【男一人】ハーレムな小説を書くスレ【女複数】
651 :633:2006/08/19(土) 11:42:49 ID:3rjG2KF7
「夏樹、見合いをしろ」
 食事の最中に、我が愛すべきクソジジイはそんな意味不明なことをのたまった。
「はぁ?」
「見合いをしろ」
 強い意思を思わせる鋭い眼光でにらみつけながら、繰り返し言う。
 出来るならば『意味不明な宇宙人語』と片付けたいところだが、残念ながらそうではなさそうだ。
「写真はここにある。好きなのを選んで好きなだけ結婚しろ」
「嫌」
 手短に答えて、食事に意識を集中させる。が、ジジイは机を強く叩き、俺の意識を再び自分に向けさせる。
「見合しろ」
「死んでも嫌」
 即答して、机の上の玉子焼きに箸を伸ばした。だが直前で玉子焼きを載せた皿が回収されてしまう。ジジイが取り上げていたのだった。
「……ったく、普段月一しか帰ってこないくせに、久々に帰ってきたと思ったらなんだよ薮から棒に」
 致し方なしに居住まいを整え、ジジイを真っ向からにらみつけると、ジジイは満足したように頷いて、玉子焼きの皿を元に戻した。
「いいか夏樹、私はお前のことが心配なのだ」
「心配?」
「お前ももう今年で17になるのだろう? 17にもなって恋人の一人も儂に紹介できないなど……」
「ごたくはいいから。その真意は?」
「はやく曾孫の顔がみたい」
「…………」
 あほくさ。
「というわけで夏樹、好きなだけ選んで好きなだけ結婚して好きなだけヤって好きなだけ孕ませて好きなだけ生ませろ。
 金の心配ならするな、大学出るまでは、いや、大学出てから生活が安定するまでは儂が工面してやる」
「死んでも嫌だっつってんだろ。歳食って脳味噌膿んでるんなら脳外科行って脳味噌ゆすいでもらえ」
「ほう、そんなことを言っていいのか?」
 俺の暴言を意にも介さず、不敵に笑う。
「……どーいう意味だよ」
「医学部に行きたいんじゃなかったのか?」
「…………」
「医学部は高いからなぁ、恋人すら満足に作れぬような将来のない甲斐性なしには、そんな投資もしたくないし」
「……なるほど」
 そう来たか。
「最低だな、いますぐに絞め殺したいほどに」
「なんとでも言え。私は一刻も早く曾孫の顔がみたいのだ。
 お前に残された選択肢は二つ。
 見合いの話を受け入れ、これまでのように医学部目指して頑張るか。
 見合いの話を拒絶し、もう一度志望校を選定し直すか。
 好きな方を選べ」
「……本当に最低だな、いっそ清々しいほどに」
「ふっ、誉めるな誉めるな」
「誉めてねぇよ」
 ずずずー、とお茶を啜る音が二つ、食卓に響いた。

652 :633:2006/08/19(土) 11:43:48 ID:3rjG2KF7
「という会話が昨日執り行われたんだ」
「はぁ……大変だったんですね」
 取り合えず話が一段落したところでそう区切ると、沙奈は俺に同情してくれたように慰めてくれた。
 夕焼けに紅く染まる教室で、俺こと御堂夏樹は親友3名に昨日のあらましを語っていた。
「ま、しょうがねえっていやしょうがねえとは思うけどよ。
 なんて言ったってかの御堂カンパニー前総帥の直系の孫なんだし、
 むしろ今まで見合いの話がなかったほうがおかしいくらいだし」
 なんだか不機嫌そうに唇を尖らせながら言うのは幼馴染の南野翠。
 外見だけは腰まで届く長い黒髪が印象的なお嬢様。
 事実、産まれも育ちも文句なしのお嬢様――なはずなのだが、何故か男勝りな口調でやたらと暴力的な女だったりする。
「で、結局アンタはどうしたのよ。まさかとは思うけど、学生の分際で見合いなんかしないわよね?」
 一方、この栗色の髪を頭の真横でポニーテールにしているのがクラスメイトの園田加奈。
 我が学園が擁する天才ヴァイオリニストであり、一般階級出身であるにも関わらず、生粋のお嬢様である翠の数百倍も立ち振る舞いがお嬢様然としている少女である。
 きっと翠と加奈はどこかで性質が入れ代わってしまったに違いない。
「ああ、恋人ならともかく、さすがにまだ結婚とかはまだ考えたくないからな。取り合えず妥協案を受け入れて貰って断ってきた」
「妥協案?」
 そしてその加奈の横で可愛らしく小首を傾げているのが、加奈の妹である後輩園田沙奈。
 剣道部の期待のホープで、優しくて可愛らしい自慢の後輩である。
 他の親友である翠と加奈の気が強すぎる所為もあって、その存在は砂漠のど真ん中のオアシスと相違わない。
「妥協案って?」
「ああ、『一ヶ月以内に彼女を作る』」
「一ヶ月!? 随分と急ね」
「俺もそう思う。最初は『今年中に』を主張していた訳だが――」

『ならん、一週間以内に孕ませろ』
『無茶を言うな。相手を探すだけでどんなに早く見積もっても一ヶ月はかかる』
『じゃあ一ヶ月だ。一ヶ月以内に恋人を連れて来い』
『ハメられた!?』

「――というわけだ」
「……相変わらず中々狡猾な爺さんだな」
「『世知辛いこの世の中でこのぐらいは当たり前』だそうだ」
 アイツが世界標準『当たり前』の世界では、女の子はちょっと隙を見せただけで妊娠してしまうらしい。恐ろしすぎる。

653 :633:2006/08/19(土) 11:44:19 ID:3rjG2KF7
「それで、私たちを呼び出して一体なんのつもり?」
「そこで、恥を忍んで頼みがあるんだが」
「ん? なんだよ」

「俺をモテる男に改造してくれ」

「……そーいう相談はショッカーにでもしてくれ」
「いや、そーいう意味じゃなくてさ。……そうだな、女子から見た『モテる男』の条件を教えてくれ。それに会わせて自分を改造するから」
「モテる……ねぇ」
 そして3人はうーん、と考え込んだ。

「まずは……顔、かぁ」
「いきなり凹むこと言うなよ……」
「しょうがないだろ。第1印象って大事だし、それにやっぱ恋人にするなら醜男よりイケメンの方が良いに決まってる」
「そりゃそうかもしれないけどよ……」
「ま、その点アンタは大丈夫だろ。背もそこそこ高いし、黙ってりゃ顔も二枚目だし」

「あと、運動神経良いとポイント高いですよね」
「ああ、確かにな」
「まぁそこは大丈夫だろ。俺は運動神経だけはサルの素早さとゴリラの攻撃力を足して2掛けたみたいに高いからな」
「……自分をサルとゴリラに例える事に何の疑問もないのかお前は」

「頭は良い方が良いわよね、やっぱり」
「まぁ馬鹿よりかは良いに決まってるけど」
「夏樹さんって成績どうでしたっけ?」
「一応医学部志望だし、それなりに」
「……全国模試偏差値65が『それなり』なら世の中90%以上は蛆虫と同格よね」

「あとあと、やっぱり面白いヒト、とか?」
「それについては自分ではわからんな……」
「……大丈夫だ、21世紀にもなって教科書で机を隠しながら早弁しておまけにバレてないと本気で思っているお前の脳味噌は何の疑いも無く問答無用で興味深い」
「脳味噌が面白くても人間がつまらなきゃどうしよもないだろうに」

「優しい、っていうのはどうよ? 一般では結構重要なファクターとされてるみたいだけど」
「ああ、パスパス。人間なら誰だって惚れた相手には優しくするだろ?」
「確かに。優しいだけの男はやっぱ嫌よねぇ」
「そうですか? 私はやっぱり優しいヒトの方がいいですけど……動物とか植物とか、自然が好きな人とか」
「自然かどうかはわからないが、俺は家の鉢植えでマンドラゴラと朝鮮人参とトリカブトを栽培してるぞ」
「……家庭菜園は非常にいいことだと思うが、なんだそのヒトが殺せそうなヴァリエーションは」
(……けどまぁ、確かに夏樹は優しいわよね)
(……ああ、何度お前らに嫉妬した事か分からん)
(……むしろ私は現在進行形で、夏樹さんと一緒の教室で勉強できる2人が羨ましいよぅ……)
「おい、何の話してるんだ?」
「なんでもないわよっ!」

654 :633:2006/08/19(土) 11:44:55 ID:3rjG2KF7
「……こんなもんかしら?」
「だろうな。あとは個々の好みの問題だけど、最初からこれだけ備わってる奴はポイント高いよな」
「……ちょっと待て。今までのお前らの話し合いを総合して結論を出すと、
 『俺がモテモテじゃないのはおかしい』『俺がお前らを囲って毎日毎日ウハウハしていないとおかしい』
 という結論にいたるんだが一体コレはどういうことか」
 一体どこでどう間違ってこんな結論に……?
(……ねぇ、アレは素? 素なの?)
(……ううぅ……夏樹さん、やっぱり全然私たちの気持ちに気付いてない……)
(……今更だが頭に来るヤツだな……)
「おい、だから俺を仲間外れにするなよぅ、一体何の話をしてるんだよぅ」
「なんでもねーよっ!」
 翠はそう言って、俺のケツを蹴飛ばした。
「痛っ!?」
「自業自得だ馬鹿。とっとと死んでしまえ」
 ふん、とそっぽを向いてしまった。ケツをさすりながら立ち上がる。
「……大丈夫ですよ、夏樹さん。きっと夏樹さんなら素敵なヒトが見つかります」
「……ありがと、沙奈」
 ホントに、先輩思いの可愛い後輩だ。
「ま、いざとなったら土下座でもなんでもして誰かに恋人の振りでもしてもらうさ」
「そ、それでしたら、なんでしたら、わ、わ、わ、わた、私が、恋人に……いえ、恋人の振りをしても……」
「……ちょっと待ちなさい、沙奈。いくら夏樹のおじいちゃんを欺くためとはいえ、お姉ちゃんはこんな男との仲は認めないわ。
 沙奈が犠牲になるくらいなら、私が生贄になるわ」
「加奈、生贄は言いすぎだろ……」
「大丈夫、ホントに大丈夫だから心配しないでいいよ」
「いやいや、そう言うわけにもいかないのよ」
「……あ、そういえばアタシのところにも見合いの話が来てるんだっけ。夏樹、ここはどうだろう、アタシと恋人の振りをして一緒に協力してお互いの保護者を欺くと言うのは」
「翠ーーーーーーーーっ!!」

655 :633:2006/08/19(土) 11:46:21 ID:3rjG2KF7
 で、その後翠、加奈、沙奈の三名とぐだぐだと話し合いをして、日が沈む頃にようやく解散することになった。
 ――にしても、話し合いの後半は『誰を俺の恋人代役に立てるか』という超絶下らない内容になっていたのは一体全体どういうことか。
 まるで一ヶ月で俺が恋人を作るのは不可能みたいじゃないか。失礼な連中め。
 ぐぐぐぅぅぅ、と腹の虫が泣いて、思考は中断された。色気より食気、だ。
「……冷蔵庫に何があったかな……?」
 日曜日に食材を買い込んだから、火曜日の今日はまだまだ食材に余裕があるはずだ――等と考えながら角を曲がると、我が家が見えてくる。
 周囲から頭一つ分飛び出した三階建ての家が、俺の憩いの我が家である。
 鍵に手持ちのキーを差し込み、捻る。ガチャンという音がしたのを確認してからノブを捻ると、鍵がされていて入れなかった。
「ありゃ、開けっぱで行っちまったのか」
 全く、不用心このうえないことだ――と他人事のように考えたところで、家の中からパタパタと言う足音がして。
 そして――
「おかえりなさーい」
 語尾に音符マークをつけながら、よく見知った女性がドアを開けて向かえ入れてくれた。
「ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも……」
 頬を赤らめ、もじもじちらちらとこちらを見る。
「――取り合えずお前にしよう」
「―――っ!」
 見ていて恥ずかしくなるほどに真っ赤になった女性の襟を掴み、引きずりながらリビングに移動する。
「い、痛っ! そ、その、乱暴にしないでくださいっ! 痛くしないでくださいっ!」
「やかましい、とりあえず座れや」
 食卓の、自分の真向かいの席に座らせる。女性は俺の剣幕に脅えたように小さくなってしょんぼりと座っている。
「……で? 春果姉さんはこんなとこで何してんの?」
「――! なっちゃん、私のこと覚えてるのっ!?」
「当たり前だろ? 何年側にいたと思ってるんだよ」
 春歌姉さんは、俺が幼い頃にお世話になった女性である。
 俺の両親は駆け落ちして結婚した。俺の母、つまりあのジジイの愛娘は、父に惚れ、そして父もそれに応えた。
 が、ジジイはその結婚に――名も無き一般人である父を御堂の家に迎え入れることに猛反対。
 幾度もの正面衝突の結果、二人は駆け落ちをすることになった。
 二人の生活は順調だった。駆け落ち先で俺が産まれた。父は安定した仕事に就き、母は家事に育児にと忙しそうだったけど――幸せな日々だった。
 だが二人は5年前に不慮の事故で俺を残して他界。身寄りがいない、と思われていた俺は、養子縁組させられる寸前で、あのにっくきクソジジイの手に落ち、今に至るわけである。
 そして今俺の前に座っている女性、三奈木春歌さんは、両親が生きていた頃によく俺が遊んでもらったお隣さん――ぶっちゃけて言えば、俺の初恋の相手だったりするのである。

656 :633:2006/08/19(土) 11:47:33 ID:3rjG2KF7
「そりゃまあ、確かに見ない内に凄く美人になってて驚きはしたけど、忘れるわけないだろ」
 初恋の相手だし、と聞こえないように呟く。
 春姉は美人、という単語に反応して、茹で蛸もかくや、というほどに真っ赤になった。
「も、も〜、お世辞なんか言っても何にも出ないよ〜。それに、なっちゃんの方こそ凄くかっこよくなっててお姉ちゃんびっくりしちゃった」
「ありがと、社交辞令として受け取っとくよ。それより、なんでここに?」
「え?」
 ……あれ? 俺今おかしなこと言ったかな? なんだか春姉が世にも奇妙な珍獣でも見る目で俺をみてるんだが。
「――聞いてないの?」
「?」
「私、今日からこの家のメイドとして働くことになってるんだけど」
「――――初耳」
 というかなんだその色々有り得ない話は。
「そうなの? お爺様から『夏樹は学生なのに家事に勉強にと休む暇がなくて可哀想だ』て聞いて、なら是非私にって住み込みで働かせて貰うことになってたんだけど」
「………超初耳」
 ――というかちょっとマテ。『見合いしろ』の翌日にこの展開は流石におかしい。まさかあのジジイ……
「――謀られたッ!」
「え?」
 あのジジイ、最初から『一ヶ月以内に恋人を見付ける』って妥協案に落ち着くのを見越してやがったんだ。
 そして異性への関心を嫌応なく高めてから春姉と同居させて、ガキを作らせる気だったんだ――!
「――私じゃ、イヤなの?」
「え?」
 春姉が不安に揺れる瞳で俺を見つめてくる。
「いや、別にそーゆーわけじゃなくってさ」
 ――ま、大丈夫か。いくら初恋の相手とは言え、気心知れた春姉なら、俺も間違いは犯さんだろ。
「――要するに、これからよろしくってこと」
 手を差し出すと、春姉は嬉しそうにその手を取った。

657 :633:2006/08/19(土) 11:48:24 ID:3rjG2KF7
「それじゃあ早速、晩御飯作るね」
 春姉は意気揚揚と立ちあがった。
「あ、じゃあ俺も……」
「いーの、なっちゃんは私の雇用主さまなんだから、ゆっくりしていてくださいませ」
 春姉は相変わらず上機嫌なまま、台所に突撃して行った。
 ……まぁいいか。こまったことがあったら呼んでくれるだろうし。
 そう結論付け、2階の自室に上がろうと階段に差し掛かったところで、喉が乾いていたのを思い出した。
 折り返してリビングに戻り、台所に入る。
「ごめん春姉、麦茶ちょうだ――何してんの?」
 ――台所に入ったところで、あまり見たくないものを目撃してしまった。
 お釜がある。中には米が入っている。水も張ってる。そこまではいい。
 問題は、そのお釜の前には春姉が立っていて。
 その右手には台所用洗剤のJ○Yが握られている事である。
「あ、なっちゃん、麦茶? だったら冷蔵庫に――」
「いや、それはもう割とどうでもいい。問題はアンタだ――アンタ、何してんだ?」
 すっごいにこやかだった笑顔が、不思議そうな顔になる。
「何って、お米を洗おうとしてるんだけど……」
「……J○Yで?」
「うん、J○Yで」
 普通でしょ? あ、クレ○ザーの方がよかった? などと問題発言を繰り返す自称メイド。とりあえずその右手のJ○Yを取り上げた。
「あ、ちょっと――」
「春姉、雇用主として一つ質問があります」
「え?」
「貴方は週にどれくらいの頻度で台所に立ってましたか?」
 目をぱちくりと瞬かせたあと、ちょっと気まずそうな顔になる。
「えっと……三日に1度……」
「…………」
「あ、あれ? 週1だったカナ?」
「……………………」
「月1……いや、年に3回ぐらい……」
「…………………………………………」
「………ごめんなさい。年に1度もないです」
「だろうと思った」
 しょんぼりと項垂れる春姉に溜息で応える。――さて、どう叱ったものか――とそこまで考えたところで、今度は洗面所で何か嫌な音がした。
「……春姉、洗面所で今何かしてる?」
「え? 洗濯機を回してるけど……あっ、ちょっとなっちゃん!」
 走る。ここ1年近く出していなかった全力を出して駆け、そして洗面所の前に立ち、その、巨大な、地獄の、門の、扉を、開け――。
「―――――――」
「ちょっとなっちゃん、急に走り出して……ってうわっ、何コレ!?」
「俺が聞きたい」
 洗面所は、泡だらけだった。それはもう、上から下まで泡まみれだった。
 が、春姉は洗剤の量が多かったのかなぁ、やっぱり一箱は多いよねぇ、とちょっと気まずそうにしながらつぶやいている。
「……美奈木春歌さん。雇用主から、根本的な質問があります」
「は、はい?」
「貴方はここに何をしに来たんですか?」
「えっと……雇用主の御堂夏樹さんのお世話をするために……」
「じゃあこれはなんですか?」
「……う……」
「再度聞きます。貴方はここに何をしに来たんですか?」
「……雇用主の……御堂夏樹さんの……お世話をするために……」
「米を洗うのに洗剤を使うものだと本気で思っていた貴方が?」
「……うう……」
「もう1度聞かせてください。 貴 方 は こ こ に 何 を し に 来 た ん で す か ?」

658 :633:2006/08/19(土) 11:49:52 ID:3rjG2KF7
「ほんっとーーーーーーに、申し訳在りませんでした」
 春姉は机に頭が当たりそうなほどに深く頭を下げた。
 ――結局あの後、洗面所の処理を俺一人で片付け、ご飯まで一人で作ってしまった。
 で、今は俺の作ったご飯を囲んでいる最中である。
「……ま、そんなこったろうとは思ってたけどさ。春姉のお母さん過保護だし、実家で満足に家事もしてこなかったんでしょ?」
「ぎくっ」
「で、家庭科の授業は悉く寝て、あるいは簡単な仕事しかさせてもらえなかった、と」
「ぎくぎくっ」
 米とぎ以上に簡単な仕事なんて俺は考え付かないけどな。
「うう……ごめんなさい……」
 春姉はしょぼんと肩を落とし項垂れている。
「……ま、要精進、今後に乞うご期待ってことで、これからは頑張るように」
「……はい」
「ほら、冷める前に早く食べよう」
「……うん……」
 ――結局、食事中春姉はしょぼくれていて、食事が終わるといつの間にか用意していた自室に篭ってしまった。

659 :633:2006/08/19(土) 11:50:51 ID:3rjG2KF7
「……大丈夫かな、春姉」
 就寝前、ベッドに横になりながら考える。そんなにきつく怒ったつもりはないが結構応えたようで、結局風呂に入るときしか部屋から出てこなかった。
 やっぱり弟分だった俺から叱られたのが嫌だったのだろう。
 とはいえ、アレは放置して良いレヴェルのミスではない。放置したら命に関わる。主に俺の。
「一体どうしたらいいやら……」
 そんなことを考えながらうとうとしていると、ぱちん、という音がして部屋の明かりが消された。
「ん? 春姉?」
 起きあがって入り口を見るが、暗闇になれていない目ではその姿を確認する事は出来なかった。
「春姉?」
 じっと目を凝らす。気配が近づいてくる。
「は……」
 もう1度名前を呼ぼうとしたところで、ふわり、と柔らかく、甘い匂いがして、優しく抱きしめられた。
 顔が春姉の大きな胸に押し付けられて――!とえっちなことを考える間もなく、頭に雫が降りてきた。
「……春姉?」
「ごめんね」
 ぽつりと、呟くように一言。
「ごめんね」
 ああ、そうだった、と思い出す。
「ごめっん、ね……っ!」
 春姉は――美奈木春歌は、泣き虫だった。お姉ちゃんが、お姉ちゃんが、と日ごろから言うのに、事あるごとに泣く。
 俺に関係あろうとなかろうと、俺を強く抱きしめながら泣く。理由は知らない。『なっちゃんを抱いてると落ち着く』とは言っていたが、それが本当かどうかは分からない。
「ごめんっ……!」
 幼い俺はいつでも、ただじっとして、泣き止むのを待つだけだった。だけど今は違う。
「……泣かないで」
「ッ!」
 手を回し、優しく抱き寄せる。
「気にしないで、とは言えないよ。気にしてくれないと、困る。これから毎日あんなことになるのは嫌だし。
 ……だけど、今日の事でそんなにクヨクヨしちゃダメだ。『昨日より今日、今日より明日』。今日がダメだったなら、明日から頑張れば良い。それだけ」
 そう言って、腕に篭める力をちょっとだけ強くする。
「ありがとう……優しいね、なっちゃんは」
「別に、そうでもないだろ? さっきのフレーズだって、ただの我が家の家訓だし」
「ううん、それでも……」
 春姉が腕に篭める力を強めた。それにあわせて、俺も力を少しだけ強める――というようなことを繰り返す内に、2人はきつく抱き合っていた。
 ――っていうか! 冷静に考えてみると顔に春姉の巨乳が当たって色々えらい事になってるんですが――っ!
「……おっきくなったね、なっちゃん」
「え!? いや、それは生理現象といいますかなんと言いますか!」
「前に会った時は私の胸ぐらいの高さしかなかったのに、今じゃ私より背高いじゃない。しゃがんでもらわないと、抱きしめられないよ」
「………そうだね」
 そっちか、と安堵半分残念さ半分で溜息を吐くと、春姉が意地悪く笑った。
「ふふっ、何を想像したのかな?」
「……深くは聞かないで。精神的レイプだから」
「くすっ」
 微笑むと、春姉は俺を抱きしめていた右手だけを放して、俺の下腹部へと手を伸ばした。
「……ここも……こんなに大きくなっちゃってる……」
 服の上から上下に擦られると、その刺激に反応して俺の一物はなおさら大きくなっていく。
「春姉……」
「……しちゃおっか」
 ――その言葉が、俺に残った最後の理性を蕩かした。

660 :633:2006/08/19(土) 11:51:20 ID:3rjG2KF7
「えっ、ちょっ……んっ!」
 春姉の腰を抱き上げ、膝の上に座らせる。そして非難がましく俺を振り返ったところで、少し乱暴に彼女の唇を奪った。
「んーっ! ん……んむぅ……」
 途中までは暴れていた春姉だったが、途中から諦めたように大人しくなり、むしろ積極的にこちらの唇に吸い付いてきた。
「はむぅ……んちゅ、くちゅ……」
 舌を絡め、口内を隅々まで舐め、犯し、そして再び舌と舌とを絡め合う。その舌がもたらす快楽が俺の理性を殺し、本能を掻き立てる。
「んふっ……あ……」
 ゆっくりと顔を離すと、春姉は少し名残惜しそうな、切なそうな表情になる。互いの舌先から伸びていた唾液の銀橋が重さにたわみ、切れた。
「なっちゃん……んちゅ、はむ……」
 そして今度は春姉から顔を近付けてきて、唇を貪り、舌を舐める。俺の舌を唇ではさみ、唇で舌に快楽を与えてくる。ちゅぷ、くちゅ、と唾液の交じり合う陰卑な音が響く。
 ずっと春姉の腰を抱いていた腕を解き、パジャマの上からその身体を撫でながら、ゆっくりと掌を上へ上へと移動させてゆき、そしてその大きな乳房を両手で鷲掴みにする。
「ひゃっ……」
 春姉の柔らかい乳房を揉みしだきながら唇で耳たぶを噛む。
「んふぅっ、ひっ、あっ!」
 1オクターブ高い嬌声を挙げながら、喘ぐ。その喘ぎ声に下半身に血が集まって、春姉のお尻を押している。その事実が、春姉を更に興奮させているのだろう。
 もう春姉の乳首は、ブラジャー越し、服越しからでもはっきり分かってしまうほどに勃起していた。
「ああん……ねっ、ぇ……」
「……ん。手挙げて」
 切なそうな表情で何かを訴えかける春姉のご期待に応えて、服のボタンに手をかけ、上から1個1個、順々に外して行き、そしてブラジャーも脱がせてしまう。
 春姉の大きな乳房が剥き出しになり、たゆんと揺れ、俺の本能に更に加速させる。
「春姉の乳首、ピンク色だ」
「や、ぁあ、んっ、そんな……はっ、そんなことぉ……言わないでぇ……っひゃう!」
 乳首を少し強く摘むと、身体を痙攣させて悦んでくれる。
 そんなことがすごく嬉しくて、もっともっと、みだらな春姉の姿が見たくて――俺は、耳たぶを噛み、耳の裏を舐め、右手で胸を弄りながらも、左手は下腹部へと伸ばして行った。
 下着の中に手を差し入れると、そこは既に結構な量の愛液で溢れていた。
「……春姉、脱がすよ」
「……う、うん……」
 春姉にちょっとだけ足を浮かせさせて服を脱がすと、そっとベッドに横たえた。
 カーテン越しに入ってくるわずかな夜の光に照らされた春姉の身体はとても綺麗で、それだけで俺の理性をごりごりとやすりで削るように奪い去って行く。
「凄い濡れてるね……乳首弄られるのがそんなに気持ちよかったの?」
「や、やぁ……いわないでぇ……」
 その卑裂を左手でやんわりと上下にさすりながら、右手では相変わらず乳房を責め続ける。ゆっくりと体を倒し、その勃起した乳首に吸い付き、舐める。
「ひゃあぁん!? だ、ダメ! 二つ同時は――んはぁあぁん! ダメ、ダメ、おかしくなっちゃう!」
 乳首とクレヴァス、二つの性感帯を責められ、春姉はシーツをぎゅっと握り、弓なりに身体を逸らしながら悲鳴を挙げる。
「はぁ、ん、ひゃぁああん! ひっ、は、や、やぁ、ダメぇ、いく、いっちゃううううううううっ!」
 俺の指がクリトリスに達した瞬間、身体をひときわ大きく弓なりに逸らし、春姉は絶頂に達した。
 肩で大きく息をし、その度にそのたわわな乳房が上下する。
「なっちゃあん……」
 そして春姉がきつく閉じていた目蓋を開け、俺を見つめてくる。
 ――それは、視覚的な媚薬。とろんとした、蕩けた瞳、大きく上下する巨乳、愛液に濡れて妖しく光る恥部。
 春姉の全てを貪りつくしたくなるような激しい獣欲がその鎌首をもたげ、俺の身体を突き動かす。
「ごめん春姉、俺もう限界かも」
「ん……いいよ、なっちゃん。私、なっちゃんのこと大好きだから。なっちゃんになら、何されても良い――んむぅっ!? んんんんんっ!」
 春姉の言葉を封じ込めるように唇を奪い、そして問答無用に挿入する。春姉の身体が再度痙攣し、そしてくたっと倒れる。
「挿れただけで、イッちゃった?」
「んはぁ……ごめんなさい……その、イったばっかりで敏感になってるみたいで……」
 申し訳無さそうに言う春姉を安心させるために、こんどは優しくキスをしてやる。
 本当なら今すぐにでも動かしたいところなのだが、流石に三連続で、というのはキツいだろう。少し間を置くことにした。

661 :633:2006/08/19(土) 11:52:03 ID:3rjG2KF7
「ん……とうとう、なっちゃんとしちゃったんだね……」
「これから、だよ」
「あは、そうだね」
 おでことおでこを合わせ、超至近距離で見詰め合いながら、春姉は優しく微笑んだ。
「……嬉しいな」
「え?」
「私、ね、ずっとなっちゃんのことが好きだったの。だからなっちゃんが引っ越しちゃった時はすごく悲しかった。
 ……私が他のヒトに処女を捧げたのだって、本当はなっちゃんを忘れるためだった」
「…………」
「だけど、やっぱりダメだった。やっぱりなっちゃん以外のヒトとは……んひゃあん! え、ちょ、なっちゃん?」
 腰を激しく動かす。
「……ごめん、春姉。けどもう無理。そんな可愛いこと言われたら我慢できない」
「ん、ひ、ああんっ! あ、あ、ああああああん! んむぅ!?」
 ピストンを続けながら体を倒し、春姉の唇を奪う。ちょっと体勢は厳しいけど、右手を胸に伸ばし、乳首を重点的に攻める。
「んはぁっ! ひあっ! な、なっちゃあん! 愛してる! 愛してるのぉ!」
「――俺も、愛してる、春歌」
「!! あ、ひ、んくぅ、ああん!」
 『春姉』じゃなくて、『春歌』。愛称じゃなくて、本名。それがどれだけ高い攻撃力を持っているのか、なんて考えるまでもない。
「愛してるよ、春歌」
 再度、耳元で囁く。
「んはぁ、はぁっ! だ、ダメ! もうダメ! いっちゃう、またいっちゃうよおおおっ!」
「くっ――春歌、俺も、そろそろ――」
「きて! なかに、なっちゃんのあついのだしてぇ!」
 その声を聞き、スパートをかける。ぱんぱんと肉のぶつかり合う乾いた音が部屋の中に響き渡る。
「ひゃぁ、ん、はあぁああぁん! ひゃああぁぁぁぁああぁぁぁあああぁぁぁああああああんっ!!」
「くぁああっ!」
 春歌が身体を大きく逸らし、最後の絶叫を挙げると同時に膣がぎゅうっ絡み付いてきて――俺は春歌の中に射精した。

「ふぅん、そんなことがあったんだ」
 行為の後で、2人で身を寄せ合ってまどろむ。春姉は俺に身体をぴったりと寄せてきて、傍で極上の笑みを浮かべてくれている。
 話の話題は、言うまでもなく昨日のジジイの戯言の事だ。
「ったく、曾孫の顔が見たいだなんて、どうせあと30年は死にゃしないくせに何言ってんだか、って話だよな」
「ふふ、けどお爺さんがなっちゃんのことを心配してるって言うのは本当だと思うけどなぁ。私がバイトを引き受けた時だって、『夏樹をよろしく頼みます』って何度も何度も頭下げてたし」
「……マジ?」
「マジマジ、大マジ」
 くすくすと笑う春姉に、俺も釣られて笑ってしまう。
「けど、だったら丁度良かったじゃない」
「え?」
「私じゃ、ダメかなぁ」
「春姉……」
「……なんてね、冗談よ」
 冗談、なんて笑ってはいるが、きっと彼女は本気だと思った。
 えっちの時に言っていた、『ずっと好きだった』という言葉に篭められていた重さは――決して、嘘だとは思えなかったから。
「あと一ヶ月あるし、ゆっくり考えてみると良いと思うよ。もしどうしても見つからないようなら――私でも良いし」
「春姉、俺は春姉をそんな風にキープみたいには考えられないよ」
「ん、ありがと。……とりあえず、今日はもう寝ちゃおうか。なんだかんだ言っても、あと一ヶ月あるんだし」
「うん、おやすみ」
 そして春姉――いや、春歌は、俺の腕の中で静かに眠りに就いた。
 ――一ヶ月。長いようで短い、短いようで長い期間で、一体俺はどんな結論を出すんだろう。
 ただどんな結論を出すにしろ、春歌はきっと、ずっと傍にいてくれるんだろうな。
 そんな、根拠もない確信があった。

912 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:02:18 ID:roX6lVCd
「綺麗な蒼色だなぁ……」
 ぼんやりと頬杖をついて、窓の外を眺める。暦では既に夏至を過ぎたばかり、気温はこれからますます高くなる。
 天気は小気味いいぐらいの快晴、雲一つない。こんな日は公園の木の下で芝生に横になりながら昼寝でもしたいものだ。
 とはいえ今日は金曜日。学校をふける訳にもいかない。
「なんで空は青いんだろうなぁ……」
「さぁな。ちょいと昔、論文かなんかでそんなのを見た気がするが……」
「そうなんですか?」
「ああ、だが残念ながらちょっとお前には教えてやれないな」
「何故?」
「解説だけで10レスぐらい消費しそうだ」
「……なるほど」
 なかなか現実的な理由だ。実にかっこいい。
「それはそうとふと思うんですけど」
「ん?」
「もし快晴の空が真っ赤で、夕焼けの空が蒼い世界に生まれたら、俺たちは真っ赤な空を見て『すがすがしい』とか感じたり、蒼い空を見て『物悲しい』とか思ったりするんでしょうか?」
「だろうな。そもそも俺たちのそういう感情なんて言うのは、事実を元に作り上げられているだけにすぎない――まぁ早い話が固定観念ってやつだからな。
知ってるか? エロい映画って英語でブルーフィルムっていうんだぞ」
「ブルー? ピンクじゃなくて?」
「そうそう。俺も高校の時はそう思ってたんだけど違うらしい。日本人的にエロい色はピンクだが、外国人には青こそエロいってことだろ」
「はぁ、なるほど。よくわかりました。流石に猥談にかけては年齢=童貞暦の葛野先生は違いますね」
「ふっ、舐めるなよ」
「なるほど、じゃあ空が青いのは……」
 葛野先生との会話を切り上げ、また思案にふける――が。
「ところで御堂」
「はい?」
「今授業中なんだが、知ってたか?」
「………………………………………………………………………………ああ!」
 そういえばそうだ。今は3時限目――葛野先生の生物の授業中だ。
「すっかり忘れてました」
「だろうな」
 葛野先生はにっこりと笑って、その手にしたバケツを二つ、俺に差し出して――。
「とりあえずコレを持って廊下に逝け」

913 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:03:18 ID:roX6lVCd
「なーんで授業中にいきなり『なんで空は蒼いんだろう』なんだよ。意味わかんないっての」
 3時限目も無事終わり、休み時間を迎えた廊下で、俺たち――南野翠と園田加奈はのんびりと会話をしていた。
 ちなみに俺の両手には水が一杯一杯に張られたバケツが1個ずつ、
そして首からは『僕は馬鹿です 御堂夏樹』と書かれたプレートがぶら下がっていた。
3限目で終わりだと思っていた責め苦だったが、葛野先生のご好意で昼休みまでずっと延長される事になった。
「俺何か葛野先生を怒らせるような事言ったか?」
「……それは素? 本気で言ってるの?」
「加奈、諦めろ、コイツはマジで気付いてない」
「何? やっぱり俺は何か言ったのか?」
「どう考えても『年齢=童貞暦』発言でしょうが。人間誰だって、事実を真っ向から思い知らされると逆ギレしたくなるわよ」
 呆れたように溜息を吐く2人だが、俺としては納得できない。
「だって否定できない事実だろ」
「……だから言ってるでしょ。『事実は時として人を深く傷付ける』って」
「兎に角、お前の問題発言の所為でくずのんは深く傷付いたのでした、まる」
「でもなぁ……」
「そりゃアンタみたいに突き付けられて困る現実がない奴は想像もつかないかもしれないけど、普通に生きてる人間には逃げたい現実が一つや二つや三つや四つや五つぐらいあるもんよ?」
「まぁ夏樹の場合、突きつけられた現実を逐一克服して行くから今みたいな化物になっちまったんだろうけどな……」
「化物って翠、そりゃいくらなんでも言い過ぎ……」
 と、ここまで会話したところでチャイムが鳴り、廊下の奥から次科目の英語担任がやってくる。
「それじゃあ夏樹、勝手に頑張りなさい」
「廊下にいるなら先に学食に行って席と食券確保しといてくれな」
「無茶を言うな」
 教室にもどる翠と加奈を見送り、同時に教室に到着した英語教師が教室に入って行くのを見つめながら、
「……けど事実だしなぁ……」
 イマイチ納得できない俺だった。

914 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:04:35 ID:roX6lVCd
 で。
「いいか、何も聞くなよ? 聞いたらマジで怒るぞ? 本気と書いてマジで怒るぞ!?」
「ああ、分かった」
 4限目始まってすぐ、何故か翠が廊下に出てきた。――その、両手にバケツ、首から『私はお馬鹿です 南野翠』と書かれたプレートをぶら下げながら。
 まぁ、何があったかなんて聞くまでも無い訳だが。
「大変だな、10点台は」
「違う! 今回は21点だ! ああ、口が滑った!?」
 ――まぁ、小テストですこぶる宜しい点数を取ってしまったせいなのだが。
「今回のテスト、優しくなかったか? 高校入試レヴェルの問題もちらほら」
「そう思うのはお前だけ――」
『みんな良く頑張ったねー、今回は平均点80点越えよ』
「………………」
「……………言うな、何も言うな。わかってるよ、分かりきってるよ、私が馬鹿だなんてな!!」
 一人独白、そして絶叫する翠。こいつは何人も家庭教師をつけてるはずなのに、成績がちょっと――いや、かなり――すこぶる悪い。
 南野の一人娘として英才教育を受けてきたはずなのにな、と不思議でしょうがない。本気で加奈とどっかで中身が入れ代わっちまったんじゃなかろうか。
「そういや、俺の点数はどうなんだろうな」
「けっ、お前はどうせ、放っておいても100点取っちまうくせに」
「……何をいじけてるんだお前は」
 と、そこまで会話したところで不意に扉が開き、中から英語教師(27歳 女性 独身)が顔を出した。
「ああ、御堂くん、ちょっとちょっと」
「はぁ、なんでしょうか」
「はいコレ」
 そして渡されたのは、15点と書かれた答案用紙。
「……え?」
「惜しいね〜、途中で解答欄が一つずつずれてて、最初の方しか合ってなかったの。
 解答欄さえ間違ってなかったら100点だったのに」
 じゃあ、残り時間頑張って立っててねー、と手を振る英語教師を見送りながら、呆然と立ちすくめる俺。
「………………」
「………………」
「…………空が青いな」
「…………そうだな」
 『逃げ出したい現実』とはこういうののことか――と思い知った御堂夏樹、17歳初夏の出来事だった。

915 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:05:06 ID:roX6lVCd
「にしても翠、お前大丈夫なのかよ。進学希望だろ?」
 仲良くバケツを持って廊下に立ちながら、隣に立つ翠に話しかける。
「腐っても南野の血筋、最低早慶レべルより下は認めてくれないんじゃないのか?」
「そう! そうなんだよ!」
 手にしたバケツを放り出して、ガバッと俺の肩を掴む。
「しかもあんの頭の堅いジジババは何を血迷ったのか、『早慶以上に行けないのなら嫁がせる』とかマジで言ってるんだよ!」
「……マジかよ」
「マジもマジ、大マジ」
 なんだか人事とは思えない。……いや、それ以前の問題として。
「……嫁ぎ先、あるのか? 見合い相手殴って反故にされちまうんじゃないか?」
「失礼なこと言うなよ。着物を着たアタシはどこからどうみても正真正銘純正の大和撫子なんだ。そんな荒々しい事するか」
「着物着てなくても見てくれだけは大和撫子だけどな。中身はアマゾネスだけど」
「あははははは、ありがと、頭蓋骨陥没して死んでしまえ」
 翠は笑いながら俺に頭突きを繰り出して、俺の額にぶつかる。割れるほど痛い。
「まぁなんにしても、成績についてはなんとかした方がいいんじゃないか? もうすぐ期末だし、そんなだったらまた赤点で、また夏休みなくなるぞ、また」
「なんどもまたっていうなよ! 確かに去年は補習で夏休みなくなったけどさ!」
「冬休みも春休みもな」
「うるせええええええ!!」
『ちょっと南野さん、貴方の方がうるさいわよー?』
「ひぃ、ごめんなさいっ」
 教室から教師に注意されて怯む翠がなんだか不憫になってきた。……コイツ、教師からの心証得て補習回避するために必死だからな。
「……なぁ翠、良かったら俺が勉強教えてやろうか?」
「…………は?」
「去年は誰かさんの所為で海に行けなかったから、今年は是が非でもみんなで海に行きたい。そのためには、お前に赤点を取られると困るんだ。
 一応お前とはそれなりに長い付き合いだし、ある程度弱点も分かってるつもりだしな」
 どうだ?と聞くと、翠は呆けたように俺を見つめてきた。……どーでもいいけど、コレって手にバケツ持ちながら話す話じゃないよーな。
「……夏樹が、アタシに?」
「ああ」
「…………ふたりっきりで?」
「なんなら加奈と2人でお前の面倒見てやっても良いが」
「あ、あー……うん、加奈は別にいいんじゃないか? あっちにもあっちの都合があるだろうし」
「そうか。それじゃあ早速今日から始めるか?」
「あいあい……ふたりっきりかぁ……」
「なんだよ、文句あんのかよ」
「べっつに〜」
 くふふ、と楽しそうに笑う翠を見ていると、それ以上つっこむのは野暮な気がして、それ以上深くは聞けなかった。

916 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:07:02 ID:roX6lVCd
「それでは第一回、『お馬鹿で救いようの無い翠を救済するための補習会』を開催致しま〜す」
「うわぁい、なんて素敵な名前、嬉しすぎて涙がとまらねえよ!」
 バン、と力強く机を叩き、翠は『死んでしまえ』と言って手にしたアルミ製の筆箱を投げつけてきた。
 手にしたものさしで打ち返すと、翠はそれを華麗にキャッチする。運動能力の高い2人だとこんなことも可能になるのか。
 放課後に空き教室を利用した個人授業は、こうして幕を開けた。
「……それじゃあ翠が苦手な数学から始めるか」
「うぃーっす」
「じゃあとりあえずこの問題解いてみな」
「あーい」
『問、sin(π/2+π/3)の値を加法定理を用いて求めよ』
「えーっと、(与式)=sin(π/2)cos(π/3)+cos(π/3)sin(π/2)……」
(おっ……)
 なんだ、翠のヤツきちんと出来てるじゃ……
「で、π=3.14だから……あれ?π/2=1.57?」
「……はい?」
「あれぇ? sin1.57ってどうやって求めるんだっけ?」
 確かやったはずなんだけどなぁ、と呟く翠。……やってねぇよ、そんなの。
 ……あれか。コイツは応用ばっかりやりすぎて基本がおろそかになりすぎた類の人間か。
そもそも弧度法を理解しない理系高2がいていいのかという根本的な問題は別として。
「なぁ夏樹、この問題……」
「もういい、気を取りなおしてお前の得意な国語からやりなおそう」
 机の上にドリルを置くと、翠は不服そうに唇を尖らせながらも、ページをめくり、渋々と問題を解き始める。俺はソレを横から覗き見る。
『問一、『どんより』を使って文章を作りなさい』
「(翠の解答)う『どんより』そばがすき。」
「……」
『問二、『うってかわって』を使って文章を作りなさい』
「(翠の解答)かれはくすりを『うってかわって』しまった」
「…………」
『問三、『まさか〜ろう』を使って文章を作りなさい』
「(翠の解答)『まさか』りかついだきんた『ろう』」
「………………」
『問四、『あたかも〜ない』を使って(以下略)』
「(翠の解答)れいぞうこに昨日の残りが『あたかも』しれ『ない』」
「……………………なるほど」
 ふぅ、と溜息を吐く。ほんっとにコイツは……

「完璧。国語だけは得意なんだな」
「国語と体育だけがアタシにとっての救済科目だからな」

 とりあえず、これなら国語の心配はいらなそうだ。

917 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:07:32 ID:roX6lVCd
 それから。
「それじゃあ、今日はこの辺で終わりにしておくか」
「つ、疲れた……」
 俺が終わりを告げると、翠は精魂尽き果てたように机に突っ伏した。
 さすがに3時間ぶっ続けで、というのは日頃勉強していない翠には辛かったのだろう。口から魂が飛び出しそうな顔をしている。
 ……にしても。
「お前さ、よく進級できたな」
「……アタシも時々不思議に思う……」
 ――はっきり言って、翠の学力は中々に絶望的で、高1の内容をほとんど全く覚えていなかった――というか高校入試の内容すらかなり怪しいものだった。
理科や社会といった暗記物はまだなんとかなるももの、積み重ねが重要である英語、数学は絶望的であり、これをわずか一週間でなんとかするのはかなり厳しいものがある。
国語だけは問題ないのはせめてもの救いか。
「ま、なんとかするっきゃないよな。お前に何とかしてもらわないと今年も海に行く計画がおじゃんになる」
「うう……面目ない」
「気にすんなって、ダチだろ」
「ダチ……ね」
 翠はそう呟いて、少し表情になった。普段決して見せないような、一人の少女の顔。
 夕焼けに染まった教室で、夕日による演出効果も効いているのだろう。割と綺麗な女性にはなれている俺でも、思わずどきっとしてしまった。
「そういやさ」
「ん?」
 そんな自分を誤魔化すために、前々から気になっていたことを口に出して聞いてみる。
「お前さ、なんでそんな男勝りな口調なんだよ」
「――は?」
「いやさ、だって翠は一応名門南野の娘なわけだろ? それなのにそんな口調で、家の人に窘められなかったのかよ」
「あー、そういうことか」
 翠は得心した、という風に手を打った。
「もちろん、散々言われたし怒られもした。っつーか今でも時々言われるしな」
「それじゃあなんでまた」
「んー……まぁ少し長い話になるんだけど、さ」
「原稿用紙3枚以内で」
「無茶苦茶言うなよ」
 苦笑し、空を見上げた。
「昔――そうだな、今から10年近く前かねぇ、アタシ、家出したことあるんだよ」
「はぁ? 家出?」
「そ。毎日毎日、来る日も来る日もお稽古ばかり。華道茶道に始まって、琴に剣道、薙刀もやってたっけなぁ」
「……うへぇ、聞いてるだけで死にそうだ」
「アタシもそう思う。……で、流石にコレ以上は耐えられないってんで両親に文句言って、喧嘩して、気付けば家から飛び出して、電車を乗り継いで、見知らぬ場所にいた」

918 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:08:24 ID:roX6lVCd
 泣いていた、と思う。
 なんだかんだと言っても最後には笑ってアタシの我侭に折れてくれていた両親が、初めて私を本気で叱って。
 それがショックで、世界中で自分のなんて一人もいない気がしていた。
 友達なんかいなかった。
 学校だろうとどこだろうとみんなが求めている『私』は『お嬢様』としての『私』であって、『級友』としての『アタシ』じゃない。
『お嬢様』としての『私』は、常に上品で優秀で、誰にも頼らずなんでも出来る、周囲から孤立した優等生。
 そんな敵ばっかりの世界が嫌で、怖くて、泣いていたんだと思う。
 で。――まぁ、アタシみたいに可愛い女の子が泣きながら歩いていたら虐めたくなるのが男の子の性質。
 アタシも例に漏れず、囲まれて虐められてた。

「今のお前からは想像もできない姿だな」
「茶々入れるなら止めるぞ」
「はいはい、お口チャックお口チャック」
「よろしい。それで――」

919 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:09:13 ID:roX6lVCd

 ――そんな時。
『やめろこのバカどもがぁっ!』
 親分格だった少年を、誰かが後ろから殴った。
『いってーな、このバカ!』
『なにおぅ、バカっていうやつがバカなんだぞ!』
『げっ、白波!』
『おう、白波だ』
 そう言ってその殴った少年は胸を張り、一同を眺め回して言った。
『やいこのバカども! オスの分際でおおぜいでメスをいじめた挙句に泣かせるなんてサイテーだぞ! 俺は同じ小学生としてはずかしい!』
『や、べつにオレたちが泣かせたわけじゃねーし、つーか最初から泣いてたし』
『どーでもいいけどお前の方が先に『馬鹿』って言ったよな? つまりお前の方が……』
『問答無用! はじさらしは死んでしまえ!』
 “白波”と呼ばれた少年は悪ガキの中に飛込んで行くと、悪ガキはうわぁー、とクモの子を散らすように逃げて行った。
 戦う前からヒエラルキーは完成しきっているらしい。
『だいじょうぶか?』
 そして白波くんは、私に手を差し出してくる。それを掴んだアタシを引き上げ、立ちあがらせると、アタシの服をはたいてくれた。
『あ、ありがとう、ございます……』
 震える声でやっと声を出すと、白波くんは不愉快そうに目を細めた。
『な、なに……』
『おいお前っ!』
『は、はいっ!?』
 いきなり指差され、身体が硬直する。そんなのを無視して、白波くんは言葉を続ける。
『今の世界は“だんじょどーけん”で“げこくじょう”な世界なんだぞ! 女だからってボケっとしてると、“りょーじょく”のかぎりを尽くされてこわいお兄さんに売られて東京湾に沈められるんだぞ!』
『え!? え!? ……つまり、どういうこと、ですか?』
『さぁ? オレにもさっぱり』
 “りょーじょく”ってなんだろうな、と白波くんは小首を傾げた。
『とにかーく! 女だからって甘えてたらダメだぞ! 小悪党の20人くらい束になってかかってきても腕一本で吹き飛ばせるぐらいにならなくちゃ!』
『は、はぁ……』
『返事は“おう!”』
『え? は、はい』
『“おう!”』
『お、おう……』
『声が小さい!』
『お、おう!』
『よろしい。それじゃあ、オレは今から学校にサッカーに行くから。今度は泣かされるなよ!』

「……とまぁ、こんな風にアタシを守ってくれるやさしい騎士様がいたわけだ」
「………………」
「まぁその後すぐに家の連中に追いつかれて家出はおじゃんになっちゃったんだけど、そんなことはどうでもよかった。あの突然現れた騎士様があまりにかっこよくて、アタシは強い憧れを抱いたんだ。
 “あんな風になりたい”……いや、“あんな人に見合う女になりたい”ってな。
 だけどその憧れの騎士様は、どこの誰とも知れない相手で、もう1度会えるかも分からない。
 だったらせめて、あの人の言葉ぐらい――“強くなれ”っていう言葉ぐらいは守りたい。そう思ったんだ。
 だけどまぁ、強くなれたには強くなれたけど、何処をどう間違っちまったのか今じゃこんなだけどな」
「…………なんてこった」
 あまりの事態に頭がぐわんぐわんと揺れている。
「それじゃあ、お前が男らしくなっちまったのは……」
「何処にいるとも知れない白波くんのせい」
「お前の口癖の「死んでしまえ」っていうのは……」
「白波くんの決め台詞だったから……ま、過去形みたいだけど」
「……つー……あったまいったー……」
 ほんっとに、なんか、頭が痛い。
 白波――それは俺の父親の姓であり、つまるところ――俺の旧姓だ。

 白波夏樹。それが、5年前までの俺の名前だった。

920 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:10:18 ID:roX6lVCd
「とはいえ、そんなのはもう過去の事だし、あんまり気にする必要はないぜ?」
 翠は机の脇にかけてあったカバンを引っ掴んで、俺の方に歩み寄ってきた。
「さ、とっとと帰ろうぜ。早く帰らないと晩飯に――っつぁ!?」
「! 危ない!」
 ――と。翠は足をひっかけてしまったらしく、体勢を崩してしまった。慌ててフォローに入り、彼女を抱き止める。
「大丈夫かよ……」
「……ん。なんとか」
 翠はそうとだけ答えて、それでも俺から離れようとはしなかった。
「……翠? どうかしたか?」
「……なんでもない」
「そうか? なら……」
「でも……ごめん。もう少し、このままでいさせて……」
 ただ俺に受け止められる形だった翠の両腕が俺の背中に回り、ぎゅっと弱々しく、それでも確かに引き寄せられた。
「夏樹……心臓がバクバクいってる……」
 それは当然だろう。あんな話を――半ば告白のような言葉を聞いたばかりだ。それでこんな状況になれば、だれだって緊張する。
「お、おい翠、ホントにどうしたんだ? らしくないぞ」
「別に……本当にどうかしてるのかもな。ただ……」

「惚れた男の腕の中にいて平然としていられるほど、アタシも老成してなかった、ってことかな」

921 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:10:51 ID:roX6lVCd
「みど――んむっ!?」
 驚いて声をかけようとした瞬間、翠に唇を塞がれた。舌を差し入れてくる事こそないものの、長く、熱烈なキス。
 丸々一分――いや、もしかしたらもっと短いかもしれないが――の長いキスの後、ようやく翠が唇を離した。
「……何を、考えている?」
「……さあ? 目の前にいる朴念仁をその気にさせる方法とか……かな?」
 翠の両手がゆっくりと俺の顔をはさみ、そして翠は顔を近付けてくる。
「翠」
「……いいか、夏樹。これは事故だ」
「事故?」
「そう、事故。不幸な不幸な――偶然だ」
 俺に、ではなく自分に言い聞かせるように、翠は呟く。
「たまたまお前は倒れかけた女を助けたが、たまたまその女はお前に思いを抱いていた。お前の腕の中で自分の理性を抑えきれなくなった女は勢いにまかせて暴走してしまった――。
ほら、そこにはお前の意思はなく、偶然の積み重ねで出来た、ただの事故だ。お前が悔やむようなことは何もない。だから……」
 一拍置いて、翠が潤んだ瞳で俺を見つめながら――。

「……お願い。これ以上何も言わずに――抱いて」

 それが、俺に残された最後の理性を食い破った。
「なつ――んんっ!? んんーっ」
 まだまだ言葉を紡ごうとする翠の唇を塞ぎ、彼女の腰を抱き寄せる。
 始めは驚いたように慌てていた翠だったが、すぐに順応し、俺の首に手を回して俺の唇に吸い付いてくる。
「んふぅっ、ふっ、んちゅぅ……」
 わずかに開いた唇の間に自分の舌を差し入れ、彼女の歯茎をなぞり、頬を舐め、その口内を犯し尽くす。
 翠は最初に舌を入れられた時こそ驚いたように身体を硬直させたが、その後すぐに積極的に俺の舌に自分の舌を絡めてくる。
 ゆっくりと顔を離すと、翠は物足りなさそうな顔で絡めていた舌を出しっぱなしにして俺を見つめてきた。
「翠……」
「なつきぃ……」
 もう1度顔を近付け、唇を重ねる。と、同時に右手でボタンを外していき、その白く綺麗な肌を露出させる。
 そのまま上を脱がせてしまい、ブラジャーも外してやると、小振りな彼女の胸で桃色の乳首が勃起してその存在を強烈にアピールしていた。
「胸、小さくてゴメンな……」
「別に気にする必要はないだろ。大切なのは――」
 ゆっくりと顔を下ろしてゆき、その乳首に吸い付いた。
「ひゃあん!? ば、なつ、だめ……ああん!」
「――お前の感度の方、なんだからさ」
 そうとだけ言って、また翠の乳首に舌を這わせる。乳輪を舌でなぞり、いきりたった乳首を舌ではじく。
 開いた右手で、もう一方の乳首を摘み、引っ張る。
「んあんっ! はぁ、はぁ、んはぁん!」
 小振りな方が感度が良い、と良く効くが、どうやら翠の胸の感度はかなり高いらしい。
 ピンク色の突起を唇で甘噛すると、翠は痙攣したように身体を大きく弓なりに逸らした。
「はあああああぁぁぁん! だめ、だめぇ! そんな、かんじすぎちゃ……ひゃああああん!」

922 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:11:26 ID:roX6lVCd
 いつもの翠からは考えられないような『女』の声に、次第にリミッターが効かなくなってゆく。
 翠を机の上に押し倒すと、乳首を摘んでいた右手をゆっくりと下ろし、スカートの中に手を入れ、下着越しに陰唇を責める。
「ふぁあっ!? なつ、なつきぃ……んっ!」
 下着越しでも分かるほどに湿り気を帯びたそこを、更に責めたてる。
 ぐちゃり、ぐちゃりという卑猥な音を立てながら指を上下に、激しく動かす。
「んっ、ふっ、ああんっ!」
「翠のここ、こんなに嫌らしい音立ててぐちゃぐちゃになってるけど? 初めての割りに、随分と感じやすいんだな」
「んふぅっ、あはぁぁん!」
 耳元で囁くが翠にはもう聞こえていないようで、彼女は一心に俺の指が与える快楽に酔っていた。
 俺の手首を両手で掴み、彼女の力で俺の手を動かそうとしている。
「くすっ……淫乱だな、翠は」
「んんっ!」
 そう囁き、クリトリスを摘むと、翠が驚いたように目を見開き、そして身体を痙攣させる。
 どうやらイってしまったらしい。
「どうした? 淫乱って呼ばれたのがそんなに嬉しかったのか?」
「ちが、ちがぁうのぉ……やぁん」
 どうやら翠は軽くMっ気があるらしい。普段がSっぽいだけに、なんだかもっといじめてみたくなる。
「何が違うんだ? 乳首舐められて、下着越しにクレヴァスを責められてたからっていっても、『淫乱』って呼ばれてすぐにイっちゃったんじゃそう思われてもしょうがないよな」
「んふぅっ、はぁあ!」
「まったく、いやらしい女だな。初めてなのに男を誘って、こんなに濡らして。」
「んくぅ、んんんぅん! や、やぁん……」
 すっかり濡れそぼった右手を翠に見せ付けると、翠は恥ずかしそうに身体をよじった。
 ……うわぁ、めっさ可愛い。普段が普段だけに、こういうとこ見せられると非常にマズい。
 っていうかくどいが翠は黙ってて手さえださなきゃ何処を見ても生粋の大和撫子なのだ。そんな彼女にこんな反応をされて、一物が反応しない男なんていない。
「翠、そろそろ行くぞ」
「うん……きて……っつあぁ……っ!」
 足を広げさせ、一物を押し当て、亀頭までを沈めると、それだけで翠は苦しそうな顔をする。
「く、あぁ……」
「つ……」
 だからといって、止める事は出来ない。今日痛い事が、明日になって痛くないわけがない。先延ばしは、意味がない。
 なによりここで止めるのは翠の意思に反する。翠が望んでいるのは痛くない事ではなくて――絶対的な、身体の繋がりなのだから。
「ふぅっ、ふぅっ」
「大丈夫か?」
「ん……お願い、夏樹、こんなのが長く続くのはヤだから、一気に貫いて」
「……痛いぞ?」
「……頑張る」
 腰を突き出し、翠の中にペニスを埋没させて行き、ある程度力が入れ易くなった所で一気に力を加え、奥まで貫く。
「ひぎぃぅぁぁっ!」
 翠が大きな悲鳴を上げ、苦しそうに目を剥いた。
「はぁ、はぁ……」
 荒々しく呼吸をする翠の目じりには涙が浮かんでおり、先ほどの苦痛がよほどのものであったと思い知らされる。
 そっとキスをして、その涙を拭う。
「大丈夫か?」
「はぁ……はぁぁぁぁっ……うん、多分、大丈、夫……」
 そういって、苦しそうにではあるが笑ってくれる翠が可愛くて、いよいよ歯止めが利かなくなってくる。

923 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:12:35 ID:roX6lVCd
「ひぁっ!? ば、バカ夏樹! コレ以上太くされたら……」
「つぅ……わ、悪い……あんまりに翠が可愛かったから……」
「か、可愛いって……」
 言われた途端、顔を真っ赤にして目を逸らす翠。そんなところもなんだか一々初々しい。
「っ翠、そろそろ……っ!」
「ん……うん、動いて、いいよぅっ! 夏樹ので、もっと痛くして! 夏樹ので、アタシを気持ち良くしてっ!」
「っっ、翠ぃ……っ!」
 いよいよ止められなくなって、俺は翠に激しく腰を打ちつけ、ただただ彼女の与えてくれる快楽を求めた。
 膣から血と愛液とが混じった淡赤色が溢れ出す。そんな様が淫らで、嫌らしくて、俺の獣欲をさらに掻きたてる。
「んんっ、ひああぁっ、くふぅ、はぁ、夏樹、なつきぃっ! アタシ、変なのっ、痛いのに、気持ち良いのぉっ!」
 翠が俺の名を呼び、悶える。痛いのが気持ち良いなんて翠は本当にマゾの気があるのかもしれない、なんて考えながら、さらに腰を動かす。
 膣の締め付けがきつくなり、終わりが近い事を伝えてくる。
「んふぅ、ひゃぁん、な、なつきぃ……!」
「はぁ、はぁ、翠、マズい! 中に出して良いか!?」
「ん、出してぇ、なつきのあついの、アタシのなかにだしてぇ!」
 腰を深く沈め、子宮を突き上げると同時に。
 びゅぅ、びゅくっ。
「ん、はぁ、はぁぁあぁああぁああああぁっ!」
「くぅっ……っ!」
 限界に達し、俺は翠の中に射精した。

924 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:14:05 ID:roX6lVCd
「くぅ、ふぅ、はぁ……」
 荒い息を吐き、大きく胸を上下させていた翠が、ようやく大人しくなる。
「大丈夫か、翠?」
「ん……アンタさっきからそればっかだな」
 そう言って、笑う。どこか無邪気さを込めた、それでも妖艶な笑みに釘付けになる。
「っ……抜くな」
「待って! 抜かないで!」
 ペニスを抜こうとすると、翠が俺の腰に足を絡め、それを拒む。
「はぁ?」
「……いいじゃんよ。もう少し、余韻って奴を味わったってさ」
「……いや、味わってる暇はないかも」
「なんで?」
「……抑えられなくなりそう」
 なにしろ、さっきの笑顔にしろこの照れたような表情にしろ俺を萌え殺す気満点な台詞にしろ、俺を駆りたてる要因がありまくるのだ。
 が、翠はそんな俺に穏やかな微笑を浮かべて顔を近付け、言う。
「いいよ」
「え?」
「2ラウンド、いっちゃう?」
「つ――悪い、もうダメだ。俺は今から理性にさよならする」

925 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:14:43 ID:roX6lVCd
「んふぅ、ちゅぅ、ふむぅ」
 舌を絡めあいながら、腰を激しく打ちつける。
 翠の中に出した精液が潤滑油の働きをしているのか、今回は抽出が非常に楽だった。
「んー、ふはぁ」
 唇を離すと、翠は物欲しげな、熱に浮かされたような視線で俺を見つめてくる。
 が、乳首を摘むと大きく身体を振るわせ、仰け反る。
「ひゃぁん! ふぅ、はぁ、ん、んああん、あ、あ」
 ピストンの速度が上がる。膣の襞がペニスに絡み付き、背筋が震えるような圧倒的な快感を与えてくる。
 襞が快感を、というのは翠にとっても同じなのかもしれない。まだ二度目だと言うのに彼女は既に挿入で快感を得るほどになっていた。
「翠、気持ち、良いか!?」
「ん、は、ああん、う、うん、良い、良いのぉっ! 夏樹の、太くて、熱くて、痛いのに気持ち良いの!」
「――翠は、マゾなんだな」
「んふぅっ!?」
「だってそうだろ? 痛いのに気持ち良いんだろ? いや、ホントは――『痛いのが気持ち良い』んじゃないのか?」
「しょ、そんなこと――」
「ない、のか? 事実、こうして言葉で攻めてる間だってますます濡れてきてるじゃないか」
「ん、ふぅ、ひゃぁん、な、なつきぃ、いじわる、しないでぇっ!」
 膣の締め付けが更にきつくなり、限界に近づく。
「ひゃあん、は、ん、んああっ!」
「くっ……翠、イく時はイくって声出して言うんだぞ」
「そ、そんなぁ……はぁんっ!!」
 次第に翠の身体が痙攣してくる。
「はぁ、ダメ、イく、イきそう、イっちゃう!」
「翠、俺ももう……」
 限界が近づき、さらに大きくストロークする。
「ああん、あ、あ、あ、んんっ! はぁ、イく、イく、イくイく、イっちゃううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「っ……!」
 びゅくっ、びゅるる。
 そして翠の身体が一際大きく痙攣し、俺と同時に絶頂へと達する。
 翠の中から一物を抜くと、大量の精液と、血と、愛液が溢れ出してきた。
「はぁ、はぁ……お腹の中……夏樹の熱いのでいっぱいだ……」
 恍惚とした笑みを浮かべ、その淫らな液を指ですくう翠がなんだか愛しくて――頬にキスをした。

926 :鸚鵡貝:2006/09/14(木) 00:15:24 ID:roX6lVCd
「……いや、ちょっと待てよ?」
「あん?」
 行為も終わった帰宅路。放課後の勉強が終わった後は夕暮れだった空も今では日が沈み、濃い藍色を湛えている。
 そんな時間に、街灯の下を翠と並んで歩く。別に腕を組む訳でも手を繋ぐ訳でもなく、横に並んで歩くだけ。
 言葉もそれほど多くない。時々思い出したようにぽつりぽつりと言葉を漏らし、それについて23言意見を交わして終り、また静寂。
 そんなことを繰り返している内に、ふと心に浮かんだ疑問を投げかけてみる。
「……ちょっと待て、確認しておきたいんだけど、俺とお前が幼い頃からの付き合いだって言うなら、
 お約束の婚約イベントなんかは起こってないよな? 玩具の指輪交換、とか」
「言ってるだろ? たった1度会ったっきりだって。玩具の指輪もストローで出来た指輪も交換してねぇし、ファーストキスイベントもねぇよ。
 もっとも、そんなんあってもアタシは使わないけどな」
 ふっ、と呆れたように言う。
「え?」
「それどころかさっきの教室でのことを引き合いに出す気もねぇよ。
 アタシはな夏樹、アンフェアなことは嫌いなんだ。そんな肉体関係とか、約束とか、そんなのを盾に関係を迫りたくない。
 ……アンタの口から、自然に『好きだ』って言って貰わなきゃ、意味が無いんだ」
「翠……」
 と、そこまで言うと翠は駆け出し、少し行った所で振りかえった。
「とまぁ、そんなわけで、済し崩し的とは言え告白もしちまったし、これからはばしばし攻めて行くから覚悟しろよ?」
 じゃあな、と手を振って走り去って行く。それが赤くなった顔を隠すためである事ぐらいすぐにわかった。
 ――にしても。
「まいったな……」
 俺と、翠と、春姉。恋人探しをする事になったとはいえ、まさかわずか一週間で三角関係に発展するとは思いも寄らなかった。
 祖父から嫁を探せといわれた御堂夏樹の明日はどっちだろ?

451 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:23:33 ID:6EtecYEb
 ぬちゃり、という心地よいような気持ち悪いような、暖かいような寒いような一言では説明出来ないようなめんどくさい感覚を下半身に感じて、俺は深い眠りから目を覚ました。
 窓越しに見える空は真っ青であり、気持ち良いほどの快晴である。電線の上では、つがいだろうか、2匹の雀が並んで仲良く戯れている。
 今日も平和な朝だった。
「……まぁ、現実逃避はこの辺りにしておいて――何してるの?」
「むぁ?」
 身体を起こし、視線を下ろす。視線の先にあるのは、寝間着のズボンを脱がされ剥き出しになった俺自身と、その竿を念入りに舐める我が義姉――美奈木春歌姉さんの姿がある。
 春姉は一瞬不思議そうな表情で俺を見上げると、一物から口を離した。
「何って……フェラチオ?」
 え、知らないの?と何故だか少し小馬鹿にされた気分になる言葉を真剣な表情で言われてしまった。
「……いや、それはわかるんだけど。なんで?」
「なんでって……使用人としてご主人様を起こしに来たら、なっちゃんのここが大きくなってて辛そうだったから」
「……っ……」
 春姉の白くて綺麗な指がいきり立った竿を優しく握り、それを上下に擦り始めると、それだけで軽くイッてしまいそうなほどの快感が背筋を走る。
「あはっ、なっちゃんの今の顔、凄く可愛かった」
 春姉はそんな俺の様子を見ると妖艶な笑みを浮かべ、亀頭を口に含み、そして一気に根元まで飲み込んだ。あまりの快楽に表情を平静に保っている事が出来ず、つい眉根を寄せてしまう。
 春歌がゆっくりとストロークを始めると、彼女の柔らかい唇が竿を優しく刺激し、さらに顔が歪む。俺がそんな顔をする度に春姉の目尻がトロンと下がり、より一層ストロークの速度を速めて来る。
 春歌はペニスを一旦外に出すと、左手で袋を揉み、右手で竿をしごいて、空いた口で亀頭に吸い付いて、勢い良く吸い上げ始める。バキュームフェラ、とでもいうのであろうか。
 まるで俺の精を全て吸い尽くさんとするほど勢い良く吸われ、それに加えて彼女の手が与えてくれる快感は背筋が震えるほどだった。
 そんな圧倒的な快感に俺が――意識が覚醒する前から刺激を与えられている俺がそう長く持つはずも無く――。
「ごめん春歌、出る!」
「んむぅ――」
 ――結局、春歌の口の中に射精してしまった。
 びゅく、びゅく、とペニスが痙攣し、精を吐き出す度に、春歌がその全てを嚥下する。射精が完全に終わって春歌が口を離すと、その口元から飲み残しが垂れた。春歌は恍惚とした表情でそれを指で掬い取ると、それを舐め取り、
「……にがい」
 幸せそうに、そう呟いた。

452 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:24:14 ID:6EtecYEb
   ※

「ううぅぅ……」
「唸ってもダメ」
 春姉の恨みがましい視線を受けながら、箸をソーセージに伸ばした。
「意地悪ぅ……」
「意地悪じゃない」
 が、寸でのところで春姉に狙っていた獲物を取られてしまい、仕方なくその隣のプチトマトだけさらって口元に運んだ。ちなみにいずれもが春姉の手作り。もともと作り方を知らないだけだから、彼女がその気になればこの程度容易いのだ。
 で、その春姉が先ほどから怒っていると言う理由と言うのは――

「なんで朝フェラ駄目なの!?」

 ――という、朝からするには些か不健全な内容だったり。
「……気持ち良く、なかった?」
「まさか。最高だった」
 不安そうに上目遣いで見つめてくる春姉に、即答する。
 それは事実だ。あまりに気持ち良すぎて速攻で射精してしまうほどに気持ち良かったのだから。
「だったら!」
「けど春姉、やっぱり朝はマズい。臭いが付いたらシャワー浴びたり着替えたりしなきゃならないし、何より、今日は休日だから良かったけど、平日に時間的にそんな余裕がないだろ?」
「ううぅぅ……そんな事言って、あれから1回も抱いてくれないじゃない……」
 咎めるような視線に、なにも言い返す事が出来なくなる。
 ――いや、だって仕方ないじゃないか。
 春姉と翠を抱いてから早一週間。はっきり言ってかつて無いほど後悔してる。
 もちろん2人とも大好きだし、俺だって年頃のオトコノコなわけで、セックスに興味が無いなんて言えば全くの嘘になる。
 だからと言って、2度目はマズい。2度目を赦してしまえば、恐らくあとはずるずると関係を引き摺る事になる。俺がどちらが好きか、はっきりとした結論も出ないままにそんなことになるのだけは避けたかった。
 ――とまぁ偉そうに正統性を主張しつつも、結局は二股をする度胸も甲斐性もない俺はヘタレである、というだけの話である。

453 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:24:44 ID:6EtecYEb
   ※

 朝食が終わり、二人並んでのほほんとTVを眺めていると、呼び鈴が鳴り、来客を伝えてきた。
「お、来た来た」
 ソファーから立ちあがり、玄関へと小走りで向かう。
「おはようさん」
「おう、おはよう」
 ドアを開け、目の前に立つ黒髪の少女――翠ととりあえず朝の挨拶を交わす。翠の足元には大きな旅行鞄が置かれている。
 翠が来た理由は単純明快、試験を一週間後に控えたこの三連休を利用して、御堂家で勉強合宿を開催するためである。ちなみに、加奈と沙奈も誘ったものの、丁重に断られてしまった。曰く、「作戦会議があるから」だとか。……何の作戦だろうか。
 それはともかく。
「随分でかい荷物だな。参考書まで持ってきたのか? ウチにあるのを使えばいいのに」
「そこまで甘えられねえよ」
 俺の言葉に、翠は苦笑して答える。
 ――と、家の奥からパタパタと言うスリッパの足音がして――。
「なっちゃん、お客さんはどちらさまー?」
 春姉が顔を覗かせ、こちらを見て驚いた表情をした。
 ――そっか。春姉と翠は初対面だっ――
「あーっ!? 春歌さん!?」
「翠ちゃん、お久しぶりー。元気だった?」
 ――たんじゃないのか?
「ええ、そりゃもう元気でしたよ。春歌さんは?」
「うん、おかげさまでー。驚いた?」
「そりゃ驚きますよ。なんで夏樹の家に?」
「……あー、ちょっといいか?」
 和気あいあいと会話を始める春姉と翠の間に割って入って――
「知り合い?」

454 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:25:33 ID:6EtecYEb
   ※

「いやぁ、世間って狭いねぇ」
「ホントにな」
 居間で茶を飲みながら、三人でしみじみとつぶやいた。
 ――二人が話してくれた関係を一言で言うと、春歌さんは翠の家庭教師だったらしい。担当教科は国語。つまり。
「春歌さんのおかげで未だに国語だけは赤点取ったことないんですよ」
「そんなことないよ。翠ちゃん国語のセンスだけは鋭かったから、教師が誰でもきっと変わらなかったよ」
「そんなことありませんよー」
「…………」
 『それ以外は救いようがなかったけど』と暗に馬鹿にされていることに気付いているのだろうか――というかむしろ春姉の方が気付いていなさそうだ。この人、無自覚に言葉のナイフを振り回すから。
「いや、それにしても春歌さんの言ってた『なっちゃん』が、まさか夏樹のことだったなんて……」
「それを言ったら、翠ちゃんの言ってた幼馴染みが、まさかなっちゃんだった、なんて凄い偶然だよね」
「……へぇ、翠は『なっちゃん』についてどんな風に聞いてたんだ?」
 俺が聞くと、翠は笑いを噛み殺すような顔になって――

「『半ズボンのよく似合う超プリチーな男の子』」

「……ショタコン」
「ひ、酷いっ! それを言ったら翠ちゃんなんて『ボケなのかツッコミなのかわざとなのか天然なのか真面目なのか不真面目なのか馬鹿なのか天才なのか二枚目なのか三枚目なのかよくわからない幼馴染み』って言ってたよ!」
 あわあわと慌てて翠を指差した春姉は、早口にそうまくしたてた。
「……翠」
「う、嘘は言ってないぞ、嘘は!」
「私だって嘘は言ってないもん! 半ズボンのなっちゃんはぎゅーって抱き締めたくなるくらい可愛くて、その大きくて綺麗な目で見つめられて『お姉ちゃん』なんて呼ばれた日には……」
「……ショタコンだよな……」
「……ショタコンだな……」
 過ぎ去りし日の俺を思い出しながら一人クネクネと身悶える春姉に二人で冷ややかな視線を投げ掛けるも、春姉は完全にトリップしていらっしゃるようで、こちらの声はまるで聞こえていない様子。
 時々口から漏れる艶しい声と時折聞こえる「犬耳」「首輪」「飼いたい」などの単語から推察するに、今の彼女の脳内で幼い俺は犬耳首輪をつけた春姉のペットになっているようだ。恐ろしい。

457 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:30:00 ID:6EtecYEb
 トリップしてしまった春姉を置いて2人で2階、俺の部屋に移動する。俺がガラス製の机を用意している間に翠は自分の鞄から勉強道具を取り出し、早速勉強に取り掛かった。それじゃあ俺も、と勉強机の上に広がっていたノートと教科書をガラス机に移動させる。
「そういや、なんか飲み物いるか?」
 俺が尋ねると、翠は顔をあげて笑った。
「おう、何がある?」
「そうだな……確か、牛乳、青汁、杜中茶、エスカップ……」
「……待て、もっと普通の飲み物はないのか?」
「ん? そうだな……」
 瞬巡。そして
「春姉が愛して止まない『どろり濃厚ピーチ味』」
「……烏龍茶頼む」
「あいさー」
 疲れたような表情をした翠を置いて立ち上がり、階下に降りてキッチンに向かう。烏龍茶を取り、2つのコップに注いでいると、トリップから復活した春姉がリビングからひょっこり顔を出した。
「ねぇなっちゃん、私も一緒に勉強していい?」
「ん? いいけど、どうしてまた?」
「元教え子がどれだけ成長したか確認したくて」
 ……まさか「成長してない」とは言えず、とりあえず沈黙しておく。春姉はそれを許可と受け取ったのだろう、俺の後についてきた。
 春姉を連れて二階に上がり、扉を開けて自室に入ると、今まさに、翠が鉢植えの一つに手を伸ばし、引き抜かんと引っ張るところだった。
 ……って引き抜……っ!!
「馬鹿っ! ソイツは……っ!」
「え?」
 翠が振り返った瞬間、その草はスポンと抜け――

『『『『――――――――――――――――――っっっっっ!!』』』』

 その赤子の形をした根がこの世のものとは思えない奇声を挙げ――俺達は意識を失った。

458 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:30:33 ID:6EtecYEb
   ※

「お前なぁ、マンドラゴラの神話ぐらい知ってるだろ? 不用意に引き抜いたら悲鳴を挙げて、聞いた人間は全員お陀仏ってヤツ」
「知るかっ! いや、知ってるけどまさかそんなもんが実在するなんて聞いたこともないぞ!」
 未だにきんきんと耳なりのする耳を押さえながら、翠に言う。
 ――そう、何を隠そう翠が引き抜いた鉢植えに生えていた草、あれは俺が栽培しているマンドラゴラ、一繁だったのである。ちなみにマンドラは一繁、信二から平八、九郎まで全部で9人いたりする。
 翠曰く、『何やら鉢植えががたがた揺れてるから何事かと思って抜いた』とのこと。
「うー、天国に連れていかれるかと思った……」
 春姉は頭を押さえて立ち上がり、辛そうな声をあげた。
「大体、なんでそんなお伽話の中でしか聞いたことのないような植物をさも当たり前のように栽培してるんだお前は! 何処から採って来た!?」
 激昂した翠が吠える。
「何処って、裏庭」
「…………」
 マンドラゴラ――和名、曼荼羅華。死刑囚の血を吸って育つので死刑台の下に咲く、猛毒を持つ植物。
「この家、昔は墓地があった場所に建ってるって話だし、ありえない話でも無いだろ」
「ありえないに決まってるだろ! 大体、曼荼羅華って普通ふれただけで死に至る猛毒植物だろ! なんで神話の形で咲いてやがる!」
「いや、俺に言われても困る」
 俺の責任じゃないしなぁ。庭で咲いてるのを発見して、『他の人が抜いたりしたら危険だから』ってんでわざわざ家の中で栽培してるんだから。
「うう、どうせマンドラゴラなら自分のことを『ぼくちん』って呼んで語尾に『ござりますです』って付けるマンドラゴラの方が良かった……」
「お前は携帯電話で魔法を使う正義の魔法使いにでもなるつもりかよ」
 よよよ、と泣き崩れて見当違いな意見を言う翠に突っ込む。
「……コイツ以外、おファンタジアな生命体はいないよな!?」
 と、これまで泣き崩れていた翠が恨み殺さんばかりの瞳で俺を睨みつけてくる。
「いや、流石にそう何匹もいたりしないっての」
 ――と、丁度のその時、扉を開けて1匹の子狐が入ってきた。
「あ、ゴン蔵」
「ゴン蔵?」
「うん、裏庭で怪我してたから治療してあげたら懐いちゃって」
「へぇ…………!?」
「ほらゴン蔵、こっちこっち」
 春姉がおいでおいで、とするとゴン蔵は嬉しそうにその9本の尻尾を振って春姉の胸の中に飛び込んだ。
 ……そう、決して、決して認めたくは無いが、ゴン蔵には9本の尻尾が生えていた。つまり――

 ――九尾の狐。

「…………いないよな?」
「…………返答しかねる」
 ――今更で、オマケに自分の家ではあるが。
 ホント、この家どうなってるんだろ。

459 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:31:40 ID:6EtecYEb
   ※

 で。
「なっちゃーん、お風呂上がったよー?」
「分かった」
 朝のマンドラゴラ並びに九尾の狐事件以来、問題も起きずに合宿は進行し、現在夜の10時。本格的に勉強に取り組み始めたのが朝の10時で、昼飯夕飯風呂トイレ以外の休憩時間は一切摂らなかったので、少なくとも10時間は勉強しただろう。
 隣で睡魔と問題集という相性最悪の2匹と必死に戦っていた翠がよっしゃと言わんばかりに顔を綻ばせる。
「それじゃあ今日はこれまで――」
「アホ抜かすな。あと2時間は出来る」
 満面の笑顔で立ち上がった翠の顔が、一瞬で凍りついた。
「……マジで?」
「マジで」
「何言ってんだ! ふざけんな!
 もう一日中勉強してんだぞ!? なぁ、もう上がろうぜ」
「駄目。あと2時間」
 何しろ時間が無いしな。ただでさえ学力どん底の翠を平均まで押し上げる――いや、最低限補習を免れる程度にするためには、コレぐらいしないと――
「無理に決まってんだろ!? アタシの身体はボロボロだ!」
「なっちゃーん、翠ちゃーん、ホットミルク入れてきたよー……ってあれ? どうしたの?」
「なんでも無い。俺は今から風呂入るから、翠が逃げないように面倒見ていてくれない?」
「ん、いいよー。ごゆっくりー」
「うう……」
 流石に春姉の手前、これ以上我侭を言う訳にはいかなくなったのだろう。翠は座り、素直に問題集とにらめっこを再開した。
「それじゃあ翠、俺は今から風呂に入ってくるけど、サボんなよ」
「うるせぇ、とっとと風呂に入っちまえ!」
 翠が投げつけてきた辞書を回避して、俺は風呂に向かった。

460 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:32:19 ID:6EtecYEb
   ※

「ねぇ」
「あの、さ」
 春歌と翠が話し掛けたのは、ほぼ同時だった。
「あ、うん、春歌さん何?」
「い、いえ、翠ちゃんからどうぞ」
「そ、そう? それじゃあ遠慮無く……」
 そして翠は1つ、小さく咳払いをして、真剣な瞳で春歌を見据えた。
「もしかして、っていうかもうなんか確信があるんだけどさ。
 ――夏樹と春歌さんって、もしかして肉体関係ある?」
 ぶぅっ、と春歌が飲んでいたホットミルクを噴出した。
「な、な、な、なんで?」
「うーん、朝この部屋に通された時さ、この部屋、匂いがしたんだよね。
 ――まぁ、その、栗の花の」
「―――――」
「その反応見ると、図星、かな」
 そう言って、翠は寂しそうな表情になり、そして無理矢理作り笑いを浮かべる。
「まぁおかしいとは思ってたんだよね。一緒に放課後勉強するようになってから、結構際どいポーズでさりげなく誘ってみたりしたんだけど全然相手にしてくれなくてさ。
 そっか、そだよね。春歌さんを毎日相手にしてたら、アタシみたいな身体に起伏の無い女には――」
「ち、違うよ!」
「え?」
 自虐的なことを呟いていた翠に、春歌が食い付いた。
「その――実は、1回しか抱いてもらってない」
「いっ、かい?」
「うん……今朝翠ちゃんが感じた匂いだって、じれったくなって、私が我慢しきれなくなっちゃってなっちゃんを襲っちゃって……」
「あ、あはは、そ、そうなんだ……」
 堅かった翠の表情が、少し柔らかくなる。
「なんだ、そっか。よかった……」
「え?」
「いや、実はアタシも1回だけ抱いてもらったんですよ」
「そ、そうなの!?」
「ええ。だけどそれ以来全然求めてこなくって、もしかしたら、って思っちゃって……」
「そっか……翠ちゃんも1回だけなんだ……」
 そして2人で小さく、洗面所には聞こえないように笑い合った。
「それにしても、夏樹のヤツ、随分長風呂なんですね」
「うーん、普段はそうでもないんだけど、もしかしたら風呂場で寝てるのかもね」
 そしてまた、沈黙が降りる。ただお互いに考えている事は手に取るように分かった。
 ――だから。
「ねぇ」

「襲っちゃおっか」

 春歌からそんな提案があっても、翠は決して驚かなかった。

461 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:33:47 ID:6EtecYEb
   ※

「…………………………………ッ!? ブフォッ! ゲホゲホッ!」
 湯船で眠っていた俺は、お湯の中で目を覚ました。
 ――いかんなぁ。翠に偉そうな事を言った手前、そうそう眠る訳にはいかないのに、身体も洗わずに湯船につかったまま眠ってしまうとは。
 湯船から出て、掛けてあったタオルを取り、石鹸をつけて身体を洗い始め――ようとしたところで。
「おじゃましまーす」
「は、入るぞ!」
「ブッ!」
 春姉と翠が浴場に乱入してきた。
 浴場に乱入してくるって言う事は、当然裸な訳で、その、なんていうか、春姉のその男なら誰でも一度は憧れるであろう乳房とか、大きなお尻だとか、翠の滅茶苦茶恥ずかしそうな顔だとか、
ほんのりと赤くなった柔らかそうな肌とかに目が行ってしまうのは男の悲しき性な訳で。
「なななな、何しに来たんだよ二人とも!?」
 必死にその言葉を紡ぐものの、
「何って……あんまりになっちゃんが相手してくれないから、襲っちゃおっか、って話になって」
「襲ッ……!」
「ほ、ほら、そんなことより、身体、洗ってないんだろ? アタシ達が洗ってやるよ」
「い、いや、どうぞお気になさらずに……っ!」
「いいからいいから」
 そして翠にタオルを、春姉に石鹸を取り上げられ、結局空手になってしまう。
 そんな俺の真ん前に膝を立てた翠は、大きく深呼吸して自分を落ち着かせると、早速俺の身体をタオルでこすり始める。両腕、胸、腹、そして両脚。丁寧に、そして優しく擦られて――
「ん……もう抵抗しないんだな」
「っ……ああ、ぶっちゃけると、人に身体洗ってもらうのなんて久しぶりだし、超気持ち良いから、抵抗できないって言うか」
 そも、誰かと一緒にお風呂に入るの自体久しぶりだ。最後に入るのは父さんと生きていた頃、野球で泥だらけになった時以来。――もう10年も前になるか。
 そんな俺の言葉に翠は満足したのか、少し嬉しそうに笑って――
「じゃあ……次はここ、だな」
 ――2人の美女に挟まれていきり立ったそれを、つん、と突付いた。
「翠ちゃん、はい」
「ん」
 俺の後ろで何かをしていた春姉から石鹸を受け取ると、それを両手で泡立てる。
「ん……っ」
 唐突に後に何か柔らかいもの――まぁ考えるまでも無く、春姉のおっぱいだろうけど――が押しつけられた。
「ちょっ、春姉っ!」
「ん……大丈夫だよ。お姉ちゃんが、綺麗にしてあげるからね」
「っあ……」
 後から耳たぶを噛まれ、更に体重をかけてくる。堅くなった彼女の突起がその存在を主張し、俺の興奮を増幅させる。
「夏樹、こっちも……」
「っ……!」
 翠があわ立てた石鹸で俺のペニスをしごき――否、洗い始める。上、下、上、下と規則的に、ぎこちなく与えられる、やんわりとした刺激も、顔を真っ赤にしながらも必死にそれをしてくれる翠の表情も、全てが扇情的で、次第にリミッターが効かなくなってくる。
「んふぅっ……」
 そしてそれは、後からの刺激も同じだった。春歌は大きな乳房を俺の背中に押し当てたまま身体を上下に揺らし、その石鹸で泡だった彼女の身体で俺の身体を洗ってくれている。耳たぶを噛んでいた唇が次第に下へ下へと降りて行き、首筋に何度もキスの雨を降らせてくる。
 堅く勃起した乳首が擦れ、それが彼女に絶妙な刺激を与えているらしい。時折キスの合間に漏れる甘い吐息に、理性が更に削られて行く。
「ぅくっ……ふ、2人とも……そろそろ……」
「ふふ、夏樹、今の顔、凄くえっちだった……」
「はぁ、ああん……」
 春歌は既に乳首がもたらす快楽に酔っているらしく、俺の首筋にキスをしながらも一心不乱に身体を擦り付けてくる。
 一方の翠も、どこか焦点の合わぬ瞳でその指の速度を速めて行き――
「くぅ、出すぞっ……くあぁっ!」
「はあぁあ!」
 体が痙攣し、びゅく、びゅくぅ、と亀頭の先から白濁液が吐き出された。
 それを全て顔に受けた翠は、その一塊を指で救い、舐めて、恍惚の笑みを浮かべた。
「あはぁ……なっちゃん、背筋がびくびくって……気持ち良かったんだね……」
 耳元で、春歌の呆とした声が聞こえた。どうやら乳首の刺激だけで軽く達してしまったらしく、俺に寄りかかってくるその身体にはほとんどまったく力が入っていなかった。

462 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:34:58 ID:6EtecYEb
 ――だが、これで終わらせる訳には行かない。
「ほら、2人とも、そこの壁に手をついて、こっちにお尻向けて」
「え……?」
「あ………」
 その言葉の意味を理解できなかった翠が呆然とした表情を浮かべ、理解できた春歌が嬉しそうな顔になった。
 そんな2人に、改めて宣言してやる。

「2人まとめて、可愛がってやる」

   ※

「こ、これでいい……?」
 春歌が大きなお尻を振りながら聞いてきた。
 なんというか、凄い壮観だ。かなりの美少女が2人、風呂場で、真っ裸で、俺にお尻を向けて、切なげな瞳でこちらを見ている。
これは例え俺がどんなに精神的インポテンツであっても勃起せずにはいられないような、物凄い光景である。
「ん、OK」
「ひゃっ!?」
「んはぁっ!」
 2人の蜜壷に中指を入れてやる。2人とも先の行為でかなり興奮しているようで、少し中を弄繰り回しただけですぐにぐちょぐちょに濡れそぼった。
「さて、どっちから先に挿れようかな」
 焦らすようにそう言うと、春歌が小さくお尻を振って誘ってくる。
 ――だけど。
「春歌はさっきのでイっちゃったんでしょ? じゃあ翠を先にしようかね」
「そ、そんなぁ……」
 絶望したような春歌の表情とは対照的に、翠の表情は必死に押し隠してはいるものの、隠し切れないほどに嬉しそうな表情になる。
 入り口に亀頭をあてがい、そして――
「――――んあああああああぁぁあぁぁっ!」
 一気に、貫いた。
 翠が大きく身体を弓なりに反らして鳴く。力が入らなくなったのであろう脚はがくがくと震え、恐らく立っている事すらままならない状態になった彼女の腰を倒れないようにしっかりと抱え、
ぐりぐりと子宮を押し上げるように突き上げる。膣が絞まり、グラインドしてないのにその締めつけだけで軽く達してしまいそうになる。
 ゆっくり腰を引いて、強く打ちつける。パン、という肉のぶつかり合う音がした
 1回、2回。
 襞が竿に絡み付いてきて、擦れて気持ち良い。それは翠も同じようで、翠はぎゅっと目を瞑りながらもだらしなく舌を出し、嬌声を挙げている。
 3回、4回、5回、6回……。
 はっきりした意識を保てたのはそこまでだった。あとはただ快楽のみを求め、サルの様に腰を振りつづけた。
「んはあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 そして俺が射精すると同時に、翠も達したようだ。抱きしめた身体が弓なりに反れ、耳元で大きな声を挙げた。
 ……つーか、なんか、さっきから、頭が、くらくら、するん、ですけど……
「な、なっちゃぁん、次はわた……え、ええぇぇっ!? ちょっ、なっちゃん!?」
「お、おい夏樹! 大丈夫か!? 春歌さん、水、水出して! 夏樹、のぼせてる!」
「う、うん! 分かった!」
 …………………


463 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:35:46 ID:6EtecYEb
   ※

 で。
「ふぅ、気持ち良かった」
「痛い……もう何も出ないよぅ……ぐすん」
「自業自得だろ。こんな美人2人に迫られて1回しか相手にしなかった報いだ」
 俺の右腕に絡み付いて語尾に音符が出そうなぐらい晴れやかな笑顔で言う春姉に泣き言を言うと、左腕を枕にしている翠がぼやいた。言うまでもなく全員全裸であり、ついでに言うなれば翠と春姉は心なしかお肌つやつやで、俺は枯れ果てたミイラのよう。
 ――それもある意味当然。何しろ浴場で2回翠に出して、その後風呂から引きずり出されて今度はベッドで春姉に騎上位、翠に騎上位、春姉と対面座位、そして最後は二人一緒に、と都合6回もしていることになる。
まさか自分の絶倫っぷりに感謝する日が来るとは思ってもみなかった。
「……またやっちまった……」
 後半は俺もかなりノリノリだったとは言え、深い悔恨の念に襲われる。
「お前等分かってんのか? 二股だぞ二股。散々弄ばれて最後には捨てられるんだぞ?」
 半分逆ギレして言う。……が。
「大丈夫だよー。なっちゃんはそんな子じゃないから」
「そんな度胸が無いから今まで手ェ出して来なかったんだろ?」
 一蹴された。ぐすん。
「けど最終的には一人に選ばなきゃいけないわけで、そうなるとどちらか一方が……」
「そんなこと後で考えれば良いんだよ。今はまだ、私達のどちらとも付き合ってないんだから、もっと気軽に行こうよ」
 ほら、身体の相性って大切でしょ?とのほほんと笑いかけてくれる春歌。
「いざとなったら囲っちゃえ。自慢じゃないがアタシの母さんが3人いるんだぞ?」
 と、何か凄い事を言っている翠。
「3人? それって犯罪じゃ……」
「重婚だったらな。だからアタシを産んだ母さんが正妻で、他の2人は妾――愛人ってこと。愛人は何人作っても罪には問われないし。
 それに母さん同士仲も良いから何の問題も無い」
「倫理問題にはなるがな」
「あ、それいい! そうしたら皆一緒にいられるね!」
「ちょっと待て。
  何 か が お か し い 」


464 :夏のお嫁さん :2006/11/10(金) 01:36:22 ID:6EtecYEb
〜おまけ〜

「なぁ夏樹」
「んあ?」
 合宿2日目、昼前の確認テスト中、翠が問題に目を落としたまま声を掛けてきた。
「マンドラゴラが出て、九尾の狐が出て、次は何が出てくると思う?」
「……叶うのなら何も出てきて欲しくは無いな。これ以上自分の家が化物屋敷になるのは少々堪える」
「そう言うなって」
 あ、違う、と翠が消しゴムに手を伸ばした。
「そうだな……」
 顔を上げ、窓の外を見ながら考える。
「不死鳥と書いてフェニックス、なんていいな」
「お、いいねぇ、かっこいいじゃ……」
「火を纏ってるらしいからガス代浮くし」
「……御堂カンパニー御曹司の言葉とは思えないな」
「やかましい。じゃあお前はどんなんがいいんだよ」
「アタシか? うーん……」
 一瞬の逡巡の後。
「カーバンクルとか猫又なんてどうよ?」
「猫又って言うとアレか。『ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!』って言葉の後に『にゃーんてにゃ!』って付け加えるヤツか」
「……確かにアレはアレで猫又なんだろうけど、なんでまず真っ先にそれを連想するんだお前は」
 半眼ジト目で俺を睨みつけ、解き終った解答用紙を叩きつけてくる。それを受け取り、赤ペンを取り出して採点をはじめる。
「でもどうせならアレだよな、ピ○チューの方がいいよな」
「確かにそうだな。ピカ○ューなら電気ショック使えるし、電気代浮きそうだ」
「だからなんでお前はそんなに貧乏性なんだよ!」
「なっちゃん大変!」
 翠がそう突っ込んだところで、部屋の扉が勢いよく開かれ、春姉が飛び込んできた。
「春歌さん? どしたの?」
「いいから来て! 庭に、庭に……っ!」

   ※

「…………」
「…………」
「……翠、どう思う?」
「……どうって……言われても……」
 庭では1匹の大きなネズミがこちらを威嚇していた。全長は40cmぐらい、全身は黄色でジグザグの尻尾を持ち、そしてほっぺは赤い。
 手をかざしてみると、そのネズミはピカッ!と鳴いて走り去った。
「……ピ○チューだよな……」
「……ピカ○ューだな……」
「……ピカチ○ーよね……」
 電気ネズミが去った方向を見つめながら、3人はいつまでも呆けていたのだった。
 ……我が家の庭は、いったいどうなっているんだろう……


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