Bitter Choco Liqueur
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ビターチョコリキュール
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プリンセス・デモニア
〜勇者籠絡〜
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無骨な砦の、石造りの廊下。かかとの高い靴が立てる甲高い足音が、響きわたる。
紫の髪が揺れ、よじれた角にふれる。蒼い肌に対比するような深紅のドレスを身にまとい、先を急ぎながら、背後を仰ぐ。私の金色の瞳には、自分の漆黒の翼越しに、付き従う七人の近衛侍女の姿が映る。
「あらためて、状況を報告しなさいな」
私──魔界を統べる貴魔族の王女であるデモニアは、私のすぐ横を早足で追いかける醜悪な妖鬼族の兵長に問いかける。
「へ、へい……っ! 勇者アレクのやつは、地下牢から脱走しやがりまして……見張りの仲間を殴り倒したあと、武器を奪って……いま、砦の前で大立ち回りを……」
私は、兵長の薄汚れた革鎧としゃがれた声、なにより、報告の内容に顔をしかめる。「勇者アレクの幽閉」は、魔都ジンデルを治める父王から娘である私に下された直命だった。
「勇者」なる存在のやっかいな性質は、私も聞き及んでいる。文字通り一騎当千の超人的な力を持つ、魔族の災厄。あらゆる呪いが効かず、殺しても数日のうちによみがえる──とまで、言われている。
私は、はしたないと自覚しながらも、歯ぎしりする。
「勇者」に対する忌々しさではない。「殺しても死なない」ならば幽閉せよ、という父王の消極的な命令に対して、だ。
──殺しても死なないならば、死ぬまで殺し続けてやればいいのに。仮に不死身だとしても、他にいくらでもやりようはあるわ。
妖鬼の兵長が、駆け足で私の前の階段を上り、大扉を押し開く。地上の陽光が、私の顔に投げかけられる。かまわず私は、砦の屋上へと踏み出す。一瞬、暗い雲が太陽を覆い隠し、通り雨で周囲を濡らす。
森の中の小高い丘に建てられた砦は、もとは地上人の防衛拠点だったものを、私たち、魔族軍が奪い取ったものだ。私は、砦の屋上から眼下を見やる。
例の勇者アレクは、砦の正門を突破し、なんとか取り押さえようとする妖鬼兵の群を斬り伏せている。正門前には、魔族の兵士たちが死屍累々と横たわる。暴風のごとき「勇者」の剣戟に、残存する妖鬼兵の指揮は砕け、腰が引けている。
勇者アレクが、砦を仰ぎ見た。私と勇者の、視線が重なる。勇者アレクは、再び私に背を向ける。そのまま、彼は砦の周囲の堀を軽々と飛び越え、森の中に姿を消す。
「飛竜を用意なさい!!」
私は、配下に向けて声を上げる。
「はい。こちらに」
七人の近衛侍女の一人が、抑揚のない返事をする。私の乗騎である巨体の翼竜が、砦の屋上に身を伏せている。私は、近衛侍女たちとともに、竜の背中に飛び乗る。下等な竜は翼を広げ、屋上に兵長を残し、砦から飛び立つ。
私は、侍女に命じて、翼竜を低空飛行させる。大翼と巨体が梢にふれて、枝をへし折り、葉を周囲にまき散らす。木々の隙間から、走る勇者の後ろ姿がちらりちらりと見える。
私と侍女は、翼竜の滑空を速める。勇者アレクが駆ける先、川沿いにできた森の間隙に、進路をふさぐように飛竜の巨体を着地させる。水しぶきと泥が飛び散り、私たちの前で、勇者アレクはようやく脚を止める。
私は、地面に黒い影を落としながら、「勇者」の前に降り立つ。勇者アレクは、油断なく剣と盾を構える。身にまとっているものは牢獄で着せていた薄い布の服のままだが、どうやら武器は彼が捕縛前にもともと所持していたものを取り返されたようだ。
二十歩ほど離れた距離から、私は勇者アレクを観察する。その姿は、いままで追い散らしてきた地上人の若者と、なんら変わらない。赤い血潮の流れる肌は、魔族のそれと比べて明るく見える。
私から遅れて、七人の近衛侍女が竜の背から降り立つ。彼女たちが私の前に出て、勇者と相対しようとすのを、私は手で制する。私は、勇者アレクに向かって十歩ほど近づく。勇者は半身を守るように、私に向かって盾を掲げる。
勇者の盾には、翼を広げる鳥を模した紋章が刻み込まれている。鳥の紋章は、現在、魔族軍が侵攻を仕掛けているアリンダム王国の、国土を表した図案でもある。
「あらためて、こんにちは。勇者アレク。私の名前は、デモニア。貴魔族の王女」
私は、両手を広げて、勇者に対して挨拶する。勇者は、私に対して警戒を露わにする。私は、口角に笑みを浮かべる。
「勇者アレク。あなたに提案があるの。悪い話ではないと思うわ」
「……魔族と交渉するつもりはないっ!!」
「そんな、つれないこと言わないで……ねえ?」
私は 深紅のドレスの胸元をゆるめ、整った球状の双乳が作り出す柔肉の谷間を露わにする。スカートのすそを大きくまくり上げ、緩やかな曲線を描きつつ引き締まった太ももを、根元までさらけ出す。
「私のものにならない? 勇者アレク」
私は、くすぐるような声音で告げる。
「あなた、アリンデル王国の姫君……ソフィア姫といったかしら……彼女と婚約しているそうね。でも、あんな小娘よりも、私のほうが断然、あなたを悦ばすことができるわ……ねえ、どう?」
私は、勇者が私の誘いに乗るであろうと確信し、瞳を閉じる。勇者の信念は、貴魔族の美姫たる私の前に揺らぎ、やがてひざをつくだろう。勇者が、私のもとに歩み寄る足音が聞こえる。私は、まぶたを開こうとする。
そのとき、私の髪が後ろに向かって引っ張られる。
「姫様! ご無礼!!」
近衛侍女の一人が、私の長い髪をつかみ、強く引いたのだ。私の身体が、背後に向かって倒れ込む。
私は、目を見開く。私の首があった場所で、勇者の振るう刃が宙を切る。続いて、咆哮のごとき勇者の叫びが、森にこだまする。
「ソフィア姫を愚弄するな! この醜女め!!」
七人の近衛侍女の一人が、私の身を抱き支える。二人の侍女が、私をかばうように前方に立ちふさがる。残る四人は、メイド装束のスカートの下に隠していた武器を抜き放ち、勇者に向かって襲いかかる。
勇者は、近衛侍女のナイフを剣で弾き飛ばし、紙一重で手槍をかわす。予断なく斬りかかる手斧の追撃を盾で受け、脚を狙った鞭の一撃を身軽に交わす。
「姫様。おけがは……?」
私を守る侍女の一人が、尋ねる。私は、呆然と勇者を見つめ、返事をすることができない。手練れであるはずの近衛侍女を四人も相手に回して、一歩も引けを取らないどころか、押し始めてすらいる勇者アレクの猛威に驚愕しているわけではない。
勇者アレクが、私の魅力を一顧だにしなかったのみならず、あろうことか「醜女」呼ばわりしたのだ。
──許せない。
混乱が去ると同時に、私の胸中に怒りの炎が燃え上がる。私は、血が出るほどに強く、拳を握りしめる。
勇者と侍女たちの戦いは、完全に勇者優勢になっている。ナイフは失われ、手槍はへし折られる。手斧はたたき落とされ、鞭は刃で両断される。
勇者アレクは、丸腰となった魔族のメイドの一人へと踏み込む。夕sっは、必殺を確信した刃を振り上げる。私は、握りしめた拳を開き、血のにじんだ手のひらをかざす。
刹那、私の足下の濃い影が、一直線に伸びていく。私の影は、侍女と勇者の間で立ち上がり、二人を隔てる漆黒の壁を作り出す。
勇者の剣が、振り下ろされる。侍女の髪が、切っ先に触れて、数本、宙に舞う。影の壁は紙のように切り裂かれ、軌道がそれた刃は侍女を捉えることはなかった。
私は、目を見開いた。私は、巨人の拳を受け止めるつもりで、影の壁を生み出したのだ。
私の魔力を失った影は、形を失い、泥染みのようになって地面に溶ける。近衛侍女たちを挟んで、私と勇者はにらみ合う。
やがて、勇者は私たちに背を向けて、森の中に走り出した。
「……妖鬼兵たちを呼び集めなさい。追跡するわ」
「いけません。姫様」
私の命令に対して、侍女の一人が意義を挟む。
「私の命令が、聞けないの!?」
私は、いらだち、声を荒げる。
「妖鬼兵は、ほぼ全滅です」
「追撃隊を組織することは、不可能です」
「地上人どもも、この騒ぎを聞きつける頃合いでしょう」
「すぐに、アリンダム王国の兵士が寄ってきます」
「砦は、守り切れません。放棄すべきかと」
「魔都ジンデルへ帰還し、態勢を立て直しましょう」
侍女たちは、かわるがわる冷静な分析を私に進言する。私は、爪をかみ、歯ぎしりし、近衛たちをにらみつける。それでも、彼女たちに怒りをぶつけるほど、私は愚かではない。
私は、深く息を吐き、吸う。木々の香りが、肺腑に満ちる。
目を閉じ、肌に意識を集中する。暖かい陽光と穏やかな風が、肌をなでている。ふたたび、まぶたを開けば、森の緑、空の青、魔界には存在しない鮮烈な色彩が、眼球に映し出される。
先ほどの喧噪など無かったかのように、水のせせらぎと、鳥のさえずりが聞こえる、
地上人どもにとっては、郷愁を覚える感覚なのだろう。魔界産まれの魔界育ちである私にとっては、物珍しい以上の感想はない。ただ、私の知らないものが、私の所有物とならない──そのことだけは気に入らない。
「……わかったわ」
私は、侍女たちに言った。
「魔都ジンデルへ、戻りましょう」
私は近衛に一人背を向け、飛竜の上に騎乗する。無表情なメイドたちの、安堵する気配を感じ取る。侍女たちも私に続き、翼竜の背に登った。
主人たちを乗せた下等な竜は、翼を大きく広げ、大空へと舞い上がる。上空で一度、旋回すると、翼竜は一路、魔界へ向かって飛翔する。
やがて、地上と魔界の境界線に差しかかる。地上種族と魔界、それぞれの勢力の主戦場となり、荒廃した無人の土地は、黄昏の空の下で、緑と赤の絵の具が混じり合ったかのような混沌とした色合いを呈している。
次第に、天は暗くなり、陽光は届かなくなる。私たちの領域──魔界へと入った証拠だ。
眼下の台地の上では、荒れ狂うかのように途切れることのない炎が燃えさかっている。かと思えば、その先には、白銀に凍り付いた荒原が広がる。
不運な猛禽の屍が串刺しとなった、刃のごとき急峻を私たちは越える。地上の生き物であれば、一息で命を奪われる猛毒の瀑布をかすめる。
悠々と大河が流れる地下空洞をくぐり、暴風と雷が吹き荒れる渓谷を抜け、底の見えぬ巨大な縦穴を降りていく。
私たちを背に乗せた飛竜と同種の下等竜たちが、岩壁に巣くい、ぎゃあぎゃあ、と耳障りな鳴き声をあげている。しばしの下降を続けると、大穴の底に水面をたたえた巨大湖が姿を現す。
地底湖の中央には、七芒星型に無数の灯火が輝いている。これこそが、私たち魔族の中心地、魔都ジンデルだ。翼竜は、懐かしそうに一鳴きすると、ジンデルへ向けて降下していった。
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