【男一人】ハーレムな小説を書くスレ【女複数】
63 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:27:27 ID:n8fR6EIO
 ターゲットのNTS研究所は既に火の海だった。
 中では激しい戦闘が行われているのだろう、銃声と何者かの怒号が連続しているのが聞こえてくる。
「整列!」
 部隊指揮官の命令に、覆面姿のブラックシャドウ戦闘員たちはきびきびと従った。
「今回は敵の拠点たるこの研究所で開発中の秘密兵器を奪取、もしくは破壊することが目的となる。既に強襲チームが先行している。貴様等は兵器の探索、及び脱出の支援を行え」
 指揮官はブリーフィングで確認したことを再確認するように告げると、チーム分けを始めた。 
 探索チームに回されたカイトは、アームライフルの安全装置を外して、セレクターがきちんと作動するのを確認した。訓練ではまずまずの成果を収めてきてはいたが、やはり初めての実戦となると緊張するのを抑えきれない。
「なお、今回は貴様等の初陣と聞く。生まれたての貴様等に大した戦功は期待しない。任務を忠実に遂行せよ、それが長生きのコツだ」
 そう言うと指揮官は戦闘員たちを見てニヤリと笑った。
 カイトは自分の緊張が見抜かれていたような気がしたが、そんなに悪い気もしなかった。訓練基地では変な指揮官や作戦に引っかかると、使い捨ての戦闘員はすぐ死ぬと聞いていたので内心不安だったのだ。
 この指揮官は自分たちのレベルを把握している。これならそんなにムチャなことも無さそうだ。
「では、準備が出来次第突入にかかれ。シャドウ、ハイル!」
「ハイル!」
 チームに分かれた戦闘員たちが一斉にNTSの研究所に突入していく。カイトも仲間たちに続いて中に入っていった。目指すは研究所中枢、秘密兵器の開発エリアだ。



64 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:32:17 ID:n8fR6EIO
 ブラックシャドウ戦闘員ハヤミネ・カイトは過去の記憶を持たない。
 カイトを戦闘員として改造したブラックシャドウの科学班は、使い捨ての戦闘員にそんなものを与えておくほど悠長な性質ではなかったし、当人であるカイトもそんなことは期待もしていない。
 そもそもそのカイトという名前も、BSの教育機関に放り込まれたときに与えられたものだし、あまりに厳しく理不尽な訓練に晒された時から自分の出自がロクなものでないことは薄々察しがついた。
 だから、日々の訓練にいそしむことでそんなこだわりは捨て去ってしまおうとしたのである。幸い指導教官は皆極上のサディストだったし、訓練メニューは鬼の一言。
 おまけにこの境遇に耐えている仲間たちがいたということがカイトを模範的な戦闘員として鍛え上げる結果となった。
 もちろん、こんな殊勝な心掛けの者がそうそういるはずもなく、カイトは訓練基地の中でも指折りの成績と変わり者としての評判を持つことになった。


65 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:34:39 ID:n8fR6EIO
「そういやもう実戦だって? 早いわね」
 朝の訓練を生き延びて、食堂でカイトが幸せな昼食をとっていると、同じく食事していたディーネ・フライヤが声を掛けてきた。
 ディーネは訓練生ではない。基地の救護室に詰めている、いわゆる衛生兵だった(BSは軍事組織ではないのでそういう兵科は適用されない)。
 基地の性格上、時には相当酷い怪我人が発生することがある。未改造の戦闘員やら、巻き添えを食った一般人、あげく生半可な練度の訓練生戦闘員も教官にボコボコにされて救護室に運ばれてくる。
 彼女はそうした怪我人を手際良く治療する白衣の女神だった。つややかなブロンドのロングヘアに、くっきりとした目鼻立ち、活動的でありながら思慮深い性格も相まって、BS男性隊員によって親衛隊が組織されるほどの人気がある。
 カイトも戦闘訓練の際、教官にしたたかに急所を打ち据えられて昏倒したことがあり、その縁で彼女とは顔なじみである。
「どこで聞いてきたの?」
「あら、もう後援チーム中の噂よ? 今年は優秀な人が多いって。特にカイト、あなた」


66 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:35:56 ID:n8fR6EIO
「偶然だよ」
 カイトは手元のポタージュをうまそうにすすりながら答えた。BSは秘密組織でありながらこうした福利厚生の類にも手を抜かない。安くてうまい日替わり定食は人気メニューの一つだ。
「現場も厳しいんだと思う。じゃなきゃこんな促成栽培で出来た戦闘員を実戦投入しない」
「そうね、今年は再訓練で戻ってくる人も少ないし……」
 ディーネもサラダに手を伸ばしながら物憂げな瞳をカイトに向けた。再訓練受講者が少ないのは、再訓練するまでもなくいなくなってしまう、ということに他ならない。
「ねえ、絶対に死なないでね。顔見知りが死ぬのって、凄く後味悪いから」
「そうするつもりだよ、できるだけ」
「今回は私も現場行きだし」
 カイトはきょとんとした。訓練機関に所属している救護係が前線部隊に配属されることは普通、ありえない。
「志願したの。今年は知り合い多いし、メグミもアスカもでしょう? 私だけここで待ってるのはイヤ」
「そういや、一応俺たち同期だっけ」
「そうよ。部署が違うからあんまり実感ないけどね」
 そう言って笑い合うと、他の訓練生たちが二人の周りに集まってきた。ディーネはもとよりカイトも友人は多い。改造の結果とはいえ端正な顔立ちの寄与するところは大きかったが、何よりも優れた人格は人を惹きつける。
「じゃ、またね」
「ああ、お互いがんばろうな」
 二人は別れの挨拶をして、別の友人との世間話を楽しんだ。訓練基地での暮らしは楽なものではなかったが、厳しいだけでもなかったのだ。


67 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:37:32 ID:n8fR6EIO
 目標エリア周辺では激しい戦闘が繰り広げられていた。
 いくら戦闘員が戦闘用に改造されているとはいえ、重火器で撃たれれば当然死ぬ。カイトたち探索チームは随分と目減りしてしまった強襲チームと合流し、研究所の警備員や研究員たちと激しい銃撃戦を繰り広げていた。 
 強襲チームの中には戦闘用に特別な改造を施された、いわゆる怪人が加わっていた。奇甲怪人クレイモアデビルと名乗ったその怪人の指揮の下、研究室の入り口を確保するべく撃ちまくる。
「早くここを突破しないと本隊の爆撃が来る、なんとしても落とせ!」
 既に何部隊も相手に戦火を繰り広げて残弾切れになってしまったクレイモアデビルの叫びが通じたのか、最後のバリケードが音を立てて吹き飛ぶ。
「よし、目標の兵器はこの奥だ! 突入!」 
 初陣の昂揚からか、奇声や喚声を挙げて突入する戦闘員。カイトも当然後に続く。工作用の大型レーザーカッターやBSの研究施設にもある特殊工作台が所狭しと並ぶその部屋で、最後の生き残りである研究員が震えながら待ち構えていた。
「抵抗しなければ命までは奪わん。貴様たちが開発していた兵器とやらをこちらに寄こせ」


68 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:38:37 ID:n8fR6EIO
「……断る!」
 その若い研究員は涙を流して震えながらも、こちらを睨みつけてきっぱりと言い放った。もともとこんな荒事に向いた性格の人物ではないのだろう、痩せぎすであまり健康的な風貌とは言えない。
 だが涙交じりの視線は、鋭かった。
「よくも俺たちの仲間を、この悪党どもめ……ッ!」
 この言葉にクレイモアデビルを始めBSメンバーはせせら笑った。命がけなのはこちらも同じ。そんなことを今更言っても始まらないのだ。
 戦場にあるのは善悪ではない。力の有無、生か死か。ただそれだけだ。
「ならばどうする、ここで死ぬか?」
「否!」
 クレイモアデビルの嘲弄交じりの脅しにも研究員は応じなかった。震える手を思い切り振りかぶって自ら頬を打ち据えて気合を入れると、懐から何かの機械を二つ取り出して大きく掲げ、重ね合わせた。
「死ぬのは、死ぬのは貴様らの方だ! コンバット……」
「まずい、あれを奪え!」
 言われるまでも無かった。カイトはアームライフルを単射モードに設定し、片方の機械を掲げる手を正確に打ち抜いた。
「ぐ……!」
 研究員は呻き声をあげて、その装置を取り落とす。すかさず殺到する戦闘員。しかし、その一瞬の間は、もう一度コマンド・ワードを研究員が発するのに十分な時間だった。
「コンバット、クロス!」


69 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:43:45 ID:n8fR6EIO
 取り落としたのとは別に握っていた装置から、閃光が飛び出して周りにいた全員の目を貫いた。
 カイトもあまりの光の凄まじさに目を覆ってその場に倒れこむと、何か、金属が次々と重ねられていくような音だけが耳に届くのを感じた。何かは分からないが、とても、とてもまずい予感がする。
 光が収まり、顔を上げると、そこには異形が立っていた。 
 金属質の皮膚のような組織で覆われた全体的なプロポーションは精悍で、とてもあの研究員がどうにかなった姿とは思えない。
 急所とされる箇所は全て装甲で覆われ、右腕には銃に似たパーツと、何かの装置が一緒に埋め込まれ、左腕には盾と思しきパーツが組み込まれている。
 背中には何かのノズルらしきパーツが覗き、なにやら武器の取手のようなものが突き出ている。
 つまり、ある種のヒーローと良く似たシルエットだった。戦闘を目的にしているという点ではカイトたち戦闘員や怪人と共通する点があるのかも知れなかったが、それに比べてもはるかに凶悪で禍々しい印象を発散していた。
 それは自分の手を眺め、呆気にとられているような仕種を見せている。

70 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:45:00 ID:n8fR6EIO
「お、おのれッ!」
 最初に金縛りから解放されたのはクレイモアデビルだった。何の冗談かは分からなかったが、こちらもとても真っ当な人間とは言えない身だ。いくら機械で底上げしたとはいえ、所詮は生身の人間、プロレスラーすら一瞬で屠る怪人の身体能力に勝てる訳がない。
 そう思い、突撃した。残弾ゼロとはいえ、一般人がこのタックルを喰らえば大怪我どころでは済まない。
 しかし目の前の異形はその突撃をなんと、片手、それも指一本で止めた。
「な、にぃ……!?」
「……メタルクロスのパワーは、加重ギリギリまで荷を搭載したダンプカーの突進すら受け止める」
 そう言うと、空いていた方の手でクレイモアデビルを掴み上げ、カイトも含む戦闘員たち目がけて投げつけた。
「ぐわっ!」
 一塊になって部屋の隅に叩きつけられる。研究員は追い討ちをかけた。
「ワイアット・リボルバー!」
 どういう仕掛けか、何もない空中から拳銃のようなものを取り出した研究員は、それをこちらに向かって乱射した。次々と飛ぶその拳銃弾が、堅牢なクレイモアデビルの装甲をあっさりと砕き、撃ち抜いていく。

71 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:46:05 ID:n8fR6EIO
 カイトたち戦闘員はどうすることもできず震えながら固まっていることしか出来ない。不幸なことに、ここにいるメンツの中の半分以上が新米だった。
「……おい、お前ら」
 ボロボロにされているクレイモアデビルがカイトたち戦闘員に向かって呻き混じりの小声で話しかけた。
「これはもう、どうにもならん。オレでもダメならお前たちはもっとダメだろう。奴の足元に転がっている兵器、あれをなんとしても奪って脱出しろ」
 見れば、確かに最初掲げた兵器の片割れは、手付かずのまま転がっている。
「……しかし、奴がそれを許してくれるとは思えません」
 メタルクロスと名乗った研究員は残弾ゼロになった銃を放り捨ててこちらに向かって歩いてくる。無言のプレッシャーは基地で自分をコテンパンにノした教官より、さらに大きい。
「俺がまた突撃して、奴を引き付ける。お前らはまだ若い、こんなところで死ぬな」
「しかし、それでは!」


72 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:47:11 ID:n8fR6EIO
 当然クレイモアデビルは敵の手にかかってむざむざ死ぬことになる。しかし、怪人は言い募ろうとする戦闘員たちを抑えてこう言った。
「怪人ってのは、こういう時のためにいるんだ。訓練所で何を聞いたかは大体分かるが、こういうことだって現場じゃあ、ある。オレだってかばわれながらここまで来た。今度はオレが、かばう番だ」
 そう言うと怪人は立ち上がった。
「オレだって、タダでは死なん! お前ら、生きろ!」
「クレイモアデビル!」
「ウオオーッ!」
 逡巡している暇は無かった。カイトは真っ先に立ち上がり、装置に向かって駆け出した。他の戦闘員もそれに続こうと立ち上がる。
「そうはさせん!」
 メタルクロスは全身から小型ミサイルを発射した。カイトは自分に向かってくるそれをアームライフルで必死に迎撃して、どうにか逃れることができた。
 しかし、他の戦闘員たちはそれができなかった。


73 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:48:12 ID:n8fR6EIO
「みんな!」
 叫びも虚しく、カイト以外の戦闘員はミサイルの爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。爆風がカイトにも届き、もみくちゃになりながらなんとか兵器を奪おうと奮闘する。
 もがきにもがいてどうにかその腕時計にも似た兵器を手にした。後は脱出するだけだ。
「ぐあああ!」
 横手から悲鳴が上がる。見ると、クレイモアデビルがメタルクロスに捉えられ、不可視の力場らしき代物に喉を絞り上げられている。
「おい、貴様、今すぐその手のクロスチェンジャーを置いて投降しろ。そうしないとこいつが死ぬぞ!」
「早く行け、バカヤロウが!」
 必死の形相でクレイモアデビルが叫ぶ。
 しかし、メタルクロスは苛立たしげにそれを阻んだ。
「うるさい、黙れ!」
「が、はアッ!」
 カイトは躊躇った。どうせ投降したところでクレイモアデビルも自分も殺されるだろう。しかしだからといって今死にそうな者を放り捨てて逃げることなどできなかった。


74 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:49:35 ID:n8fR6EIO
 クレイモアデビルは、カイトに向かってあきらめずに語りかけた。
「お、まえ、なまえは、なんだ?」
「……ハヤミネ・カイトです」
「カイト、いけ、でないとオレは」
「黙れと、言っているッ!」
 力場が強まり、さらに強く怪人を締め上げる。
「…………!! オレは、おまえ、を、しんで、も、う、ら、む!」 
「さあ、これでもこいつを見捨てるか! お前のために命を張る、こいつを!」
 メタルクロスも必死の声色でカイトを責める。
「い、けーッ! おま、えにも、まっ、てるやつ、の、ひとり、や、ふたり、いるだろうッ!」
 その一言にカイトは気付かされた。同期のメグミ、アスカ、そしてディーネもここに来ている。早く脱出しなければ目の前の悪鬼にみんなやられてしまうのだ。
「ごめんなさいッ!」
 カイトはきびすを返して脱出にかかった。今は全てに耐えて走るしかない。クレイモアデビルの意志も、それを示したのだ。
「う、おああああ!」
 背後でクレイモアデビルの絶叫と巨大な爆発音が聞こえた。おそらくやられてしまったのだろう。カイトはそれでも走り続けた。今となってはこのクロスチェンジャーとやらを持ち帰らなければ怪人の死が無駄になってしまう。


75 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:50:20 ID:n8fR6EIO
 だが、事態はより悪い方へ傾いた。
「そこで止まれ」
 突入したルートをそのまま逆行していたカイトは、目の前に現れたメタルクロスの姿に思わず足を止めてしまった。回り込まれてしまったのだ!
「フン、まさかまだこんなところをウロついているとはな。まあいい。それを置いて投降しろ。さもなくば潰す」
 カイトは、それが文字通り実行可能であることを確信した。このままでは確実に殺される。しかし。
「……ひとつ、聞きたい」
「何だ?」
「お前、何人手にかけた?」
「……何を言っている?」
 メタルクロスは困惑した声で逆に問いかけた。そもそもこんな修羅場で交わす会話ではない。まして一戦闘員に対して。
「俺たちは確かに悪党だ。お前もそう言った」
「そうだな」
「なら、悪党を潰すならお前も悪いことをしてもいいのか。あんな、あんな風に敵を苦しめて」
「……さあな。少なくとも今お前にそれを奪わせるわけにはいかない」


76 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:51:22 ID:n8fR6EIO
「俺たちだって必死だったんだ!」
 悲鳴と共に敵の増援の到着と撤退を告げる命令がレシーバーに入る。しかし、カイトはそれを握り潰した。
「この戦闘には俺の同期だってたくさん参加してた。本当なら戦闘には関係ない奴だっていた。たくさん死んだのはお前たちだけじゃない!」
「だからなんだ。このまま見逃せとでも言う気か」
「違う! 悪党相手ならなんだってしていいっていう、その根性が気に入らない、そんな奴の言いなりになったら必死に俺を逃がした怪人に申し訳ない、それに」
 そこでカイトは装置を掲げた。
「俺だってタダで死ぬわけにはいかない!」
「それはお前には使えんぞ! こちらで定めた条件を満たしていない者には使えんようプロテクトが掛けてある!」
 メタルクロスが叫ぶ。だが、もはやカイトには聞こえていなかった。メグミ、アスカ、そしてディーネ。せめて同期の生死だけでも確認するまでは――、
「俺は、死なない! コンバット、クロース!」
 使えないはずの装置から、閃光が飛び出した。


77 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:52:40 ID:n8fR6EIO
 

 気が付くと、カイトは何もない白い空間にいた。
 床に立っている感覚がない。浮遊しているような感じだ。
 戦闘服はおろか、身に着けていたはずの覆面やアームライフルもない。真っ裸だった。
 それでも何故か不安を感じない。それどころか母親に抱かれているような安心感すらある。
(馬鹿なことを……)
 親どころか、過去の記憶さえないのに。
 そんなことを考えながらしばらくじっとしていると、自分の身体から光の粒のようなものが現れ始めた。
(これは……?)


78 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:54:12 ID:n8fR6EIO
「それは、あなたのかなしみ」
「!?」
 何もないところから急に声を掛けられたので驚いて周囲を見回す。当然何もない。
 しかし、その女性らしき柔らかい声は続いた。
「あなたがあなたとしてまとう、かなしみ。あなただけでなく、あなたをかたどるすべてのいだいたかなしみです」
「なんだ、それ……」
 意味が分からない。それでいて頭のどこかにひっかかる。今まで思い出そうと思ったことの無かった、その領域に深く関わること、らしい。
「あなたは、かなしみによってたつ。あなたをとりまくおおぜいのかなしみによって」
「そうなのか? ……俺にはわからない」
「いずれわかります。そのときまで――どうか、生き延びて、カイト」
 何故、俺の名を――とは聞けなかった。
 ただ、どこか懐かしく、そしてとても悲しい気持ちに触れたような、そんな気がした。
 カイトは白い世界を落ちていった。





79 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:55:04 ID:n8fR6EIO
「何故だ、何故それを、BSの戦闘員などが使える!?」
 白い世界をさまよっていたカイトは、メタルクロスのその叫びによって戦場に呼び戻された。
(戻って、きたのか)
 手を見ると、目の前の研究員と同じような格好になっている。全身を見る手段がないので詳しくは分からなかったが、どこかシャープで鋭角的な印象を持つパーツで構成されているようだ。
「貴様、一体何者だ!」
「知るかよ」
 とりあえずそう返してやる。知らないものは答えようがない。すると、何故か激昂してメタルクロスが殴りかかってきた。
 ダンプカーの突撃すら止めてしまうパワーで殴られれば、タダでは済まない。
「でも、当たらなければ!」
 とりあえず格闘術の訓練で習ったセオリー通りにステップを踏んで回避しようと初動に移ると、なぜかメタルクロスの動きがとても緩慢なものに変わった。
(隙だらけだ)
 なにせ、腋を思い切り開けて殴りに来ているのだ。おまけに何の冗談かと思うくらい遅い。逃す手はない。
 カイトは床に転がってから、伸び上がるように蹴りを入れた。狙いあやまたず腋の下の急所にクリーンヒットし、メタルクロスは吹っ飛んでいった。


80 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:55:51 ID:n8fR6EIO
「あれ?」
 思いがけず威力のあるキックが決まってしまい、カイトは呆気にとられた。
(そういや、俺もあのなんとかクロス着てるんだっけ)
 今までと視界が変わらず、身体感覚も変化が無いために忘れていたのだ。
「それは私のお陰でもあります、マスター」
「! 誰だ!?」
 またしても誰もいないところから声を掛けられてパニックになるカイト。当然のように周囲には誰もいない。
「このメタルクロス【アクセル】のサポートAIのクリスです。主に機体制御支援と武装の起動、非常用マニューバの三点を司っています」
 いきなり普段使い慣れない言葉を聞かされて、カイトは一瞬思考がストップした。
「えーと、ちょっと待って。……つまり、君が俺を助けてくれるわけ?」
「はい。操縦者の思考支援も私の任務にあたります」
 とりあえずカイトはクリスのことをオンラインヘルプくらいに思っておくことにした。
「じゃあ、質問。なんでBSの俺がこれ使えるの」
「既にこのクロスはハヤミネ・カイト様名義で操縦者が登録されています。マスターの所属組織がNTKの敵性組織であるところのBSであることは確かに不思議ですけど、そこについては私に情報が与えられていません」


81 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:56:49 ID:n8fR6EIO
「じゃ次、このクロスは何が特徴?」
「一つ一つ挙げれば説明に時間がかかり過ぎます。今は推測するに戦闘中のため、分かりやすく一言で申し上げますとスピード重視の機体です」
「じゃあ、さっきのも」
「ええ。先ほどから対戦中のメタルクロス【パワード】よりもかなり早く動けます。ですが、それは推測するに向こうが完全に機能を発揮していないからでもあります」
「向こうが完全に機能を発揮するまではこっちが優勢なわけか」
「おそらく。……マスター、【パワード】が来ます」
 クリスの警告に従って目を上げると、瓦礫の中から研究員の駆るメタルクロス【パワード】が立ち上がって首を振るのが見えた。おそらく身体に纏わりつく瓦礫を払っていたのだろう。
「おのれ……」
 怨嗟の声を上げて立ち上がると、【パワード】は右腕をまっすぐこちらに構え、両足をしっかり踏ん張った。
「マスター、【パワード】の主力武装、ビッグマグナムの起動を確認しました。推測するに10秒後の発射です」
「回避するには?」
「効力範囲を視界に表示するので普通に避けて下さい。迎撃はこちらで行います」
「分かった」
 何か禍々しい力が収束するのが見て取れたが、クリスの説明を聞いた今ではカケラも恐怖を感じない。といって、あまりゆっくり料理しているとさっきレシーバーで聞いた増援部隊に囲まれてしまう。


82 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:57:45 ID:n8fR6EIO
 優勢であるうちに即行で片付けて、こっちの生き残りを探して脱出すべきだった。
「クリス、こっちには何か必殺技みたいなのはないのか?」
「効果的なフィニッシュ・ブローの行使にはアタッチメントの装着が必要です。本当は【パワード】に全部付いてるんですが、何故か敵対してますね。推測するに、無理です」
 戦闘中だというのに、何やら力が抜けるAIだった。カイトは気合を抜かないように心掛けながら、追加で質問した。
「じゃあ、ここから脱出するいいアイデアはある?」
「推測するに、完全に機能を発揮していない【パワード】を引っ張って走り、NTKの支配区域から遠ざかれば当面の脅威は無くなります」
 つまり、研究員を遠くに連れ出して置いてきぼりにする訳である。とても格好の悪い方法だったが、今はぐずぐず文句を言っている場合ではない。
「マグナム、来ます!」


83 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 02:58:38 ID:n8fR6EIO
 轟音と共に発射された右腕は、さすがにさっきのパンチよりははるかに早かった。力場と思しき空間から横っ飛びで抜けると、カイトはそのまま研究員の背後のノズルを掴んで思いっきりその場を蹴った。景色が水に浮かべた墨のように融け、視界が警告の表示で埋め尽くされる。
「クリス、周りが見えない!」
「私の指示に従って走行して下さい! 2秒後、思いっきりジャンプです!」
「うお、りゃあ!」
 二人のクロス・ファイターは猛烈な勢いで戦場を離れていった。ドップラー効果と共に残された音の中に「放せ」だの「イヤだ」だのといった、低レベルな口喧嘩のようなものがあったという報告が後になされたというが、今のカイトにはまるで関係ないことだった。

 そして、研究員を100キロほど離れた富士の樹海に置いてきぼりにしたカイトは、半死半生で放置されていた戦闘員のメグミとアスカ、そしてNTKの追撃部隊に追われていたディーネたち後援チームを無事に救出し、訓練基地に帰還した。



84 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:01:16 ID:n8fR6EIO

     ○

「では、脱装して下さい」
「やり方知らないんだけど」
「……分かりました」
 BS訓練基地、元・カイトの私室。
 BS戦闘隊へ転属したカイトたちだったが、戦闘隊基地より訓練基地の方が現場から近かったことや、即搬送の重傷者が多く発生したため、訓練基地へ帰還することになった。
 それでまだ新しい訓練生へ宛がわれていなかった元・自分の部屋へ転がり込む。
 本当は戦闘後も様々な手続きを踏まなければならなかったのだが、NTSから強奪してきたメタルクロス姿のままでは色々な点に差し障りが出そうだったので、同じく生き残っていた指揮官に事情を説明して先に任務を解いてもらったのだ。
 もちろん後できっちり報告する義務はあったが、おかげで私室でゆっくりと休息ができる。
「脱装」
 クリスがそう宣言すると、複雑に組み合わされたメタルパーツが次々と外れていき、やがて一つにまとまるや虚空に消えた。


85 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:02:08 ID:n8fR6EIO
「なお」
「うおっと」
 シャワーでも浴びようと、机に置いた目の前の腕時計型変身装置からクリスの声が聞こえたため、カイトは驚いて声を上げた。
「これからマスターの身体に、ちょっとした変化が生じます。クロス装着の副作用みたいなもので、大した影響は無いのですが。推測するに、これから3時間の間は、女性の方とお会いするのだけは止めておいたほうがいいかと思います。人間関係を壊したくないなら」
「……何で?」
「マスターは男性ですから」
 訳の分からないことを言う。カイトは今の今までもてたことはおろか、自分目当てに言い寄って来る奴など見たことがなかった。もちろん、その逆もない。ここはBSなのだ。愛だの恋だのといった環境からは程遠い場所と言える。
「いまから私は12時間の休息、及び充電、自己修復に入ります。会話だけはできますが、これはクロス装着ごとに必ず行わなければならないので、一度脱装したら次は12時間使えないということだけは覚えておいて下さい」
「分かった」
「ではマスター、幸運を」


86 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:03:37 ID:n8fR6EIO
 仰々しい挨拶だ、とカイトが思った次の瞬間にそれは来た。
「…………うおッ!?」
 いきなり下半身に衝撃が走り、性器が勃起した。動悸が激しくなり、顔が赤くなるのが自分でも分かる。
「な、なんだ、これ……?」
 突然始まった身体の変化に、カイトはうろたえた。
「それがさっき説明したちょっとした変化です」
 机の上の腕時計が答える。
「クリス、これ、なに?」
「メタルクロスは操縦者の神経に直接アクセスして、戦闘機動に最もふさわしいと思われる状態に強制的に仕立てます。
言わば生き物としての人間の生命力が最も高い状態にされてしまう訳です。脱装時に対抗手段を仕掛けますが、それが効力を発揮する3時間まではその生命力が最も高い状態が続いてしまうのです」
 何やら長々と説明してくれたが、さっぱり要領を得ない。カイトは聞いた。
「……つまり?」
「早い話が、マスターは今フェロモン出まくりの上におち○ぽガチガチのやりまくり状態なのです。女性なんかと会ったらセックスせずにはいられない、孕ませずにはいられない猿のような状態なのですよ」


87 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:04:42 ID:n8fR6EIO
「…………分かった」
 うつむきながらカイトは答えた。あまりにあまりな答えだったが、まさかこんな風になっては疑う訳にもいかない。現に身体は今にも暴発しそうなくらい異性を求めて昂ぶっている。
 こんな時に女性と会ったりしたらたちまち妊婦の出来上がりである。オモシロすぎて笑えない。
 カイトはしっかり全ての窓と扉鍵を掛けて自分がどこにも行かないように蓋をしてからシャワーを浴びた。それで誤魔化されるかな、と淡い期待もしていたがシャワーの間も、そして出てからも立ちっぱなしの自分のムスコを目の当たりにして諦めた。
「……どうしよ」
 バスローブを羽織って、冷やした牛乳を一気にあおる。風呂上りの一杯、うまいことはうまいのだが、なぜかもう一つ物足りない。しかも汗を流したばかりなのにまたじわりと汗が浮かんでくる。
「うう……」
「新陳代謝も極度に活発になり、身体組織の交換もいつもより多く行われます。健康になれますよ」
「それでいちいち女の子襲ってたら明らかにヤバいでしょ!」


88 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:05:21 ID:n8fR6EIO
 呼びもしないのにいちいち慰めてくれる。これ以上ないほど出来たAIだったが、その卒の無さは思いっきりネタな方向に伸びていた。
「そうですね、すみませんマスター。でもマスターが分泌しているフェロモンは言わば媚薬みたいなものですから、襲われた女の子もイヤとは言わないはずですよ?」
「俺にはその女の子もその結果できちゃう子供も養う甲斐性は無い……」
 聞きもしない事実を明るい声で説明してくれるクリスが今は恨めしい。あと2時間30分あまりどうしようか、とか考えていたら部屋のインターホンが来客を告げた。
「…………どうしよ」
「居留守を使うというのはどうでしょう、幸いここはマスターにとって外出も比較的自由な施設のようですし」
「でも上役だったらまずいから」
 そう言って壁際に設えられたインターホンに出る。
「どなた?」
「私。ディーネ。今日のお礼を言おうと思って探してたら、ここだって聞いたから」
 カイトは石になった。


89 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:06:56 ID:n8fR6EIO
「……まじか」
 カイトは頭を抱えていた。
 現在、自分は女の子と見るや襲いかからずにはいられない、いわばセックスの禁断症状に陥っている。
 そんな中、戦闘中に救助した同期、それも伝説的な美人が部屋を訪ねてきた。ついうっかりと今襲ったら、彼女は妊娠してしまうのだ!
 親衛隊までいるアイドルを孕ませたりしたら、周りに一体どんな目に遭わされるか、考えるだに恐ろしい。
「クリス、どうしよう」
「今更言っても詮無いことですが、私は居留守をおすすめしました」
「ごめん」
 平謝りに謝る。これでは確かに悪いのはこの自分だ。
「……もうこうなればお部屋に招き入れてあげるしかないんじゃないですか? 推測するに大事なご友人なのでしょう?」
「うう、でも俺はディーネに劣情なんか……そりゃ美人だとは思うけど、でも」
「分かっています。とりあえず私もフォローはしますから」
「すまないねぇ……」
 じじむさいネタをしながら、カイトは部屋の鍵を開けた。


90 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:08:56 ID:n8fR6EIO
 ディーネは戦闘後、そのままの姿でいたようだ。ところどころ破れた戦闘服がその戦闘の激しさを物語ると同時に、胸元からチラリと覗く下着が激しく目の毒だった。
「カイト……おフロ、入ったの?」
「ああ、汗、かいてたし。硝煙臭いままなの嫌だったから」
 本当はもっと別の理由だったりするのだが、それは言えない。
「上がっても、いいかな」
「ああ、本当はアレだけど、えーと、うん」
「お邪魔します……」
 ずっと前屈みのまま応対するのはさすがに骨だった。とりあえず三和土に素足を触れないようにドアを開けるという行動でごまかせたが、さすがに相対するとバレてしまう。
 幸い部屋には転がり込んだばかりだったので座布団の一枚もなく、従ってベッドに横に並ぶほか客を座らせられないのが救いといえば救いだし、地獄といえば地獄だった。
 カイトは早足で歩いて、すぐさまベッドに座った。ディーネは立ったまま部屋のあちこちを見て回っている。
 カイトはその都度目が変なところへ行くのを必死に自制していた。
「なんか、この部屋も久しぶりだなあ」
「あ、ああ、うん、そうだね、久しぶりだっけ」
 実はカイト自身もそうなのだが、とてもそっちに話を持っていける状態ではない。


91 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:10:27 ID:n8fR6EIO
「訓練生の時はよくみんなで集まって騒いだじゃない。で、その度教官に見つかって大目玉」
「そ、そうか」
 ディーネはそこまで聞くと、呆れたように笑った。
「もう、戦闘終わってほっとしてるのは分かるけど、ちょっと気を抜きすぎだよ」
「ご、ごめん、気をつける」
「もう、今日のカイト、なんか変だよ?」
 そういうとディーネはいきなりカイトの隣に座った。その気はないのに(後遺症のせいでそう仕向けられてはいるが)ふわりと漂う彼女の髪の匂いや汗の香りがカイトの嗅覚を妖しくくすぐり、どうにもこうにも辛抱たまらん状態にされている。
 カイトは罪はないとは知りながらもディーネとクリスを思いっきり恨んだ。
 もちろん、そんなことはディーネの知るところではない。すらりと伸びた長い足をぶらぶらさせながら、ぽつりと話し始める。
「私、今日初実戦だったんだ」
「俺も一応、初陣だった」
「でも、カイトたちは訓練受けてるでしょ? 私たちは違うもの。戦闘訓練なんか受けたことない」
「それは、臨時の後援チームだったし」
「でも、撃たれたよ」
 ディーネは涙を浮かべていた。


92 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:11:57 ID:n8fR6EIO
「私、凄く、怖かった! これで死んじゃう、皆と会えなくなるって思ったら足が震えてなんにもできなくなって、チームの足引っ張って」
「俺も今日、そうだった」
 どんどん膨らんでくる欲望と一物の圧迫に耐えながらカイトは答えた。
 もっと自分に力があれば、クレイモアデビルは死ななくて済んだはずだ。皆をミサイルから救ってやれたはずだ。
 そんな余計な思いを忘れていられたのはひとえにあのクロスのおかげだった。本当なら死体になって転がっていたのは自分だったかも知れない。
 憎しみに囚われ、あるいは無力感に囚われていたのでは勝利は無かった。カイトは火照りきった頭ではあったが、それを噛みしめた。
「でも、カイトは私を助けてくれた」
「必死だったんだ。それに、酷い言い草だけど、お前だけ助けたわけじゃない」
 現に今、お前のこと襲いそうだしなとはさすがに付け加えなかったが。しかし今の対応は良かった。もしかしたら傷ついて出て行ってくれるかも知れない。そうなれば後でいくらでも謝ればいい。傷心の女の子を襲って孕ませるより何倍もマシだった。
 しかし、そんなカイトの願いはあえなく裏切られた。
 ディーネがカイトに抱きついたのである。


93 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:12:50 ID:n8fR6EIO
「………………!!」
「そうだね、メグミもアスカも助かるよ。酷いケガだったけどね。二人とも女の子なのに、凄い勇敢に戦ったんだって」
「それは、あいつらが」
「分かってる。戦闘員だもんね。でも、カイトはそっちも助けちゃった」
「偶然だって」
 その偶然のおかげで、その戦闘よりも遥かに激しく戦うハメになっている。しかも敵である欲望は絶対に殺せない。味方の理性はコテンパンに打ちのめされてもはや死亡寸前である。
「もう追い詰められてこれはダメかなって思ったとき、あの銀色になったカイトが凄い勢いで敵をやっつけちゃって、しかも「走れ!」って。今までも凄いな、って思うことはあったけど今日ほどそれを思ったことはないよ……」
「俺は、全然、凄くなんか、ない」


94 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:13:39 ID:n8fR6EIO
 カイトはバクバクいう心臓をどうにかなだめながら、なんとかディーネから身体を離そうともがいた。本能はさっきから襲え襲えの大合唱だ。汗は滝のように流れているのにちっとも涼しくならない。
「そんなことない。凄くかっこよかった」
 ディーネはじっ、とカイトの目を覗き込んだ。疲れ果てているだろうに、輝きを失わない瞳。つややかな唇、総じて魅力的なかんばせ。
 それら全てを際立たせる、ほんのり赤く色づいた頬が近づいて、来、る……!
「なんか今日のカイト、本当に変、だよ……」
「もう、無理……」
 カイトはそう洩らすと、顔を抱きしめて唇を合わせようとするディーネにその身を任せた。
 クリスは、内心で涙ながらに「ご苦労様でした」としか、言うことができなかった。
 そして、二人の唇が重ねられ、カイトの奮闘はあえなくご破算になってしまった。


95 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:14:27 ID:n8fR6EIO

     ○

「カイト……んむ」 
 血が昂ぶるのに任せ、むさぼった。
 舌でディーネの口内を隅々まで舐め、舌を絡めて犯す。唾液を流し込む。互いの上気した表情が、突き合わせた胸が伝える激しい鼓動が、より一層の興奮を誘う。
 顔を離すと、二人の唾液で橋ができていた。
「ディーネ、服、脱がすよ」
「うん……」
 下着ごと引きちぎってしまいそうな衝動を意志の力で何とか押さえ込んで、カイトは慎重に一枚一枚脱がしていく。簡易な作りの戦闘服だったことも幸いしてあまり手間はかからなかった。
 ショーツをずらすとぴちゃ、といやらしい水音が立つ。ディーネは真っ赤になってうつむいた。
「は、恥ずかしい……」
「こっち見て」
 カイトは下を向いた彼女の顔を支えるように持ち上げて、もう一度ついばむように口づけた。
「もう濡れてる」
「言わないで……」
「恥ずかしいことじゃない」
「そんな」
「俺で興奮してくれてるんだ、むしろ嬉しい」


96 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:15:24 ID:n8fR6EIO
 恥ずかしがって顔を合わせようとしないディーネの目を追いかけながら、つつましくたたずんでいた胸に手を置いて、包み込むように愛撫した。ときおり乳首に手が触れると、ディーネは可愛らしい声をあげて喘ぐ。
「わ、わたしばっか、じゃやっ、あん!」
 胸を弄びながら首筋に舌を這わすと、喘ぎ方が激しくなる。どうやら彼女の感じるツボを突いたらしい。カイトは片方の手を乳房に置いたまま、もう片方の手をシミ一つない奇麗な背中を伝って陰部へ降ろした。
 くちゅ、と音を立てて秘裂に人差し指が飲み込まれていく。
「あ……いや、あ……」
「何が嫌?」
 カイトは構わず中指もクレヴァスの中に入れて、手を前後に抜き差ししながらよじり合わせるような指の動きで愛撫した。そうしながら身体を全体的に下にずらして、勃起した乳首に吸い付き、舐め回す。
「あっ、やっ、ああん! ひ、は、やぁ、ダメぇ、いく、イっくううぅぅぅぅ!」
 加えてクリトリスを親指で撫でるように愛撫すると、ディーネは背中を大きく弓なりに反らして絶頂した。
 カイトは、肩で息をしている彼女を強く抱きしめてからベッドに押し倒した。
「ごめん、もう我慢できない……!」


97 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:16:10 ID:n8fR6EIO
 待ちに待たされ、爆発寸前まで高まったペニスを、思い切って突き入れる。十分濡れていたせいか、抵抗は少なかった。
 ディーネの膣壁はいきりたったカイトの陰茎をきゅっ、と優しく引き絞る。肉襞が柔らかく蠕動して、それがまたたまらない快感をカイトに与える。奥まで入ったことを確認するや、カイトは激しく腰を動かした。
「すごい、ディーネ、気持ち、いい!」
「カイトも、あん、おっきい、すごい、いいようっ!」
 カイトの動きに合わせてディーネも腰を突き上げる。ぬちゃ、ぬちゃっ、と湿った音が、けして広くない部屋に連続して響く。
「奥にあたって、あん、あ、そこ、そこきもちいいっ!」
「ディーネ、すごい、やらしい」
「いやっ、言わないで、はずかし、いいっ!」
 勢いよく腰を動かしながら乳首をいらい、恥豆をほじくるとたちまちディーネは登りつめた。膣がまるで意志を持った生き物のように蠢き、精を求めてカイトの一物を責めあげる。
「あ、イク、ああ、カイト、いっしょ、いっしょにぃっ!」
「ディーネ、俺も、俺ももう……イクっ!」
 最後の宣言と同時に突き込まれた怒張の先端から、猛烈な勢いで精液が放たれた。同時に達したディーネの肉襞がその白濁を貪欲に飲み込んでいく。
「あ……カイトが、カイトがいっぱい……」
 カイトがぐったりと倒れこんでからも、その性器は精を吐き出すのを止めなかった。ディーネは気を失った彼の身体を優しく抱きしめながら、注ぎ込まれ続ける大量の精液の温かさにしばらくその身をひたした。
「……おつかれさま……」
 激しい交わりの余韻を味わいながら、ディーネはカイトの唇に自分のそれをそっと、重ねた。 


98 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:18:02 ID:n8fR6EIO

     ○

「もう、そんなに謝らないで」
「だけど、ディー、む……!?」
「……んっ、そういう時は、黙ってキスでもするの! 男の子はこれだから」
 翌朝、元・カイトの部屋。
 不可抗力とはいえ、カイトは猛烈に反省し、全ての事情をディーネに打ち明けた。てっきり怒り狂って暴れるかと思っていたのだが、冒頭のやりとりにつながったのだから男女の仲は分からない。
「そう思わない、クリスさん?」
「そうですね、マスターももう少し女心を勉強されるべきだとは思います」
「ちょ、クリス、おま! 昨日フォローするとか言っといて逃げたお前にはそれを言われたくないぞ!」
「だってマスター、私のこと紹介するの忘れてたじゃないですか」
「う」
 カイトは糾弾しようとしてかえって窮地を招いてしまったようだ。
「そうそう、私もまさかこの部屋にもう一人いたとは知らなかったよ。この始末はどうつける気かな、カイト?」
「うう……」
「まあ、私は女性としてプログラミングされているとはいえ現実の身体は持ちませんし、そもそも機械ですから厳密には何の問題もないわけですが」
「それでも私はショックだったよ。これから何回も抱いてもらわなきゃ収まりつかないくらい、ね」
「え?」


99 :『クロス・アクセル』:2006/09/18(月) 03:18:49 ID:n8fR6EIO
 カイトはそれを聞いて戸惑いの表情を浮かべる。そもそも、これからも続けられるような関係だったのだろうか。てっきり引っ叩かれて責められることしか考えてなかったので困惑もひとしおである。
「せっかくの初夜が二人きりじゃないなんて、ちょっとありえない。ちゃんと二人きりでできるとこ、探しとくからさ」
「でもディーネ、お前それでいいのか?」
「もう、まだ言ってる。別にカイトのことは嫌いじゃなかったし、昨日もステキだったからそれでいいの!」
「マスター、ここは逆らわないほうがいいと思いますよ? その、推測するに」
 ディーネは何やら怪しげな情報端末を引っ張り出してきて、ここがいいかな、それともここかななどとそれは楽しそうに検索している。
 カイトはとりあえず若い男女の胃袋を満たすために、キッチンへ向かうことにした。まずはメシ、報告はその後だ。
 まったくもって、厄介事は多い。
 しかしカイトは、一人ではない。だからこそ、今、ここにいるのだ。

END OF TEXT

128 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:08:46 ID:xJH1yKDS
 『クロス・アクセル』2

 前回の着装から12時間が経ち、クロスの再着装が出来るようになったところで、ハヤミネ・カイ
トはBS本部に出頭した。 
 昨日敵研究所から奪取してきた変身兵器「クロスチェンジャー」を、科学班に渡して解析して
もらうためである。
 実は、本来ならわざわざ解析してもらうまでもないのだ。
 カイトが持っているメタルクロス【アクセル】には、サポートAIであるクリスがインストールされて
いる。
 操縦者の支援インターフェイスであるクリスがいれば、わざわざ解析しなくてもクロスの持つ機
能の全てが、操縦者であるカイトにに伝わるように設定されている。
 だが、そのためにはカイトが一度クロスを着装し、その上で分からないことをしかるべき質問に
してクリスに問いかけなければならない。
 その上、一度着装して脱装すると、その後12時間は何があってもクロスが使えない。
 さらに脱装後3時間もの間、ジゴロとスケコマシと強姦魔を足して3で割らないような状態にカ
イトが陥ってしまうため、うっかり使ってしまうと後がとても大変なことになってしまうのだ。
 という訳で、わざわざ本部まで出向くことになったのである。
「それにしても」
 カイトは本部司令室への道すがら、隣を歩いていたディーネ・フライヤに声を掛けた。
「大丈夫? なんか、妊娠確実らしいけど」
「うーん、一日じゃ分からないわ。昨日は危険日じゃなかったけど、だからって妊娠しないわけじ
ゃないし」
「……ホント、ごめん」
 首を傾げるディーネに、うつむいて謝るカイト。


129 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:10:32 ID:xJH1yKDS
 カイトは本当に申し訳なく思っていた。友情以外の感情を持ち合わせない相手と(不可抗力と
はいえ)エッチしてしまえば後味も悪い。
 しかも、相手の意思をねじ曲げるフェロモンのせいだと聞かされればその悪さもひとしおであ
る。
 唯一の救いはディーネ自身、あまり気にしていない上、関係の継続を望んでいるということだ
が、だからといってその善意にホイホイ甘える気はカイトにはなかった。
「大丈夫よ、どうなったって、きっとどうにかなるわ」
「ありがと、でも今度からは気をつける」
「頑張ってくださいね、マスター」
 そう呼びかけたのはクロスのサポートAI、クリスだ。
 着装状態では操縦者たるカイトの神経に接続してコンマ以下でのやりとりが可能な彼女だっ
たが、非着装状態では腕時計型のクロスチェンジャーのスピーカーを通じてのみ、会話が可能
である。
「頑張ってって、あの状態の時に頑張ったら俺は破滅だ」
「でも、昨日のマスターはずいぶん頑張ってましたよ? AIの私には良く分かりませんが、推測
するにお盛んとはああいう状態のことを言うのですね」
「もう勘弁してくれクリス、死にたくなる」
 たまに呼ばれもしないのに出てきて、ネタに走るのが玉に瑕だ。しかも本人に自覚はない。
「あら、違うわよクリスさん。お盛んってのはあんなものじゃないわ。一晩で5・6回くらいはしない
と、ねえカイト?」
 にやにや笑いを浮かべながらカイトをいじりにかかるディーネ。
「そうなのですか、マスター?」
「……勘弁してくれ」
 こんな会話に付き合っていたら日が暮れる。カイトは先を急いだ。



130 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:11:43 ID:xJH1yKDS

     ○

「以上です」
「ご苦労様でした」
 NTK本部、インフォメーションセンター。 
 秘密科学研究組織NTKは、警察などの公機関を除けば、BSの最大の敵対組織だ。
 しかし、それはあくまでも裏の顔であり、表向きには機械、化学、薬品メーカーなどからなる複
合企業体であり、参加メンバーも名目上はその社員ということになっている。
 研究員、木戸幸人もそういう経歴の持ち主だった。
 BSの強襲で開発中だった兵器の片方が奪取されてしまったが、もう片方は無事だったので
その戦闘と奪取の顛末に関するレポートをまとめて本部に提出したところである。
 木戸はサングラス越しにチェンジャーの使用で一回り逞しくなった身体を見ながら、昨日受け
た屈辱を噛みしめていた。
 戦闘行為は専門外とはいえ、あの醜態では組織から制裁されても不思議ではない。
 奴、ハヤミネとか言っていたBSの戦闘員が初見で、しかも敵側の兵器をあれだけ使いこなし
ていただけになおさらだ。
「木戸さん」
 思考の渦に沈んでいた木戸に、受付嬢の森朝香が声を掛けた。ショートカットがよく似合う、
目鼻立ちの整った可愛らしい女性だ。
「何」
「あんまり落ち込まないで下さい、昨日はしょうがなかったんです」
「別に落ち込んでない」
 木戸は白衣のポケットから紙タバコを取り出し、ライターで火をつけようとして、それを朝香に
引き抜かれた。
「ここは禁煙です」
「仰せのままに」


131 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:12:40 ID:xJH1yKDS
 木戸は代わりにシガレットケースからココアスティックを取り出して口にくわえた。
「いる?」
「いただきます」
 朝香はおいしそうにスティックを食べ、何の気もなさそうにしながらこう呟いた。
「で、木戸さん、昨日何回しました?」
「ぶッ」
 木戸はもぐもぐやっていたスティックを噴き出した。
「ななななななな」
「あれって、大変ですよねえ。そーゆー人じゃなくてもあーんなことやこーんなことになっちゃう
んですから」
「森さん、いや、朝香。頼むからこんな場所で、しかも白昼堂々したとか言うな」
「だって、最近全然相手してくれないんですもん」
 朝香はまるで子供がスネるように人差し指で「の」の字を書き始めた。
 全体的なサイズが小さいこともあって、いいとこ中学生くらいにしか見えない。これで実は三十
路直前なのだから女は分からない。
「そりゃあ、強引に迫ったのあたしですけど、もうちょっと構ってくれてもいいと思うんですよね」
「忙しかったんだ」
「男の人って、すぐそう言う」
 木戸が気圧されたように後ずさる。額には一筋の汗。
「あたしだって寂しいのに、一人でするなんて信じらんない」
「だからって昨日は無理だろう。俺は奴に富士の樹海へ捨てられて、そこでリミッターが作動し
ちまったもんだから、回収されるまで一晩中森の中で彷徨ってたんだぞ」
「で、人目につかないことをいいことにそこでヌいたんですね?」
 がっくりと木戸は首を落とした。
「……分かった、今日の21時、ホテルハイアット。俺のおごりで」
「やったー♪ 木戸さん、大好きです」
 朝香は、カウンター越しに木戸の顔を引き寄せて抱きついた。
 なかなか、どうにも大変なのは敵も味方もお互い様のようである。


132 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:13:54 ID:xJH1yKDS

     ○

 BS本部秘密基地、科学班第8ラボ。
 カイトは最初BSの首領直々のお出ましと聞いていたので司令室に向かっていたのだが、散
々迷って司令室に到着してみたら守衛に「首領はお会いにならない」と聞かされ、仕方なく科学
班のラボに顔を出して、レポートを提出した。
 クロスチェンジャーも科学班員に渡してからしばらく待っていると、班長が待っているという一
番奥の第8ラボまで出向けと頭ごなしに命令され、また移動させられた。
 カイトが平戦闘員だからとはいえ、組織と言うのは大きくなればどこもロクなものではない。裏
組織ですら同様である。
「ハヤミネ・カイト、ディーネ・フライヤ二名入ります」
「おう、こっちだ」
 扉の向こうから班長らしき女性の声が聞こえたため、二人はセンサーパネルに触れてドアを
開けた。
 扉の向こうは、魔窟というのがふさわしいありさまだった。
 まず、整理されていない。第7ラボまでは整理整頓が行き届いていたが、ここはそんな言葉が
地球上に存在しないかの如く散らかり放題である。
 得体の知れない液体が天井にまで伸びる屈曲管を巡り、壁を埋め尽くす大型の液体タンクで
はぼこぼこと音を立てて緑色の物体が沸いている。
 机の上では一体何をやっていたのか、折れ曲がり使えなくなった硝子の温度計が何本も何
本も放置され、工作台の上は何かの削りカスが山積みになっている。
 ドリルも磨耗し、さぞかし手荒に扱われていることがありありと分かる。
 部屋の手前側、見える範囲ですらその散らかりようなのに、奥にはもっと得体の知れない何か
の残骸や実験器具、工具が適当に放置され、もはや何かのオブジェとでも表現したくなるような
怪しげな美さえ感じられる空間だった。
 どこをどう見ても、班長がここを勝手に占拠して私室代わりに使っているようにしか見えない。
 部屋のその奥の方から、女性の声が聞こえてきた。
「すまん、ちょっと今手が離せないんだ。そこで2時間ほど暇を潰しててくれ」
 カイトとディーネは科学班員がここに来たがらなかった理由をようやく理解した。


133 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:15:19 ID:xJH1yKDS

     ○

「すまんすまん、さて、解析の話だったな」
「……はい」
 BS本部科学班班長、ヴァネッサ・ルイーズは愛用の回転座椅子に腰掛けたまま、器用にモノ
を避けつつカイトの側にやってきた。
 ウェーブのかかった長い髪が揺れ、一回り大きいサイズの白衣でも隠しきれていないバストが
どーん、と前方に張り出している。
 そしてその豊満なボディラインを誇示するかのような大胆なポーズで座っている。
 顔立ちはメリハリが利いており、太目の唇に塗られた紫のグロスが何とも言えずセクシーな女
性だ。とてもバックアップの要の人間には見えない。
 だからといって、どうこうしようなどとはカイトも思っていない。
 大体、初対面の人間にそんなことを思うほうがおかしいのだ。昨日のはあくまでも事故。
 そんなことを考えていたら、ヴァネッサが不審そうな顔で自分を見つめていることに気がつい
た。
「……どうした?」
「え、いえなんでもありません」
「私の顔に何かついていたか?」
「いえいえ、何も」
 ならいいが、とヴァネッサはチェンジャーをカイトに返し、手元の資料に目を通した。
「お前の提出してきたクロスチェンジャー、あれは大変な代物だな」
「は、大変な代物?」
 強いことは分かっているが、少なくともクリスを見ている限りでは、とてもそうは思えない。
「まず分解できん」
「分解……?」
 カイトとディーネは不思議そうにお互いを見つめた。
 ヴァネッサは構わず続ける。
「ああ、継ぎ目らしきものが無かったから、強酸から温度差、圧迫、掘削、切断、音波による組
織破壊を仕掛けてみたが無傷だった。クリス嬢の言った通りだったな」
「それ、いきなりやったんですか?」
「ああ、一応説明はしたが」
 まさかそんな目に遭っていようとは思わなかったので、カイトはクリスに無言で詫びた。


134 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:16:22 ID:xJH1yKDS
「でも、それじゃあ解析できないんじゃないですか?」
「うむ、バラせないものを調べることはできん」
 ディーネの質問にあっさりと答えるヴァネッサ。
「で、じゃあ、どうするんですか?」 
「科学班としてはこんな得体の知れない物を使うのは反対なのだが、ボスの意向もある。吸い上
げられるだけの情報は吸い上げてみる」
「それって、今から俺がクロス着るってことですか?」
「そうだ」
「でも、いちいち質問するのに二人も要りませんよ?」
 カイトは腕に着けているチェンジャーを見つめる。
 スペックや連続稼働時間のテストはいずれ行う必要があるとしても、使用法を聞くのに人手は
いらない。それこそ、今からこの場で聞いてみたっていいのである。
「お前は質問するがいい、私は外側から機能を調べてみる」
 つまり、内外同時に調査を行ってしまおうというのである。
「じゃあ、私はどうしましょう?」
「ディーネ嬢は身体検査だ。発情した状態での交合とやらが通常人に与える影響のデータが
欲しい」
「わかりました」
 ディーネはそう言うと、隣のエリアにある医務室へと向かった。
「では、調べるとするか」


135 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:17:33 ID:xJH1yKDS

     ○

「コンバット、クロース!」
 コマンド・ワードが発動し、カイトの体がメタルパーツで覆われていく。
 閃光が鎮まると、メタルクロス姿となったカイトが立っていた。
「凄い光だな……閃光防御してもこれか」
 ヴァネッサはゴツい特殊作業用のゴーグルをかぶっている。遠くから見ると、まるでロボットの
ようだ。
「こりゃ、誰かと一緒に出撃するときにはグラサン必須だな。光に打ちのめされる」
「多分、変身時の隙を無くすための工夫なんじゃないですか?」
「そうだろうな」
 そう言うと、ヴァネッサは壁に設置してあるスリットからチューブに包まれた金属の棒を引っ張
り出してきた。壁から伸びた管といい、なんだかとても凶悪な物に見える。
「えーと、それは?」
「大出力の電極だ。火砲はここには無いから、こういう特殊な攻撃に対する耐性から調べる」
「耐え切れなかったら俺、死にません?」
「つまらん心配をするな。クリス嬢だって最大出力に耐えたのだ。お前もきっとできる」
 とっても不吉な予感がしたので、カイトはクリスに尋ねてみた。
「そうなの、クリス?」
「スペックデータでは20億ボルトまで耐えられるはずですが」
「班長、ここの最大電圧は?」
「20億だ」
 いきなりデッドオアアライブ。カイトは冷や汗をかいた。
 しかし、真実の徒である科学班班長はそんなことを斟酌はしなかった。
「やるぞ」
 宣言一下、いきなりスイッチを入れた。
 全てのラボの照明が落ち、代わりに物凄い音と火花、そして煙があがる。


136 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:18:29 ID:xJH1yKDS
「うわ、なんか、怖いんだけど」
「気にしないで下さい、マスター。マスターが恐怖を感じると、このクロスは性能が下がります」
「……なんで?」
 操作する人間のテンションで性能が上下する機械など聞いたこともない。
「クロスが人間の神経に流れている微弱な電流を受け取って、クロスは常に様々な形態に変化
しています。テンションが下がるということは、反射的な防衛機構が働いてしまうということにつな
がり、結果として行使できる戦闘機能が使えなくなってしまうおそれがあるのです」
「じゃあ、できるだけノリノリで戦えってこと?」
「いえ、あまりテンションを上げ過ぎると、今度は無駄なエネルギーの浪費につながり、大出力
に切り替わって稼働時間が短縮されてしまいます」
 なんとも難しい。カイトは電圧に耐えるクロスを中から見つめながら聞いた。
「普通の状態での最大稼働時間は?」
「3時間です」
 つまり、そこから長くなったり短くなったりするということである。
 不安定なマシンだ、とカイトは思った。半ば自分次第というのがなんとも怖い。
「よし、とりあえず大丈夫なようだな。耐電実験終了」
 ヴァネッサはそう宣言すると、スイッチを上げた。電極に集中していた電力が一般用に戻る。
 だが、照明は、つかなかった。
「あれ?」


137 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:19:42 ID:xJH1yKDS

     ○

「いや、あれ? じゃないですよ!」
 クロス姿のまま、カイトは喚いた。
「これ、何にも見えないじゃないですか!」
「うるさいな、お前だけ見えないわけじゃない」
「なお悪いですよ!」
 こんな、何が転がっているかも分からないところで迂闊に動くのは危険すぎる。
「あーもー、喧しい。黙って我慢しろ」
 ヴァネッサ科学班班長は白衣のポケットからあれこれと取り出していたが、やがて白衣を逆さ
まにしてパン、パンと叩いた。
「調査機材以外何もない」
「ペンライトぐらいないんですか?」
「あるにはあるが、径が0.1mmなんだ」
「それじゃ使えませんねー……」
 カイトはがっくりと肩を落とす。ヴァネッサは不思議そうに問いかけた。
「何を言う、お前はメタルクロスを着てるんだぞ? 暗闇の中で戦うための機材くらいあるだろう
に」
「そうか、クリス!」
「いえ、残念ながら追加ストロボライトも暗視ゴーグルも、アタッチメントの類は【パワード】に付属
してます。【アクセル】には簡単な赤外線走査くらいしかありません」
 勢い込んで聞いただけにカイトのテンションがさらに下がる。
 しかしヴァネッサは諦めなかった。
「何を言う、とりあえずそれだけでも出口までの道は確保できるぞ」
「ええ、それはそうなのですが」
 珍しくクリスが口籠っている。
「なんだ?」
「推測するに、現在照明が点かないのは、電流の過負荷によって施設全体の安全装置が作動
したから、早い話がブレーカーが落ちたからではないかと」
「多分な」
 外部スピーカーでしゃべるクリスの推測に、ヴァネッサが応じた。
「とすると、現在この基地は電装系が全て使えない状態にあります。出口までの道を確保しても
、ドアが開かないので出られません」
 カイトは青ざめた。
「じゃあ、見えないだけでなく、閉じ込められたっていうのか?」
「推測するに、その通りです。電源が復旧するまでは身動きが取れません」
「予備は動いてると思うぞ、ただしライフライン優先だから照明とかドアは後回しだがな」
 確かに、エアダクトは作動しており、さっきの煙を外に吐き出し続けている。窒息する心配だ
けは無さそうだ。
「長期戦だな」
 ヴァネッサはぽつりと呟いた。


138 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:21:23 ID:xJH1yKDS

     ○

 2時間後。
「まだ助けは来ないのか……」
 カイトは暗澹と呟いた。さっきまでクリスと班長と三人でダベりながら時間を潰していたのだが、
いい加減話の種も尽き、全員が壁際に黙って座ってじっとしていた。
 いい加減クロスのままでいるのも苦痛になってきている。
 かといってここで脱装したら、野獣化した自分はたちまち班長を襲ってしまうだろう。今でもち
ょっと気になっているくらいなんだから脱いだらどうなるか、考えるだに恐ろしい。
(……って、俺は何を考えてるんだ)
 今はクリスのおかげでとりあえず正気だが、制限時間が過ぎたらどうなることか。
 早く助けに来てくれとカイトは切に願った。
 視界が暗視用の赤外線モードのせいで、班長のボディラインだけ嫌でも目に入ってしまう。
 しかし、そんな時にクリスがダウントーンで話しかけてきた。
「……マスター、悪いお知らせです」
「まさか」
「はい、推測するにあと一分ほどでリミッターが作動します」
 カイトは汗を滝のように流した。
「……もう少しあるんじゃないのか?」
「そのはずだったんですが、どうも、耐電実験が仇になったらしく。いつもより大分早いです」
 よりにもよってこんな時に。
 前も思ったのだが、自分は不幸の神様にでも憑かれているのではないか。
「……なんとかならないのか?」
「マスター、お気持ちはお察ししますが自分でも信じていないことを聞かれても困ります」
 クリスはカイトを慰めるように言った。
「一応、会話モードは残りますので、今度こそ推測するに何かフォローができるかと思います、
幸運を。――リミッタ作動、脱装します」
 宣言後、前回と同じようにメタルパーツが剥がれていき、やがて一つにまとまって消えた。


139 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:22:27 ID:xJH1yKDS
「さて、来るかな……」
 カイトがつぶやくと、それは来た。
「…………うッ!?」
 下半身に猛烈な電流が走り、たちまち一物が怒張する。動悸が激しくなり、顔が赤くなる。全
身が発汗を始める。
 例の副作用に間違いなかった。
(マズイ…………)
 暗がり、絶倫、そして隣にいるのは魅力的なナイスバディのお姉さん。
 どう考えても最悪の取り合わせ。どこを見てもレイプという単語しか出てきません。本当にあり
がとうございました。
 しかもそのお姉さんは組織の重鎮、下手に手を出したら一体どんなことになるか。
「ん、ハヤミネ、どうした……」
 なお悪いことに、さっきまで無言でいたそのヴァネッサ班長が声を掛けてきた。
 カイトは出来るだけ彼女から離れて言う。
「すみません班長、俺発情中なんで近寄らないで下さい……」
「そうか、なるほど、だからか……」
「だからって……?」
 見てはいけない、見てはいけないという心の警告を無視してカイトは壁際に目をやる。
 そして次の瞬間、仰天した。  
 ヴァネッサは、下半身裸になっていたのだ。


140 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:24:06 ID:xJH1yKDS

     ○

「ち、ちょちょちょっと班長、ナニやってんですかッ!?」
「見えてるんなら分かるだろう……? ナニに決まってる」
 言うなりヴァネッサは自分の指を自分の秘所に添え、ゆっくりとしたペースで擦る。抑え気味な
がらもハア、ハアと荒れた呼吸が耳に届き、ただでさえ擦り切れ気味なカイトの理性にやすりを
かける。
「どうも、さっきの実験の時から、体が熱くてしょうがなかったんだ……ああ、そこ、いい……」
「……推測するに、着装時でも多少は媚香フェロモンは出ているようですね」
「クリス……頼むからそういうことはもっと早く言ってって、班長!」
 気がつくとヴァネッサが足元に寄って来ていた。自分の卑裂に指を出し入れしながら、カイト
の勃起を服の上から片手で優しく、しかし強くしごいている。
「大きいな、お前の……」
「ちょっと、班長、それ、あ、ヤバい、出そう、止めて勘弁して……」
 早くも達してしまいそうなほど危険な刺激がカイトの一物に襲いかかる。当然のことながらヴァ
ネッサは止めようとはしない。
「さあ、どれだけ頑張れるかな、ん?」
「いや、あの、服にかかる、せめて外に出して、うあッ」
 ヴァネッサは全く気にせずごりごりとペニスをこすりあげる。口元には笑みがこぼれる。
 それがまたどうしようもないほど艶やかで、カイトは射精寸前まで追い詰められた。
「こんな、こんなことして、絶対襲いますよ、妊娠しちゃいますよ」
「ん、それならそれでいい……ほら、ここに、出したいのだろう……?」
 ヴァネッサはそういうとカイトを責めるのを止め、自分の性器を二本の指で広げて見せた。
 くぱぁっ……とかすかに湿気が漏れ出し、そのかぐわしい匂いがカイトの理性の最後の糸をぶ
ちっ、と切った。
「あ、もう、出……」
「ほら、ちゃんとここに出せ?」
 ヴァネッサはカイトのズボンをトランクスごと引き下ろし、ガチガチのペニスを自分のヴァギナに
向かって押し下げた。
「うあっ、も、もう、出る、あっく、ああああぁぁぁ!」
 ヴァネッサの手に押さえ込まれた男根から、猛烈な勢いで濃い白濁液が噴出した。
 まるで脈動にあわせるようにぶびゅっ、ぶびゅっと出て行く白いゲルが断続的にヴァネッサの
白い臀部や秘所を汚していく。
「ふふ、いっぱい出たな」
 ヴァネッサはその飛沫の一部を指で掬い、舐め取った。
 とても人間のものとは思えないほど、粘りのある濃いそれをためらいなく口に運び、飲み下す。


141 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:25:50 ID:xJH1yKDS
 カイトはそれまでも激しかった脈動が、さらに激しくなるのを感じた。
 ヴァネッサが羽織るように着ていた白衣を剥ぎ取り、シャツも一気に脱がせる。
「こら、あまり乱暴にするな……」
 上司の静止も、もはやカイトを止める役には立たなかった。
 カイトはブラを強引に外すと、現れた大きな肉の毬に指を突っ込み、ぐりぐりとかき回した。さ
らにカップの大きさにはとてもそぐわない可愛らしい突起を舌で掘り起こし、しゃぶりあげる。
「ん、なかなか、あん、いいぞ、そう、もっと強く」
 片方の手は胸から下腹部、さらには性器の上を撫で回す。
 その間にも、首筋、顔、耳朶周りと舌を這わせ、ヴァネッサを昂ぶらせていく。
「なかも、あっ、なかにも、いれろ……んむ」
 唇を強引に奪い、舌を入れて唾液を交換する。
 アヌス周りを撫で回してから、愛液で濡れそぼったヴァギナにいきなり指を2本突っ込み、掻
き回す。既にとろけきった蜜壺はカイトの指をくいくいと締め付けた。
 そのままかぎ状に曲げ、Gスポットを掻く。
「ああ、すごぉい、こんな、こんなのって」
「そろそろ、入れますよ」
「あ、待て、私が、私が上になる」
 カイトはヴァネッサの身体を抱えて仰向けになり、自分の一物を握って方向を定めた。
「ご自分で、どうぞ」
「ん……うぅんあああぁぁぁ!」
 ヴァネッサの膣はディーネのそれに比べても狭く、カリの広がったカイトの亀頭がそれをごりご
りとこじ開ける形での挿入となった。
 自ら腰を落としてペニスをくわえ込もうとしたヴァネッサだったが、結局カイトの下からの突き上
げに頼ってしまっている。
 ずぐん、ずぐん、と凄まじい力で上下運動を強いられ、巨大な肉の杭に柔らかな子宮口を押
しひしがれるような感覚を覚える。カイトの強大なセックスが、ヴァネッサをどんどん追い詰めて
いった。
「すごい、なかが、ごりごり、こすれる……ッ」
 ヴァネッサもカイトの腰を掴み、必死に体を起こそうとするのだが、その度に来る下からの衝撃
がその試みを打ち砕く。
 カイトは自ら体を起こして座位に変わると、ヴァネッサを持ち上げては下に突き落とした。騎乗
位ではヴァネッサの体重が邪魔してうまく動けなかったが、この体勢なら少しはマシに力を出せ
る。
「ま、まって、わたし、いく、いきそう」
 激しすぎる交わりでとぎれとぎれにしか声も出せないヴァネッサの懇願を無視して、カイトは彼
女を担ぎ上げた。駅弁のスタイルでさらに激しく腰を突き入れていく。
「あ、あ、もう、すご、いく、だせ、だして、おねがい」
「ああっ、俺も、そろそろ……ッ」
「出して、ハヤミネの、あなたの、ああすごい、いく、くる、きちゃう、あああああぁぁぁぁぁ」
「いッ、くぅあああああ!」
 カイトはヴァネッサを壁に押し付けてその柔肉に顔を埋め、とどめの欲望を突き入れた。瞬間
精液が勢いよく放たれていく。二度目だというのに驚くほど多い。白い奔流はヴァネッサの狭い
性器を飛び出し、なおも止まらず流れ続けている。
 失神しながらもケガだけはさせまいと思ったのか、カイトは自分をを下にして倒れこんだ。その
顔を覗き込んだヴァネッサは、自分の中を満たしていく不思議な温かさをしばし味わってから、
小さく、その身を震わせた。


142 :『クロス・アクセル』2:2006/09/19(火) 01:27:24 ID:xJH1yKDS

     ○

「……で、やっちゃったと」
「面目次第もございません」
 BS本部秘密基地、医療棟第三病室。
 真昼に起こった停電で、基地の各所で事故やトラブルが発生し、次々とスタッフや隊員が運
ばれてくる中、ラボにいたカイトたちも同じく救助されて恒温フォームに放り込まれた。
 そして、たまたま隣にいたのが検査入院中のディーネだったのである。おそらく今回のことで
ヴァネッサやカイトも検査されると見た医療スタッフが一緒くたにして置いておこうと判断したた
めであろう。
 そして、そのおかげでカイトはまたしても平謝りになるハメになった。
「まあ、いくら我慢してもムリなものはムリだと思うけどね、でもちょっとショック」
「ごめん……」
「いいよ、済んじゃったものはしょうがないし。それに班長も許してくれたんでしょう?」
「ああ、それは」
 そこまで言うと、病室にヴァネッサが入ってきた。
 病人服を着ていても、その豊満な魅力は全く損なわれない。
「許すも許さないもないな。私から誘ったようなものだ」
「でもそれは」
「あれは私の意志だ。そうでもなければ近付かせなかったさ、これでも好みは厳しい方だ」
「……どうも」
 カイトは頭をぼりぼりと掻いた。まだまだこういう場面には慣れない。
「ま、強いて言うなら次からはもう少し手加減してくれるとありがたいな。毎回アレでは身が持た
ん」
「そんな激しかったんですか?」
 ディーネの問いに、ヴァネッサは人差し指を顎に当ててしばし考えると、上を向いたままこう言
った。
「ん……そうだな、世界がひっくり返るかと思った」
「ま!」
 口に手を当てて驚いてから傍らのクリスにどんな感じかを詳しく再生させようとするディーネ。
クリスは気の毒なカイトに届かないようにしながらも、きっちり様子を報告している。
「どうせだ、検査が終わったら三人ですることにしないか? 私一人では受け止めきれんし、デ
ィーネ嬢もその方が安心だろう」
「そうですね、私も別に恋人って訳じゃないし、毎回でなければ」
「推測するに、全体的な負担が減りますから、よいアイデアと言えるのではないでしょうか」
 そんな会話を聞いていたカイトは、この先の生活について漠然と考えながら、今度こそ誘惑を
はねのけるいい方策がないか真剣に真剣に、考え続けた。

END OF TEXT

272 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:28:40 ID:Ii7D1G9q
 BS本部秘密基地・医療棟は、秘密結社には全然そぐわない日当たりの良い丘の上に建っている。
 それは何故かというと、ここが普通の病院の一角に紛れ込んでいるからだ。
 複合施設たる秘密基地は様々な施設を内包しているが、そのほとんどは公にしにくいものばかりである。当たり前だ。捕まってしまう。
 仮にも悪の秘密結社が、堂々と看板掲げて営業するわけにも行かない。
 だからそのほとんどは地下のシェルターに放り込み、地上部分は山に偽装してある。
 しかし、医療棟だけは地下に置いておくわけにはいかない。患者のメンタルヘルスに関わる。
 薬品などの管理は地下で行っているが、それ以外の病室などは日当たりもよく、内部も普通の総合病院とさほど変わらない。まあ、たまに怪人が入院している光景がやや異常だが、彼らも日常から凶暴性を剥き出しにして生活している訳ではないので、ごく大人しく日々を過ごす。
 BS戦闘員ハヤミネ・カイトは、そんな病室の一つで目を覚ました。
 まだ薄暗いところをみると、日が昇りきっていないらしい。
 寝起きが良くない自分にしては珍しいこともあるものだ、と恒温フォームから起き出そうとしたところで、カイトは違和感を覚えた。
(………寒い?)
 恒温フォームは寝冷えしない布団のようなもので、使用者が寝ている時には蓋が閉まり、内部の温度はごく一定に保たれる。寝心地はとても良い。
 にもかかわらずフォームの蓋は何故か開いて外気が入り込んでおり、しかも股間に何やら温かく湿ったような感触まである。
 すわこの歳になってまで寝小便か、とカイトが慌てて体を起こすと、いまだハッキリしない視界の真ん中に誰かの顔があることに気付いた。
 その長いブロンドの髪の誰かはカイトの下半身にしがみついて、その頭を小刻みに上下させる。その度に彼は快感が小波のように背筋を這い上がってくるのを感じる。そこで初めてカイトは自分が下に何も穿いていないことに気付いた。
(…………え?)
 普通、下半身に何も着ないで寝ることはありえない。


273 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:30:17 ID:Ii7D1G9q
 それに、このフォームは一人用である。何故、自分の下に人がいる?
 そこまで考えた時点で、カイトは唐突に状況を理解した。
 驚いて身を引くと、カイトが起きたことに気がついたディーネは口に含んでいたカイトのペニスを離して、にっこりと笑いかけつつ何事も無かったかのように挨拶した。
「おはよう、カイト」
「お、おはようってディーネ、これ、何?」
「さあ、何でしょうねえ」
 狼狽するカイトに含み笑いを浮かべながら、ディーネは手からは離していなかった勃起に再び唇を寄せた。そのまま吸い付くようにキスすると、舌で舐りまわしながら口に含んでいく。
「あ、ちょっ、ディーネ」
 一物を包み込む温かい感触が、カイトの口を封じる。どの道声など掛けても聞こえないし、返事もしなかったであろう、それほどの熱心さでディーネはカイトの肉棒をしゃぶり続けている。彼女の舌は亀頭から雁首、茎、筋、果ては陰嚢まで余すことなく舐め回した。
 訓練生時代は親衛隊までいたその美貌が、浅ましく勃起した陰茎へ熱心に奉仕する様にカイトはたちまち上り詰めた。
「ディーネ、俺、もう……ッ」
 声やペニスの痙攣で限界が近いことを悟ったのか、ディーネはさらにスピードを上げて顔を上下させた。舌が絡み、狭められた唇が立てるじゅぽ、じゅぽっという卑猥極まりない音がカイトをさらに責めあげる。
「あ、ああぁぁ!」
 カイトは腰を突くように精液を射ち出した。
 ペニスを咥えこんだままのディーネの口腔内にありったけの白濁を吐き出す。ディーネは顔をカイトの腰に押し付けるように固定すると、カイトの欲望を残さず受け止め、飲み下す。
「んっ……んぅっ……」
 時折、苦しそうな咽びこそ漏らすものの、カイトが射精を終えるまでディーネは顔を離さなかった。
 口から少しだけ漏れたエキスも指でぬぐって口に戻し、ごくりと音を立てて飲み込む。 
「ディーネ……、そんな無理して飲むこと無かったのに」 
 心配気にカイトがディーネの顔を覗き込むと、ディーネはふうっ、と大きく息をついてからカイトに目を合わせて質問した。
「気持ちよかった?」
「ああ、凄く、よかった」


274 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:31:44 ID:Ii7D1G9q
「そう、よかった。こうすると男の人は喜ぶって聞いたから」
 誰に聞いた――とは言えなかったし、聞いても答えなかっただろう。それに大体そんなことを言いそうなのは誰かも見当がついている。
「はあ……、まったくもう……」
「いいじゃない、気持ちよかったんでしょう……って、まだ元気なのね」
「う」
 溜め息などついて余裕ぶりをアピールしたかったカイトだったが、股間のものが元気に存在を主張したためにあっさりと作戦は覆ってしまった。
「しょうがないだろ、こんなことした後なんだから」
「別に誰も責めてないわ。それに……」
 そこまで言うと、ディーネは自分の病人服のズボンを下ろし、ショーツを脱いだ。
 薄い金色の茂みから、かすかに桃色の卑裂が覗く。そこから愛液がゆっくりとまとまり、落ちていくのが見えた。
「……ディーネ」
「私も、もう、こんななの……カイト、お願い、して……」
 羞恥からか、細く、頼りない声でディーネが懇願する。
 カイトは、ディーネを抱きしめて、唇を重ねる。
「……いかんな、ディーネ嬢。私は、検査が終わった後にと言ったはずだ」
 唇だけのキスを終え、カイトがディーネをフォームに寝かせようとしたその時、二人の後ろから掛けられたハスキーな女性の声が二人の行為を押し止めた。
 彼女はそのままツカツカとフォームに歩み寄ると、片手で、ひっついていた二人の顔を同時にゆっくりと持ち上げる。
 ヴァネッサ科学班班長は、寝起きでテンションが低いのか物憂げに続けた。
「大体、仲間外れとはいささか酷いではないか? この手の歓びは皆で分かち合うものだろう」
 そう言うと、先程までのスローテンポは嘘だったかのように勢いよく服を脱いで全裸になってしまい、いそいそとフォームの上に上がりこんだ。一人用のフォームは既に窮屈なくらいのスペースしか残されてはいないのに、さらに人が増えて収まりが大変悪い状態になっている。
 カイトはディーネとヴァネッサに挟まれるような形で体育座りを強いられた。はっきり言って、何かをするのにこれ以上不向きな体勢もない。
「班長……」
「さあ、ぼんやりしていないで愉しもうじゃないか?」
 そう言いながらヴァネッサはカイトのいまだに勢いを失わない怒張を指で玩び、弄りまわしている。カイトの表情がその刺激で歪むのを目の当たりにしたディーネは、カイトの頭を抱きかかえるようにして、まるで拗ねたかのように囁いた。
「昨日班長にした分、私に多くしてくれなきゃヤだからね」
 カイトは何でこんなことになったんだろうという当然の疑問を頭の隅に残しながら、二人を高めるべく前戯にかかっていった。

275 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:34:03 ID:Ii7D1G9q

     ○

「ん、あっ……あ、やぁ、あん、カイト、いいよぅっ」
「ふふ……そう、そこだ、見えるか……いいぞ、うぅ、ん」
 愛撫の邪魔だという理由で、既に脱いでいたヴァネッサ以外の二人も着ているものを全て脱ぎ、性戯に興じることになった。女性二人が重なるように抱き合い、その後ろからカイトが責めるという姿勢に落ち着く。
 既にディーネは溢れんばかりだったが、ヴァネッサもおよそ変わらない状態だった。
 何でも途中から目は覚めていたが、あまり変なところで口を出すのも野暮だからと黙っていたらしい。そのくせしっかり乱入するあたり、慎みがあるのか遠慮がないのかいまいちハッキリしない。
 カイトはまず舌でディーネを味わい、指でヴァネッサを悦ばせることにした。上になったディーネのつるりとした尻に顔をつけ、ラビアとアヌスの間を行ったり来たりしながら、大きく開脚させたヴァネッサの秘部を掻き回す。
 目でも指でも温かな肉しか感じ取れず、カイトはもはやどちらがどうかといった区別すら頭に残さない状態でひたすら二人を責めたてる。
「カイト、そ、そこ、おしり、なんで、ふ、うぅん」
「ハヤ、ミネぇ、いい、きもち、いぃ、あ、ひぁ、ああん」
 肉豆をこすりあげ、アヌスにとラビアに舌を差し込み、交互にぐりぐりと責めては内襞を薄くひっかく。指三本を突き込んで手首で掻くように動かしてやると、ヴァネッサがあられもない声をあげてよがる。
 アヌスとラビアを激しく往復する舌はずいぶん前から痺れがくるほど疲れきっていたが、それでもカイトはディーネを責めるのを止めなかった。
「はん、ちょ……ん、んむぅ」
「でぃ、ね、ん、んちゅ、あむぁ、んん……」
 性器を激しく責め続けられた二人の女は、まるでお互いを求め合うように強く抱き合うと深い口づけを始めた。唾液を交換し、中の天井、歯の裏側まで舐め回し、舌を絡める。
 ディーネの愛液はカイトの唾液と混ざって既に溢れきっており、下になって同じく愛液を垂れ流しているヴァネッサのそれと合わさって流れを作る。
 カイトが指を抜き、唇を離すと、二人はかくかくと震えながら同じように脱力した。だらしなく足を広げたヴァネッサのすぐ上には、またがってしがみついているディーネの尻が突き出されるように載せられていて、二人の限界までほぐされて緩みきった性器が並んでいる。


276 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:37:18 ID:Ii7D1G9q
 カイトはそのちょうど中間になるようにペニスを構えると、ぬるつくその隙間にゆっくりと挟み入れた。
「あっ……」
「はあぁ……ん」
 互いの割れ目、恥豆への同時の刺激に二人の腰が同時に跳ねた。カイトはその様子がなんだか面白かったので、悪戯半分にもう一度突き込む。
 果たして二人は同じように身をよじった。それだけでなく二人ともさらなる刺激を求めて腰を強く押し付けてくる。それが吸い付くような感触になって、まるで挿入しているような快感がカイトの怒張を走り回る。
 いつしかカイトは腰を振り始めていた。カイトの男根のエラの張った部分がディーネとヴァネッサのクリトリスや入り口を連続で攻め、擦りあげた。
 だが、もはやここまで高められた二人の性感がこの程度で満足するはずもなく、二人はほとんど同時に声を上げた。
「ああん、カイト、じらさないでぇ!」
「はやく、はやく、そこだけじゃ、たりな、いぃん!」
 よがりながら、二人はカイトのモノを切ない声で求める。
「二人とも、そんなこと、大声でおねだりしていいの?」
「いい、いいのうっ! いいから、はやく、ぅん!」
「あたりまえだ、ろぅ……んぁっ、もう、がまん、でき、な、あん!」
 薄く笑いながらカイトが二人を貶めるようなことを言っても、二人はあられもない声で喘ぐことでしか答えられないところまで追い詰められている。
 熟れに熟れた二つの淫らな果実を眺めながら、カイトはどちらを最初にもいでしまうか逡巡する。
 だが、それも一瞬のこと。最初に約束していたのを思い出したのだ。
「ディーネ、入れるよ」
「ああ、来て、カイトぉ……!」
 ディーネはさんざん焦らされ、待たされ、泣きそうな声で言いながらも、腰を持ち上げてカイトが挿入しやすいよう手助けする。
 向きの揃った性器同士がくっつき、吸い付くような感触の後、絞るような圧迫感と共にたまらない熱い快感がカイトの一物を包み込んだ。
 挿入したのだ。
「あああっ……」
「あはぁ、カイトの、カイトのおち×ちん、きたあ……」
 カイトは呻き声をあげると、そのまま激しくピストンを始める。彼女と初めてした時もとろけるように柔らかい膣を感じたが、明らかに今回はそれを上回っている。
 執拗な愛撫にさらされて潤みきったディーネの蜜壺は、一突きするたびにたまらない熱さとそれを忘れさせるほどの安心感をカイトに与えた。
「むぅ……だから、仲間外れは酷いと言っているのに」
 ディーネの下で頬をふくらませていたヴァネッサは、ふとあることに気がついて、すぐさま体をフォームの下へと動かした。ディーネのやわらかな胸を掌で転がすように愛撫しながら、局部を舌で愛撫する。
 彼女をイカせさえすれば、次は自分の番なのだ。 
「やあ、班長、そこだめ、感じすぎちゃ、あ、あ、カイトすごい、いい、もっと、もっとぉっ!」
 二人がかりで激しく責められて、ディーネは甲高い声をあげた。  
「ディーネ、すごい、きもちいい」
「ああぁん、私も、私もぉっ!」
 腰を大きくグラインドさせて、より大きな快楽を受けようと必死になるディーネ。思慮深く、慎みのある普段の顔はなりを潜めている。
 代わりにこれ以上ないほどの親愛の情を感じる。そのことがカイトには嬉しかった。もしかすると、性愛の快楽以上に。
 しかし、気持ちとは裏腹に体がもう限界だった。
「ディーネ、俺、俺……ッ」
「ええ、来て、だしてカイトの熱いの、白いの私の奥にちょうだい!」
「好きだ、大好きだっ、ディーネッ!」
「カイト、嬉しい……私も、私も好きぃっ! ちょうだい、カイトの精液私にちょうだぁい!」
「ディーネぇ!」
 カイトはディーネの背中にのしかかるように体を預けると、ギリギリのところで溜め込んでいた欲望を一気に解放した。
 どびゅびゅびゅびゅびゅ、と熱くたぎった濁液はディーネの膣内で爆発したかのように広がり、その衝撃が何度も何度も彼女を絶頂へと押し上げた。
 ペニスを奥までくわえこんだディーネの膣も、一滴残らず精液を飲み込もうとするようにきゅう、きゅう、と断続的にシャフトを締めつけ、搾り上げた。


277 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:40:53 ID:Ii7D1G9q
「……よかったよ、ディーネ」
 カイトは、最後まで精を吐き出しきった自分の一物を抜いた。
 あまりの快楽に視界が踊る。
 押さえのなくなった膣口から、自分の精液とディーネの愛液の混合物が流れ出てくるのを眺めながら、カイトは大きく息をついて座り込んだ。
 ディーネも力尽きたのかその場にくずおれる。
「こら、休んでいる暇はないぞ?」
 今までディーネの下半身にしゃぶりついていたヴァネッサが、今度はカイトの陰物に舌を這わせ、こびりついていた愛欲の残りを残らず舐め取ろうとする。
「ずるぅい、班長……私も、私もぉ」
 激しいセックスでへたりこんでいたディーネも起き上がり、それに加わる。二人は射精して少し小さくなっていたペニスの先端を舐め、竿をしゃぶり合い、合間に睾丸の袋を咥えて唾液をまぶした。
 出してからそう間もないカイトのペニスに、再び熱い血が流れ込むのが分かる。
「あは、大きくなってきた」
「ディーネ嬢、次は私の番だぞ」
「分かってます。でも、もうちょっと……」
 二人は互いの唾液を口に湛えたまま、欲棒にそれをたっぷりとからめて扱き合った。亀頭を奪い合うようにバキュームしながら、茎を挟んで一緒に口づけ、上に下にと動かしていく。
 濡れたトンネルになった二人の美女の唇が、カイトを再び噴出寸前まで追い込んだ。


278 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:42:36 ID:Ii7D1G9q
「さあ、そろそろいいだろう……私もずいぶん待たされたんだから、満足するまで、な?」
 そう言うと、ヴァネッサはカイトにまたがって、いきりたったペニスに自分の陰部を押しつけた。 狭い膣を亀頭で押し開くように中へ、奥へと導いていく。
「あぁあ……はあああぁぁぁん」
 ヴァネッサは甘い嬌声をあげながら、カイトの胸に手を置いて体をくねらせた。
 彼女もほぐされてはいたものの、カイトとディーネがしている時には一緒になってディーネを攻めるのが精一杯だったので、興奮は持続していても、体は落ち着きかけている。
 だが、再び撫でられるのを大人しく待つことなど出来なかった。
 カイトの大きな一物を根元までくわえ込み、ぐいぐいと強く締め付けた。もともと、彼女の膣はディーネのそれよりも狭い。
 それが、一度放って敏感になっていたカイトの肉棒に、心地よい刺激となって跳ね返る。
「班長、すごい、きつくって、ぐいぐい、締まる」
「ハヤミネ、お前のも、熱くて、おっき……ぃ」
 感じてきたのか、だんだんヴァネッサの腰の動きが弱くなってきた。
 愛液が再び溢れ、ずぶずぶと水音を立てる。
 体を起こしたカイトは、ヴァネッサの腰をつかんで支えると、足を立てて力を入れ、自分の腰を少し浮かせてスペースを作り、そこから連続で突き上げた。
「あ、や、そんな、は、はげし、ぃいん!」
 ディーネも黙って見てはいなかった。カイトの足の間に体を入れ、後ろからヴァネッサに抱きつくと、豊かな双乳をやわやわと揉みあげ、こね回した。さらに隙をみて彼女の淫核をくりくりと転がすように愛撫する。
「きゃあぁぁん! そ、そんなとこ、感じすぎ、るぅ!」
「私にもいっぱいしてくれたじゃないですか。お返しですよ」
 んふふ、とディーネは意地の悪い笑みを浮かべながら背中や首筋にキスをしたり、勃起した乳首を弄んだりした。その度にヴァネッサのぬかるんだ狭い膣はくちゅ、と締め付けてカイトにたまらない快感をもたらす。
 その間にもカイトの激しい突き上げは収まることなく続いていた。
「ああぁぁん、すごい、そ、そんなに、したら、あ!」
「イきそうですか? 俺も、もう、ちょっと、で……」
「イってぇ、私の、なか、あん、精液、だして」
 いやらしく湿った音のペースがさらに速まり、二人は勢いよく上り詰める。
「は、班長、もう、もうイきます、中で、中で出しますよ」
「だして、ディーネ、みたいに、いっぱい、ちょうだ、なか、ああ、イク、イっちゃ、うぁぁあ!」
「で、出るぅ!」
 カイトはヴァネッサを思いっきり抱きしめ、彼女の最奥、子宮の入り口へ精液を流し込んだ。温かい締め付けの中にたっぷりとザーメンを放出し、そのままフォームにひっくり返った。何か声の一つもかけたほうがいいのは分かっていたが、体力がもう限界でそれもままならない。
「ああ、あったかいな……」
 だが、ヴァネッサはカイトの精液で満たされた下腹部に手を当て、満足そうに微笑むとカイトにキスをした。唇を触れさせるだけの優しいキス。 
「お疲れ様だ、ハヤミネ」
「私からも……ね」
 ディーネも同じようにキスすると、ヴァネッサとカイトを抱きしめて一緒にフォームに倒れこんだ。さすがに狭すぎて蓋は閉まらなかったが、それでも不思議と寒さは感じない。
 三人はそのまま日が昇りきるまで、温かさに包まれたまま眠りについた。

279 :『クロス・アクセル』番外編1:2006/09/22(金) 02:43:54 ID:Ii7D1G9q

     ○

 BS本部秘密基地、科学班ミーティングルーム。
 あれから完全に日が昇りきる正午まで目を覚まさなかった三人は、一つの恒温フォームに三人で、しかも全裸で寝ているところを看護士に当然のように発見され、こっぴどく怒られた。
 報復措置なのか、身体検査の名目で必要以上に基地全体を引きずり回され、カイトは一日終わる頃にはへとへとになっていた。
 カイトは、ずっと腕につけていたチェンジャーのサポートAI、クリスに文句を言った。
「なんでもっと早く起こしてくれなかったんだ」 
「マスター達がいい顔でお休みでしたので、起こしませんでした」
 しれっ、とクリスが答える。彼女の声は比較的、人間のような感情を感じにくい声だが今日はなんとなくトゲを感じる。気のせいかも知れないが。
「まあまあ、いいじゃないの。検査も無事終わったし」
「そうだな、私としても交合を阻害する要因が見つからなかっただけでもありがたい」
 ディーネとヴァネッサは何故か機嫌を良くしている。
 彼女たちにとっては懸案だった、クロス装着後のカイトとのセックスによる悪い影響が、身体検査では見つからなかったということが大きいのかも知れない。
「むしろ、なんか元気になった気がするのよね」
「ディーネ嬢もそう思うか。私もあれだけ基地内を走り回されたのに、全く疲れを感じないのだ」
「それは良かったですけど、なら俺はなんでボロボロなんですか」
 二人の元気さが、なんとなく不当なもののように思えてくる。カイトは不満を滲ませつつ質問した。
「それは、毒持ちの生物が自分にその毒が効かないのと同じだろう」
「なんか、納得いかないな……」
 カイトが面白くなさそうにつぶやくと、ディーネがにんまりと笑いながら言った。
「だったら、もう一回クロス着けてから試してみる?」
「そうだな、所詮一度の臨床例ではデータ不足だと思っていたんだ」
 ヴァネッサももっともらしく理屈をつけてそれに賛同する。カイトは半眼になりながらつぶやいた。
「二人とも、単にエッチしたいだけだったりして……」
 そう言って二人の顔を見ると、何故か同じように汗が一筋垂れている。
「……推測するに、マスターの体への負担を考えなければ、そういう使い方も出来なくはないと思います。ですが、あまり感心しませんねぇ……」
 クリスもなんだか呆れたような口調でつぶやく。
「まあ、そうは言うけど、出来ることは試してみたいじゃない」
「少なくとも体の疲れだけなら、クロスを着れば多分治るぞ。そういう使用法の言わば予行だと考えればいいじゃないか」
「……心が疲れそうです」
 決してカイトと視線を合わせようとしないが、二人の顔には笑みと期待が見え隠れしている。カイトは溜め息を吐きながらひどく意気の上がらない調子で、コマンドワードを宣言した。
「コンバット、クロス」

END OF TEXT

773 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:45:17 ID:Yw17Z7Ct
クロス・アクセル3

 その恐怖は、業火と共にやってきた。
 少なくとも、コバヤシ・アスカの目にはそう見えた。
 もちろん、その火は彼女の属するBS襲撃チームの放ったものだということは分かっている。
 しかし、そんなものはこの際どうでもよかった。
「……化け物ね」
 傍らのシライシ・メグミがつぶやく。
 彼女たちの手にしたアームライフルは度重なる戦闘で既に残弾が少ない。
 だから一度戦線を離れて補給を受けようとしたところでその敵に出会った。
 その敵にはライフルが効かなかった。
 それどころか、ありとあらゆる攻撃が効かなかった。
 彼女のチームを率いていた怪人、バブルオクトパシーも毒液を吐き、果敢にその敵に挑んだが、あっさりと潰された。
 チームはその時点で撤退を開始したのだが、もとよりここは敵の研究所、地の利は向こうにあり、回り込まれて次々と仲間が屠られた。
 彼女たち二人はその生き残りだった。
 そして、彼女たちの前にはその仲間をやった憎い敵がいる。どうやら自分達も回り込まれたらしい。
「逃げても無駄だ、勝ち目など無い」
 吐き気がするほど陳腐な脅し文句だったが、この状況では迫り来る言葉だった。
 後ろには壁、前にはおぞましいほど強い敵。判り易過ぎるほどの窮地。
「どうしようか」
「白旗揚げたいけど、無理っぽいね」
 敵は恐ろしく殺気立っている。降伏しても聞き入れてはもらえなさそうだ。
「じゃあ、戦うしかないね」
 いずれは、こうなることも覚悟していた自分たちだった。
 アスカはアームライフルに接近戦用のエッジを取り付け、メグミはライフルのセレクターを連射にセットして構える。
「いくよ!」
「うん!」
 二人は同時に行動を開始した。


774 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:48:12 ID:Yw17Z7Ct
 メグミがライフルを連射して、敵の頭の目に当たる部分に弾丸の雨を降らせる。
もとよりあからさまに硬そうな銀色の表皮や装甲部に射撃しても無駄なことは分かりきっていた。
 だから、目を狙った。
 その間にも、アスカが横にスライドしながら接近を試みる。装甲の薄そうな脇腹にエッジを打ち込んでやるつもりだった。
 単純な挟撃だったが、敵は頭部をかばったまま仁王立ちしている。
 このままならやれる、と思った次の瞬間、アスカは宙に持ち上げられた。
「!?」
 敵に触れる直前、もちろん自分も敵に触れられてはいない。
 しかし何の力かは分からなかったが、アスカの体は宙に浮き、敵を庇うように動かされている。
 誰の仕業かは考えるまでも無かった。
「なかなかやる。だが、メタルクロスを相手にするレベルではないな」
「アスカ!」
 アスカは何かの力に抵抗し、じたばたと足掻いている。だが、振りほどけない。
 BSの戦闘員として常人の二倍以上の身体能力を与えられた自分たちが手も足も出ない。
 彼女たちが知ることはなかったが、その彼女たちよりも更に高い身体能力を誇る怪人、クレイモアデビルもそのパワーの前に為す術も無く敗れ去ったのだ。
 一戦闘員の敵う相手では無かった。
 メタルクロス、と名乗った敵はそのまま空中でアスカを締め上げると、無造作に床へ投げ捨てた。
 アスカは脱力して思うように身動きが取れない。そしてそれはメグミも同じだった。
「貴様等ザコに構っている暇は無い、ケリをつけさせて貰う」
 銀色の敵は、背中からバイクの握り手のような部品を取り出し、一振りした。すると、その棒状の部品は剣のように鋭く形状を変化させ、敵の手に収まった。
「バトルブレード!」
 敵はそう叫ぶと、メグミとの間合いを一気に詰めた。
 メグミも素手対刃物の戦闘訓練は受けていたので、そう易々と斬られはしなかった。しかし、後ろへ下がれば下がるほど壁が迫ってくる。迂闊に近付けば先程のアスカの二の舞だ。
 敵はどんどん距離を詰めてくる。メグミは下がり続ける。
「メグミ、逃げろ!」
「!?」
 いつの間にか敵の背後に迫っていたアスカが敵の腕に取り付いて動きを抑えようとした。
 せめてメグミだけでも逃がそうとしたのだ。
 しかし、敵はアスカの予想をも超えた本物の化け物だった。
「ぬうんんんんんん!」
 気合と共に、アスカの取り付いた腕ごと剣を振り上げる。アスカは宙に引っ張り上げられ、どうすることも出来ない。
 敵はそのまま、ひとまず間合いを取ろうとしたメグミの背中に剣を振り下ろした。
「ああっ!」
「メグミーっ!」
 アスカも思いっきり地面に叩きつけられる。あまりの痛みにのたうち回っていると、視界の隅で更にメグミに剣を振り下ろすメタルクロスの姿が見えた。
「く、くそぉっ……!」
 何とか立とうと地面に手を当てるが、度重なるダメージに体が言う事を聞かない。
 敵はその間にもどんどん距離を詰めてきていた。
「これで、終わりだ」
 アスカには、死神の声に聞こえた。
 そして、体を熱い衝撃が貫いた。

775 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:50:13 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「……うあああ!」
 自分の叫び声で、アスカは目を覚ました。
 大きく肩で息をして、それで自分がどこにいるかを思い出す。
 ここはBS訓練基地の救護室だ。
 なんでも、敵の秘密兵器を奪取することに成功した同期のハヤミネが負傷し、倒れこんでいた自分たちを救出し、ここに担ぎ込んだのだという。
 隣のベッドを見ると、メグミが穏やかな顔で眠っている。
 じっとりと、不快な汗が纏わりついているような感覚を覚え、アスカは額を腕で拭った。いつもかくものよりも粘りのある汗が腕を濡らす。
 喉の渇きを覚え、枕元にある水差しからコップに水を注ぎ、一口飲んだ。
 担ぎこまれた後、すぐに手術が行われ、二人の命は救われた。
 何でも、ハヤミネがそう図ってくれたそうで、人に借りを作るのが大嫌いなアスカは感謝はしながらも少し腹立たしい気持ちになった。
 もっとも、奴の親切は訓練生時代から変わらないので、相変わらずだなとも思ったのだが。 
 何故あんな優秀な奴がこんな酔狂な性分なのか、アスカにはよく分からない。生きるか死ぬかの修羅場にあって、同期のことを気にかけている阿呆は奴くらいのものだ。
 もともと、戦闘員には個性的な奴が少ない。
 常に死と隣り合わせというストレスの強い環境にあることに加え、BSという組織に属することで自分の寄って立つ記憶を奪われていることがほとんどであることから、人間臭さのまるでない戦闘員が非常に多い。
 そんな世界にあって、メグミとハヤミネは数少ない例外だった。
 メグミとは改造手術を同室で受けてからの付き合いだ。
 教育機関でも常に行動を共にしていた。別に特別にそう調整されたわけでもないのだが、何度となく同じ時間を過ごすうちに自然と寄り添いあう関係になった。
 前に出て行くタイプのアスカと後ろに引いてみるタイプのメグミは共通点こそ少なかったが、お互いを良く補い合い、訓練をうまくこなしていた。
 ハヤミネはそんな訓練漬けの毎日を過ごす中で知り合った人間だ。
 個々の技能はとても優れているのに、何故かそれがイヤミにならない不思議な愛嬌を備えていた。優秀なのにドジも多く、何回か手を貸したこともある。
 その度に実に素直に礼を言われるので、アスカはいつも悪ぶって答えるのが常だった。
 しかし、今回はそんな奴に、完璧に世話になってしまった。
 アスカは自分の体に手を当ててみる。
 斬られた傷はもう完全に塞がっており、痕も残らないだろう。BS科学班謹製の特製軟膏と医療班の適切な縫合作業の賜物だ。
 痛みももうほとんど残っていない。
 だが、心の痛みはちっとも治まろうとしていなかった。
 炎の中で対峙した、あの銀色の敵。
 仲間を無造作に屠っていった恐るべき力、そして無慈悲さ。
 メグミを手にかけたあの剣。
 思い出すと、頭が燃えるかと思うほどの怒りをアスカは覚えた。


776 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:51:59 ID:Yw17Z7Ct
「……具合はどうだ?」
 急に掛けられた声に、アスカは驚いた。
 首を声のする方向に向けると、ウェーブのかかった髪の女性が、こちらに向かって歩いてくるところだった。知らない顔だったので、尋ねてみる。
「どちらさま?」
「ああ、起きてるときに会うのは初めてか。私は科学班班長、ヴァネッサ・ルイーズだ。君の執刀に一枚噛んだ人間だ」
「これは失礼しました、班長」
 科学班班長というと、組織の装備面から怪人のメンテナンスまであらゆるバックアップに携わる後援部門の長であり、戦闘員に過ぎないアスカよりはるかに偉い重鎮である。
 しかし、ヴァネッサ班長はもう少し楽な態度でいい、と告げて、アスカの包帯を解き始めた。
「前線で実際に敵に当たっている人間を無下に扱う管理職など、死んだ方がいい」
「だからって、戦闘員の治療にまで御大が出張ってたら仕事にならんでしょうに」
 口ではそんなことを言いながら、アスカはフランクな口調で話しかけている。
 もともと言葉遣いは乱暴な口で、訓練生時代はそれで一悶着起こしたこともある。話の分かる上官だ、とアスカは軟膏を丁寧に塗りなおしているこの女性に好感を覚えた。
「確かにその通りだが、特に敵の新兵器と戦って生還した戦闘員ともなれば話は別だ」
 アスカは治まっていた怒りが頭をもたげるのを感じた。
「かなりこっぴどくやられていたが、幸い女性体は男性体より耐久性に優れる。お前たちが重傷を負いながらも何とか生き残ったのもそのせいだ。だが、このままやられっ放しというのも面白くはあるまい」
「だからって、どうしろって言うんです? あたしは一介の戦闘員だ。あんな化け物に対応するのは怪人さんの仕事でしょ」
 アスカはそっぽを向いた。組織の性格上、復讐戦に同じ戦闘員を使うことはまず無い。メンテナンスの問題もあるし、性格の違うチームを当ててデータを採集するという目的もある。
 平社員の意向では、会社は動かない。アスカはそれをよく知っていた。
「だが、その怪人もやられている」
「……何が言いたいんです? あたしはオツムのほうにはあまり自信がないんですよ、相棒と違ってね。モノを仰るときははっきりお願いできませんか」
 アスカは少しいらだちながら、今度は包帯を巻きなおしているヴァネッサに言った。
 話の分かる上官かとも思ったが、どうもあまり面白い話ではないらしい。
「すまんアスカ嬢、つまり私はこう言いたいのだ。再改造を受ける気は無いか、と」
「再改造?」
 アスカは眉をひそめた。
 戦闘用の怪人などは、たまに再改造を施されることもある。そうして改造を重ねることでより完成度の高いシステムを確立することが狙いだ。
 しかし、戦闘員の再改造など聞いたことも無い。全てに適用するにはコストがかかりすぎるし、結局怪人に劣る能力しか持たせられないのであれば意味も無い。
「現行の戦闘員のシステムを組んだのは私だ。つまりあなた達は私の作品だと言える。……怒らないで聞いて欲しいのだが、私も負けず嫌いでな、自分の作品があっさりと負かされてしまうのはかなり気分が悪いのだ」
「……まあ、分からんでもないですがね」
 呆れ半分でアスカは言う。そんな子供みたいなことを言っていたのではキリがない。
 だが、反面リベンジしたいと思う気持ちには共感を覚えた。あの銀色に、敵わぬまでもせめて一太刀浴びせたい。できるものならボコボコにしてやっつけてやりたい。
 そんな感情は、確かに自分にもある。
「幸い、次世代型の戦闘システムの構築を始めていたところだ。本当は怪人でやるのが筋なんだろうが、私は怪人担当ではないし、大体あんな汎用性に欠けるシステムは好きじゃない。必要だとは思うがな」
「で、あたしですか」
「そうだ。自分より遥かに実力の勝る敵に敵わぬまでも立ち向かったガッツを買ったわけだが……もちろん不服があるなら拒否してもいい。正式な命令じゃないしな。大体組織の意向とはいえ、こういう説得は私も嫌いだ」
 頭を掻きながら、ヴァネッサは呟くように言った。そもそも、高圧的に命じないだけでも変な上司だが、こういう組織でこんな上役がいることをアスカは初めて知った。
 仲間がらみでなく、ここにいるのが面白いと初めて思った。
「一つ、約束してくれませんか」


777 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:54:02 ID:Yw17Z7Ct
「何だ?」
「その話、ウチの相棒にもするんですよね?」
「メグミ嬢のことか? そうだ。君たち二人が戦ったということだったからな」
「それ、やめてくれませんか」
「……どういうことだ?」
 ヴァネッサは首を傾げる。
「今回の負けは、あいつのせいじゃない。実際、いいとこまでは行ったんだ。負けたのはあたしの力不足のせいで、あいつの狙いは当たってた」
「と言うが、彼女の改造を控えたとしてそれに何のメリットがある?」
「あいつ、綺麗でしょ、あたしと違って」
 そう言ってアスカは眠り続けているメグミを見た。
「あたしが前衛やってるのは向いてるってのもあるけど、あいつに傷なんか付けたくないってのもあるんですよ。あたしがちゃんとやってればあいつは傷つかずに済むし、最悪あたしが倒れてもあいつには逃げる選択肢が残る」
「……なんだか、それは本人にとても失礼な話に聞こえるな」
 ヴァネッサは非難するように言った。
 この手の過ぎた厚情は、ヴァネッサの好むところではない。
「分かってますよ。こんな話、あいつには聞かせられない。でも、あたしがドジったせいでメグミを殺しかけたのはまぎれもない事実だ。こんな借り作ったままじゃ、あいつに合わせる顔がない」
「本人はきっと、気にもしていないと思うぞ」
「でも、あたしは、そんな自分じゃ自分を許せないから。ヴァネッサ班長、メグミの分まで、今すぐあたしを改造してくれ。それであの銀色に挑ませてくれるなら、あたしは何の異存もない。せめてあいつがメグミにつけた傷の借りは、あたしがあいつに返したいんだ」
 アスカはそう言うと、拳を握り締めて俯いた。
 しばらくその様子を眺めてから、ヴァネッサは溜め息をつき、背を向けてから告げた。
「手術が終わり次第、作戦に参加できるようボスに進言してみる。借りを作るのは同じ立場だしな。ただし、必ず生還してメグミ嬢に謝罪しろ。そんな背信行為の片棒を担いだと思われたくはない」
「感謝する、班長殿」
 アスカは本心からかしこまって上官のヴァネッサに敬礼した。
 ヴァネッサは首を振り、お手上げのポーズをとってから、患者移送用のストレッチャーを取りに部屋を出た。

778 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:55:50 ID:Yw17Z7Ct

     ○

 秘密組織ブラックシャドウにおいて、戦闘員の業務は多種を極める。
 有名どころとしては要人の略取、各種窃盗、強盗、先日もあった襲撃における戦闘要員などに始まり、施設の管理要員、人足代わりの作業業務、訓練生の教官、そして数こそ少ないが書類仕事もある。
 数人の戦闘員でチームを組み、基本的にはそのチームが持ち回りで様々な業務に就く。
 研究所襲撃の際のカイトのチームのように所属人員が大幅に減ってしまった場合は、同じくチームが崩壊してしまったり、何らかの都合でチームが組めなくなって余った人間を集めて新しくチームを組む。
 アスカがカイトたちと再会できたのも、そんな組織の意向が働いたからだ。
「アスカ久しぶり、元気だった……わけないか」
「入院してたからな」
 チームの再編待ちの間に、今までクロス関係のゴタゴタで放置されていた書類仕事を回されたので、オフィスでそれを片付けながらの挨拶になった。
 山積みになっている各種書類と格闘しながらなので、どこか味気ない感じはする。
 それでも、カイトは旧友との再会を素直に喜んだ。
「最後に会ったのは戦闘訓練の時だから、もう半年くらいになるのか」
「ノびたお前を救護室に運んだ時な」
「その節は苦労をかけました」
「気にすんな。今回はお前に命を救われたんだから、おあいこさ」
 口は動かしながらも、アスカの書類を片付ける手は止まらない。
 カイトはなんとなく会話を続けにくくなったので、黙って書類を片付けることにした。
 しばらく煩雑極まりない報告書の文面に頭を悩ませていると、オフィスの扉が開いてヴァネッサ科学班班長が中に入ってきた。
「やっとるかね、戦闘員諸君」
「あれ、班長。なんでこんなところに」
 ヴァネッサはカイトの隣の空きスペースに陣取ると、懐から一枚の用紙を取り出した。
「私宛の報告書の書式にミスがあったぞ。ボスにも提出する重要な書類に穴を開けないでくれ」
「げ、マジですか」


779 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:58:06 ID:Yw17Z7Ct
 カイトはうんざりした顔でそれを受け取る。
 ただでさえ溜まっている書類を書き直すのは嫌なものだが、直属でない顔見知りの上司にそれを言われるのはさらに嫌なものだ。
 カイトの場合はその上司と身体の関係も結んでいるのでなおさらである。面はゆい気持ちでカイトはミスを訂正した。
「よし、これならいいだろう。それからアスカ嬢も」
「なんでしょう?」
 アスカはやはり顔も上げないで書類との戦いに没頭している。どことなく打ち解けた雰囲気を感じる。
 あれ、この二人面識あったっけとカイトが少しいぶかしく思っていると、ヴァネッサが口を開いた。
「君たち二人に任務が下ったぞ。といっても戦闘指令じゃない。現金輸送車強奪の支援だ」
 アスカの動きが止まった。
「まずは慣らしながら調整せよというボス直々の御命令だ。科学班としても異存はない」
「……通常業務なんかじゃ張りがないな」
 不満の色を隠そうともしないアスカにヴァネッサは苦笑しながら答える。
「いきなり虎の子を実戦に放り込むことなどできんよ。今回はハヤミネのクロス無しでのデータ採りも兼ねる。でないとまたぞろ誘惑されてライバルが増え……ゴホン、じゃなくて、ハヤミネをどこのチームに入れるかが決まらないそうだ」
 カイトは突っ伏して聞こえないフリをしている。
 何か良く分からない事情のことよりも、クロス絡みで自分のやった所業の方がよく印象に残ってしまうのは無理もない。
 しかし、そのせいでカイトはアスカやヴァネッサの事情について聞きそびれてしまった。
「作戦は明朝0500開始。今日はもうあがっていいそうだから、体を休めておくといい」
「ありがとう班長。でも、なんであなたがそんな連絡を?」
 礼を言うカイトにヴァネッサはウインクしながら答えた。
「ま、用事もあったしもののついでさ。ハヤミネ、忙しいのは承知だが、あまり構ってくれんと寂しくてちょっかいかけにくるぞ。こんな風に」
 そう言うと、ヴァネッサは一瞬で間合いを詰めて、カイトの唇を奪った。
「もしクロスを着ることがあったら、脱装は私かディーネ嬢のいる前でしないと怒るからな!」
 そう宣言すると、ヴァネッサは白衣の裾を翻して部屋から出て行った。
「……一応、人前なんだけどなあ」
 後に残されたカイトは所在無さげにぽりぽりと頭を掻いている。
「お前らって、そんな関係なのか?」
 何気ないアスカの質問に、カイトはぎょっ、としながらも答えた。
「うん、あのクロス着るとやたら盛っちゃって。で、誘惑したのかされたのか分かんないけど、今はこうなってる」
「ディーネも?」
「うん。ていうか一番最初に襲った……」
「ふうん……」
 アスカはぼんやりと呟くと、椅子の背もたれに体を預けてうーん、と伸びをしてから首をコキコキと鳴らした。
「ま、いいや。あがっていいらしいし、もうあがるわ」
「おう、お疲れ」
 アスカはそう言うと、オフィスを出て行った。
「さて、俺もあがろうかな……」
「今のが、マスターの同期の方ですか?」
「わ……うん、そうだけどクリス、急にどうしたの?」
 今までカイトの腕で黙っていたクロス専用サポートAIのクリスがいきなり声を掛けてきたので、カイトは驚いて言った。
 急に声を掛けてくるのはいつものことなのだが、計ったようなタイミングだったので少々不意を突かれた形になったのだ。
「驚かせたのでしたらすみません。私はBS関係のデータを持っていませんので」
「そっか、それじゃ何かと不便だからどうにかしないとな」
「どこかに情報端末のようなものがあれば、そこに接続してデータを吸い上げるのですが」
 カイトはしばし考えてから、ポンと手を叩いた。
「じゃあ、班長のとこへ行こう。あの人のラボなら端末の一つ二つあるはずだし」
「分かりました。ついでに『ご挨拶』も済ませるんですね?」
「……クリス、あのさ」
 今にも笑いだしそうなクリスの声に、カイトはげんなりした。なんで自分はこういう困った女の子に囲まれているのか。
「冗談です、マスター」
 そう言うと、クリスは本当にくすくす笑い出した。
 憮然とした顔になったカイトは、ヴァネッサの根城たる第8ラボに向かって早足で歩き出した。

780 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 15:59:58 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「調整、終わりました」
「ご苦労さん」
 NTK本部、インフォメーションセンター。
 木戸はクロス操縦のための訓練の傍ら、チェンジャーを本部に返却し、メンテナンスと再調整を行っていた。
 クロスチェンジャーはメンテナンスフリーが特徴的な武装ではあったが、それでも全く行わなくて良いわけではない。できることなら定期的にこうした作業は行うべきだった。
 何しろ、そのあたりの開発に絡んだのは自分なのだ。そのくらいはよく分かる。
 だからこそ、奪われた【アクセル】を早く取り戻しておきたい。
「木戸さん、大丈夫ですか?」
 受付嬢の森朝香が心配そうに眉を寄せる。なにしろ一介の研究員に過ぎない木戸が戦闘任務を命じられれば不安にもなる。
「なに、平気だろ。チェンジャーのせいでこんなにたくましくなったし」
 そう言うと、木戸は帰ってきたチェンジャーを着けた腕で力こぶなど作って見せた。冗談事でなく、木戸はたくましくなっている。
 それは彼の訓練によるところもあったが、何よりチェンジャーの機能である肉体改変の効果であるところが大きい。
「でもぉ……」
 上目づかいで朝香は木戸を見た。
「心配しなさんな、きっと勝って帰ってくる。おみやげは何がいい?」
「じゃあ、観光ホテルでバイキングってのはどうですか? 5000円くらいの」
 いきなり今までの不安気な態度をひるがえして笑顔でそんなことを言う。
 木戸はそのあまりの変わりっぷりに一瞬引いたが、何とか笑顔に押し込めて答えた。
「……う、ん。分かった……なんとかしてみる」
「やったー♪ 木戸さん、絶対ですよ! 約束しましたからね!」
 それは本当に自分の命を心配してくれているのか、それともバイキングが目的なのか。
 木戸は日に日に薄っぺらくなっていく自分のサイフの心配をしながら、本部の建物を後にした。

781 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:02:20 ID:Yw17Z7Ct

     ○

 現金輸送車強奪は、BSの戦闘員にとって比較的楽な任務であると言える。
 何しろ、民間の警備会社が相手なら自分達の能力を超えた敵との戦闘はまず考慮する必要がないし、制圧そのものも楽だ。
 見咎められるのを恐れてか、人数もあまり多く用意しないので、制圧も逃走も容易になる。足はもちろん自前のものを用意するが。
 かくして、カイトとアスカの混じった襲撃チームは大したトラブルもなく、現金入りのジュラルミンケースを手に入れて逃走していた。
 人の滅多に来ない裏道を通り、回収地点まで辿り着けば、ヘリが迎えに来てくれる予定になっている。
「しまらねえな」
 逃走用の車の中で、さっそくアスカは文句を言い始めた。もともと彼女は荒事向きの人間である。こうした任務はさぞ肌に合わないことだろう。
 そういう彼女の性格を知っていたカイトは、苦笑いしながらなだめにかかった。
「まあ、そう言うなって。無事に帰ってこられりゃ、それが何よりじゃないか」
「あたしは戦いたいんだ。特に、あのいけすかない銀色野郎と」
「冗談じゃない、あんなのと頻繁に会ったりしたら命がいくつあっても足りなくなる」
 カイトは怖気を掃うように呟いた。自分もメタルクロスを持っているとはいえ、そうそう何度も戦いたい相手ではない。
 あのパワーが自分に向かってくると考えただけでも恐ろしい。
 それでもアスカはぼやき続けた。
「お前は勝ったからいいけどな、あたしはやられっぱなしなんだよ」
「勝ったわけじゃない、それに、あんなのお前一人で勝てる相手じゃないぞ」
「お前、もしかして手伝わない気かよ」
 アスカはあからさまに不機嫌な顔でカイトに詰め寄った。
「そうは言ってないけど、勝手なことはするなよな。チーム全員が生きて帰る以上の手柄なんてないんだぞ」
「わかってるよ」
 アスカは自分の握り締めた拳を睨みながら沈黙した。
(これ以上は言わない方がいいか)
 そう思ってカイトも口を閉じる。何か変なしこりを感じるが、とにかく無事に帰れればそれでいい。
 カイトがぼんやりと窓の外を見ていると、急に周囲がが暗くなった。
 雲でも出てきたのかと思って上を見上げると、巨大な飛行機械が自分達の車と重なるように飛んできていた。
「なんだ……?」
 その飛行機械はどんどん高度を下げると、機体下部にあるハッチらしき場所を開き始める。そこには見覚えのある人間の姿があった。
「コンバット、クロス!」

782 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:05:31 ID:Yw17Z7Ct
 研究所襲撃の時以来だったその男は叫ぶなり空中へその身を躍らせた。
 たちまち凄まじい光が辺りを埋め尽くし、視界を奪われた車が急ブレーキを踏む。 
「あいつだ……!」
 車が停止してしばらくしてから、カイトは車外に飛び出した。猛烈な光、そしてあのコマンドワード。 
 どちらも思い当たることがあり過ぎるぐらいある。
 車から出て周囲を見回すと、車と正対する位置に銀色のシルエットが堂々と鎮座している。
 メタルクロス【パワード】は、泡を食って飛び出してくるBSの戦闘員たちを見据えて言った。
「さあ、この間の借りを返させて貰うぞ!」
「この野郎、それはこっちのセリフだっ!」
 アスカは気圧されたりはしていなかった。
 それどころか、無謀にも単身で突撃をかけた。
「アスカ!」
 カイトは車にとって返すと、大急ぎでライフルを持ち、他のメンバーと共にアスカの援護に向かった。
 メタルクロスを着るには周りに味方が多すぎたし、第一自分のクロスには火力のある兵装が無いから援護には向かない。
 そう、むしろアスカが援護に回っていれば、もう少し有利に戦えたかもしれないのだ。
「勝手なことするなって、言っただろうに!」
「うるさいっ! こいつは、こいつだけはあたしがこの手でやってやるんだ!」
 アスカはどこから取り出したものかナックルガードを装着して、猛然と【パワード】に殴りかかった。
 アスカの得手は接近戦で、その中でも特に格闘戦の技術には光るものを持つ。
「させるか、ワイアット・リボルバー!」
 【パワード】はただ殴られてはいなかった。間合いを測るように移動すると、空中から拳銃を取り出し、アスカ目がけて連射した。
 安定した体勢から繰り出される強力な射撃は、アスカを完璧に捉えたように見えた。
 しかし、銃弾は命中したが、アスカは全く気にも留めずに攻撃を続ける。
「そんなもんが、あたしに効くかっ!」
 言い放つと、アスカはメタルクロスに猛烈な拳の連打を浴びせた。
 同じ教官に教えを受けたカイトですら、その全てを見切ることができないほどの凄まじいラッシュ。
「凄……い!」
 見れば、アスカの体が普通の戦闘員と違った構造になっているのが分かる。
 銃弾を受け止めた胸部及び腹部には装甲らしきものが見えているし、腕部も以前と比べると若干大きく作られている。
「推測するに、アスカさんには次世代型の戦闘システムが移植されているようですね」
「クリス、それは一体?」
 カイトは射撃を続けて【パワード】の移動できるスペースを潰しながら、クリスに説明を求めた。
「ヴァネッサ班長が開発を進めていた戦闘員の強化プランです。主に人工筋肉の出力アップと皮膚の硬化機能を持つ新しい戦闘体です」
「アスカは再改造を受けたのか!」
 愕然としながらも、カイトは射撃の手を緩めなかった。
 余計なことを考えながら相手が出来るほどメタルクロスは生易しい敵ではない。
 その間にも、アスカの連撃は勢いを増していく。
「そらそらそらあっ! どうした化け物、手も足も出ないか!」

783 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:07:41 ID:Yw17Z7Ct
「そんな訳が無いだろう」
「!?」
 調子にのって攻め立てていたアスカは言い知れぬ不安を感じ、その場から飛び退こうとした。
 しかし、それをさせる【パワード】ではない。
 アスカは腕を掴まれ、その場に引き倒された。
「ぐっ!?」
「ふん、貴様この間の女か。殺したものだとばかり思っていたが」
「……あいにく、あれくらいで死ねるほど根性なしじゃなかったモンでね」
 威勢良く啖呵は切ってみるものの、アスカの顔は青ざめている。
「では、もう一度殺すだけだ」
 そう言うと、研究所の時と同じようにバイクの握り手のような部品を背中から取り出し、一振りして剣のように形を変化させると、アスカに向かって斬りつけようとする。
「マスター、クロスを装着してください、味方は撃ちません!」
「……コンバット・クロース!」
 アスカが邪魔で味方が撃てない一瞬の間を突いて、カイトはコマンドワードを宣言した。辺り一帯をを暴力的な量の光が満たして、カイトの姿もろとも周囲全体の視界を0にする。
 光が収まると、そこにはもう一人銀色に輝く戦士が立っていた。
「アスカを放してもらおうか」
 カイトは【パワード】との間合いを測った。
 言葉通りに放してくれるとは全く考えていない。
 木戸もアスカの体を盾にしながらこちらに向かって言い放つ。
「それこそこちらのセリフだ。クロスを脱装し、今すぐこちらに返せ」
「強引に取り返すことだって出来るんだぞ」
「ならやってみるがいい、女の死体が返って来るだけだ」
 じりじりとお互いに距離を測りながら、睨み合いを続ける。
 しかし人質にされたアスカは、そんな戦いに耐えられなかった。
「殺るなら殺れ、これ以上誰かの足手まといになるのはゴメンだ!」
「ならそうしてやる」
 【パワード】は、無造作に剣をアスカの腹に突き立てた。銃弾を弾き返した皮膚も剣の鋭さには勝てなかったのか、ロクな抵抗もせずに剣の侵入を許した。
「アスカーっ!」
 カイトはくずおれるアスカを抱きとめに行き、木戸はすぐさま間合いを取った。
 味方が再び射撃で援護してくれるのを幸いに、一度車の陰に避難する。
「アスカ、おい、しっかりしろ!」
「……生きてるよ、とりあえず」
 アスカは苦しげに呻くと、腹に突き立っている剣を自ら引き抜いた。
「ぐぅ……っ」
「バカ、なんてことを!」
「うるせ、このほうが、治りが早いんだ。まだ死にゃしない」
 そう言うと、アスカは傷口を押さえたままうずくまる。
「……つっても、死んでないだけ、みたいな感じだがな。すまん、また、厄介になる」
「そんなのはいい、黙って寝てろ」
「勝手なことすんなって、言われてたのにな」
 アスカはカイトの腕を取った。相当無理をしているのか、歯を食いしばりながら話し続ける。
「メグミと一緒にあいつと戦った、メグミの作戦は当たってたのに、あたしが弱かったせいであいつまで、だから」
「だからあんな無茶をしたのか」
「借りは即返さなければならない、あたしのモットー、知ってるだろ?」
「……アスカ」
 アスカは涙を浮かべていた。
 カイトはアスカを後部座席に横たえる。
「カイト、敵、とってくれ。あたしはこんなザマだけど、お前なら」
「……絶対、死ぬんじゃないぞ。生きて帰ることが、俺たちの戦いだ」
 カイトはそう言って立ち上がった。
 戦況を確認する。さすがに戦闘能力が違いすぎるせいか、味方が押されているのが遠目にも分かる。
「あたしが、そう簡単にくたばるタマか。はやく、早く行け!」

784 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:09:58 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「みんな、下がれ! 俺だけでいい!」
 カイトはそう叫び、【パワード】に襲いかかった。他の戦闘員たちが撤退を開始する中、脚力にモノを言わせて一気に距離を詰める。
 しかし、木戸もクロスを使いこなしてきていた。
 【パワード】に内蔵されている火器を一斉に起動し、一直線に向かってくるカイトを迎撃する。
「ちいっ!」
 カイトはしかたなく距離をとる。動きの速さでは圧倒的にこちらが勝っているのだが、その分リーチと火力は向こうが上だ。
 迂闊に近付くとミサイルと弾丸の大歓迎を受けてしまう。
「クリス、なんか手はないか?」
「せめて向こうのオプションパーツを奪うことができれば、状況は逆転可能ですが……推測するに、今のままでは近付くことも難しいようです」
 木戸もそれは承知の上なのだろう、カイトを倒すというより自分に有利な距離を保つことに全力を注いでいるように見える。
 そしてその目論見は正しい。【アクセル】には中・遠距離で効力を発揮する武装が全く無い。
 距離を保って攻撃されれば為す術がないのだ。
「ガトリングアーム!」
 【パワード】が砲撃戦用のオプションパーツを装着し、【アクセル】を撃ちまくる。
 大口径の銃弾の嵐が、ミサイルと共にカイトを襲う。
「くそ、今は逃げるしかないのか!」
 カイトは飛んできたミサイルを大きなモーションでかわすと、追撃してくる【パワード】の射線をかすめるように逃げ回った。
 これでもスピードと運動性ではこちらが勝っているため弾は当たらない。
「どうにか残弾が切れてくれればいいが……」
「推測するに、不可能かと。内蔵ミサイルはともかく、他のオプション兵装にはまだまだ残弾があったはずです」
「くそ、じゃあどうすればいいんだ!」
 苛立って、カイトは少しだけ距離を詰めた。
 【パワード】の武装の有効射程距離ギリギリのライン、【アクセル】の機動で弾をかわせる限界の位置まで近付く。
 そのことが、【パワード】にも分かっていた。
「ビッグマグナム!」
 射撃と同時に、大きく回り込むような軌道で【パワード】の右手が撃ち出された。
 その後、猛烈な勢いで突進してくる。
 カイトはさっきまでと同じように回避しようとしたところで、【パワード】の動きが今までと違っていることに気付いた。
 突進、してくる?
「マスター、敵左腕部にエネルギー反応!」
「遅いっ! マグネティック・ホールド!」
 クリスの警告と重なるように、木戸は左腕の装置を作動させた。
 たちまち自分の体が地面に縛り付けられるような重みに襲われる。
「……! クリス、これは!?」
「強力な磁場を発生して、金属製の敵を縛り上げる拘束兵装です! 使うと自分も動きを封じられる代わりに相手の動きを封じることが出来ます!」
 【パワード】の方を確認すると、確かに動けなくなっている。
 しかし、【パワード】は全く動じず、こちらの上の方を見ていた。
「上……?」
 カイトが視線を上げると、そこには真っ直ぐ飛んできていたはずのビッグマグナムがあり、重力も勢いに加えてこちらを押しつぶそうと急降下していた!
「しまった、これが狙いか!」

785 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:13:00 ID:Yw17Z7Ct
「今更じたばたしてももう手遅れだ! あきらめてスクラップになるがいい!」
 自らも磁力の檻に捕らわれながら、木戸が哄笑する。
 カイトは何とか抜け出そうと必死で足を動かそうとするが、実にゆっくりとしたペースでしか動いてくれない。
「……バーナー、オン!」
 クリスがカイトの意図を察知して背面バーナーを作動させる。
 強力なジェット噴射がカイトの遅々とした歩みをサポートするが、それでも子供が歩く程度にしか加速しない。
「く、くそぅっ!」
 もう当たる、と体を固くしたその時、直滑降していた【パワード】の右腕をどこからか飛んできた砲弾が撃ち落とした。
 間一髪で吹き飛ばされた腕は粉々になって、一部がパラパラとカイトたちの上に降ってくる。
 しかし、それだけだった。
「……どう、なってる?」
 カイトが周囲を見回すと、撤退したはずのBSの車が戻ってきていた。
 何故か戦闘員は一人も乗っておらず、その代わり片目にゴーグルを着用した女性の姿が運転席にあった。
 その人物はバズーカを手に運転席から身を乗り出して、声を張り上げた。
「ボーッとしないで、敵が狙ってる!」
「!」
 気がつくと、【パワード】の拘束兵装の効果は無くなっており、敵はもう一度射撃に移ろうと左腕に装着した砲口をカイトに向けるところだった。
「やらせるか!」
 距離が詰まっていたので、カイトは【パワード】の腕を蹴り上げた。目標を失って空撃ちを始めるガトリングアーム。
 カイトはその左腕を捉え、全身で巻き込むように投げ技をかけた。
「これでもくらえっ!」
「レフト・パージ!」
 このままでは投げられる、と悟った木戸は、左腕に装着したガトリングパーツを炸薬で強制排除した。
 勢いよく外装が外れ、投げの体勢に入っていたカイトはその勢いのまま地面に叩きつけられる。
「うわあっ!?」
 技から逃れた木戸は、これ以上戦っても勝ち目は薄いとみたのか撤退していった。
 女性は車から降りてカイトの元に歩いて来た。
 そのシルエットにカイトは覚えがあったが、確認する前に女性の方が声を掛ける。
「カイトくん、久しぶり」
「メグミ!? お前、入院してるはずじゃ……」
 その女性はアスカの相棒でカイトの同期のシライシ・メグミだった。
 確かアスカよりもケガの状態が酷く、今は入院していたはずの女性戦闘員である。
 しかし、当のメグミの外見からは、そんな負傷があったとはとても思えない。
 現場の人間にしては細身の体だが、その挙動からダメージを見受けることはできなかった。
「そんなに長いこと入院するほどの怪我でもなかったのよ、ちょっと治りが遅かっただけ」
 メグミは自分の大ケガをそう言ってあっさり片付けると、【パワード】が逃げていった方を見つめた。
「アスカも馬鹿なことをしたものね、あんなのに一人でつっかかったって勝てるわけ無いでしょうに」
「お前、アスカが再改造受けたこと……」
「ええ、知ってたわ。目の前で話してたんだもの」
 カイトは目を剥いた。
「知ってたらなんで」
「止めなかったって? 止めたらあの子がわたしの言うこと聞いておとなしくしてたと思う?」
「……思わない」
 なにしろ、頭に血が上った時のアスカは、人の話などこれっぽっちも聞かないことで訓練基地の有名人だったくらいなのである。
「でしょう? だったら思うままやらせてあげた方があの子のためだわ」
 メグミはそう言うと車に乗り込んだ。
「できるだけ急いで、アスカが心配」
「分かった、ちょっと待って」
 地面に落ちたパーツや薬莢を回収し終えたカイトが乗り込むと、車は猛烈なエンジンの唸りを上げてその場を離れていった。

786 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:15:44 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「カイト、大丈夫だった!?」
「ああ、何とか。アスカはどうなってる?」
「……ご覧の通り、無事だよ」
 BS本部秘密基地、医療棟第三病室。
 前にカイトたちが世話になったあの病室だ。
 先に撤退してきた戦闘員たちによって担ぎ込まれたアスカは、科学班班長たるヴァネッサが直々に損傷具合を確認した。
 再改造の結果、通常の倍以上の治癒力を持たされた彼女は、腹に剣を突き立てられたにもかかわらず、傷口がほとんど見えない状態まで回復して帰還していた。
 ヴァネッサは手術の必要なしと断言し、そのまま病室へ放り込んだ。  
 その後、程なく目覚め、たまたま彼女の担当になっていたディーネと再会し、互いの近況など話し合っているうちにカイトたちも引き上げてきたのである。
「悪かったよ、……その、心配かけて」
「全くだ。俺はともかくメグミなんか分かっててお前の好きにさせてくれたんだぞ」
「そうよ、あなたはただでさえ単純なんだから、わたし抜きで勝手に仇討ちを始めないこと」
「まったくもって申し訳ありませんでした」
 腰に手を当てて睨みつけるメグミにアスカが頭を下げた。
 メグミはその謝罪を無視してくどくどと説教を始めている。
 カイトはその間にディーネと話をしておくことにした。
「班長から何か聞いた?」
「いえ、何も。アスカのことは本人から聞いたけど」
 ディーネは気の無い様子で問診票に何事か記入し続けている。
 彼女は本当に何も知らないと踏んだカイトは、ヴァネッサとの『ご挨拶』のことは黙っていることに決めた。
「それにしても……カイト、それいつ脱ぐつもり?」
「あ」
 カイトはゴタゴタしていて、自分がクロスを着たままだということを忘れていた。
 ちなみに、このクロスは脱装すると本人と周囲の人間の性衝動が急速に喚起され、本人の意志と半ばは無関係にエッチを始めてしまう超危険物である。
 ディーネは残念そうに続けた。
「今勤務中だから、抜けられないのよねえ。そうじゃなかったらいくらでも襲われてあげられるんだけど」
「あの、襲うの前提で話をしないで欲しいんだけど」
 情けない声で抗議するカイト。
 表情こそクロスに包まれていて分からないが、そのヒーロー然とした外見でそんなことを言うのでなおさら情けない。
 ディーネはそんな情けないカイトに止めを刺す。
「でも、襲わなくても襲われるんでしょう?」
「そうですね、今までのデータを鑑みるに、ほぼそうなると思って間違いないかと」
 クリスがここぞとばかりにしゃしゃり出て、言わなくていいことを言う。
 カイトは完全に脱力して溜め息をついた。外面を考えると似合わないことこの上ないはずなのに、何故かしっくりくる。
「クリス、クロスはあとどれくらい持ちそう?」
 カイトは泣きそうな声で尋ねた。
「戦闘開始から2時間50分程度経過しています。あと10分、持つかどうかというところですね」
 つまり、このままでいても基地の中で脱装することは間違いない。
 下手なところで脱げば大惨事になりかねないので、ここで脱ぐしかなさそうだった。
「ねえ、あの二人としちゃうの?」

787 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:17:26 ID:Yw17Z7Ct
「ディーネ、頼むからそういう不穏なことを言わないでくれ」
 カイトはディーネの両肩に手を乗せながら言った。
 二人だけでも気を使うのに、これ以上関係が広がっていったらどうなることか。
 だが、この場にいるのはそんな彼の思いなど意にも介さない女ばかりだった。
「ねえ、アスカ、メグミ、ちょっといい?」
「何?」
 説教が終わると見るや、ディーネはアスカとメグミの方に近付いていく。
 なにやらこそこそと耳打ちなどしているが、カイトにはそれが真っ当な会話だとは到底思えない。
「クリス、あいつ何言ってるかわかるか」
「はい。簡単に内容を要約すると、二人にマスターの性欲処理を依頼しているようですね」
「ディーネ!」
 カイトは喚いた。心配してくれるのは分からなくもないが、はっきりとやりすぎである。
 しかし、ディーネは不満の色も顕に抗議した。
「じゃあ、誰か知らない人とカイトがエッチするの認めろって言うの?」
「そんなことは言ってない!」
「言ってるじゃない。ここでしないならそうなるってことでしょ、クリスさん」
「はい、ここからセーフハウスまで異性に会わずに辿り着ける可能性は極めて低いですので」
「ほら! だったらまだ知ってる人に頼むほうがマシよ!」
 ディーネは勝ち誇った。
 心労のあまり頭が痛くなってきたカイトは、アスカとメグミに話を振る。
「二人も何か言ってくれよ。こんなんでヤッちゃうとか、おかしいだろ?」
「あら、わたしは構わないわよ?」
「あたしも」
 カイトはその場にひっくり返った。
「なんでだー!」
「あなたが人畜有害の最低男で、モラルもデリカシーも無いなら嫌だけど、そんなこともないし」
「そうそう。お前、そういうトコではもっと自信持っていいと思うぞ」
 なにやら変な説教までされてしまう。
 カイトはくらくらする頭を抱えながら、なんとか話の結論を変えるべく奮闘した。
「だって、絶対襲うぞ。避妊なんかしないぞ。ゴムなんかないし」
「あっても役に立つかどうかは疑問だけどね」
 ディーネが口を挟む。確かに発情中のカイトはとんでもない量を放出するし、発情した状態では気をつけてセックスすることなど出来そうにもないが。
 だが、二人ともそれには異存がないようで、こんなことを言う。
「あら、それってこれ以上ないほど本気ってことでしょう? あなたが相手なら別に文句ないわ」
「下手に避妊なんかされるとそういうのって疑っちゃうしな」
 腕を組み、うんうんと頷きながらアスカ。
「俺はディーネと班長とも関係があるし」
「その二人とも忙しくて相手できないから、わたしたちにお鉢が回ってきたんでしょう?」
「大丈夫だって、別にお前を独占しようなんて思っちゃいないから」
「そういう問題じゃないだろ! そんなんで気軽にやっちゃったら、これからお前らとどう付き合っていったらいいか分かんなくなるから俺は!」
 カイトが声を荒げると、ディーネが人差し指をカイトの口に当てた。
「ここは病室。今は知り合いしかいないけど、お静かにね」
「誰のせいで大声出してると思ってるんだ」
 銀色のシルエットのままスネるカイト。
 三人は苦笑して、カイトをベッド際に抱き寄せた。
「そういうカイトだから、いいって言ってるの」
「体しか見てない奴だったら、こっちから殴ってご破算にしてるよ」
「それに、あまり断られると、わたしたちに魅力がないみたいに聞こえてくるんだけど?」
 メグミはそう言うと、じっとカイトの顔を見つめた。他の二人もそれに倣う。
 三様の眉目秀麗な顔立ちが、カイトのセンサーアイを見つめている。
「ねえ、わたしたちとするの、嫌?」
 カイトは陥落した。

788 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 16:19:48 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「脱装」
 カイトが宣言すると、クロスがパーツごとに別れて分解し、塊になって虚空に消える。
 すると下半身に衝撃が走り、たちまちカイトのズボンに大きなテントが張られた。血流が激しくなり、顔が赤くなる。いつもの副作用だ。
「時間ないから、私が最初ね?」
 ディーネはそう言うと真っ先にカイトに抱きついた。
「時間ないのに、するのか?」
「だから、キスぐらい頂戴」
 疑問を呈するカイトの唇に自分のそれを重ねて黙らせる。そして舌を交し、唾液を交換する。
 お互いの舌が目まぐるしく行き交い、口内を激しく舐り合う。
「……なんか、凄いね」
「ええ……」
 見物に回った二人の女性を完全に意識から締め出して、口愛の饗宴はしばらく続いた。
「……ぷは」
 顔を離して息をつくと、二人の顔にどこからともなく笑みが浮かぶ。
 ディーネは満足そうにカイトから離れた。
「じゃ、もう私は行くけど、ちゃんと優しくしてあげなきゃダメよ?」
「ごめん、それは自信ない」
「出来る範囲でいいからしなさい! 壊したりしたらお仕置きだからね!」
 ディーネは高らかに通告すると、三人に向かって手など振りながら病室を後にした。
「…………えーと」
 残された三人の間にとても微妙な空気が流れる。
 すると、唐突にメグミが服を脱ぎ始めた。
「メグミ?」
「男の子は、キスだけじゃ足りないんでしょう?」
 そう言いながら、着ていた服を下着も含めて全て脱いで行く。
 すべらかな肌が次第に露になっていく姿に、男のカイトだけでなくアスカまでもが見惚れていた。
「やっぱ、メグミは綺麗だな」
「ああ……ちょっと、怖いくらいだ」
「怖がられても困るわ。今から何するか分かってる?」
 二人のコメントに苦笑を漏らしながら、メグミは匂い立つような裸身を晒した。
 彼女はディーネやヴァネッサよりは落ち着いた体つきだったが、必要なところにはしっかり女性らしい丸みが乗っている。
 手足は戦闘員であることが信じられないくらいほっそりとしていたが、弱々しさは感じない。しなやかで、そうでありながら十分に柔らかみのある肉付き。
 流れるように翻る長い黒髪も、彼女の魅力を一層引き立てている。
 カイトはそんな同期の美貌を前に、やや気後れしていることに気付いた。
「分かってるけどさ。……まさかこうなるとは思ってなかったから、緊張しちゃって」
「あれだけ見せ付けておいて、それはないんじゃない?」
 ニッ、と笑うとメグミはカイトの唇に自分のそれを重ねた。
 下唇を挟むように吸い、それから舌を口内へ入れて、歯列をこじ開ける。
 始めはぎこちなかったカイトの動きも徐々に滑らかになり、やがて二人の舌は軟体動物のように絡み、唾液を掻き混ぜ合った。  
 カイトがしばらくキスに没頭していると、メグミの片手がズボン越しに自分の勃起を触っていることに気付いた。
 手のひらで撫で回すくらいの微妙な、なんとももどかしい刺激だったが、その分頭の方を快感で炙るにはちょうど良いくらいの力加減とも言えた。
「ん……む、んぅ……ぷはぁっ」
 長いキスを楽しんだ後、メグミはカイトの唇を解放した。 
 離れたときに垂れた唾で濡れた顔を見合わせ、なんとなく笑い合う。
「さ、こっちはどうなってるかしら……」
 いつもと比べてどことなく艶めいた口調で呟きながら、メグミはカイトのズボンを下着ごと脱がせていった。
 外気に触れたカイトの男性器は衣服の抑制を解かれ、急角度でそそり立っていた。
 充血したそれは、いつにも増して太く、大きく張り詰めている気がする。
「わ、ご立派」
「……そりゃどうも」

790 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:07:41 ID:Yw17Z7Ct
「褒めてあげてるんだから、もう少し嬉しそうになさいな」
 それもどうかと思う、とカイトが口に出すより前にメグミは肉茎に舌を這わせた。
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音を立てて舐め上げたかと思うと、ペニスを咥え込んで頬の内側の粘膜で幹をしごき上げる。
それと同時に舌がちろちろと先端から尿道口、カリから裏筋へとくすぐるように責めあげる。
「う、ううっ!?」
 端正な顔立ちがまさか、と思うほど巧みなフェラチオを始めたので、カイトは早くも射精の予兆を感じ始めた。
 前後にスライドする度にちゅうう、と心地良い吸引まで付いて、男根を突き上げるように快感が駆け上ってくる。
「う、あ、もう……」
 イク、という寸前になって急に口腔愛撫が止んだ。メグミの口からちゅぽん、という音と共に硬く怒張しきった肉棒が現れる。
「……あれ?」
「コラ、こんなところでイかないの。男の子なんだから、もう少し頑張りなさい?」
 見下ろすと、メグミが少し怒ったような表情でカイトを見上げていた。
 もっとも、口元にはわずかながら笑みが浮かんでおり、本気で腹を立てているわけではないらしい。
 彼女は病室のベッドに腰かけると、ゆっくりと脚を開いていった。
 つつましい茂みの奥でゆっくりと息づくように佇む女性器がちらりと顔を覗かせる。
「今度は、こっちも……ね」
「ああ……」
 カイトは熱にでも浮かされたかのような口調で返事をして、メグミの前にひざまずいた。
 そのまま局部に顔を寄せると舌を伸ばして同僚の秘裂を舐め始める。
「……っ、ん……うぅ」
 メグミは声を上げないように顔をうつむかせて耐える。しかし、口の端からどうしても小さく漏れ出してしまう。
 大声で嬌声をあげるよりも確実に感じていることが分かるのでカイトの興奮はいやおうにも増した。一層激しく舌を使う。
「ひぃ……あ!」
「声あげてもいいのに」
「……そんな、こと、できるわけ……ない、ぃん!」
 喘ぎまじりの囁き声で、カイトは更に燃えあがる。
 唾液に溢れてきた愛液を大きな音を立ててすすりあげ、ぷっくりと膨らんだクリトリスを甘噛みする。 
「ふぁ、ああっ!」
 腰が砕け、起きていた彼女の上半身がベッドに沈んだ。
 カイトが蜜と唾液でべとべとになった口元を拭って立ち上がると、快楽のあまり呆然とした顔で天井を見上げるメグミが見えた。
「気持ち、よかった?」
「……ええ、かなり恥ずかしかったけど」
「可愛かったよ」
 カイトがそんなことをしれっと口にした瞬間、メグミの顔がりんごのように真っ赤になった。
 過激な行為の最中より、こんな言葉のやりとりで恥じらうセンスはいまいちよく分からなかったが、理知的な同期のこんな一面を見れただけでもずいぶんと認識が変わる。
「ごめんなさい、待たせてしまって。……始めましょうか」

791 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:11:53 ID:Yw17Z7Ct
「そうだな」
 少し間を置いたことで、メグミの体を暴れまわる快楽も落ち着いたようだ。
カイトは全く勢いを失わない自分の欲棒を彼女の濡れたスリットにあてがい、角度を調節してから少しずつ挿入を始めた。
「うぅ……ん……」
 熱い蜜で潤った秘所は、割とすんなりカイトの怒張を受け入れていった。
 ゆっくりと腰を進めていくと、先端にわずかながら抵抗を感じる。
 カイトはそれに気付いたので、自分の下で目を閉じているメグミに話しかけた。
「メグミ、お前ってもしかして」
「ええ、男性を受け入れるのは初めてよ」
 メグミはあっさりと自分が処女であることを認めた。
「大丈夫か……?」
「まあ、痛いのは分かってるから。できれば早く済まして欲しいわ、怖いから」
「分かった、出来るだけ優しくするから」
 カイトはメグミの脇に手を置いて、先程にもまして慎重に腰を進める。
 抵抗のあった場所まで来たところでメグミの顔を覗き込んだ。彼女が頷くのを確認して、一気に腰を突き出す。
「うぅ……!」
 何か薄いものを破る感触を亀頭に感じると同時に、メグミが顔をしかめて呻いた。接合部分を見ると、愛液に混じって赤い血が流れ出ている。破瓜の証だ。
 その光景のショックのあまり、いわずもがなの質問を口にするカイト。
「……痛い?」
「……そりゃあ、ね。悪いけど動くのはちょっと待って」
「ああ、もちろん」
 了承したカイトは腕に力を込めて、できるだけ体が動かないよう努める。
 しばらくそうしていると、メグミが首に手を回して、きゅっと抱きついてきた。
「もう大丈夫みたい。動いてもいいけど、あまり激しいのはやめてね」
「分かってる」
 メグミはにっこりと笑って、抱きしめたカイトの首筋に唇を寄せた。
 柔らかい唇の感触を今更ながらに感じながら、カイトは腰の動きを再開した。膣がざわざわと蠢き、ペニスを心地よく締め付けてくる。
 まだこなれていない、初々しい媚肉の感覚にカイトは夢中になった。無理は出来ないと頭では分かっているのに、腰が止まらない。
「うっ……っく……んっ、はぁ……」
「大丈夫……?」
 メグミが押し殺したような声をあげるので、カイトは一度動くのを止めて、彼女の顔を再び覗き込む。
 ところが、そのメグミはコクコクと首を振ると、自分から腰を動かして快楽をねだった。
「ね、もっと、動いて……」
「え、あ、ああ」
 戸惑いながらもカイトはピストンを始めた。
 くちゅちゅ、と卑猥な水音を立てて、男根が女陰を貫いていく。
 愛液でトロトロになった肉襞が絡み付くように逸物を刺激して、カイトにたまらない快感を与えた。
「あ、やぁ……はぁぁん……」
 メグミが自分の上からの優しい動きに、甘く密やかな喘ぎ声を洩らす。
 自分の行為で相手も快感を得ていることに、カイトは深い満足感を味わった。
 続けざまに腰を繰り出しながら、メグミに向かって話しかける。
「気持ちいい?」
「うん、うん、あ、あなた……は? きもちいい?」
「俺も、いいよ、すごくいい」
「うれしい……」
 瞳を潤ませて言うその顔は、まさしく反則級の可愛らしさだった。思わず抽送のペースが上がり、蜜壺に激しく肉棒を叩きつける。
「ひゃ、あん、そ、そんな、激しすぎ、る!」
「ごめん、もう、止まらない」
「あんっ! はああっ、ふぁああぁあっ!」
 もう優しくとか手加減などという言葉はカイトの頭の中には無かった。ただ目の前の、可愛い女の中で果てることしか考えられない。
 メグミも、もはや喘ぎを隠そうともしない。口からは唾液がこぼれ、それを拭うことも考えられないほど、彼女も与えられる快楽に酔いしれている。
 勢いよく抜き挿しを続けていると、たちまち限界が近付いてきた。
「そ、そろそろ、イクよ!」
「ああんっ! わたしも、わたしもぉっ!」
「メグミっ!」
 ぎゅっと抱き合い、最後の一突きをメグミの奥に叩き込む。
 と同時にカイトは自らの欲望を解き放った。一度イキ損ねたせいか、普段よりもさらに物凄い量の精液がメグミの膣に注ぎ込まれる。
「は、あああぁぁぁっ――――!」
 一際甲高い声をあげて、メグミも絶頂を迎えた。痙攣する肢体を押さえつけるように、カイトに強く抱きついて離れない。
 二人はしばらく繋がったまま、お互いの体温を感じ合った。

792 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:13:43 ID:Yw17Z7Ct

     ○

「で、あたしはほったらかし?」
 目の前のベッドで激しいセックスを始めた挙句、二人一緒に絶頂を迎えて幸せそうにひっついている男女を眺めながら、アスカは聞いた。美麗な相方の濡れ場はなかなかそそるものがあったが、それでは自分の腹がふくれない。
「まあ、メグミの後じゃ、あたしを食う気にはならないかもしれないけどさ……」
「そんなことない、アスカだって十分美人だ」
 恨めしそうにシーツを指でほじくるアスカを宥めながら、カイトはメグミから自分の逸物を抜き取った。
 ごぽ、と音を立てて子種汁と愛液の混合物が膣口から流れ出てくる。処女血と混じってほのかにピンクに色付いた液体が垂れて、ベッドの上に溜まっていく。
「またまた、お世辞なら結構だよ」
「お世辞じゃない」
 そう言ってカイトはアスカの寝ているベッドへ移る。そのまま彼女の手を取って自分の胸に当てた。とくとくとくと早い鼓動が手のひらを通してアスカに伝わった。
「ほら、どきどきしてる」
「そんな、それは今までメグミとシてたから」
「今はそうじゃない」
 彼は言うなりアスカの頭を抱いて唇を奪った。 
 舌は入れない、しかし強く吸い込む強烈なキス。
「ん……むう!?」
 驚きで見開いた目を白黒させながらも、アスカはキスを受け入れた。
 アスカの顔は彼女自身が言うように凄い美形というわけではない。しかし顔の作りそのものは決して悪いものではなく、凛と通った鼻筋や鋭角的な造形のパーツが彼女の性格をよく表している。
 そして、そういう顔がキスの魅力に囚われ、強気な普段の態度を崩して色香を滲ませている様子にカイトは夢中になった。
「……はあ、っ」
 二人は目を閉じて唇を重ねていたが、やがて自然に吸い込みが弱くなり、離れる。互いの息遣いが聞こえる距離でしばらく見つめあった。
 しばらくもしないうちに、カイトの視線に耐えられなくなったアスカが顔を伏せて、カイトに弱々しく聞いた。
「……なんでだよ」
「アスカが魅力的だから」
 あっさりとしたその答えを無視して、アスカは抗弁を続けた。
「女らしくなんかないぞ」
「知ってる」
「戦闘員だぞ」
「それも、知ってる。つうか俺もメグミもそうだし」
「色っぽくもないし」
「お前がいきなりそんな風になったら怖い」
「胸とかも、ないし」
「それをお前には求めない」
「……処女でも、ない」
「そうなのか。でも今は関係ないな」
「じゃあなんで!?」
「アスカ」
 悲痛な叫びにかぶせるように、カイトはアスカを抱き寄せた。
「えっ――?」
「俺は、今のお前が好きなんだ。そういう何かと比べてどうとか、そういうのは違う」
「……だって、そんな」
「自分に無いところばっか悲観しててもしょうがないぞ。アスカにはいいところもいっぱいある」
「そんな」
「誰だって欠点の一つ二つあるもんだ。それでも一緒にいることを邪魔なんかしない。そういう欠点を補い合うためにつながりがあって、仲間がいるんだろ」
 カイトはぐりぐりとアスカの頭を撫でた。いつもは強気な彼女が今日はとても幼く見える。
 アスカは少しの間黙って抱かれ、可愛がられていたが、やがて腕で顔をゴシゴシ擦ってから笑顔を見せた。
「……ありがとな」

793 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:14:58 ID:Yw17Z7Ct
「気にするな。むしろ俺のほうがゴメンナサイだよ。こんな風でなければもっと大事にできたかもしれんのに」
 カイトはこんな場面ですら節操無く自己主張を続けている自分の性器を眺めて溜め息をついた。それを見たアスカはくすりと笑う。
「そっちも気にすんな。そんな風にでもならなきゃ、お前じゃ女に手は出せんだろ」
「うわ酷っ、それ言っちゃダメだろ男に対して」
「じゃあ、その『男』を見せろよ、カイトくん?」
 そうからかうと、アスカは勢いよく服を脱ぎ、しなやかな裸身を露にすると、カイトの怒張に自分のヴァギナを合わせて跨った。カイトが心配そうに声を掛ける。
「……いきなり始めて大丈夫か?」
「大丈夫、あたしは濡れやすいんだ。しばらく動いてたらなんとかなる」
 アスカは腰を沈めていった。
 一息にカイトのものを飲み込む。そのつくりは今まで相手にしてきた誰のものとも異なり、実に広い。亀頭が肉襞を割る感触も、膣壁が肉棒に絡みつくこともなく、ひたすらぼんやりとした温かさだけが与えられる。
「あ、アスカ……ってうわっ!?」
 カイトが戸惑いの声をあげた次の瞬間に、それを待ち構えたかのようなタイミングでアスカはカイトの剛直を締め上げた。今までの広がりがまるで嘘のような勢いで、アスカの蜜壺はカイトの陰茎に群がり、全体を絞り上げるように収縮し始める。
 しかも、濡れやすいとの言葉通り、カイトが少し腰を動かすとたちまち愛液が湧き、動くのに支障がないくらいに膣に満ちた。
 当然のことながら、とても気持ちがいい。カイトは激しく抽送を繰り返しながら余裕なく叫びをあげた。
「な、なんか、すごいなこれ!」
「気に入った? じゃあもうちょっと早く動くよ……」
 にまあっ、と笑みを浮かべながら、アスカはカイトよりももっと早く腰を動かした。
 メグミよりもさらに引き締まった肢体が躍動感たっぷりにグラインドする。肉の柔らかみこそ他の女性たちに及ばないが、その分触れ合う張り詰めた肌の心地良さや、動きそのものの力強さでは圧倒的にこちらが上だった。
 そして何より、鍛え上げられた括約筋が生み出す、膣の締め付けの心地良さときたら。
「うああっ、すごい、アスカの中すごい気持ちいいっ!」
「カイト、お前のも、なかなかぁっ!」
 情交というよりは果し合いみたいなノリだったが、二人はどんどん高まっていった。
 カイトが胸に手を伸ばせば、アスカは円の動きを腰に与える。座位になって唇を交えると、どちらがリードを取るかを巡って激しく舌をぶつけ合い、唾液を求めて絡み合う。お互いに背中を愛撫して、また腰の動きに集中する。
 くんずほぐれつ、まるで寝技で争っているような激しい動きを雄と雌は心ゆくまで楽しんでから、いよいよ最後の絶頂へ向けてスパートを始める。もうお互い以外に何も見えない、快楽の果てまで二人揃って駆け抜けるだけだ。
「……っ! もうすぐっ、もうすぐ出るっ!」
「ああっ、あたしもっ、あたしもヤバいかもっ!」
「この、これで、どぉだぁっ!」
「んはあっ! そ、そんなの反則ぅっ!」
 秘豆を弄られたアスカが危険なほど仰け反り、それがカイトの男根を猛烈に刺激する。たちまち限界まで引き絞られた欲望が、尿道を通って勢いよくほとばしるのが分かった。
「あ、アスカぁっ!」
「カイトぉっ!」
 二人はお互いを名前で呼び合い、力強く抱き合って最後の瞬間を迎えた。
 今日二度目だと言うのに、カイトのペニスはメグミのときと変わらないか、あるいはそれ以上のスペルマを膣腔に吐き出して、子宮まで白濁を流し込んだ。
 アスカの蜜壺もカイトから与えられたものを一滴たりともこぼすまいとするかのように収縮し、射精を続ける肉茎をさらに締め上げた。
 あまりの絶頂の快楽に二人とも声をあげることも身じろぎすることも叶わず、抱き合ったままベッドに沈んだ。そのまま静かに寝息を立て始める。
「……むしろわたしの方がほったらかしじゃない?」
 そして一部始終を横手から観戦していたメグミは、ベッド脇に設えてあったタオルケットを二人に掛け、ついでとばかりにそこに潜り込んで一緒に寝てしまった。
 相も変わらず恒温フォームの蓋は閉まらなかったが、三人はとても温かく眠りにつくことができた。

794 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:18:06 ID:Yw17Z7Ct

     ○

 BS本部基地、科学班ミーティングルーム。
 またしても全裸で、しかもまた一つの恒温フォームに寝ていたカイトとアスカとメグミの三人は、前回と同じ看護士にやはり発見され、猛烈に怒られた挙句、やはり前と同じように基地中を走り回らされる身体検査に放り込まれた。
 検査そのものは良い結果に終わったのだが、毎度毎度10km以上も走らされてはたまらない。
 そして女性陣は何故か元気なのである。
 無傷のメグミはおろか、剣をどてっ腹に突き立てられたアスカですら完全に治癒しており、カイトは色々な意味で死にたくなった。
 もうヘトヘトで足腰立たなくなっているカイトを、クリスが慰めている。
「……もう、なんか、いろいろ勘弁して欲しいんだけど」
「……心中お察しします」
「俺の体はどうなってるんだ? こんな謎の機能までクロスには付いてるのか?」
「推測するに、それはクロスとは無関係だと思うのですが……」
 ぐだぐだになったカイトを尻目に完全回復したアスカとメグミは、ディーネとヴァネッサの二人と一緒にカイトをどうやって共有するかの話し合いをしている。
「やっぱり、ローテーションを決めるべきだと思うわ」
「そうね、まさか毎日みんなとするわけにもいかないでしょうし」
「あたしはそれでもいいけどなあ」
「アスカ、無茶言わないの。他の人はともかく、あなたのスタイルを毎日続けたらカイトくんが死ぬわよ」
「まあ、ある程度なら科学班謹製の強壮剤でフォローもできるがな」
「一週間に一回くらいはみんなでしたいですよね」
「そうだなー、ディーネとかどうシてるのかちょっと興味ある」
「え、私? 私は普通だよ」
「しかし以前私とディーネ嬢の三人でした時にはずいぶん過激に攻めてくれた気がするが?」
「あ、あれは班長に負けたくないなーって思ったから……」
 とてもかしましく大声で言ってはいけない話をしているのがカイトにも聞こえてきた。
 お陰で、近くを研究員が忍び笑いをしながら通る度に、カイトは恥ずかしくて顔を伏せるハメになっている。
 話し合いに捕まりたくないカイトは、隣のテレビが大物政治家の訃報を伝えているのを一心に見る。その政治家宅が今日戦ったところの割と近くだったので思わず冷や汗をかいた。
 何がどう繋がっているのか分からないから、世の中は怖い。

795 :『クロス・アクセル』3:2006/10/18(水) 17:21:25 ID:Yw17Z7Ct
 その怖さの片鱗は、すぐ近くにもあった。
「ねえ、いっそのことクリスさんにこれからのエッチを記録してもらおうか?」
「それはいい、皆の技術を参考にすれば、我々はさらなる進歩を図ることができるぞ」
「ただ見るだけでも楽しめそうね」
「いいじゃん、やろうぜ、なあカイト!」
 ものすごい笑顔でものすごく恥ずかしい提案をする四人をこの上なく冷たい目でカイトは見つめた。
 どう考えても女性の方から提案されるアプローチではない。
「……絶対、嫌だ。恥ずかしい」
「マスターと同じく、お断りします。推測するに、そのデータは私にとって不必要であり、有害で、しかも処分すらしがたいという、どうしようもない代物です」 
 クリスも冷たい声で、きっぱりと断った。
 いつもの無機的だが微笑ましさを感じさせる口調ではなく、はっきりとトゲを出したキツい口調に、さすがの四人も少し引いた。
 が、そこは悪知恵の回る女性たちのこと、ディーネがあることに気付いて手を叩いた。クリスに聞かれないよう四人で円陣を組む。
「ねえ、カイトさえ篭絡できれば、クリスさんに頼めるんじゃない?」
「なるほど」
 納得した様子で、残りの三人も手を叩く。
 そしてカイトを捕まえようと向き直ったときにはカイトはいなかった。
 ドアが閉まる音と共に、カイトが部屋を出ていくところが見える。
「待てー!」
 四人が追いかけてくるのを視界の隅に捉えながら、カイトとクリスは揃って溜め息をついた。
 人間関係が悪くならなかったのは良かった。それがどうしてこうなるのかは分からないが、今の尋常ならざる関係を考えればそれだけでもよしとするべきなのかもしれない。
「でも、嫌なものは嫌」
「同感です。マスターが嫌なものは私も嫌です。……推測するに、あと10秒ほどで追いつかれるかと」
 二人は同時にくすりと笑うと、夜叉と化した四人の美女から逃げおおせるべく、必死でその場を逃げ出した。

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