Bitter Choco Liqueur
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ビターチョコリキュール
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「純白天使ランジェリーエンジェル」
prologue
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epilogue
―――助けて。
私は、焦って震える指で短くメールを打つと、親友である篠原花梨に向けて送信した。私の名前は、小宮絵美理。近くの高校の寮で暮らす女子学生。私は、今、のっぴきならない事態のさなかにいた。
ちょっとした用事の帰り、駅近くのメインストリートを歩いていると、いつの間にか、数人の男の人たちに遠巻きに取り囲まれていた。彼らの眼は真っ赤に充血し、焦点は合わず、獣のように息を荒くしながら、じりじりと私に詰め寄ってくる。私は、持っていたカバンをぶつけて、男の人たちを振り払い、ビルとビルの狭間に逃げ込んだ。彼らは私の姿を見失っても、まるで野犬の群れのように、しつこく私のことを追跡してくる。あたりには、奇妙な霧が立ち込めていた。人ごみで混雑する大通りのはずなのに、人の気配が全く消えていて、大声で助けを求めても反応がない。携帯で助けを呼ぼうにも、何故か全然つながらない。先ほど花梨に送信したメールだけが……届いたかどうかもわからないけども……頼みの綱だった。
「……ッ!?」
通りのほうから、足音と荒い息の音が聞こえてきた。私はできるだけ音をたてないように路地裏のほうへと逃げる。
「きゃあ!!」
狭い通りを抜けようとしたとき、道端に置かれていたごみ箱に引っ掛かり、転んでしまった。その音を聞きつけ、獣じみた男たちが私のもとへ駆け寄ってくる。男たちはにたりと笑うと、私のほうにじりじりと迫ってきた。私は、尻もちをついたような格好になっていて、もう、逃げることはできない。
「ひっ……!」
私は、小さく嗚咽をあげた。男たちの股間が、ズボン越しでもはっきり分かるほど、大きく膨れ上がっているのが見てとれたからだ。そう言えば、最近この街ではレイプ事件の発生件数が増加しているという話を聞いたことがある。先頭の男が、私の肩を掴むと乱暴にアスファルトの路上に押し倒してきた。私は、恐怖に身を強張らせて、目をつぶることしかできない。―――もうだめだ。そう、覚悟した瞬間……
「ギャアアァァァ!!」
私の目の前で、突如、青い閃光がほとばしった。同時に、私に迫ってきた男たちが苦しそうに身をよじりながら、放たれた輝きから逃れようとしている。強く、清らかなその光は、私の胸元……お守り代わりに肌身離さず身につけていたペンダントからあふれ出ていた。私は、呆然としてその様子を見つめていた。男たちは、光から目をそらすようにのたうちまわっている。
「絵美理ちゃん!!」
その時、路地裏によく見知った人間が飛び込んできた。
「……花梨!!」
眼鏡をかけたショートヘアの女の子、童顔で幼く見えるけど、とてもしっかり者な私の親友。さっきメールを送信した、花梨の姿だった。
「絵美理ちゃん、立てる?」
「うん……ありがとう……」
花梨は、私の身体を起こすと、手を引っ張って走り始める。バランスを崩していた男に体当たりして突き飛ばすと、私たち二人は怪しげな霧の中を突っ切り、無我夢中で逃げ続けた。
いつの間にか、怪しげな霧は晴れていた。あたりには、相変わらず人気は少ないけれど、静かな夜の平穏に包まれた街の風景が戻ってきた。私たちは、息を切らしながら、教会までたどり着いた。教会の扉の前まで来ると、そっと扉が押し開かれ、中から心配そうな表情をした男の子がのぞいてきた。花梨の弟の裕くんだ。住宅地の片隅にあるこの教会は、今は開店休業状態で使われていないけど、花梨が裕くんと二人だけで暮らしている。
「花梨お姉ちゃん……大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だから……裕は、もう寝ていいよ。あ、絵美理ちゃんは早く中に入って? ウチの教会には、結界が張ってあるから」
「……うん」
花梨は、裕くんを自室へ戻し、私には教会の中へ入るよう促した。私は、教会の扉をくぐり、礼拝堂へ足を進める。結界? 一体何のことだろう。私の心臓は、相変わらず高鳴ったままだ。獣のようになった人々、怪しい濃霧、ペンダントからほとばしった輝き、そのすべてを知っているかのような花梨の態度……このわずかな時間で経験した事件は、あまりにも非日常的過ぎた。
「ねえ、絵美理ちゃん。そのペンダントは、一体どこで手に入れたの?」
「ちょっと! ちょっと、待ってよ!? 花梨!!」
心配そうに私の顔を覗き込む花梨に対して、私は強い口調で言い返していた。
「質問したいのは、私のほうよ! あの男の人たちは、一体なに? なんで、携帯電話が通じなかったの? ペンダントが光ったことだって、さっぱりわからないわ!!」
「……ひょっとして、絵美理ちゃん、なにも知らないの?」
「知っているわけないじゃない!」
花梨は、少し躊躇してから、さっき駅前で起こっていたことを一つずつ説明し始めた。花梨が言うには、あの人たちは「淫気」という悪い力に取りつかれている人間らしい。淫気に取りつかれた人は、普段はなにも異常はないが、獲物となる人間を見つけると知性を失い、獣のように襲いかかる。そのとき、無関係な人間に気がつかれないように霧のような結界を張るという。この霧の中にいる人は、いわゆる霊感の強い人間(確かに、花梨が霊感を持つ娘なのは、仲間内では有名な話だ)でないとその存在を感知できない……にわかには信じられない話だったけれど、それを実際に体験してしまったのも事実だった。
「花梨、何でそんなこと知っているの……?」
私は、唖然としながら、花梨の説明を聞いていた。
「だって……私、淫気を浄化するために、戦っていたんだもの……」
花梨は小さな声で、しかし、こともなげに言った。
「じゃあ、何で今は戦っていないの!? さっきだって、逃げるだけだったじゃない! 最近、増えているレイプ事件だって、その淫気っていうヤツが原因なんでしょう!!」
私は、反射的に花梨に言い返していた。たぶん、理解できないことがあまりに多すぎて、少し気が立っていたんだと思う。
「ごめんなさい……でも……私、怖いの……もう、戦えないの……」
いつも頼れるしっかり者の親友の顔が、不安で歪んだ。肩を小刻みに震わせ、子供のようにおびえている。私は、その時、自分が失言したことに気がついた。何か、きっと、辛いことがあったのだ。戦うということは……多分だけど……とても過酷なことなのだ。戦っていない人間が、無理強いすることなんてできない。
(でも……)
私には、もう一つ気になることがあった。私のことを助けてくれたペンダント。このペンダントは、行方不明になった私のママが、お守りにと言って渡してくれたものだ。
うちの家庭は、私とママの二人暮らしだった。私のママ、小宮静華は、考古学とか歴史とかの研究をしていて、その関係で国内外を忙しく飛び回る生活をしていた。仕事で離れている分、二人で過ごす時間は大切にしていたし、姉妹のように仲の良い親子だったと今でも思う。そんな中、私が今の学校に入学して、寮暮らしを始めたのとほぼ同時期にママと連絡が取れなくなった。私はひどく狼狽して、親せきや知り合いに聞いて回ったけれど、結局、なにもわからないままだった。なぜか学費と生活費だけは、毎月、口座に振り込まれていて、そんな日々がもう一年は続いていた。今となっては、ママが入学記念にプレゼントしてくれたアンティークのペンダントだけが、親子の絆の名残となっている。
このペンダントには、少なくとも淫気に対抗できる力が宿っている。ひょっとしたら、この事件は、ママの行方とかかわり合いがあるのかもしれない。私と花梨の間に重苦しい沈黙が流れるなか、私は少し考えて、決意した。
「花梨……それじゃあ、私が花梨の代わりに、淫気と戦う!!」
「絵美理ちゃん! 何言っているの!! 素人が気楽にできることじゃないのよ!?」
「私が素人だって言うのなら、花梨が特訓してくれればいいのよ? それに……」
「それに……?」
花梨が首をかしげる。私は静かに笑う。
「私には、ママからもらった、このペンダントがあるもの」
私と花梨は、しばらくにらみ合って……私の強情をよく知っている花梨は、ようやく折れた。
「わかったわ。でも、絵美理ちゃん。無理しちゃダメよ? 危なくなったらすぐにやめてよ?」
「わかってる。任せておいて?」
「淫気を浄化するには、私たちは“聖衣”って呼んでいたけど、特別な衣装が必要なの。私が使っていたのとは別に、予備が一着あったから、それを絵美理ちゃん用に使って? 今、とってくるから」
「うん……ありがとう」
花梨は、礼拝堂を後にする。私はひとり残って、長椅子に腰かけながら、天井を仰いでいた。胸の奥に不思議な高揚感が息づくのを感じる。
(待っててね、ママ……)
しばらくして、花梨が戻ってきた。私は、花梨が手に持っていたものを見て、我が目を疑った。
「……花梨。それは、なに?」
「これが、さっき話していた“聖衣”よ」
花梨が抱えていたものは、純白の生地で作られた衣装だった。カスミ草の白い花を散りばめたようにレースが織り込まれた、無垢な色合い。水晶から紡がれたような糸が、その色合いのつつましさと矛盾するような表面積を形作っている。わずかに残った布地も、半透明ではないかと錯覚するほど、頼りない。それは、際どいデザインのブラとショーツ……つまり、セクシーランジェリーだった。ご丁寧に、真っ白なガーターストッキングまで付いている。
「花梨……これの上に、服とかを着るんだよね?」
「いいえ、淫気を浄化するときは、“聖衣”以外を身につけてはいけないわ。浄化の力が弱まってしまうの」
私は、後悔した。激しく後悔した。花梨の話を聞いた時、子供向けのアニメでやっているようなヒラヒラしたコスチュームを想像したけれど、まさかこんな扇情的な下着姿で戦うことになるなんて……
「……絵美理ちゃん、大丈夫? やっぱりやめる?」
目に見えて狼狽する私に気が付き、花梨が私の顔を覗き込んでくる。
「……もちろん、やるわよ! 女に二言はないわ!!」
気がついた時には、私の決意の言葉が礼拝堂に響き渡っていた。
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