、私はそう告げて丘を歩き下りながら、すれ違いざまにシャルラの肩をポンと叩いた。
「君のそんなに嬉しそうな声を聞けば、誰にだって解るさ」
 私がそう言うと、シャルラは顔を真っ赤にして怒ったような困ったような、何だかややこしい奇声を上げて追いかけてきた。
 慌てて私は丘を駆け下りる。
 戦の傷痕が残る、その場所へとーーー。

841 :便乗の埋め小ネタ2/5:2006/10/22(日) 01:28:31 ID:zXJWm1UZ
 時はロズウェル歴876年。
 世界に一つしかない広大な大陸、グランディア。
 その最大の軍事国家であるグランツ帝国は、賢帝ウィルヘルム14世指揮下の元、各地に点在する
小国家の征伐を繰り返していた。
 グランツ帝国は他の国家が用いていた単独将軍制ーーーたった一人の大将軍が指揮権を統帥して、
軍全てを操る方式。よって、戦いは基本的に総力戦でのガチンコとなるーーーを捨て、
全部で十数階級からなる将官制を使うことにより、その軍事力に磨きを掛けていた。
 また、ここ数年で使われ始めた新兵器、鉄槍の独占もその戦力強化に拍車を掛けている。
 従来の盾と同時に持って戦うスピアと違い、鉄槍は完全に盾と一体化した外観を成しており、
なおかつその盾自体も鉄製であった。つまり、鉄槍兵は弩に盾をはじき飛ばされる心配なく戦えるのだ。
 最大数の人員と、豊富な指揮官、とどめに強力な新兵器。
 これら全てを併せ持つグランツ帝国に敵う国など、ありはしなかった。
 そしてヴァン・リーヴァイス大尉。
 彼こそは、グランツ帝国においてたった十二しか編成されていない鉄槍兵単独編成部隊の一つ、
第八鉄槍正体の指揮官であった。


842 :便乗の埋め小ネタ3/5:2006/10/22(日) 01:31:03 ID:zXJWm1UZ
 日の光を遮る天幕の中。
 薄暗い闇を払拭するカンテラに照らされた机の上には、地図が一枚といくらかの羊皮紙書類。
 そして、その机を取り囲むようにして、私達3人は座って顔を突き合わせていた。
 私を十二時とすると、三時に副官であるシャルラ・ニケー少尉、そして六時に副官補佐である
ネオバランセ准尉だ。
「それではネオバランセ准尉、報告を頼む」
 こつん、と軽く指で机を叩いて私が言うと、向かいの席でじっとしていたイングリッド・ネオバランセ
准尉が書類を広げた。肩まで伸びた暗めの金髪が、それだけで少しばかり風に揺られて散り広がった。
「この度の戦闘ですが、ここトルホーク地方で起きた辺境貴族の反乱を抑える為に、帝都から派遣
された我ら第八鉄槍部隊が行進して来た所、見晴らしの利かない街道で伏撃に遭い、やむなく戦闘へとーーー」
「済まない。言葉が足りなかった。帝都に出す報告書はどうでもいいんだ。被害を聞きたい」
 淡々と進む彼女の話を遮って、私は告げた。
 了解しました、そう短く言葉を切って彼女は書類の一枚を差し出した。
「こちらの被害は軽傷者二名、両人ともニケー少尉の護衛兵です。他にさしたる被害はありません。
そして、敵の方ですが、死者四十名、重傷者七十八名、捕虜として縛り付けているのが八十二名です」
 ふむ、と私は頷く。そして、大体の想像は付いているが、確認の為、ネオバランセ准尉に尋ねる。
「反乱の元凶である貴族はどうなった?」
「……護衛の部下二人を連れたニケー少尉が、その……」
「切り裂いた、か」
 鉄槍兵が負傷するなど、独断で先行した時以外には考えられないのだから、想像は付いていたが、
それでも荒技が過ぎる。


843 :便乗の埋め小ネタ4/5:2006/10/22(日) 01:32:15 ID:zXJWm1UZ
「シャルラ……」
 横目で軽く睨み付けて、私が愚痴をこぼすように言うと、
「え? い、いや、ほら、敵は頭から潰せと言うじゃないですか……ええ、その……」
 しどろもどろになって、最後の方の科白を口内でシャルラは噛み潰す。
 全く、普段は豪気な割に、攻められると弱いのだから困った物だ。
「まあいい、今回は見逃そう」
 溜息混じりに私はそう告げーーーシャルラは今にも飛び跳ねそうなぐらいに喜色満面の笑顔を
浮かべていたーーー書類を覗き込むようにしながら准尉の方へと向き直った。
 端正に整えられた人形のような顔が、こちらを頭の上から見下ろす形だ。
 私は書面の上の文字に目を通しながら、彼女に告げる。
「ネオバランセ准尉、捕虜の扱いだが、君に任せるよ。私はニケー少尉と補給物資を集めてくる。
このままでは捕虜を餓死させてしまうからね。頼んだよ?」
「……………………」
「……………………ネオバランセ准尉?」
 了解の二文字が返って来なかったのを不思議に思い、私が顔を上げると、
「……………………大尉………」
 ぼうっと熱に浮かされたような顔をしてこちらを見ている准尉の顔が、思っていたよりも
近くにあった。
「ん?」
 小首を傾げて私が唸ると同時ーーー、
「もう、我慢が出来ないんです。ヴァン………」
 その言葉と共に、私は顔をがっちりと固定されて、
 熱い接吻をされた。


844 :便乗の埋め小ネタ5/6:2006/10/22(日) 01:34:24 ID:zXJWm1UZ
「ん、んちゅ……あむっ、んっ、はぁ」
 舌をねじ込み、唾液をすする、熱烈なディープキス。
 余りに唐突な出来事だった為に、私は呆然と彼女の舌を受け入れながら、その発情した猫のように
顔を火照らせる彼女を、ただ見る事しかできていなかった。
「ヴァン、ヴァン……」
 うわごとのように私の名前を呼びながら、彼女は私の口の中で舌なめずりする。

 とても司令天幕とは思えない光景。
 膠着してしまった現状。
 それを打破してくれたのは、頼れる副官シャルラ・ニケー少尉だった。

「な、なな、何をやってる、この発情猫がぁ!!!」

 バシュッ、という発射音と共に優秀な戦闘要員でもある彼女の手刀が飛んだ。
 しかし、イングリッドも然る者。
 先程までの熱中症のような動きは何処へやら、驚くほど機敏に手刀を察すると、私を押し倒すように
して机を飛び越え、見事に回避。
 そして私を下に敷いたまま、シャルラに言い返す。
「五月蠅いわ、これはヴァンとのコミュニケーションよ。副官補佐としてのね」
 言い訳になど全くもってなっていなかったが、もはやそんな事はどうでもいいのだろう。
 シャルラは丘で見たときよりもずっと顔を赤くしてーーー今度のこれは、はっきりと怒りと解る
物だーーーその感情のまま叫んだ。
「ヴァン隊長!! 何をしてるんですか!!」
 何故か、私へと。

845 :便乗の埋め小ネタ6/6:2006/10/22(日) 01:39:13 ID:zXJWm1UZ
 シャルラは続けて叫ぶ。
「ヴァン隊長!! どいて下さい! 今すぐその雌猫をたたっ斬ります!」
 いや、無理だろう。潰されてるんだが、私。
「あら、嫉妬? 醜いわね」
「黙れ! きょ、今日はな、わ、『私の番』だろうが!」
「何をふざけた事を! 貴方は行軍前にヴァンの寵愛を受けられたのだから良いじゃない! 
私なんかあの奇襲と行軍命令の所為で、二回も番を飛ばされてるのよ!?」
「うう、だ、だが順番は順番だろうが!」
「不公平にも程があるでしょ!!ここでまた捕虜の見張りなんてしたら、貴方とは三回も差ができるじゃない!」
「うるさいうるさいうるさーい!! 今日は私の番なんだー!!」
「とうとうメッキが剥がれたわね、田舎者のお嬢ちゃん?」
「貴様ぁ!!!」
 そんな会話をしている二人を後目に、何とかイングリッドの下から脱出した私は匍匐前進のまま天幕を出た。
 すると、天幕の出口のすぐ横に立つ女性が一人。
 チェシャ猫のような笑顔の似合う、細身の女性キュリエ・レーブック軍曹だ。
 彼女はその皮肉めいた笑みをたたえたまま、言った。
「隊長も大変ですねぇ? 色々と」
 にやにやと笑う彼女を見ながら、私は答える。
「全くだよ。それで……見逃してはくれないかな? 私も、色々とね、疲れているのだよ」
「きっぱりとお断りしますわ、大尉」
 断言だった。
 キュリエに捕まり、天幕から出てきた二人にも捕獲される私。
 部隊にたった3人しかいない女性なのに、何故その全員を抱く羽目になったのだろうか。
 やっぱり色々と構い過ぎてしまったのが原因だろうか。
 呻き、私は空を見上げる。

 実に平和な戦乱の世の空だった。


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