Bitter Choco Liqueur
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ビターチョコリキュール
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「サイミン狂想曲」
おまけ
(作者注:時系列は第二話直前、視点は清美主観の掌編エピソードです)
まだ人の少ない早朝の校舎は、どことなく空気が冷たく澄んでいる。なのに、私の身体はこんなにも火照っている。心臓の脈が早い。私……鹿野清美は、震える手で荷物かけにカバンをぶら下げた。ここは、女子トイレの個室の中。誰かに見られるなんてあり得ない話なのに、周囲の気配を探ってしまう。私は呼吸をできる限り落ちつけると、スカートの中に手を伸ばす。ショーツに手をかけ、ゆっくりとずり下ろす。トイレで用を足すときに当たり前に繰り返してきた行為だが、今回は排泄のために下着をずらしているわけではなかった。膝からふくらはぎまでを下着がくぐり、やがて足先からパステルピンクのそれは離れていく。
「ぁ、はあ……」
思わず感極まって、ため息がこぼれた。女子の大切な部分を隠すための衣類が、秘部を離れて私の手の中に握られている。私はカバンを取って肩にかけると、脱ぎ捨てたショーツをその中にしまう。スカートの裾を整えると、トイレの個室の扉を押し開く。
(こんな……感じがするんだ……)
スカートの中がスースーとして、何とも頼りなく、寒いくらいだった。それなのに、心臓が激しく脈打ち、この上なく体温を熱く感じる。私は、トイレの壁面に設置された鏡をのぞく。顔までは、赤くなっていない。私は、鏡から女子トイレのドアに向き直る。
(このドアを、開けたら……)
後戻りはできない。そんな気がした。私はしばし扉の前で躊躇し……そっと、ドアを押した。
学生たちの談笑する声が聞こえる。段々と、人影が増え始めていた。一歩、踏み出す。太股の付け根が湿っているのがわかった。思わず目眩がする。貧血ではない。この感覚は、あまりに甘味すぎる。私は、できる限り平静を装って、教室へと歩き出す。スカートがこんなにも頼りなく感じるのは初めてだった。すれ違う人すべての視線が、私のむき出しのお尻に向けられている気さえする。
「あっ! 清美先輩!!」
「ッ!!?」
いきなり背後から自分の名を呼ばれ、私は振り返りながら思わず身構えた。声の主が、きょとんとした表情で私を見つめる。そこにいたのは、生徒会の後輩である小野村真由ちゃんだった。
「おはようございます、清美先輩。どうかしたんですか?」
「あ、いえ……何でもないの。そうよ、なんでもないのよ」
必死に言い訳をするたびに、下半身が熱を持っていく。いつ表情に出てくるかと思うと羞恥心が強まり、比例して甘い目眩が脳髄をしびれさせる。
「ところで何ですけど、私のお兄ちゃんが昨日のことで……」
上の空になりかけていた私の精神が、真由ちゃんの言葉で現実へと引き戻される。「昨日のこと……」私は、前日の放課後に起こったことを思い出す。そうだ。それが全ての発端だった。小野村くんに、相談に乗ってもらって……小野村くんが、私に気を使ってくれて……それで、あんなことになって……
自分を覆い隠していた何かがはぎ取られた不思議な解放感、もし露見してしまったらと破滅を恐れる羞恥心、二つの相反する感情が産みだす渇望にも似た何か。私は、その正体を思い出し、ビクンと背筋を伸ばす。
私は、昨日の放課後……自ら小野村くんに痴態をねだり、そして、逃げ出した。あの時に、味わった感情。何かが怖かった。恐怖から逃げ出したかった。でも、今理解してしまった。あの時、私が恐れたのは目の前にいた小野村くんじゃない。私自身、ずっと私が見て見ぬふりをしていた心の中の深淵が、大きすぎるその身を引きずりだそうとしている。
「あっ……」
私は、目に見えてよろめいてしまった。
「清美先輩! 大丈夫ですか!?」
真由ちゃんが慌てて、私の身を支える。その時、彼女の手がわずかにお尻に触れる。真由ちゃんの行為は、私の身体を抱えようとした以外に他意はないだろう。なのに私は、手触りからスカートの内側の事態を察知されるのではないかと考えてしまう。瞬間、女性器から粘り気のある液体が、わずかに湧き出す。
「先輩、貧血だったら保健室まで一緒に……」
私のヘンタイ的欲望を知らないのであろう真由ちゃんは、不安げに私の健康を気遣ってくれる。罪悪感を覚えるが、今の私にとって羞恥心という名の炎に油を注ぐ効果しか現さなかった。罪悪感が羞恥心を煽り、羞恥心が欲望を育て、欲望は私に新たな罪悪感を植え付ける。無限循環する蕩けるような責め苦に私は苛まれる。
(もうダメ……耐えられない……どうすれば……)
私はスカートの裾をギュッと抑え、自問自答を繰り返す。初めから、私は答えを知っていた。
「ねえ、真由ちゃん……」
私は、真由ちゃんの顔を見る。
「……小野村……賢哉くんのメールアドレス、教えてもらってもいい?」
真由ちゃんはキョトンとした表情でうなずき返し、私の求めに応じてくれた。小野村くんのアドレスを受け取った私は一人で立ち上がり、真由ちゃんに心配する必要はない旨を伝える。私は小野村くん宛てのメールを打ちながら、教室とは真逆の方向に歩きだした。足取りはふらつき、頼りない。熱病にうなされたかのような頭では、背に受ける真由ちゃんの視線もすぐに気にならなくなる。太股から粘ついた滴が、筋を残しながら垂れ落ちていった。
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