Bitter Choco Liqueur
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ビターチョコリキュール
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「先輩への告白」
山岸先輩は、意地悪だ。私は、そう思った。山岸先輩は、職場の先輩で、背が高く寡黙な男性で……私が、ずっと好意を寄せていた人なのだ。私はその山岸先輩に、昨日、思い切って告白した。
そうしたら、山岸先輩はうつむいて「答えを少しだけ待ってほしい」と私に告げてきた。私は、それ以上言い返すことができずに、その場は解散となった。私は、悶々とした気分を抱えたまま、アパートに帰ったけれど……先輩のなんだか辛そうな顔が忘れられなくて、昨夜は眠れなかった。
ダメならダメって言ってくれた方がいい。あんな態度じゃ、生殺しだ。おまけに、間が悪いことに、今日は会社の飲み会と来たものだ。睡眠不足と、情緒不安定が手伝って、私は飲み会が佳境となる頃、自分でもわかるほどに悪酔いしていた。
ふと、向こう側の離れた席に座る山岸先輩の姿が目に入る。先輩は、一人でビールを舐めるように飲んでいる。顔が赤い。先輩も酔っているんだろうか? 私は、ふらっと自分の席を立ちあがり、吸い寄せられるように先輩のほうへと歩いていった。
「山岸先輩」
私は、先輩に声をかける。同時に、普段の私だったらこんなことしないな、と思った。本当、酒の力とは恐ろしい。私のしびれた頭がそんなことを考えているうちに、私の口は勝手に動く。
「……昨日の答え、聞いてもいいですか?」
先輩は、顔をあげると黙って私を見つめる。その視線から、私は感情を読み取ることができず、一瞬たじろぐ。すると、先輩は立ちあがった。そして、私の手首をつかむ。手首が痛い。私が悲鳴をあげる間もなく、先輩は私を宴会場の外に引っ張っていく。
悪酔いと、先輩の強引な力が手伝って、視界がぐらぐらする。そのまま、引きずられるように連れられて、どこか狭いところに押し込まれる。
(あれ、ここって……)
私は、ハッと気がつく。男子トイレだ。先輩は、私を男子トイレの個室に押し込んで、さらに自分も入ってきて、後ろ手で鍵をかける。
「え? 先輩……?」
私がおびえて先輩を見上げると、先輩の顔が私の上に覆いかぶさる。次いで、お互いの唇が接触しあう。先輩の太い腕が、私の背中と後頭部に回される。キスをしている……そう実感する間もなく、先輩の舌が荒々しく私の唇を割り開き、口内へと侵入してくる。
獣のように深く、荒々しい接吻が、私の意思とは無関係に交わされる。本能的に、私の舌が逃れようとしても、先輩の舌が獲物を狙う肉食獣のように追いかけてくる。先輩の唾液が、私の口腔を染め上げるように流れ込んでくる。私の息が続かず、口角から、先輩のとも、私のともつかない唾液があふれ出す。
「ぷはぁ……」
しばしの蹂躙のあと、私が苦しそうにもがいて、先輩がようやく私の唇を解放する。私は先輩の顔を見上げる。先輩、何でこんなことを……私が口を開こうとしたその時、トイレの個室の外から、人の声が聞こえてくる。先輩は、私の身体を抱きすくめ、私の唇を掌でふさいだ。
「山岸のヤツ、どこに行ったんだろうなぁ。二次会のカラオケに誘おうと思ったのに」
「男子トイレにもいないぜ?」
声の主は、同僚の男性たちのものだった。彼も、相当酔っているらしい。陽気な声は大きく響き、足音から察するにだいぶ千鳥足のようだ。
「なぁ、ところであの話って本当か」
「あぁ?」
「山岸のヤツが、小春ちゃんに告白されたってウワサ」
思わず私の名前が出て、私は身を強張らせる。
「しかし、山岸もうらやましいヤツだよなぁ。先週、前カノに振られたと思ったら、すぐにあんな可愛い子に告白されるんだものよ」
「あぁ、まったくだ」
同僚たちの話声が、遠ざかっていく。山岸先輩の手が震えている。私が先輩のほうを振り向くと、先輩は私の口を解放してくれた。
「先輩、私……」
私は小さな声でささやく。先輩にそんなことがあったなんて、全然知らなかった……
「小春ちゃん」
先輩が、今日初めて私に向かって口を開いた。
「ごめん、俺どうかしてた」
先輩が、私を柔らかく抱きしめてくれる。
「小春ちゃんが、優しくされたら……なんだか、イライラしたようなむずがゆいような、ヘンな感じがして」
先輩の震える声が、言葉を紡ぐ。私は、先輩の胸板に頭を沈めて、その鼓動を感じていた。私の頭に、先輩の鼓動が伝わってくる。早く、強い律動が響き、私の鼓動と重なり合う。私は、いきなり乱暴なことをされたというのに……下腹部が、熱くなるのを感じていた。
「先輩」
私は、先輩に抱きついてき、先輩の耳元に唇を寄せる。お酒の力は怖い。いつもより大胆になってしまう。
「責任とって……最後までやって下さい」
私は自分でもこんな表情ができるのか、と思うような小悪魔な笑顔を浮かべる。少しの間の後、先輩が小さく頷いた。先輩も、お酒の力で大胆になっているのかもしれない。
先輩は、私の身体を壁に寄りかからせて、先輩に向かってお尻を向けるような体勢にさせる。私は、肩越しに先輩のほうを振り返り、顔に惚けたような微笑みを張り付ける。そのまま、自分でスカートを捲りあげ、ショーツを膝までずりおろしてしまう。あらわになった秘所は、乱暴なキスで濡れていた。
「行くよ。小春ちゃん」
先輩が、私の腰の曲線をなでながら、甘い声で尋ねる。
「はい。来て下さい」
私も、猫撫で声で先輩に答える。ずいぶんと媚びるような声だと思ったが、お互い様だ。先輩は自らの男性器を解き放つと、私の腰のあたりを両手で押さえた。
お互いの腰と腰が重なり、先輩の男根の先端が、私の秘唇を押し開く。先輩が侵入し、私の内部を満たしていく。甘く、溶けるような感覚が、身体の中心から全身に広がっていく。さっきのキスとは違う、優しくゆっくりとしたストロークで先輩が動く。
「ん……っ」
思わず、私は甘いため息をこぼした。すると、私の背中に、先輩の大きな体が重ねられる。熱い吐息がわかるほどの距離で、先輩の唇が、私の耳元に接近する。
「声を出すと、気がつかれるよ」
先輩はそう言うと、私の口を、その手のひらでそっとふさいだ。
私と先輩は、男子トイレの薄壁の中で、お互いの身体をぶつけ合っている……その事実を私は再認識する。ただ、その事実が、私の熱情を覚ますことはできなかった。むしろ、ともすれば周りに分かられてしまうかもしれないような状況が、私の官能を高ぶらせていく。下腹部が、じゅんと熱を持つのを感じた。
「く……ッ」
先輩が何かに耐えるようにうめくと、腰の動きが徐々に早くなっていく。それと同時に、私の内側の快楽を煽っていく。異常な状況と言うスパイスが、私の官能の炎を彩る。男性経験がないわけじゃない。先輩のことを想像して、自分を慰めたこともある。
でも、こんなに気持ち良くなるのは初めてだった。無尽蔵に膨らむ悦楽は、怖いほどだった。先輩が、ますます激しく私に腰を打ちつけ、粘液質の音がトイレの個室に響く。恋焦がれた人との快感は、神経が焼き切れそうなくらいに甘味だった。
(イキたい……先輩と一緒にイキたい)
私は、そう願う。
「小春ちゃん……俺、イクよ」
先輩が短く告げると、その男根が震え、私の子宮をめがけて、濁流が流し込まれる。
(先輩……)
私は、先輩の情欲のたぎりを感じながら、自らも絶頂へと突き上げられる。至福の感覚を堪能しながら、私の脳裏は真っ白になった……
「小春ちゃん……小春ちゃん、大丈夫?」
少しして、私は先輩の呼びかける声で、我に返った。どうやら、先輩が私の身体を抱きかかえてくれているらしい。どうにか自分で立とうとして、私自身があまりのキモチ良さで、腰を抜かしていることに気がついてしまった。
「小春ちゃん。タクシー呼ぶからさ、家まで送っていくよ。歩けないだろう?」
先輩が、心配した表情で私の顔を覗きこむ。私は、そんな先輩を見て、イタズラ心が湧いてくるのを感じる。まだ、お酒が残っているらしい。それにヒドイことしたのは先輩のほうなんだから、少し我がまま言ってもいいだろう。私は、先輩の胸板に顔を沈めてささやいた。
「どうせ送ってくれるなら……ホテルにして下さい……」
(END)
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