ロマン絵画館-6
 

「ロマン絵画館の逆襲」第六回

 

最期の楽園

「オークション会場」「物流システム」

     


 
 
 
オークション会場
 

 

 

 

 

=最後の楽園報告=

去年の12月、街がクリスマスムードで賑わっていた時期のことである。
私はひとり寒い安アパートの一室で、「このまま貧乏暮らしが長く続くようなら、そのうち”のたれ死に”ということにもなりかねないぞ」と情けない気持でひどく落ち込んでいた。
そんな所へ十数年来会わなかった旧友(N)から突然連絡がはいった。
「まだくだらん絵を描いてるのか?」
昔はふたりとも画家志望だったが、現在Nがどんな仕事をしているのか知らない。
Nは私に、「これから海外旅行へ俺と同行しないか?」という。「旅費は持つから」と。しかし「詳しいことは目的地へ到着するまでいっさい聞くな」という。
突然の不可解な誘いだったのでひどく驚いたが、このみじめな現実からいっときでも解放されるならと、大喜びでその話に乗った。
(N)が言った 「行先は『楽園』だよ・・・ところでおまえ、海パン持ってる?」



詳しい行路などを書くことは出来ないが、着いた所は大平洋をかなり南へ下った「絶海の孤島」だった。
そして、そこで私はとんでもない事が行われている現場を目にした。
言葉で説明するよりも、私がそのとき目にした情景を、出来るかぎりリアルに再現した絵を見てもらったほうが早いだろう。
この島のオーナー( T)はマフィアみたいな世界的地下犯罪組織のボスで、主な商売は性奴隷の売り買い、つまり「人身売買」という恐るべき犯罪事業である。
Nは「組織」の日本支部の仕事を任されているとの事である。
T氏に会った時の第一印象は一見、西洋人のように見えたが、正確な事はよく分からなかった。ただ、ギャングのボスというよりも、バイタリティあふれる芸術家か、 品の良いテレビ司会者のような雰囲気を持った、人の良さそうな男に見えた。
Nの通訳でT氏と話した
>T「あなたのことはNから聞いてます、もし都合がよろしければミスター金井にもここの仕事を手伝ってもらいたい」
(とんでもない!)と心では思ったが、下手な返事をすれば命の保障がないかも知れない。しばし考えるふりをした後、「ぼくには将来、芸術家として成功して、日本の「文化勲章」を授かるという大切な夢があるので、大変残念ですが、ここの仕事のお手伝いする訳にはまいりません」と答えた。
T氏は笑顔でうなずくと、私をじっと見つめた。一瞬、常夏の気候の中、背筋に冷たいものが走った。気がつくと(N)がにやにやと笑っている。
半分やけくそで、「この島のことを日本の雑誌で紹介したい」と聞いたところ、驚いたことにT氏の返事は「OK」だった。
しかし、それには条件があって、「写真は載せない事」、「紹介記事には全くの『作り話』であるとのことわりをいれること」などだった。 T氏は案外、ユーモアが好きな人物らしい。
『絵ならいいですか?』
『おう、あなたは絵を描かれるのでしたね?』


その後一週間は面白可笑しく過ごしたが、あまりその事を詳しく書きたくない。ただ、、、
今もこうしてNの言うところの「くだらん絵」などを描きながら、あの時のことを思い出そうとしても、なぜかすべてが現実に起こったことに思えなくて、ときおり「夢でも見ていたのでは無いか?」などと思ったりもする。
Nからもその後まったく連絡がないし、「楽園」の詳しい場所も分からず、確かめるすべは皆無である。
ただ「楽園」を離れる日、T氏はこう言った。
『今度は「ハンティング」の季節にいらっしゃい、とても面白いイベントですよ』
私は今もNからの連絡をあてもなく、しかし心の底から期待をこめて待ち続けている...。


ところでこの「楽園報告」は私が勝手に作り上げた妄想です。くれぐれも本気になどなさらない様、お願いしておきます。
                    

---金井清顕---

   

 
   
   
 
物流システム
 
 
 

 
「S&Mスナイパー」2003年3月号掲載
   

 
 
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